表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/112

北の宰相

そう言えば、最初に不定期投稿と言いながら、なんだかんだで周一で投稿出来てますね。

気付いたら、一年以上定期的に投稿出来てますからね。


もう少し速度を上げたい気もしますが、執筆に取れる時間を考えると丁度良いくらいなんですよね。

と言う事で、これからも周一ペースは乱さずに投稿出来ればと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

 あれから更に幾つかの村を経由しながらも、ラヴァン達は北の中心部へと辿り着いていた。

 北の中心部は単にセントラルと呼ばれる都市で、凝固な石造りの城壁で囲まれている。都市の大きさ自体はそこまで大きくは無く、シャンティナの大きさの半分以下である。

 だがその周りを囲う城壁は余りにも異様で、高さがシャンティナの二倍はありそうであった。


 そんな都市の門にて、ラヴァン達は足止めを喰らっていた。


「だから! この方は南の第一王子で、私は護衛なんですって!!」

「その、王子様が何しに来たんだ? 単騎で北を滅ぼしにでも来たのか?」

「ですから! それは話せないんです!!」

「こっちも事情を聞かずに、お前達みたいな怪しい奴を入れる訳には行かねえんだよ」


 さっきから同じ様な質問が繰り返されていた。

 ラヴァンからすれば、ここのトップと直接話したい。門番からすれば南の王子を理由も聞かずに入れるなんてとんでもないと行った具合だ。

 両者一歩も引かずにドローになりそうである。

 そんな問答をしている時に、街の中からだらし無い格好をした無精ひげの男が出て来た。


「おーい、どうしたんだ?」

「セゥアル様!!」

「セゥアル様?」


 ラヴァンは不躾に、セゥアルと呼ばれた男を見る。どう見ても、様付けされるような男には見えない。

 服装はヨレヨレになったシャツと、汚れてたり穴が開いたりするズボンを履いている。不潔に見える無精ひげを蓄え、目には覇気が感じられない。

 髪はこの地域では珍しい黒髪で、やや癖があるのか短いはずの髪の毛があちこち飛び跳ねている。

 良く観察すると、見た目ほど年は取っていないようなのだが、無精ひげやだらしない格好からかなり年上に見える。まるで、そこら辺の飲み屋で呑んだくれている酔払いのようだ。


 ……いや、ようだでは無いらしい。ラヴァンに近づくと、セゥアルから酒精の匂いが漂って来る。

 どうやら真っ昼間から呑んでいたらしい……。


「んー? 兄ちゃん達が報告に挙がっていた南の王子様とやらなのか? うーん、確かにそれっぽいかもなぁ」


 セゥアルはラヴァンをしげしげと見ながら、独り言を行った。


「無礼者!! お前は……」

「待て! 報告に私達が挙がったと言ったな? それはどう言う意味だ?」

「そのままの意味さ。俺が、この都市のナンバーツーのセゥアル。そうさな、お前らに合わせるなら役職は宰相ってとこだな」


 このだらし無いセゥアルと言う男は、宰相レベルに偉い人物だったらしい。

 見た目は酷いが、頭の方が優秀な人物なのだろう。多分……。

 まあ、何はともあれトップに近い者と会えたのはラヴァンにとっても望ましい結果だ。残念な見た目の人物だとしても……。


 王家の紋章等からラヴァンが南の第一王子だと証明された後、セゥアルに連れられてラヴァンとサリアは酒場の個室に招かれていた。


「何故、酒場なのだ……」

「そりゃ勿論、飲みながら話すからに決まってるだろ?」


 セゥアルは当たり前の様に言うが、ラヴァンにとっては頭が痛い。

 戦争を回避しようと勇んで来れば、何故酒場で酒盛りになるのだろうか?


