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花火大会と言う名の祭り

「リリアン様、今回は僕の花火を見たいと言って頂き有難う御座います! ささやかでは御座いますが、出店も皆で出したので宜しければ寄って行って下さい!! それでは、第一回花火大会を開催します!!」


 カケルの開催宣言を皮切りに、子供達は各屋台へと散って行った。

 そんな中、キーリがルガルドへと近付いて行く。


「あ、あの、ルガルド!」

「ん? どうした、キーリ?」

「わ、私と一緒に屋台を回らないか?」

「誘ってくれるのは嬉しいが、俺にはリリアン様の護衛と言う役割が……」


 キーリがルガルドの事を誘おうとするが、ルガルドは護衛を理由に断られてしまう。

 だが、それに待ったを掛けたのは護衛される張本人だった。


「あら、良いじゃない」

「リリアン様!?」

「そもそも私を何から守るのよ? 此処に、私の命を脅かす存在なんて居ないわよ?」

「で、ですが……!」

「ふぅ、仕方無いわね……。ルガルド!」

「は、はい!」

「リリアン・ディロスの名の下に命じます! 今日は私の警護は無し! キーリと花火大会を楽しみなさい!! これは、お願いでは無く命令です!!」

「リリアン様……。――承知致しました」

「あ、あの、リリアン様……」

「キーリ、貴女も楽しんでね?」

「は、はい……!!」


 リリアンはそう言って、キーリに向かってウインクした。

 どうやら、リリアンにはキーリの思惑がバレているようだ。


 浴衣姿のルガルドとキーリがその場を立ち去ると、リリアンの目の前にセレナが出て来た。


「リリアン様、お気遣いして貰って有難う御座います!」

「あら、何の事かしら?」

「いえ、何でもありません。それより今日は、私がお供しますね!!」

「はい、お願いしますね」


 浴衣姿の二人の美女は連れ立って、何かを話しながら近くの屋台へと移動して行く。


「じゃあ、ワイもそろそろ行くで! ミノちゃんと、ピヨちゃんが待ってるさかい」


 そう言ってツィードが向かったのは、会場の中央にある巨大な(やぐら)だ。

 そこには、櫓の大きさに負けない大きさの太鼓が三つ置かれていた。

 但し、大きさはかなり違い、一番大きな太鼓からすると、一番小さな太鼓は十分の一くらいしか無かった。


「「ツィード様!!」」

「二人共、遅くなって済まんかったな」

「いえ、とんでもありません!」

「そうですよ。私達が無理を言って参加したんですから!」


 そう、今回の祭りにはミノタウロス一族とコカトリス一族も何人か参加していた。

 とは言え、大き過ぎて細い事には向かない為、全員が広場の櫓を囲っていたが……。


 そして、ミノちゃんとピヨちゃんの二人は、ツィードと一緒に和太鼓を叩く事にしたのだ。

 つまり、大きさの違う太鼓とは彼女達とツィードの物である。

 なお、ミノちゃんとピヨちゃん、更にはツィードも浴衣姿だったりする。


 ミノちゃんは二足歩行の牛のデフォルメで、ピヨちゃんはヒヨコのデフォルメが可愛らしく描かれている。

 ツィードの浴衣も、デフォルメされた猫蜘蛛描かれていた。


 ツィードが中央に、その左右にミノちゃんとピヨちゃんが並ぶと、和太鼓をリズムに合わせて叩き始めた。

 ミノちゃんは手で持ち、ピヨちゃんは嘴で、ツィードは前足に糸で括り付けて……。


 彼等に合わせて、周りのミノタウロスとコカトリスが踊り出す。

 その和太鼓と踊りは、まるで日本の祭りを彷彿とさせる光景だった。



 残ったカケルとミミは何時も通りに、打ち上げ会場へと向かう。

 当たり前の様に二人共浴衣である。


 カケルの浴衣は黒をベースに様々な花火が書かれたデザインで、綺麗に纏まった一品である。但し、骨が着込んでいる為魅力が失われていた。

 一方のミミは白をベースに、デフォルメされた黒ウサギが散りばめられたデザインだ。

 ウサギがウサギデザインの浴衣を着ていると言う事で、周りからは非常に可愛らしく見えているだろう。

 そんな浴衣を来たミミの姿はまるで、某森の家族のようである。


「ねぇ、ミミ」

「何ですか主様?」

「最初の打ち上げの時の事覚えてる?」

「勿論です。主様大泣きしてましたもんね?」

「そ、それは忘れてよ……!」

「冗談ですよ。それで、打ち上げがどうしましたか?」

「もう……。あのね――」


 カケルはあの時の事を振り返りながら、自分の気持を思い出していた。


 僕はさ、あの打ち上げの時、自分の気持ちが分からなかったんだ。

 ミミが指摘してくれて、初めて分かったんだよ?

