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再会する者達

前回の話の完結です。

 黒ウサギが去った後、俺は後始末を部下に任せてすぐに陛下への謁見を行った。

 あの事を有耶無耶にするのは、非常にマズかったからだ。

 幸い陛下は事情を話すと、その黒ウサギに対して最大限の便宜を図ると約束して下さった。

 そして俺達は準備を整え、黒ウサギの確認ともう一つの任務を与えられシャンティナへと向かう事になった。


 どうも、王都と同日にシャンティナも魔物に襲われていたらしいのだ。

 シャンティナが無事なのは確認済みなのだが、詳しい状況まではまだ掴んで無かったらしい。

 その為、シャンティナの状況確認を主目的として派遣される事になったのだ。


 まぁ実際には、他の貴族に対する建前だろうな。

 流石に黒ウサギを探しに行くでは、示しが付かないからだ。

 シャンティナの状況を確認しつつ、もしまだ魔物の残党が居ればそれを殲滅する。

 そう言っておけば、俺が派遣される事にも納得しやすいと言うだけの事だろう。


「なぁ、本当にシャンティナは襲われたのか?」

「分かりません……」


 シャンティナはいつも通りだった。

 いや、確かに門に並ぶ人数はやや少ない気はするのだが、戦闘の痕跡が見当たらないのだ。

 確かに一ヶ月以上経ってはいるのだが、襲った魔物の大まかな総数からすれば痕跡が消える程に復興すると言うのは有り得ない筈なのだが……。


 疑問を感じつつ、北門へと近付くと顔見知り門番が慌てて此方に向かって来た。


「これはこれはボウテンホーク伯爵! 一体どうされたのですか!?」

「あぁ、突然やって来て済まんな。ティザークの奴と話がしたいんだが大丈夫か?」

「畏まりました! おい! お前は、兵の皆様をご案内しろ」

「はい。兵士の皆様、長旅ご苦労様です。手続きを行うので此方にどうぞ」


 部下達がもう一人の門番に案内されると共に、俺は殆ど手続きも無しに街の中へと入って行く。


「あれ? お前どうしたんだ? そちらは、ボウテンホーク伯爵……?」

「あぁ、ボウテンホーク伯爵は領主様へのお客様だ」

「そうか、分った。ボウテンホーク伯爵、ようこそいらっしゃいました。すぐにご案内致します」

「あぁ、頼む」


 その後、領館の入り口に居た者に着いて行き応接間へと案内された。


 ◇ ◇ ◇


「ティザーク様、お客様がお見えです」

「客……? 誰かと会う約束はあったかな?」

「いえ、約束は無いとの事です」

「ふむ……。それで、誰が来たのかな?」

「ヴァイス・ボウテンホーク様がお()でです」

「ヴァイスが……?」


 何故ヴァイスが来るんだ?

 可能性があるのは例の襲撃の調査だろうか?

 取り敢えずは、会ってから確認するか。


「今から会おう。既に応接間かな?」

「はい」

「では行こうイルナ」


 私はイルナと共に応接間へ向かう。

 応接間に入ると、そこにはヴァイスがやや難しい表情をしながら座っていた。

 ふむ、厄介事か……?


 私は椅子に座りながらヴァイスに声を掛けた。


「久しいなヴァイス」

「あぁ、ティザーク。数年振りだな」

「それで、今回はどんな用だ?」

「建前は魔物に襲われたシャンティナの状況確認だ」

「建前……?」

「あぁ。取り敢えず教えて欲しいんだが、この街に数千を超える魔物が押し寄せたってのは本当なのか?」

「あぁ、本当だ。具体的な数は残念ながら分からなかったが、総数で言えば二万は超えていた筈だ」

「二万……」


 余りにも馬鹿げた数に、ヴァイスは呆気に取られて絶句してしまった。

 その代わりに、ティザークが反対に質問を投げ掛ける。


「なぁ、先程建前と言ったが本音は何の用なんだ?」

「あ、あぁ……。今回の任務の主目的は、あるウサギの魔物を探しに来る事だ」


 ウサギの魔物?

