閑話―ウサギの末妹
今回はうーちゃんの話です。
うーちゃんのヴェッツェーニアの呼び方を変更しました。
うーちゃんの朝は早い。大体ニの刻には目が醒める。
うーちゃんはヴェッツェーニアと同じ部屋で寝起きしており、朝起きるとヴェッツェーニアを置いたまま一階へと降りていく。
「あら、うーちゃんおはよう」
「きゅい!」
下に降りると、ニアお姉様のお母様が挨拶してきました。
この方はわたくしよりも余程早く起きて来ます。
今の所、彼女よりも早く起きれた事はありません。
わたくしはそんな彼女に挨拶すると、朝の日課に取り掛かる為に裏庭へと移動します。
裏庭にある井戸横のボタンを押して、水を出すと顔と身体を綺麗に洗います。
このボタンはわたくしの為に取り付けて頂いた物で、わたくしでも魔力を流せばボタンを押すだけで使える優れ物です。
わたくしの為だけに作って頂いてしまって申し訳ないのですが、非常に助かっているのも事実です。この恩も返さなければと、この井戸を使う度に思います。
汚れを軽く落としたら、いつもの様に勉強を始めます。
ここに来た頃は、文字の勉強や計算の勉強をしていました。それは、お姉様が商人の娘だからです。
ヴォルデルク兄様に教えて頂きながら、商人に必要な知識は一通り身に付けました。
その知識が、今後お姉様の役に立つようにと思って……。
確かに今は冒険者に現を抜かしてますが、人種の女性は家庭に入る物だと学びました。ですから、お姉様もゆくゆくは商人の妻になると思っています。
ですが、今回の事で身に沁みました。
お姉様が家庭に入ると言う意見は変わりませんが、今のままではその前にお姉様が死んでしまいます!
ですからわたくしは、ニアお姉様を守れる様になりたいのです!
それに今回わたくしは、非常に大きな失敗をしてしまいました。あのキーリ様に楯突いたのです。
あれは野生の勘が鈍っていたとしか言えません。でなければ、キーリ様に楯突くなんて絶対に出来ませんから……。
あの方は駄目です……。わたくしとは格が違います。
オーガなら運が良ければ勝てるかも知れませんが、あの方と戦ったら絶対に勝てません。恐らく瞬殺されるでしょう。もしかしたら、死んだ事すら自覚出来ないかも知れません……。
キーリ様レベルとは言いませんが、せめてあのオーガを屠れるくらいの力が欲しいです。
だから今日も勉強するのです。あの時の様な状況になった時に、わたくしのご主人様であり姉様でもあるニアお姉様を守る為に――。
「きゅい!!!!!」
◇ ◇ ◇
「おはよう母さん」
「あら、ヴォル君おはよう」
「ねぇ母さん。あの子はまたかい?」
「そうね。まただわ」
ヴォルデルクは下の階に降りてくると、母親に挨拶をした。
そして、続けて母親の視線の先の窓の外を見ながら問い掛ける。
彼の視線の先には、裏庭で魔術の練習をしているうーちゃんが居た。
前にニアが外に出た時から、なんか変なんだよなぁ……。
そもそもうーちゃんは、ニアが拾って来た紅ウサギの子供だった。
その子は何かに襲われたらしく、大怪我を負っていて今にも死にそうな様相だった。
そんな紅ウサギをニアが、一生懸命看病していたのを覚えている。
正直僕は紅ウサギが死ぬと思っていた。何故なら、普通では回復出来る様な怪我では無かったからだ。
だけどニアはそれを、普通では無いやり方で成し遂げた。
確か看病を始めて五日目の夜だったけな?
