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カケルのお仲間?

「近くの村で、アンデッドが暴れてる?」

「そうじゃ。コヨコテ村と言う村が、この街から南西にあるんじゃがな……。その村から、救援要請が届いたのじゃ。アンデッド出没、被害拡大、救援求むとな」

「それを、僕達に退治して欲しいと言う事ですか?」

「その通りじゃ」


 ミミが王都の使者と会って少し経った頃、ギルマスであるローグからカケル達は招集を掛けられた。

 そして詳しく聞けば、コヨコテ村と言う場所でアンデッドが出没したので退治して欲しいと言う。


「話は分かりましたが、何故私達なのですか? 冒険者なら幾らでも居るでしょうに」

「理由は二つあるのぅ。一つ目ははコヨコテ村から来た情報が切羽詰まった具合から考えて、普通の冒険者の移動速度では間に合わない可能性が高いのじゃよ」

「なるほど。ワイらやったら、確かに相当早く到着可能やな」

「二つ目はアンデッドのカケルに、意思疎通を試して貰いたいからじゃ」


 ローグ曰く、今までアンデッドと言うだけで問答無用で退治してきたが、もしカケルの様に意思疎通が出来るなら、もう少し他の対処方法があったのではないかと思ったらしい。

 例えばある家族の長が狩りの途中で死んでしまって、家族の事を気にする余りアンデッドになったとする。

 今まではそんな事情も知らずにアンデッドは滅ぼす方法を取って来た訳だが、もしカケルの様に生前の意志が存在するなら、家族の事の不安を取り除いて成仏と言う方法も取れるのではと。


