眷属と村の噂
例のアンデッドと対面します。
カケルが思い出を回想しながらウルフ達を見つめていると、その思いを汲んだのかミミがある提案をして来た。
「では、眷属にでもしますか? この村を助けるのが目的なので、別に倒さなくても良いと思いますよ。このアンデッド達も、普通と違うようですし」
「眷属って、ツィードにとってのミノちゃんやピヨちゃんみたいな?」
「はい」
「うーん……。少し聞いてみようか」
カケルはそう言うと、三匹のウルフに視線を合わせる様に屈んだ。
尤も一匹は、足に噛み付いて離れなかったが……。
「ねえ君達、僕と一緒に来てみる?」
「ガウ?」「ワウ?」「ガフガフ」
「今のままだと、僕は君達を殺さないといけない。でも僕達と一緒に来るなら、僕の眷属になるなら死なずに済むよ?」
かなり知能が高いのか、カケルの言葉に少し考え込むように頭を伏せるウルフ達。
そして、答えは出たようだ。
足を噛んでいたウルフも一緒にカケルの前に移動すると、一斉に伏せの状態を取った。
「「「ガウ!」」」
「多分、僕達と行くって事かな?」
「恐らくそうだと思います」
「じゃあ、名前を付けないとね!」
「「は?」」
「――主様? 名付けは魔物にとって、特別になり得る事だと言うのは覚えてますか?」
「それは覚えてるよ。ネームドって言うんだよね?」
「覚えてるなら良いですが……」
うーん……。何が良いかな……?
ポチ、ジョン、ネロ……。
「よし決めた! 君達はそれぞれ、コテツ、レッシュ、モモだよ!」
カケルは、骨をガブガブしていた子をコテツ、グルグル回っていた子をレッシュ、お腹を見せていた子をモモと名付けた。
その瞬間カケルから大量の魔素が失われ、三匹のウルフ達が光に包まれる。
「くっ……、これは結構キツいかも……」
「「「ワウォーン!」」」
「始まりましたか……」
「久々に見る進化やな」
「ふむ、どんな進化をするのやら」
カケルは自分の魔素の七十五パーセントを、三等分して彼等に与えるイメージで名付けを行った。
その結果――。
「ワフ!」
「ガウ!」
「ニャー!?」
「あれ?」
光が収まると、彼等の姿がすっかり変わっていたのだ。
取り敢えず、カケルは彼等を鑑定してみた。
名前:コテツ
種族:柴犬ウルフ
状態:正常
カルマ:+126
スキル:空駆けLv1、オーバーイートLv3、悪食Lv3
魔法:火属性Lv4、水属性Lv3、風属性Lv3、光属性Lv2、闇属性Lv2
称号:執念の食いしん坊
説明:まるで柴犬の様なウルフ。ウルフの特徴は一切無く、種族とは何だろうと考えさせられる種族。名付けにより誕生した、世界に一体しか居ないユニーク個体。
柴犬の成体と比べるとやや体が小さく、成体の八割くらいの大きさである。姿は柴犬と殆ど同じだが、火を吹いたり尋常ではない速度で移動するなど特徴が存在する。
なおユニーク個体な為、住んでる環境もどう進化するかも不明である。
名前:レッシュ
種族:ハスキー犬ウルフ
状態:正常
カルマ:+189
スキル:空駆けLv2、身体強化Lv3、悪食Lv1
魔法:火属性Lv3、水属性Lv4、風属性Lv3、光属性Lv2、闇属性Lv2
称号:遊びに一生を捧ぐ者
説明:まるでハスキー犬の様なウルフ。ウルフの特徴は一切無く、種族とは何だろうと考えさせられる種族。名付けにより誕生した、世界に一体しか居ないユニーク個体。
ハスキー犬の成体と比べると体が大きく、成体の二割増しくらいの大きさである。姿はハスキー犬と殆ど同じだが、氷を吹いたり尋常ではない速度で移動するなど特徴が存在する。
なおユニーク個体な為、住んでる環境もどう進化するかも不明である。
名前:モモ
種族:三毛猫ウルフ
正常:混乱
カルマ:+346
スキル:空駆けLv1、感覚強化Lv3、空間マップLv2、悪食Lv1
魔法:火属性Lv3、水属性Lv3、風属性Lv4、光属性Lv2、闇属性Lv2
称号:一生を棒に振る心配性、性転換せし者
説明:まるで三毛猫の様なウルフ。ウルフの特徴は一切無く、種族とは何だろうと考えさせられる種族。名付けにより誕生した、世界に一体しか居ないユニーク個体。
三毛猫の成体と比べるとやや体が小さく、成体の九割くらいの大きさである。姿は三毛猫と殆ど同じだが、風を吹いたり尋常ではない速度で移動するなど特徴が存在する。
なおユニーク個体な為、住んでる環境もどう進化するかも不明である。
はっ……!?