 やっぱり、前世での打ち上げの事を気にしてたんだなって……。


 ミミを抱き締めて泣いちゃったのは恥ずかしいけど、あれで気持ちがスッキリしたのも事実なんだ。

 その気持ちは僕にとってとても大切で、多分僕のこの世界に来た原点なんだと思う。


 だがらね……。


「ありがとう」

「何がですか?」

「何でも無いよ。ただ感謝したくなっただけ!」


 そう言ってカケルは、軽く走り出した。


「変な主様ですね」


 そう言いながら、ミミはカケルの後を追い掛けて行った――。



「リリアン様、リリアン様! 輪投げ! 輪投げやってみましょうよ!!」

「あれの事かしら? 輪投げって言うの?」


 セレナの浴衣は淡い茶色をベースに、草花が生い茂ったデザインだ。

 若草色の髪と中々にマッチしており、彼女の魅力を引き立たせていた。


 一方のリリアンの浴衣は、まさかのキャラクター物だった。

 ベースは薄いピンクで、その中に可愛らしくアレンジされた三頭身のリリアンが様々なポーズで描かれている。

 もしリリアンへの宗教色が強い場所にこれで行ったら、袋叩きにされそうな感じである。


「はい! フェアリーちゃーん! 私とリリアン様で輪投げするよー」

「セレナお姉ちゃんとリリアンお姉ちゃん輪投げするの?」

「はい、そうですよ」


 リリアンの事をお姉ちゃん呼ばわりする暴挙に出たライトフェアリーの事を、リリアンは怒る事無く優しく撫でていた。

 それを見ていた、もうニ人のライトフェアリーが前に出て来る。

 勿論三人共、小さいながらも浴衣姿である。


「えへへ~」

「もう! 仕事しないと駄目じゃない! リリアン様、これをどうぞ」

「ありがとう」

「セレナお姉ちゃんもどうぞ~!」

「ありがとね」


 輪投げの輪は二人とも三つずつだ。

 二人は輪を持ったまま、輪投げのターゲットを見る。


「えーと、あの景品に輪が引っ掛かれば良いのかしら?」

「はい、そうですよ。私がお手本を見せますね」


 そう言ってセレナは、輪を投げる位置へと移動する。

 因みに輪投げや射的の景品だが、リリアンが見て回るとの事で、女性物のアクセサリーや小物類が大半を占めている。


 セレナはその中で、ミミが作ったウサギ型の髪留めを狙う。

 この髪留めは白いウサギの形をしていて、非常に可愛らしくデフォルメされていた。

 そんなウサギの目はやや赤くなっており、フワフワした毛まで可愛らしく表現されていた。


「やぁ!」


 セレナの掛け声と共に投げられた輪は、見事白ウサギの髪留めに――は入らず、その横のコスモスの形を模した髪留めへと掛かった。


「セレナお姉ちゃん、おめでとう! 大成功だね!!」

「うん……、ありがとう……」

「はい! これ、景品!」


 そう言ってライトフェアリーは、コスモスの髪留めをセレナへと渡した。


「なるほど、そうやるのですね」


 セレナの輪投げを見ていたリリアンは、セレナと同じ様に輪投げを投げる。

 すると、リリアンの輪は先程の白ウサギの髪留めへと入った。


「うわぁ! リリアンお姉ちゃんも凄いね! また景品取っちゃった!」

「ありがとうね」

「はい、これ景品だよ!!」


 ライトフェアリーはそう言って、白ウサギの髪留めをリリアンへと渡した。

 その後の二投は、二人共気が抜けたのか台から逸れてしまいハズレとなった。


「また来てねー!!」


 そんな声と共に、セレナとリリアンは輪投げ屋を後にした。


「どうしたのセレナ? 景品が当たったのに嬉しくなさそうね?」

「すいません。このコスモスの髪留め、実は私が作った物でして……」

「まぁ、そうだったの?」

「はい……」