 脳裏に浮かぶのは、ニアちゃんの所のうーちゃんとあのミミ殿だ。


「はぁ……。そのウサギの魔物がどうかしたのか?」

「お前は、王都が千以上のフラワードラゴンの群れに襲われた事は知っているか?」

「何だって!?」

「その様子じゃ知らなかったようだな」

「あ、あぁ……。それより、王都は無事なのか!?」

「それは問題無い。何せ、そのウサギの魔物がフラワードラゴンを残らず退治してくれたからな」

「――それはいつだ?」


 その回答を聞いて確信した。

 何故なら、その日のそれくらいの時刻。ミミ殿がお花摘みをするからと席を外して領館から出て行ったからだ。

 更に詳しく聞けば、そのウサギは話す時に人間を蔑んだ物言いだったと言うのだから、あの者以外に誰が居ると言う感じだ。

 しかしお花摘みとは、フラワードラゴンを摘み取る事だったのか……。


「なるほど、それで此処へ来たのか」

「あまり驚いてないんだな」

「まあな。私のとこも同じ様に魔物に助けられたからな」

「――はっ?」


 私の言葉にヴァイスが逆に驚いていた。


「ま、待て! それはどう言う意味だ!?」

「そのままだな。恐らくお前が言うウサギの魔物とは、常闇ウサギのミミ殿の事だ」

「常闇……ウサギ……。ミミ殿……」

「そうだ。お前の考えている通り、あの月夜の悪魔だ。ネームドのな……」

「…………」


 ヴァイスの奴が黙ってしまったので、そのままシャンティナが助けられた状況を話す。


「ははは……。月夜の悪魔に聖獣のホーリードラゴンとフェンリル、それに厄災級のリッチか……」


 他にも地獄の猫蜘蛛(ヘルスロナート)やプラントヴァンパイアなんて種族も居たが、正直その四つの種族に比べれば知名度が低くてピンと来ないだろうな。


 この四つの種族は格別なのだ。

 聖獣であるホーリードラゴンとフェンリルは一部地域では神として扱われ、リッチは国一つを丸ごとアンデッドの国に変える様な厄災種。

 この三つだけでも耳を疑うのに、それよりも遥かに有名なあの月夜の悪魔だ。

 ヴァイスじゃなくても、空笑いしか出て来ないだろう。


「別に信じなくても良いぞ?」

「いや、信じるさ。お前がそんな下らない嘘を()かない事は知っているからな……」

「そうか……。なら、直接本人にご対面させるか」

「は?」

「イルナ、ミミ殿に連絡を取って貰えるか?」

「畏まりました」


 イルナが扉から出て行くと、私は再びヴァイスと向き合った。


「ヴァイス、ミミ殿に連絡を付ける。数日以内には会えると思うぞ?」

「そんなにすぐに連絡が付くものなのか? 魔物なんだろ? 近くに住んでいたりするのか?」

「いや、近くと言うかこの街の中に寝泊りしているな」

「は……?」


 再びヴァイスが絶句する。

 まぁ、そうだろうな。私もヴァイスの立場なら言葉を無くすだろうな……。


 ミミ殿達は今、月と太陽の宿に寝泊りしている。

 確かあの事件の後すぐに冒険者登録して、早速色々とやらかしているらしい。

 そんな話をヴァイスと喋る。そして、そのまま今日はヴァイスには泊まって貰う事にする。


 幸いミミ殿と連絡はすぐ取れたようで、翌日に会う事となった。


 ◇ ◇ ◇


 そして次の日。

 凡その時間になったので先に応接間に入りヴァイスと喋っていると、応接間へとイルナと共にミミが入って来た。


「呼びましたか人間」

「あぁ、ミミ殿に会わせたい人物が居たのでな。こちら、ヴァイス・ボウテンホーク伯爵だ」

「あぁ、人間。久しぶりですね。王都は大丈夫でしたか?」

「あ、あぁ……。問題無い。アンタに助けられたからな……」

「それは良かったです。それで、私に何の御用ですか?」

「王都の人間を代表してのお礼と、アンタの貸し一つを全面的に受け入れると陛下が判断したのでそれを伝えにだ」

「なるほど……」


 ミミは少し考え込むと、顔を上げた。


「では、その貸しの一部を使ってまず私達が王都に入れる様にして下さい」

「は?」

「聴こえませんでしたか? 私達が王都で滞在出来る様に取り計らって下さいと言いました」

「待て待て! お前の言う私達とは誰の事だ!?」

「常闇ウサギである私、リッチである主様、ホーリードラゴンであるキーリ様、ヘルスロナートであるツィード様、フェンリルであるルガルド様、プラントヴァンパイアであるセレナ様、最後に人間であるレナ様を入れた七名です」


 ヴァイスはその言葉に頭を抱えてしまったのだが、何とか言葉を絞り出す……。


「――陛下には間違い無く伝えよう。だが、許可が出る保証は出来ないぞ?」

「はい、それで構いません」

「分かった……」

「許可がどれくらいで出るか分かりますか?」

「少なくとも一ヶ月以上は掛かるだろう。報告は、ティザークに伝えておけば良いか?」

「はい、それで構いません」


 ミミの回答を聞いたボウテンホークは、更に数日間シャンティナに泊まった後王都へと出発した。

 その道中では、彼が頭を抱える姿が度々目撃されたとか何とか――。


バレバレでしたけど、あの黒ウサギはミミでした。


後、フラワードラゴン狩りをお花摘みと言っていたミミでした。

一応伏線と言えば伏線だったんですけど、この繋がりを予想していた人が居れば凄いと思います。


この話を期にストーリー部分も動き出す予定です。

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