えーと取り敢えず、知らないスキルの詳細は――。
空駆け:一定時間空中を駆け抜ける事が出来るようになるスキル。
オーバーイート:胃の限界を超えた量を食べれるようになるスキル。
悪食:胃が強くなり、本来お腹を壊しそうな物まで食べられるようになるスキル。
空間マップ:頭の中に空間を描いた地図が表示されるようになる。
空駆けと空間マップを使いやすそうで羨ましいな……。
オーバーイートと悪食は……。まぁ、うん……。良いんじゃないかな……。
気を取り直して、次は称号っと――。
執念の食いしん坊:余りにも食い意地が張っていて、その執念だけで不死者にまでなった者に与えられる称号。
遊びに一生を捧ぐ者:遊ぶ事が好きすぎて、それに一生を捧げた者に与えられる称号。
一生を棒に振る心配性:心配性が行き過ぎて、一生を棒に振った者に与えられる称号。
性転換せし者:様々な影響により、性別が反転してしまった者に与えられる称号。
コテツは執念の食いしん坊……。なるほど、食い意地が張りすぎてアンデッドにまでなったんだね……。僕が言える事じゃないかもだけど、凄い執念だね……。
レッシュの遊びに一生を捧ぐ者も凄いな……。執念の食いしん坊もそうだけど、一度死なないと得られない称号なのに凄いな……。
モモはなんかゴメン……。残りの二匹が心配でアンデッドになったんだろうけど、今度は性別まで変わっちゃっただね……。言い訳になるけど、僕は性別に関しては考えて無かったんだよ……。
それにしても、柴犬にハスキー犬に三毛猫って……。
ウルフって付いてるけど、説明にもある通りウルフっぽさが皆無だね……。
ってか、スケルトンの部分は完全に消えてるみたいだけどなんでだろう?
「主様……。何を考えながら、彼等に名付けを行いましたか?」
「えーと、前世で周りが飼っていたペットを思い浮かべながら……」
「一匹猫っぽいのが居るのですが……?」
「最初は犬を浮かべてたんだけどね? 途中で、その家の印象の強い猫の方が邪魔して来てね……」
「それで、こうなったと……?」
「うん……」
カケルが思い浮かべたのは、無論柴犬とハスキー犬と三毛猫である。
名前もペットの名前をまんまパクリで、コテツとレッシュとモモであった。
ただ、モモだけはその家で元々印象の薄い犬の方の名前で、強烈な印象の三毛猫の本来の名前はマロンと言った。
「で、でも、これなら街に入れるよね?」
「まぁ……、手続きは簡単になりそうではありますね」
「ふむ、お前中々格好良いじゃないか」
「ワフワフ!」
「なんや。ワイに乗るのが楽しいんか?」
「ワウォーン!」
フリーダムである。
レッシュはキーリにモフモフされ、コテツはツィードの背中に乗って遊んでいた。
ただ三毛猫のモモだけは、カケルの前でお座りしながら目線を目まぐるしく移動させていた。
「肉体を得た事で、普通より少なくとも餌が必要になりますよ」
「確かにそうか……」
もしアンデッド系をペットに出来れば、非常にお財布に優しいペットになるだろう。
骨じゃなくて肉体があった方が良いなら、フレッシュゾンビと言う手もある。
変温動物の様になってしまうが、肉体が死後硬直していると言う事は無いのだから。
とは言え、ペットになる事自体が有り得ないので、基本は考える必要は無いだろう。
さて三匹のウルフ達だが、彼等の場合はフレッシュゾンビでは無く肉体を得た魔物である。
つまり、肉体維持の為に少なからず食事をする必要が出て来るのである。
必要エネルギーの大半は魔素なので、普通の動物よりも食事回数はかなり少なく出来るが……。
「食事の事は置いておいて、取り敢えず村に報告に行こうか」
「畏まりました」
「と、その前に……。コテツ、レッシュ! 言っておく事があるから、こっちに来て!」
「ワフ?」「ガウ!」
カケルは遊んでいた二匹を戻して、彼等に対して目線を合わせる。
「良いかい? 人間や他の生物を襲ったり、今までみたいに食べ物を勝手に漁るのは禁止だよ!」