「まぁまぁ、そんな(しか)めっ面してると隣の彼女さんに嫌われんぞ?」

「なっ!? わ、私は殿下とそんな関係では……」

「そうだぞセゥアル殿。サリアは私の恋人では無い」


 セゥアルの言葉に、サリアは顔を真っ赤にさせて否定する。それに続いて、ラヴァンもキッパリと否定した。


『そんなにキッパリと否定しなくても……』

「サリア何か言ったか?」

「何でもありません!!」

「何を怒っているのだ?」

「怒ってません!!」

「あはははは! お前達は面白いなぁ。良い(さかな)になりそうだわ! 良いぞ、もっとやれ!!」


 ラヴァンとサリアが夫婦漫才のような事をしているのを見て、セゥアルが楽しそうに笑う。

 自分で仕掛けておいて、彼等を肴にするらしい……。やはり既に酔っ払っているのだろう。


 それから暫くの間くだらないやり取りを挟んだ後、不意に先程とは打って変わりからセゥアルが真剣な顔になった。


「それで、王子様よぅ。俺達に何の用だ?」

「――南が隣国に戦争を仕掛ける」

「いつもの事だな」

「ああ、だが今回は何かが違う。行動しなければ取り返しのつかない事になる。そう感じられるんだ」

「それは確証があるのか?」

「無い。ただの勘だ。だが、俺は自分の勘を信じただけだ」

「ふーん。それでアンタは俺達に何をして欲しいんだ?」

「戦争を止めて欲しい」

「ハッ! これは驚いた! 言うに事欠いて、俺達に戦争を止めろだ? 止めたきゃ自分達で何とかしろよ! なあ、王子様……?」


 ラヴァンのお願いを(あざけ)る様に一笑に付すと、やや怒りを滲ませながらセゥアルはその願いを断った。


「貴様……!」

「良い! セゥアル殿の言う通りだ。本来ならば南だけで片付けなければならない問題なのだ」

「しかし……!」


 ラヴァンはサリアを何とか抑え込むと、再びセゥアルへと向き合った。


「セゥアル殿の言は確かに正しい。だが、今回はそれで諦める訳にも行かないのでな」

「ほう? ならどうする? 俺を力づくで従わせるか」


 セゥアルがやや剣呑な雰囲気を漂わせながら、ラヴァンに尋ねる。


「いや、それでは意味が無い。だから、頼む! この通りだ!」


 ラヴァンは立ち上がると机を挟んだセゥアルに対して、勢い良く頭を下げた。


「殿下!?」

「へぇ……?」

「北の人間が南の人間を嫌っているのは理解出来る。だが、今回はそれを考慮している余裕がないのだ。だから頼む! 私に力を貸してくれ!」

「――良いだろう」

「本当か!?」

「だが、お前が力を貸すに足る人物か見極めさせて貰おうか?」


 そう言ってセゥアルはニヤッと笑った。


 セゥアルはラヴァン達を引き連れて酒場をそのまま後にすると、街の広場へとやって来た。

 広場の中心へと進むと、セゥアルはラヴァンに向き合う。


「抜け」

「え?」


 そう言いながらセゥアルは、腰にあった剣を抜いた。


「剣を抜けと言ったんだ。それとも、その腰にある物は飾りか?」

「貴様っ……!」


 今にもサリアが斬りかかりそうだが、それを抑えてラヴァンが前に出る。


「それがお前の言う見極めの方法か?」

「ああ」

「分かった」

「殿下!?」

「サリア、下がっていろ!」

「……分かりました。ご武運を」


 サリアが渋々広場の中心から外へと出ると、セゥアルが大声で周りに訴え始めた。


「さぁさぁお立会い! 俺はこの街のナンバーツーのセゥアルだ!! 今から目の前の奴との一騎打ちをするぞ!? 見たい奴は足を止めろ!! 見たくない奴等は広場から離れろ!」


 セゥアルが剣を抜いた時からそこそこ周りに人が集まっていたのだが、先程のセゥアルが叫びと同時に更に周囲に集まり始めた。


「さて、この俺の相手は……? なんと、南ヴィルトヘルトの王子様だ!!!」

「「なっ……?」」


 その一言を言った瞬間、周りからの殺気が重さ持ってラヴァン達を襲う。

 それだけで、どれだけ南が嫌われているかが分かると言う物だ。


「おい貴様!! いきなり何をしてくれる!!」

「何って、ステージを整えただけだが?」

「何だと!?」

「今から王子様には、この殺気で満ちた広場で俺と戦って貰う。おい、お前達!! 今からやるのは一騎打ちだ!! 口を出しても良いし、どれだけ睨んでも良い。だが、絶対に手を出すな!! もし手を出せば、俺が手を出した奴を殺す!」