 自分で作った景品を、貰って嬉しい人はそうは居ないだろう。

 セレナもその例に漏れず、あまり嬉しそうにはしていなかった。


「でしたら、私のウサギと交換して下さるかしら?」

「え? でも、悪いですよ……」


 この二つ、見た目こそクオリティの差は殆ど無いのだが、そこには圧倒的な差が存在している。

 実はどちらも魔道具の一種で、装備するだけである効果が発揮されるのである。

 コスモスの髪留めの効果は、僅かに自然治癒の速度を上げる――凡そ五パーセント増し――と言う物。

 一方のウサギの髪留めの効果は、身に着けている者の速度を凡そ五割引き上げるぶっ壊れ性能だ。

 方向性は違えど、そこには明確な差があり、対等な交換が出来る代物ではなかった。


 セレナはその事を、丁寧にリリアンに伝えたのだが――。


「良いのよ。私がそっちのお花の方が欲しかっただけなのよ」

「ですが……」


 そうセレナは断ろうとしているが、チラチラとウサギの髪留めの方へ視線が向かっていた。


「ほら、やっぱり欲しいんじゃない。はい、交換ね!」

「あっ……」


 そう言ってリリアンは、セレナの髪留めと自分の髪留めを素早く交換してしまった。

 そして――。


「どう? 似合うかしら?」


 すぐにコスモスの髪留めを、自分の前髪へと着けたのだった。

 正直リリアンの出すオーラが凄すぎて、コスモスの髪留めが少し浮いていた。

 尤もそれは首から上の事に関してのみであり、全体を入れるとコスモスよりも浴衣が浮いていた。


 コスモスがリリアンと釣り合っていない事に気付いたセレナは、申し訳なさそうにしながらリリアンに再度の交換を持ち掛けようとする。


「やっぱり、コチラに……」

「もう。いつまでも言ってないの!!」

「あっ……」


 リリアンはセレナが差し出そうとしていたウサギの髪留めを、素早く手から奪って彼女の前髪へと着ける。


「セレナ、可愛いですよ!」

「そんな! リリアン様の方が余程綺麗です!!」

「ありがとう! セレナ、じゃあ次に行きましょうか!!」


 そう言ってリリアンは、セレナに腕を絡ませるとやや強引に次の屋台へと進み出した。


「ちょっ! リリアン様!?」

「早く行くわよ! こんな面白そうな事は久し振りです! 楽しまないと損でしょう?」

「分かりましたから、腕を離して下さい!!」

「あら、良いじゃない! 女の子同士なんだから」

「そう言う事じゃなくてですね……!」

「ほら、行きますよ!!」

「リリアン様ぁ……!」


 そんな情けない声を上げながら、セレナはリリアンに引っ張られて行った。

 その後ろ姿は、仲の良い親友の様でリリアンが心から楽しんでる事が分かる物だった。



 さて、一方のキーリとルガルドのグループだが……。


「リリアン様、大丈夫だろうか……?」

「心配無いだろ。此処にあの方をどうこう出来る存在など居ないぞ?」

「そうは言うがなキーリ。リリアン様の御心が傷付いたりしたら……」

「セレナが付いてて、そんな思いさせる訳無いだろう?」

「それはそうだが……」


 ルガルドがリリアンへの、過剰な心配をしていて、気が気でないと言う感じだった……。


『はぁ……。少しくらい私の事を、考えてくれても良いではないか……』


 そんな事を思っていたキーリの浴衣は、淡い蒼をベースにデフォルメされた白銀のドラゴンが描かれたデザインだった。

 そのドラゴンはコケティッシュで可愛らしく、普段の彼女とのギャップが凄かった。


 一方のルガルドの浴衣は、同じく淡い蒼をベースに白銀の狼がデフォルメされて描かれている。

 その浴衣の可愛らしさは、彼の剣呑な雰囲気とは絶望的に合っていない。

 ただ、彼自身がそれを気にする事は無く、どうでも良い様だった。