「「「ワフ……?」」」
「何故か分からない感じかな? 今まで君達がして来たのは、村人の財産を壊したり、盗んだりする行為だよ。つまり悪い事で、これからはしちゃいけないんだよ?」
「ガウ!」「ワン!」「ニャー!」
本当に分かったかは定かでは無いが、三匹が中々に良い返事をする。
カケルはその返事にやや不安になりながらも、皆と一緒に報告に戻る事にした……。
◇ ◇ ◇
「なぁ、アイツ等戻って来ると思うか?」
「どうだろうな……。俺としてはもう会いたくは無いんだが……」
この村が、アンデッドの犬共に悩まされる様になってから数ヶ月。
本格的にマズい状況になった為、俺達はギルドに対して救助依頼を出していた。
だが助けに来たのは、ドラゴンを含む魔物の一団。
一触触発状態になった為に情報は渡したが、正直俺達はアイツ等の事を信用していなかった。
もし、誰かがテイムしていてテイマーが傍に居たのなら、俺達も信じる事が出来ただろう。
だが、今回来たのはテイムされていない野放しの魔物だと言うじゃないか!
それは、今俺達の事を苦しめてるアンデッドと何の違いがある?
それにだ。魔物の中には人型のアンデッドもいやがった。
それって悪名高き魔人だろうが!!
そんな状況で、あいつ等を信用出来る奴が居たら見てみたいね!
「なぁ……、だけど俺達全員怪我すら負ってなくないか?」
「どう言う意味だ?」
「そのままの意味だよ。俺達はアイツ等に歯向かっただろ? だけど、その後にされたのは脅しだけで怪我人すら出て無いなと思ってさ」
確かに……。コイツの言い分には一理あるかも知れない……。
俺達の村は、シャンティナに近い位置にある。
だから俺も何回かシャンティナに行った事があるのだが、あそこは獣人やエルフ、ドワーフと言った多種多様の人々が暮らしていた。
だからだろうか。別に俺達は人間至上主義と言う訳じゃないし、人間以外の人種だろうが相手を思いやれる奴なら仲良くなれるんじゃないかと思う。
なら、もし同じ様に他種族を思いやれる魔物が居たら?
だが、そんな事有り得るのか?
「それはそうだが、相手は魔物だぞ? 単なる気紛れだった可能性の方が高いだろ」
「それはそうなんだが……」
そう……。気紛れだと言う方が説得力がある。
少なくとも、良い魔物が居るなんて戯言よりは余程……。
「いや……、もしかするとソイツの言う通りかも知れん……」
「なんでだ? 相手は魔物だぞ?」
「いや、俺も詳しくは知らないんだが……。噂で、シャンティナが魔物に救われたってのがあるんだよ」
「「「はぁ!?」」」
魔物がシャンティナを救った!?
何だその法螺話は!
「おい、嘘を付くなよ! そんな法螺を誰が信じるんだよ!」
「そうだ! そうだ!」
「嘘じゃねえよ! この間来た商人が言ってたんだよ!!」
「この間の商人って、あの変な格好のおっさんの事か?」
「あぁ」
「お前騙されたんだって! あんな胡散臭い奴の言う事を、鵜呑みする奴があるか!」
つい数日前まで、村には商人が来ていた。
久々の商人だから助かったのは事実なんだが、その商人の格好が胡散臭過ぎた。
全身が緑一色の服を纏っていて、頭から生えた蔦が全身を覆っていたのだ。
あまりにもあまりな格好な為、ソイツに格好の理由を聞いてみたところ、植物は私達を癒す力となるとか良く分からない事を言っていたのだ。
流石にそんな奴が言っていた事を信じるのはどうかと思うぞ……。
あの商人の言葉は、二割真実なら良い方だろ……。
「だけどよう、あの人結構良い人だったぜ? 俺の女房が髪の毛が薄くなって困ってるって言ったら、この植物の力が籠もった液体を頭部に塗るだけで薄毛の悩みはおさらばですって言って薬を売ってくれたぜ?」
「それ、お前の女房じゃなくてお前自身だろ!!」
「違う!!」
「んで、お前はその薬を幾らで買ったんだ……?」
「銀貨三枚……」
「「「はぁっ……!? 銀貨三枚!?」」」
銀貨三枚あれば、一ヶ月は楽に暮らせるお金だぞ!?