紅ウサギは日に日に弱って行き、その日は本来なら紅ウサギの命日になる筈だった。それくらい弱っていたのだ。
◇ ◇ ◇
「ウサギちゃん! がんばって……」
「きゅぅ……」
「ニア……」
ニアは目に涙を浮かべながら、紅ウサギを励ましていた。でも、紅ウサギは誰の目から見ても限界だった。もってあと数刻……。そんな風に僕には見えていた。
「ヤダよ! ウサちゃん、げんきになったらボクとあそんでよ……。そうやくそくしたじゃんか……」
紅ウサギとの約束……。子供の他愛無い約束だ。
ニアが拾って来たその日に紅ウサギに話しかけて、紅ウサギが丁度いいタイミングで鳴いただけの事。
けして約束なんかではなく、ただの思い込み。その筈だった……。
「ウサちゃん……。うーうん……。きみのなまえはうーちゃん、ボクのいもうとだよ……。だから……、だからずっとそばにいてよ! うーちゃん!!!!」
何が起きたかあの時は分からなかった。
何が起こったか知った今でも、ニアが名付けに成功した事が信じられない。
ニアが紅ウサギの事を名前で呼びながら思いの丈をぶちまけると、紅ウサギが眩い光に包まれた。
それと同時にニアが倒れた。
当時僕達は最初ニアが看病に力を入れ過ぎて、睡眠時間とかが足りてないから倒れたのだと思った。
もしかしたら体力の低下が病気を引き起こした可能性もあると踏んだ僕達は、すぐさまニアを医者の元へと運んだ。
だけど、そこで告げられたのは原因不明と言う事と、ニアの生命力が著しく低下していてもしかするともしかするかもと言う話だった。
その後も何軒か回ってみたのだが、診断の結果は全て一緒で僕達は家に帰ってくるしかなかった。
ニアを部屋に寝かせてから、暫く経つが彼女が目覚める気配は無い……。
「なんでだよ……。なんでニアがこんな目に遭わなけりゃいけねえんだ!!」
「あなた……」
父さんが荒れている。宥める母さんも憔悴していた。かくいう僕も疲れ果てていた。
「ねぇ……」
「何だっ!」
「ニアが倒れたのって、紅ウサギが光った後だったよね?」
「それがどうした!!」
「怒鳴らないでよ……。例えばだけど、ニアがあのウサギを助けようとして魔術やスキルが発動した可能性は無いかな?」
ニアの紅ウサギへの入れ込みようは凄まじかった。ならば、無理な魔術やスキルが発動して彼女に負担を掛けた事も有り得るのでは無いだろうか?
「俺達はウサギの獣人族だぞ? 治癒系の魔術もスキルも使えないだろうが!」
「確かにそうだけど……」
「――なら、一度ウサちゃんを見に行きましょ?」
「母さん!?」
「このままじゃ埒が明かないのは確かだわ。もしその可能性が高い事が分かれば、ニアを連れて行くのは医者じゃなくて魔術師の専門家の所よ?」
結局父さんはニアの側を離れないとの事だったので、僕と母さんだけで紅ウサギを寝かせてある客間へと向かう。
客間の扉を開けて、紅ウサギへと目を向ける。
「あれ? ねえ、このウサギこんな色だったっけ?」
「そう言われると、何か違和感があるわね」
よく観察する為に、僕は紅ウサギに掛けてあった毛布を捲った。
すると僕の目にある箇所が飛び込んで来た。
「母さん! これ見てよ!!」
「まあ! これは、どう言う事かしら……?」
元々紅ウサギの身体はズタズタで、深い切り傷なんかも多くあった。
だから、当て布を身体に巻いてあったのだが、一部何かの拍子にズレたのか身体が露出している部分があった。
問題はその身体の方だ。露出した身体の部分は確かに、深い切り傷があった筈なのだが、今見ると当て布は血で赤く染まっているのに身体の方に傷が見当たらないのだ。
「やっぱりニアのあれは治癒行為だったのかな?」
「どうかしら? ここを見て」
母さんに言われた箇所に目を向ける。
「ここがどうしたの? 確かに傷は治ってるけど、それ以外に何かあるの?」
「傷は治癒だとしても、何で血が付いてないのかしら?」
「あ……」
確かにそうだ! 治癒系の魔術は傷は塞ぐけど、それ以外は変わらない筈だ。前に見た治癒魔術は確かにそうだった。
なのに、紅ウサギの傷があった筈の場所には、綺麗な体毛が生えているだけだった。
じゃあ、この状態は一体……?
そんな風にヴォルデルク達が悩んでいると、紅ウサギが身動ぎをした。
「――きゅい?」
目を覚ました紅ウサギは、部屋の中を見回して何かを探しているようだった。
「何を探しているんだ?」
「きゅい? きゅい、きゅい!」
何かを伝えようとしているみたいだが、生憎と僕等はウサギ語を話せる訳では無い。
それを紅ウサギも分かったのか、少し気落ちした様に顔を落とす。だが、少し経った後に鼻をヒクヒクさせ始めた。
寝かせてあったベッドから飛び降りると、扉の側まで近付き扉を軽く前足で叩き始めた。
「なんだ? 外に出たいのか?」
「きゅい!」
僕がそう問うと、紅ウサギは言葉を理解したかのように首を縦に降った。
紅ウサギって、こんなに賢かったっけ?
いや、偶然だろうな。
そう結論付けながらも、扉を開けてやる。
「ヴォル君? 良いの?」
「まぁ良くはないかな。もし逃げられたら、ニアが怒るだろうからね」
そう苦笑しながら、母さんに返答する。
だが、そんな悩みを無視するかの様に、紅ウサギは鼻をヒクヒクさせながらも逃げようとする気配は無かった。
匂いを嗅いでいるのか? 何の?
「きゅい!」
「あ、待て!」
「待って!」
紅ウサギは何かを見付けたかと思うと、いきなり廊下を走り出した。
何処へ行くんだ?