 まぁこれは楽観的な見方ではあるが、要は単に滅ぼす以外の解決策ないしは有効策が見つかれば良いと言う。

 その試金石として、カケルに動いて貰えると有り難いとの事だ。


「はぁ……。僕は自分以外のアンデッドに会った事が無いので、上手く行く自信が無いのですが……」

「そっちはついでじゃから、気にする必要ない。一つ目の村の損害を抑えてくれれば、それで十分じゃ」

「そう言う事なら、僕は構いませんけど……」

「ワイも構わへんで!」

「私も問題無い」

「畏まりました」

「有り難い。では、詳しい情報じゃが――」


 更に詳しい話を聞くものの、アンデッドの種類や数は一切不明。

 結局村の場所くらいしか役立つ情報は無く、そのままカケル達は村へと向けて出発するのだった……。


 ◇ ◇ ◇


 その後街を出たカケル達は、直ぐにキーリに跨がり空の住人となっていた。


「ねぇ、僕にアンデッドと話せる能力なんてあるのかな?」

「どうでしょうね。相手次第の所はありますが、生者が話し掛けるよりは可能性があるかと」

「せやなぁ……。アイツ等生者が相手だと、問答無用で襲って来るしなぁ……」

「カケルは例外だが、アンデッドの執念は酷いぞ? 生者を見るや、何処までも追い掛けて殺そうとするからな」


 アンデッドを自分以外知らないカケルからすれば分からないかもだが、アンデッドの生者への執念は本当に酷いのだ。

 一リアナレイ以上離れていても感知すると言う、まさに執念とも言える感知能力。

 死んだ時の無念が祟るのか、執拗に一箇所を攻撃し続ける猟奇性。

 腕や脚を圧し折ったくらいでは、一向に歩みが止まらない耐久性。

 相手が無機物や植物等の魔物相手だと、個体に依っては攻撃されても殆ど無視をするのに、生者相手だといきなり凶暴化する執着性など等……。


 そんな実際にあった事例を説明されながら空の旅を続けると、村が見えて来る頃にはカケルはすっかりアンデッドに苦手意識が芽生えていた……。


「此処が依頼のあったコヨコテ村かな? 長閑な雰囲気の村だね。でも、なんだか慌ただしい……?」

「ミノちゃんの所の雰囲気と似てるやん。でも建物は、そんなに大きく無いんやね」

「ふむ、そろそろ降りるぞ」

「そうですね。既に大騒ぎですし、村まで入っても良いかもですが」


 カケルが言っていた慌ただしさの原因は、言うまでもなくカケル達の姿を村人が捉えた為である。

 当然だろう。ドラゴンと思わしき存在が、自分達の村目掛けて飛んで来たのだから……。


「あぁ……、もう少し手前で降りるべきだったかな?」

「そこまで気にする事でも無いだろ。シャンティナだと入場手続きがあったが、此処では無さそうだしな」


 確かにこんな辺鄙(へんぴ)な村に、そんな手続きが存在する事は無い。

 だがキーリの言った事は、カケルが言った事と論点が若干ズレていた。


 そんな事を言い合いながら、村が見える位置まで歩いて行くと、(くわ)や斧で武装した農民達が村の外でこっちを睨んでいるのが見て取れた。


「止まれ! お前達何者だ!?」

「えーと、僕達は冒険者です。この村には、依頼を受けて来ました」

「冒険者だと? なら、その後のなんだ……猫の様な蜘蛛の様な変なのは、お前達の従魔か?」

「変なのとは失礼やな! ワイは変なのやなくて、地獄の猫蜘蛛や!」

「変なのが喋った!?」

「まだ言うか! しばいたるでわれ!」

「ツィード抑えて抑えて」


 ツィードが失礼な事を言われてややキレ掛けていたのを抑え、カケルは村人達へと向き合う。


「ツィードは僕達の仲間で、同じく冒険者です。変なのや従魔扱いは止めてもらえますか?」

「ソイツが冒険者……? どう見ても魔物じゃないか!!」

「そうですね。でも、魔物はツィードだけじゃありません。僕達全員が人間ではなく魔物ですよ」


 そう言いながら、カケルはフードを取った。

 取ったフードの下からは、相も変わらず白磁の様に真っ白な肌が出て来た。

 それを見た村人達は一瞬呆気に取られると、蜂の巣を突付いた様な騒ぎになり始めた。


「おい! アンデッドじゃねえか!! クソ! 犬っころだけじゃなく、人型のアンデッドも居たのかよ!?」

「さっき見えたドラゴンも、お前達の仲間か! 俺達の村を、俺達の暮らしを奪いに来たんだな!?」

「待て! なんでアンデッドが喋ってやがる!?」

「絶対にお前達に村を明け渡してなるもんか!!」


 先頭に居る男達が口々に吠える。

 自分達の村を絶対守ると言う気概に満ちていたが、足が震えてる者も居れば明らかに顔色が悪い者も居る。

 それもその筈。この村を襲ってるらしいアンデッドに加え、人型のアンデッドに先程のドラゴンらしき姿。更にはウサギの魔物と、何の魔物かは不明だが羽根が付いた人型の魔物と猫蜘蛛とか言う正体不明の魔物。


 元々魔物との戦いを生業にしてない人々が、戦いを挑むには不安過ぎる戦力だ。

 何せドラゴンと対峙する可能性があるのだ。

 ドラゴンの中で一番弱いとされている偽竜でも、村を簡単に破壊し得る力を持っているのだ。不安が膨らむのも仕方無いだろう。


 だが危険なのは、別にドラゴンだけと言う訳では無い。

 一部を除き魔物と言うのは、力も俊敏さも人間よりも高い生き物だ。

 それに比べて人間は飽くまでも知能が高いだけで、肉体は非常に脆弱である。

 それが、強靭な肉体を持つ魔物と戦うとなれば恐怖に支配されてもおかしくないだろう。寧ろ対峙出来ているだけでも中々に凄い事である。


「えーと、僕は確かにアンデッドなんですけど冒険者でもあるんです」

「嘘をつくな! アンデッドが冒険者なんて洞話誰が信じるもんか!」

「いえ、本当です! えーと、ほら! 此方に、ギルドカードもありますよ?」


 そう言って、カケルは自分のギルドカードを出して村人達に見せてみた。


「本当に冒険者なのか……?」

「騙されるな! どうせ、そのカードだって偽物か他の冒険者から奪った物に違いない!」

「そうだ! アンデッドを冒険者にするギルドが何処にいる!!」


 極一部は少し信じてくれそうになったが、大半の村人の否定に流されて結局元の木阿弥(もくあみ)になる。

 魔物の中でもアンデッドなのだ。少し信じてもらえただけでも、かなりの進歩と言えるだろう。


「はぁ……、どうしよう? 全然信じてくれないよ……」

「仕方無いさ。アンデッドの扱いはそんなものだ」

「そら、しゃあないで? この村がおかしいんやのうて、シャンティナでの受け入れが異常やったんや」

「そもそも、此処の村人に信頼される必要は無いのでは? アンデッドの場所だけ聞き出して、処理すれば良いと思いますよ」

「仕方無いか……。僕としては、もっと仲良くしたいんだけどなぁ……」


 そんな会話をしていると、対峙している村人からではなく村の奥の方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「くそ、やられた!! 俺のとこの羊が食われちまった!!」