「何か言ったか?」

「何でも無い!」

「何を怒っている?」

「怒ってなどいない!!」

「だが、事実大声を出してるではないか?」

「それはお前が……!」

「俺が……?」

「くっ……」


 ルガルドのせいで少し険悪なムードになりそうだったところに、遠慮がちに声が掛けられた。


「あ、あのぅ……。そこの格好良いお兄さんと、綺麗なお姉さん。射的をやって行きませんか……?」

「「ん……?」」


 二人が振り向いた先には、レナが浴衣姿で店番をしていた。

 レナの浴衣は全身ピンク色である。

 具体的にはかなり淡いピンクをベースに、ピンクのハートマークが至る所に書かれていた。


「おい、小娘! 射的とはなんだ?」

「ひっ……」

「こら、ルガルド!! レナを恫喝するな!」

「いや……、恫喝してるつもりは……」

「つもりは無くても、怯えさせてるのは事実だろ? 済まんなレナ」

「い、いえ……」

「それで、射的の事について説明してくれるか?」

「は、はい」


 レナはおっかなびっくりしながら、射的の説明を行う。

 とは言え、その説明はミミとカケルの受け売りだ。

 此処で言う射的とは、コルク栓を空気圧だけで飛ばす銃のオモチャによる的当てゲームである。

 的は景品で線の外から的を撃ち、それを落としす事が出来ればゲット出来ると言う良くあるルールだ。

 そんな事を少しビクビクしながら、レナは二人に伝えた。


「なるほど。これで的を撃つのか」

「はい。玉は一人五発となります」

「よし、なら先ずは私がやってみよう。ルガルドもそれで構わないか?」

「ああ、別に構わない」 


 ルガルドの答えを聞いたキーリは、コルク栓を銃身に込めて的を狙う。

 キーリが狙うのは、ミミ特製の宝石をあしらったお洒落なブレスレットだ。

 落とせる様に、衝立で不安定にはしてある物の、的が小さく当て難い高難易度である。

 キーリは的に対して、真っ直ぐに銃を構える。


「当たれ!」


 そう言って、引き金を引くがコルクは的の上を通過しただけだった。

 その次も、またその次も、そのまた次も……。

 結局全部の玉は的を()れて、ただの一発も当たる事は無かった……。


「どうしてだ!? 真っ直ぐ狙った筈なのに!!」

「えーと……」

「そう言う事か」

「ルガルド何か分かったのか?」

「あぁ、それを貸してみろ。あれが欲しいのんだな?」

「あ、あぁ……」


 ルガルドはそう言って、キーリから受け取った銃にコルクを詰めてを構えると、何の気概もなく引き金を引いた。

 すると、飛び出したコルクは的の中央、つまりはブレスレットの穴を通過して衝立を大きく揺らした。

 だが、倒れる迄には至らなかった。


「あぁ……、惜しいです……」

「なるほど、予想通りだな」


 ルガルドはそう呟くと、再び的を撃った。

 次の玉も同じ様な場所に当たり、先程と同じ事が起こる筈だった。


「先程と同じですかね……」

「とは、限らんぞ?」

「え?」


 ルガルドは衝立が一番不安定な状態の時に、再び的を撃ったのである。

 すると、体制が崩れた所への一撃は相殺出来なかったらしく、ブレスレットは衝立と一緒に下に引いてあるマットの上へと落ちた。


「お、お見事です!! これが景品です!!」

「あぁ。ほらキーリ、これが欲しかったのだろ?」

「あ、あぁ……」


 キーリはルガルドが渡して来たブレスレットを、戸惑いながら受け取る。

 だが、受け取った後は欲しかった物が手に入った高揚感から、ウキウキしながら左手首にブレスレットを装着した。


 因みにこのブレスレット。単なる飾りな訳がなく、毒や精神攻撃を完全に無効化する優れ物である。

