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閑話―姦しメイド

今回は閑話です。

北ヴィルトヘルトのリエル・グランスの屋敷に居たメイド達のお話になります。


「ふぅ……」

「あ、もう掃除終わったの?」

「うん、もう今日の分は終わりかな」

「じゃあ、休憩室行こうよ!」


 此処は北ヴィルトヘルトにある、リエル・グランス様のお屋敷。

 最初来た時は何の冗談かと思う様なシミがあちこちにあって怖かったけど、慣れてくるとただの模様にしか見えなくなるから不思議だよねぇ。


 今は、今日の分の掃除が一段落したところ。

 このお屋敷広いから、一日じゃ終わらないんだよ……。


「終わったー!」

「お疲れー!」


 休憩室に声を上げながら入ると、先に休んでいた先輩達が労ってくれた。

 この屋敷には執事も下男とかも居ないから、今居るのは私を含めて全員メイドの女の子だけ。

 出会いが無いって嘆く先輩もいるけど、この部屋の中に男性が居たらそれはそれで寛げないと思うんだよね。


「新人ちゃん、もう慣れた?」

「そうだね。大体はこなせるようになったかなぁ……?」


 先輩に対して敬語を使ってないのは、先輩も同年代の女の子だと言う事と先輩自身が敬語は要らないと言った事が大きい。

 まぁ、尤もこの館には大人のメイドは居ないんだけどね……。


「それは重畳だね。あ、そう言えば皆ラヴァン様にはもう会った?」

「ううん、まだ会えてないかな」

「あ、私は会えたよ! 超格好良かった!!」

「あ、良いなぁ! 私も会ってみたい!!」


 この頃の話題は、(もっぱ)らラヴァン様とサリア様に集中していた。

 久しぶりのお客様なのだから、それも当たり前だよね。


 お二方の中でも、特にラヴァン様は注目の的だった。

 あの方は南の第一王子と言う事もさることながら、その美貌も合わさって私達メイドの間で話題にならない筈が無かった。


「ふふーん! 良いでしょ! し、か、も! 手を握られちゃったんだよ!」


 先輩の一人が、ラヴァン様に手を握られた事を自慢していた。

 それを、私を含めた他のメイド達で羨んだ。


 そもそも、この屋敷には男性がセゥアル様しか居なかった。

 だから、ラヴァン様が初めてのマトモな男性なのである。

 それどころか、目の保養になりそうな見た目は私達を夢中にさせた。


 南の第一王子って事に眉をひそめる娘も居たけど、戦争の事をまともに記憶して無い私は南だからって理由で人を分類する事は無いなぁ。

 勿論、北と南が仲が悪いってのは知ってるけどね。


「ラヴァン様って、サリア様と恋人なのかしらね?」

「サリア様と? でもあのお二人って、恋人と言うよりも姉弟に近い気がするよ?」

「あ、やっぱり? じゃあ、リエル様とはどうかな?」

「え? リエル様は、セゥアル様の事が好きなんじゃないの?」

「うーん、それはどうなんだろう?」


 セゥアル様とリエル様は仲が良い。

 喧嘩するほど仲が良いって言葉を聞くけど、あれはお二人の為にある様な言葉だと思った覚えがある。

 でも、どちらかと言うと兄妹の仲の良さな気がするんだよね。


「それに、セゥアル様の好みのタイプはリエル様を含めてこの屋敷に一人も居ないよね?」

「あぁ……、確かに……」

「それねぇ……」


 セゥアル様は酒癖も悪いけど、女癖もかなり悪い。

 良く色街に遊びに行くのを見掛けるし、この前なんて凄い色気を垂れ流してるお姉さんと腕を組んでる所を見ちゃったしなぁ……。


「え、そうなの?」


 殆ど同期で入って来た子が、セゥアル様の事について疑問を呈して来た。

 まだ、セゥアル様の事について知らなかったのかな?


「うん、セゥアル様の女性のタイプは私達とは真逆の大人の女性だからね。あ、もしかするとサリア様とかタイプじゃないかな?」

「あ、分かる~。サリア様、普段鎧しか着けてないから分からないけど、かなりスタイル良いよねー!」

「じゃ、じゃあ、セゥアル様の愛人狙いは私だと厳しいのかなぁ……?」

「あれ? 貴女、セゥアル様の愛人狙いだつたの?」

「うん……」


 少ししょんぼりした様子で、さっきの同期の子が質問をしていた。


 セゥアル様の愛人ねぇ……?