「俺の方もだ! うちの鶏の羽根がもがれてやがる!!」

「あの犬っころめ! 俺がぶっ殺してやる!!」

「止めろ! アイツらは――」


 聞こえて来る情報から判断すると、どうやら人では無く家畜が襲われたらしい。

 アンデッドの種類は犬型で、数は三匹でいつも一緒に行動しているようだ。


「妙ですね?」

「そうだな」

「せやな」

「え? えと、何が変なの?」

「相手が犬にせよ狼にせよですが、家畜を襲うのはまだ良いとして、干し肉や穀物等の貯蔵物を狙う事が不思議なのです」


 騒ぎの話では過去の被害の愚痴も聞こえており、干し肉や穀物が入っている貯蔵庫が狙われた事があったそうだ。

 問題はこの干し肉や穀物が、生き物では無いと言う事である。

 先程のカケルへの説明にもあった通り、アンデッドは生者に対しての執念はあるが、無機物等への興味はまず抱かない。

 貯蔵物は有機物ではあるのだが、植物と謂わば死肉である。

 死して間もない頃は攻撃される事もあるのだが、干し肉になる程の時間が経過した後に攻撃されるのは明らかにおかしいのだ。


「えーと、つまりどう言う事なの?」

「相手は普通のアンデッドでは無いと言う事です」

「うーん?」

「考えられる可能性は二つです。一つは主様の様な異常個体の場合……」

「異常個体って酷くない!?」

「カケルは異常個体だぞ?」「せや、普通のアンデッドやあらへんやん」


 カケルが自分を異常と言われてショックを受けていたようだが、皆の中では共通認識である。

 そもそも神にアンデッドの肉体を与えられた異世界の元人間の存在が、異常以外の何だと言うのだろうか……?


「うぅ……。皆酷い……」

「二つ目は、アンデッドに見える別の何かの場合です」

「別の何か?」

「そうです。例えば、幻術でアンデッドに見せ掛けた人間と言う可能性も無くはないです」

「もしそれが事実だとして、なんでそんな面倒な真似するん?」

「そうですね――。今回は狙われた物が、全て食べ物と言う共通項があります。なので、単純に食べ物に困って襲ったと言う可能性はどうでしょう?」


 ミミの問い掛けに対して、少し考えた後にキーリが答える。


「もし人間で幻術を使えるのなら、仕事には困らないんじゃないか?」

「確かにそうですね。では、この村の人を餓死させようとしている可能性はどうでしょう?」


 要は兵糧攻めである。

 村を壊滅させる手段としては、悪く無い一手かも知れない。


「それは、完全に否定出来ん可能性やな」

「どちらにせよ、捕まえれば分かる事だな。おい、そのアンデッドは何処に居るんだ?」


 犯人推理も一通り終わった後、キーリは此方に武器を向けたままの村人に対してそう問い掛けた。


「それを知ってどうするつもりだ! どうせ合流して俺達を殺すのだろ!?」

「いや、お前達くらいなら合流する事無く潰せるんだが……」

「ほら見ろ! やっぱり俺達を殺すんじゃねぇか!! おい、お前達! 絶対に油断すんじゃねえぞ!!」

「ちょっとキーリ!?」

「済まん……。つい……」


 キーリの言う事は事実だが、今言う事ではなかった。

 その言葉のせいで、完全に警戒態勢に逆戻りである。


「はぁ……、仕方無い……。情報無しで周囲を探そうか……」

「おい! アンデッドどもが移動するぞ!! 警戒を怠るなよ!!」


 そうしてピリピリした村人達を尻目に、カケル達は村の周囲の探索を開始したのだった――。


カケル以外のアンデッドの話が出てきました。

次回はそのアンデッドに会う予定ではあります。

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