 尤も、キーリが持っている場合に於いては、殆どの場合で単なるブレスレットと変わらないが……。


 そんなブレスレットを装着したキーリは、左手首をルガルドに見せながら口を開いた。


「ありがとうルガルド! すっごく嬉しい!!」

「っ……!」

「わぁ……」


 それはキーリには珍しく満面の笑みで、キーリの顔を見慣れてる筈のレナも暫く見惚れてしまった程であった。

 そして、ルガルドはと言うと……。


「べ、別に気にするな。お前が喜んでくれたならそれで良い」


 そんな事を、顔をほんの少し赤くしてぶっきらぼうに返したのだった。



 打って変わって、カケルとミミはと言うと……。


「よし、そろそろかな……?」

「そうですね。そろそろ頃合いだと思います」


 リリアンに祭りを楽しむ時間を十分に与えれたと思ったカケルは、いよいよ今夜のメインディッシュである花火の打ち上げを開始する事にした。

 既に準備万端の為、火を点けるだけで打ち上げ可能だ。


「じゃあ、打ち上げ開始の合図をしよっか! 打ち上げ開始したら、ミミもサポートお願いね」


 カケルはそう言うと、手前に設置してあった打ち上げ花火に点火した。 


 打ち上がった花火は小さな音を立てながら空へと登って行き、少し小さめな音を立てながら夜空に花を咲かせた。

 そして、同じ様に時間をずらして計三発を打ち上げると、一旦終了したのだった。


「よし、合図完了!」

「では、やりますか?」

「うん! 最初の打ち上げとは段違いになってる事を、皆に見せ付けてやるんだから!!」


 そこから始まったのは、最初の打ち上げとは一線を画する夜空に咲き乱れる花々だった。



「綺麗……」

「はい、綺麗ですね……」


 リリアンとセレナが見上げる上空には、菊、牡丹、向日葵、紫陽花(あじさい)秋桜(コスモス)などの花々が夜空を埋め尽くしていた。

 それは(さなが)ら、夜空の庭園と言ったところか。

 これだけの花火を打ち上げれば、煙が充満して然るべきなのだが、カケルの花火は煙が一切花々の邪魔をしなかった。



「綺麗だな……」

「あぁ、そうだな……」


 キーリとルガルドが見上げると、そこには光のアートがあった。

 相対する東洋の龍と西洋の龍。そして、川と渓谷を模した背景。


 それらを、カケルは花火で表現していた。

 それは、輝明が最も得意とした絵画の花火に近かった。

 勿論まだまだ甘い箇所はあるが、今までのカケルでは絶対出来なかった花火である。



「綺麗やなぁ……」

「そうですわね……」

「これが、花火……」


 ツィード達三人は、太鼓を叩く事も忘れて花火に見入っていた。

 夜空に咲く大輪の花と、大気を震わせる炸裂音。

 それは何故か安らぎを(もたら)し、ただただ観客を魅せる。

 それは魔物も人間も関係無く、知性のある全てを魅了した。



「綺麗です……。これが死神様の、私の師匠の花火……」


 言葉から想像していた遥か上を行く様な、余りにも綺麗な光景……。

 レナはそんな光景に魅了されていた。

 自分の上空に咲く花々と、周囲から聞こえてくる感嘆の声。

 それらは独特な雰囲気を作り出し、先程までの祭りの雰囲気とはまるで違う光景を見せた。


 レナは思う。

 こんな綺麗な物を作れたら、嬉しいだろうなと。

 それは彼女が初めて、花火師を目指す事となる出来事だった。



「よしっ! そろそろフィナーレ行くよ!!」

「いつでもどうぞ」


 カケルとミミは合図をしながら、最後の筒へと二人で点火を行う。

 その筒の数は凡そ百。


 ほぼ同時に打ち上がった花火は、夜空を黄金色に染め上げる。

 それは終わりの花火であると同時に、カケルにとっての始まりの花火だ。