 まあ、確かに地位は最高だし、腕っ節も伊達じゃない。

 その愛人ともなれば、将来は安泰だとは思うよ。

 でもねぇ……。


「セゥアル様は無いよねぇ?」

「だよねぇ」

「絶対無いかな」

「何で!? セゥアル様、格好良いじゃない!!」


 そんな風に皆で言い合っていたら、さっきの子が有り得ない事を言い出した。


「「「え……?」」」

「有り得ないって顔しないで!!」


 いや、実際有り得ないし……。


「いや、でもあのセゥアル様だよ?」

「いっつもだらし無い格好だし……」

「いっつも無精髭だし……」

「デリカシーも無いし……」

「酒癖悪いし……」

「女の人にもだらし無いし……」

「で、でもでも、剣を持った時のセゥアル様、とっても格好良いよ!?」

「「「それは、確かに……」」」


 セゥアル様は、毎日欠かさず鍛錬を行っているわ。

 でもその時の顔付きは、いつものだらし無い姿とは別人なのよねぇ……。

 正直格好良いと思った事が、一度も無いと言えば嘘になる。

 特にリエル様との模擬戦なんて、見惚れちゃうくらいだし……。


「でもねぇ……」

「うん、ちょっとねぇ……」

「無いよねぇ……」


 それを上回る程に、駄目な部分が多いのよねぇ……。


「この前なんか、私トイレ覗かれたし……」

「あ、あたしも着替覗かれた!」

「私はお風呂……」


 私も私もと、被害が数多く出て来た。

 それに続けて、先輩の一人が憤慨しながら喋りだした。


「その上、土端の石ころを見たみたいに、あ、悪いって言って顔色一つ変えずに出てくのよ!? 有り得なくない!?」


 因みにこの事は定期的に発生している。

 彼は酒を飲んだ後や、朝起きた後などにトイレなどと間違えて、別の扉を開く事があるのだ。

 そして、間違えた事に気付くと、適当に謝ってそのまま本来の扉の方へと向かうのである。

 そのすぐ後に悲鳴が上がる為、館の皆はあぁまた誰かが犠牲になったなと言う感想を抱く様になっていた。


 更にセゥアルは館に居る全員を女性として認識してないらしく、全く顔色を変えないのが彼女等が更に不満を抱く一助になっているらしい……。


「うぅ……、私まだ覗かれて無い……」

「いやいや、それが普通だよ? 私とか、覗かれ無いように態々セゥアル様の部屋から遠いトイレとか使うし」

「私もそうすれば良かった……」


 愛人になりたいって子が何故か落ち込んで居たが、どう考えてもあれは避けた方が良い被害だと思う。

 そんな事を考えていると、彼女に質問をする一人の先輩が居た。


「ねぇ、貴女はどうしてセゥアル様の愛人になりたいと思ったの? そう思うようになった、理由があるんでしょ?」


 あぁ、それは確かに気になるかも……。

 正直、セゥアル様の剣を握っている姿に惚れたとしても、その後の行動ですぐに醒めると思うんだよね。

 でも未だに良く見えてるなら、それ相応の何かがある筈……。


「私はここに来る前は、父親と二人で暮らしていたの。でも、村の中でだと生活も厳しくて……。それで、此処へは移住の為に来たのよ」

「「「うんうん、それで?」」」


 良くある話だよね。生活が苦しくて街へと出て来るのは。

 母親か父親が幼い頃に亡くなってるのも良くある話。

 村での生活って、色々と厳しいからなぁ……。


「ただ道中で運悪く、魔物に会っちゃって……。その時に、父親は殺されちゃったの……」


 同僚の子が悲しそうな顔をしる。

 良くあるとは言えないけど、彼女が言った事は私達の全員が似たような経験していた。

 盗賊に両親を殺された。魔物に両親を殺された。病で両親を亡くした。捨て子で両親は分からない。


 事情の差異はあれど、私達は全員両親が居ない孤児だ。

 多分、リエル様がそういう子達を集めたんだと思う。

 あの方は優しいから……。


「それで私も殺されると思った時に颯爽と現れて、格好良く助けてくれたのがセゥアル様なの! その後セゥアル様は苦もなく魔物を倒すと、泣きじゃくる私を抱き締めながら間に合わなくてゴメンって言ってくれたのよ!!」

「「「あぁ………」」」


 なるほど、そこでセゥアル様に助けられたちゃったのかぁ……。

 しかも、セゥアル様には一切非が無い筈の父親の事まで謝ってくれて……。


 多分だけど彼女は、その時なんでもっと早く助けてくれなかったんだってセゥアル様に問い詰めたんじゃないかな?

 それでも、怒る事無く謝りながら抱き締めて慰めてくれたと……。


 いつものセゥアル様からは、想像も出来ない真摯な対応だよね。

 それは確かに、私でも惚れるかも……。


 彼女はその後に延々と、とっても格好良くて優しいセゥアル様の事――彼女にはそう見えてるらしい――を嬉しそうに話し続けてくれた。


 それを見ていた私達は、アイコンタクトで確認を取る。

 うん、皆同じ気持ちみたいだね。

 それを確認した後に、先輩の一人が代表して彼女に話し掛けた。


「ねぇ、ちょっと良いかな?」

「えっと、どうしたの……?」

「私達が、貴女の恋路を応援してあげるよ」

「えっ……?」


 彼女は混乱している様だけど、私達の心は決まってる。

 と言うか、セゥアル様の事をあんなに幸せそうに話すのを見て、何もしないとか有り得ないし!


「「「そうそう、私達に任せて!」」」


 こうして私達の戦いは、切って落とされた。

 目標は、セゥアル様の愛人に彼女を据える事。

 出来れば正妻とかだとなお良いんだけど、彼女の年齢とセゥアル様の好みから考えるとそれは少し厳しい……。

 だけどセゥアル様の女性へのだらしなさを(かんが)みれば、歳の離れた彼女一人くらい()じ込めそうな気がするんだよね。


 待ってて下さいね、セゥアル様!

 私達、絶対に逃しませんから!!


 ◇ ◇ ◇


「うぉっ!?」

「ん? どうした、おっちゃん?」

「い、いや……、何か突然寒気が……」

「どうせ、また誰かの恨みでも買ったんだろ……」

「おい待て! 何で恨み限定なんだよ!」

「…………」

「おい! 何とか言えよ!!」

「何とか」

「ちがーう!!」


 その後、時々セゥアルが寒気を訴える事か増えたらしいが、別に特に問題も無いので館の全員から流される事となったらしい――。


女性が三人寄れば姦しいとは良く言いますが、本編で一度も喋ってないチビっ子メイドも裏では結構姦しいです。

セゥアルについては……、まぁ、どうしようもない感じですね……。

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