それをたかが髪の為に使っただと!?
俺がそんな事を言うと、コイツは怒り出した。
「は? 髪の有る奴に、俺の苦しみは分かるかよ!!」
「「「やっぱりお前のじゃねえか!!」」」
「あ、いや……! 今のは言葉の綾で……」
「さっきの言葉の何処に綾があるんだよ!!」
「お前の髪が薄いのは皆知ってるんだから、いい加減認めろよ……」
墓穴掘りやがったな……。
コイツの髪が年々薄くなってるのは、村人なら誰でも知ってる事だ。
そして、それを気にしてる事もだ。
コイツが言い訳に使った奥さんは、髪が薄いのでは無く単に短髪なだけだ。
元々ボーイッシュな人で、昔は男の子と間違われる事も多かった事を覚えている。
それがまさかコイツと結婚するとは思わなかったが、意外と上手くやってるらしい。
因みにだが、禿げかけているコイツと短髪な奥さん。更に子供も男の子の為に、村一番の髪量が少ない一家として極一部で有名だったりする。
「違う! 俺は少し他人より髪の伸びが遅いだけだ!!」
「お前……。言っていて虚しくならないか……?」
「黙れ外道! お前に俺の何が分かる!!」
「いや、外道って……」
ったく、お前等髪の話ばっかだな……。
それより、優先する話があるだろうに……。
あれ……?
そう言えば、さっきまで何の話をしていたんだっけ?
「おい! ソイツの髪が薄い事はどうでも良いだろ!!」
「良くねえよ!! お前は人の髪様を何だと思ってやがる!!」
「いや、そうじゃなくて! 魔物がシャンティナを救ったって話だっただろうが!!」
「そうだった! コイツの髪の話なんかをしてる場合じゃねえ!!」
「髪の話なんかだと!? お前、髪様に謝りやがれ!!」
そうだ……。シャンティナが、魔物に救われたって話からシフトしたんだったな……。
話が脱線しすぎだろ……。
後、コイツは取り敢えず髪の話から離れるべきだな……。
その後、何とか話が元に戻ってシャンティナの話を聞く事が出来た。
シャンティナは、凡そ一ヶ月程前に魔物の大群に襲われたのだと言う。
その総数は万を超えており、流石のシャンティナも墜ちる可能性が出て来たのだとか。
だが、それを助けたのが襲った魔物達とは別の魔物だったと言う事らしい。
つまり何か?
今日来た奴等は、そのシャンティナを救った一味だったって事か?
だが、証拠は何も無いだろ……。
俺がその事を言うと、あの商人の言葉を疑うのかと怒鳴られた。
いや、その怪し気な商人だから疑いが大きいんだが……。
「あの人は女房の為に、髪の薬を売ってくれたんだぞ!? そんな人を疑うってのか!!」
まだ言ってるよ……。
まぁ、コイツの言う事は話三割くらいだけ聞いておくとして、商人の言った事が本当か嘘かが重要だな。
とは言え、俺達にそれを調べる術も無ければ、選択肢の余地すらももねぇな……。
それが事実なら俺達は救われるし、間違いだったら村ごと滅ぶだけだろうな……。
そんな事を考えながら、俺達は髪様では無く神様に祈りを捧げるのだった――。
髪の話で無駄に文字数が取られてしまった……(汗)
何はともあれ、カケルに新しい眷属が出来ました。
扱いは眷属と言うよりもペットなので、多分今後の扱いもペットみたいな感じになっていくと思います。
・コテツ
柴犬姿でカケルの足を食料代わりに噛み付いていてウルフ。
・レッシュ
ハスキー犬姿でカケルの周りをグルグル回っていたウルフ。
・モモ
三毛猫姿で腹ばいになって服従を示していたウルフ。