 その花火の名は、錦冠菊(にしきかむろぎく)と言った……。


「主様、綺麗ですね……」

「うん……。やっぱりこの花火は格別だよね……」


 そうして黄金(こがね)色の冠菊(かむろぎく)は名残惜しそうに、ゆっくりと消えて行った。


「よし、リリアン様に会いに行こうか」

「はい」


 カケル達は片付けもそのままに、リリアンの元へと向かう。


 向った先には、既にカケル達以外が集まっていた。

 恐らく予め、あの花火が締めであると言ったからであろう。


「リリアン様、今日の花火大会は如何だったでしょうか?」

「ええ、とても楽しかったですよ! また、誘って下さい!!」

「楽しんで下さったようで、ホッとしました!」


 カケルはリリアンから視線を外し、全員を見渡すと最後に閉会宣言を行う。


「それでは、これにて第一回花火祭りは閉幕とします!!」


 セレナと会った時の打ち上げをテストと呼ぶのであれば、今回はまさしく花火大会と呼べる物。

 屋台などもあり、少し花火の量が少なかったかも知れないが、花火職人がカケルだけであれば上々であった――。


 ◇ ◇ ◇


 第一回花火大会が終わった後、リリアンはちょくちょく聖域に遊びに来る様になった。

 彼女が一番楽しみにしているのは、ライトフェアリー達との触れ合いである。

 彼等はリリアンが神様だろうと関係無しに突っ込んで行くので、彼女にとっても癒やしになっているらしい。

 リリアンが来れば、勿論ルガルドも着いて来るのだが、彼は子供が苦手らしくライトフェアリー達に殆ど近付く事は無い。

 たまにライトフェアリー達の方から突撃されると、あっという間に逃げ出すくらいだ。


 そんな事が暫く経った頃、カケルに対して珍しくルガルドから話し掛ける事があった。


「珍しいね。ルガルドから話し掛けて来るなんて」

「まぁな……」

「それで、どうしたの?」

「お前に感謝を伝えておこうと思ってな」

「感謝?」

「あぁ。カケルのお陰で、リリアン様に笑顔が戻ったからな。だから、ありがとな?」


 そのお礼を言われて、カケルびっくりしていた。

 そもそもルガルドはリリアン以外への、気遣いがまるで出来ていない。

 暴言の嵐だし、脅しも多い。

 そんなチンピラの様な存在がお礼を言ったら、カケルも驚くと言う物である。


「う、うん……。どういたしまして……」

「何だよその顔は?」

「い、いやぁ……、ルガルドがお礼を言うなんて明日は嵐かなぁと」

「ふん! 言ってろ!」


 なお今日は初めてのお泊りだそうで、リリアンが嬉しそうにライトフェアリー達に話していた。

 そのすぐ隣には、セレナとキーリの昔馴染みが居る。

 それだけではなく、ルガルドにとっては新しく知り合ったツィードやミミ、レナと言ったメンバーがリリアンとも楽しそうに話していた。


 ルガルドは、そんな光景を見ながら思う。

 リリアンに、笑顔が戻って本当に良かったと。


「カケルちゃん! ルガルドちゃん! 何してるの! こっちで、お話ししましょうよ!」

「呼ばれているね。――僕等も行こうか」

「ああ」


 そして皆の元へと向かいながら、こんな日常も悪く無い。

 そんな事を思う、ルガルドであった――。

テレレッテレー! カケルのヒロイン力がアップした。


こんな感じの話でしたでしたね。 え? 違う?


真面目にやると、久々に恋愛要素的な何かが入ってきた回でした。

今回でリリアンとルガルドの初登場の回は終了です。


次からは、二章のラストに向かってノンストップで進んで行くと思います。

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