「なっ……」


 ステージの説明をすると、セゥアルは周りに対して軽く牽制した。

 だが、その説明の結果殺気は濃度を増し、ラヴァンに対して死ねと口に出して罵る人達も出て来た。


「死ねや!!」「セゥアル様、そんな奴殺して下さい!!」「お前達のせいで……」「死ね! 死ね!! 死ね!!!」


 そして、固まっているサリアは無視して、セゥアルは死ねや殺せやの大コールの中ラヴァンへと話し掛ける。


「よう、待たせたな。じゃあ後は戦おうか?」

「…………」


 ラヴァンは黙って剣を抜く。

 そして、セゥアルへと構えると……。


「構えたな? じゃあ行くぜ!?」


 そう言ったセゥアルが、先程まで酒を呑んだくれていた様な素振りを感じさせない速度でラヴァンへと打ち込んで来た。


 ラヴァンはその速度に一瞬目を見開くが、打ち下ろしの剣に対して斜めに剣を掲げる事でそれを防いだ。


「へえ、そこそこやるみたいだな?」

「お前は一体……」

「その質問は直に分かるだろうぜ?」


 そう言ってセゥアルは、ラヴァンへの攻撃回数を増やし始めた。



「死ね!! このクソ王子!!」「死ね晒せ!! お前達なんか生きてる価値ねぇんだよ!!!」「お前のせいで、私達がどれだけ苦しんだと思っているの!?」


 一方のサリアは、聞くに耐えない罵倒をラヴァンへと浴びせられるのを止める事が出来ないでいた。

 何回かは止めようとしたのだが、その度に住人達から射抜くような冷酷な目に怖くなって萎縮してしまっていたのである。

 サリアはラヴァンお付きの近衛兵ではあるが、戦闘経験豊富な屈強な戦士と言う訳では無く、彼女自身もそれなりの地位を持つ貴族の子女なのだ。

 それ故にマトモな対人戦は殆ど無く、強烈な殺気の前で足が竦んでしまっていたのである。


『殿下……。申し訳ございません……』


 そこらの女子のように怖がる自分が情けなくて、さりとてそれを打ち破るような勇気も出なくて、彼女は小声でラヴァンに懺悔をしていた。



「ほら、ほらどうした! 動きが鈍くなってるんじゃないか?」

「くっ……」


 ラヴァンは実戦経験こそ無いが、優秀な剣士の才能を持っていた。

 それを幼い頃から鍛えられ、屈強な騎士の相手をしながら学んだ事で並の相手ならば取るに足らない筈だった。


「ほれ、次は左から行くぞ?」


 なのに今は、セゥアルからの(もたら)されるヒントのお陰で、何とか防いでいるような状況だ。


「はぁ!!」

「お? 良い攻撃も出せるじゃねえか!!」


 セゥアルの一瞬の隙を突いて反撃を行うが、セゥアルはそれを軽々と後方へのステップで避けた。


「はぁはぁ……」

「何だ? 息が上がってるじゃねえか? お前の覚悟ってのはそんなもんか?」


 確かにセゥアルとの戦闘は、そこまでの時間が経っている訳では無い。

 だが、周りからの殺気に晒されながら戦うと言うのは、想像以上に消耗してしまうのだ。

 何より彼は今まで、これ程の悪意に晒された事が無かった。

 その為、消耗の度合いはかなり高かった。


「黙れ! 私はまだ戦える……」

「良いね。そうでなくちゃな!!」


 だが、ラヴァンは立ち上がる。

 そして、剣を構えるとセゥアルへと斬り掛かる。


「よっと……」

「クソッ!」

「おいおい、殿下がそんな言葉遣いして良いのかよ?」


 ラヴァンは苛立ちから言葉遣いが荒れて来る。

 何回打ち込んでも、一向に当たる気配が無いのだ。

 それをからかうようにセゥアルが言うが、ラヴァンには軽く返す余裕がない。

 それから暫く打ち合いをしていると、ラヴァンの体力が限界に近くなって来たのか膝を付く動作が多くなって来ている。


「そろそろ限界だな」

「まだだ……」

「気概は素晴らしいがな、アンタも限界だって分かっているだろ?」

「まだだと言っている……!」

「仕方ねえなぁ……」


 セゥアルはそう呟くと、ラヴァンへと前程の比では速度で近付いた。


「なっ!?」

「遅い!」


 セゥアルは剣を捨てると、ラヴァンの懐に入り込み、腕を掴んで一本背負いの要領で投げ飛ばした。

 ラヴァンはやられた事の無い攻撃に、受け身を取る事が出来ず、そのまま地面へと叩きつけられてしまう。


「がはっ……」


 叩きつけられたラヴァンは、呻き声と一緒に空気を吐き出してしまった。

 そして、その首にセゥアルの剣が添えられる。


「俺の勝ちで良いな?」

「――あぁ。私の負けだ……」


 前程までの攻防と違って、手も足も出なかったのだから仕方無いだろう。


「殿下……!」


 勝敗が決したラヴァンの元へと、サリアが飛んでくる。

 そして、それとほぼ同時に周りから歓声が鳴り響いた。

 だが、それは暫くする殺せコールへと変化する。先程よりも力強く、まるで殺すのが当然だとでも言いたげな様相だった。


「殿下は私が命を賭けても守ります。ですから……」

「その必要はねえな! おらてめえ等! コイツ等の命は俺の物だ! 俺が決める! それでも文句がある奴は前に出て来い!!」


 サリアが決死の覚悟でラヴァンを守ろうとしていたのを遮り、セゥアルは周りに対して怒号を発した。

 その言葉の意味を理解した民衆は、段々と声を小さくして行き、最後には殺せコールは鳴り止んでいった。

 だが、言葉が鳴り止んで行くのと反比例して殺気がラヴァン達へと向けられる。

 そして民衆の目が如実(にょじつ)に彼等の気持ちを代弁していた。即ち死ねと……。


「さてと、文句がある奴は居ねえみたいだな?」


 コレだけ不満タラタラの民衆に向かって、セゥアルは確認する様に話し掛けた。

 それでも直接セゥアルに申し出る者は居なかった為、セゥアルはラヴァン達を立たせて広場を後にした。

 濃厚な殺気の充満した広場を……。


と言う訳で新キャラです。

だらしない格好+無精ひげのセゥアルの登場です。

一応ポジションは宰相レベルで、北においては相当な権力者に値します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