紅ウサギは時折僕達が付いて来ている事を、確認するかの様に後ろを振り返りながら速度の調整をしている。
「何処へ行くんだ?」
「きゅい!!」
おい、そっちの方向は……。
紅ウサギはある扉の前に立つと、先程と同じように扉を軽く叩き始めた。
「何だお前達……。ノックなんかして……」
その音をノックと勘違いした父さんが、扉を内側へと開ける。
「きゅい!!!」
そのスキを逃さず紅ウサギは、ニアの居るベッドへと突撃する。
が、その途中で父さんに首根っこ摘まれて捕まってしまった。
「きゅ、きゅい!?」
捕まった紅ウサギは、ジタバタと暴れていた。
「おい! なんでコイツが此処に居る!?」
「理由は分からないけど、怪我が治ってたんだよ。それで、起きたら外に出たがって付いて来たら此処まで来たんだ」
「何だと!?」
父さんは紅ウサギを見下ろすと、少しの間考え込んだ。
「お前……」
「きゅい?」
父さんは言葉を掛けながら、自分の顔の前へと紅ウサギを持って来る。
そして父さんが言葉を発すると、紅ウサギが首を傾げた。
「お前のせいでニアは死にそうになっているのか?」
「きゅいっ!?」
その表情を表すなら絶句だろうか?
紅ウサギが父さんの言葉に唖然とした後、紅ウサギに変化が起こる。
「お、お前……。泣いているのか……?」
「きゅ……」
紅ウサギの瞳からは涙が溢れ、ポタポタと床を濡らしていた。
それを見た父さんは、呆気に取られてしまっているようだ。
紅ウサギは一度目を閉じると、一呼吸置いて再び目を開いた。その瞳からは先程とは違う何かが感じ取れる。
「きゅ、きゅい!!」
「あ、こら!」
父さんは涙の件で掴む力が弱まっていたらしく、紅ウサギは難なく父さんの手から離れるとニアの枕元へと飛び乗った。
「おい、ウサギ! てめえ!!」
父さんは怒ったように声を上げるが、紅ウサギの行動の方が速かった。
「きゅい!!」
紅ウサギがそんな声を上げると、ニアが炎に包まれたのだ。
「や、止めろー!!!」
「ニアちゃん!!」
それを見るなり、僕はニアの元へと走り出した。
ぬかった……。あのウサギは魔物なんだ。外に出すべきじゃなかった……。
「てめえっ!!」
隣では父さんがウサギを捕まえていた。
それが視界に入りつつも、僕は無視してニアの炎を手で消そうとする。
でも、炎は一向に消えない。
いやちょっと待て、おかしいぞ……?
「熱くない?」
「「え?」」
僕の疑問に、隣りに居た二人から声が漏れる。
「いや、この炎全然熱くないんだ。それに、ベッドに燃え移る気配が無い?」
「そう言われれば確かにおかしいな」
「本当ね……」
これが本当の炎だったら、この部屋は既に火の海になっていてもおかしくない。
なのに火の海になるどころか、ベッドにすら引火していないと言うのはどう言う事だ?
それに、ニアに対しても火傷が出来る気配も無い……。
僕が頭を悩ませていると、父さんから呟くような声が聞こえた。
「もしかして……」
「父さん、何か知ってるの?」
「ああ、いや……。確証がある訳じゃ無いんだが、世界の何処かに活力の炎ってのがあるらしいんだ」
父さんの話を纏めるとこうだ。
炎には幾つかの種類があり、その内の一つが普段僕等が使っている物で、それ以外にも活力の炎や癒やしの炎ってのがあるらしい。
活力の炎や癒やしの炎は、見た目は物を燃やす炎に見えるのだが、実際は全くの別物で物を燃やす力は無いらしいのだ。
活力の炎は体力を回復させる効果を持ち、癒やしの炎は傷を治癒させるのだと言う。
紅ウサギが出した炎は通常の炎では無く、特殊な炎のどれかと言う事だ。その種類までは分からないが……。
それを聞いた僕達は、ニアの身体をチェックする。
すると……。
「さっきよりも、ニアの鼓動がしっかりしてる?」
胸に耳を当てた際に聞こえる鼓動の音が、先程までは今にも止まりそうで怖かったのだが、今聞こえてくる鼓動はかなり確りとしており、少なくとも止まりそうだと言う恐怖は感じない。
「本当だな……」
「本当ね。これはウサちゃんがやってくれたの?」
母さんはニアの胸から耳を退けると、紅ウサギにそう訪ねた。
「きゅい!」
すると、その通りと言いたげに声を上げると胸を張った。尤も、父さんに摘まれて居た為格好はつかなかったが……。
「そう、ありがとね。あなた、ウサちゃんを離してあげて」
「だがな……」
「あなたもニアが回復してるのを確認したでしょう?」
「分かったよ……。おい、ウサ公! てめえ、ニアに何かしたらただじゃ置かねえからな!?」
「きゅう!!」
父さんが紅ウサギに顔を近付けて脅しているが、紅ウサギは心外だとばかりに手足をジタバタさせていた。
その後、父さんもしぶしぶ納得したのか紅ウサギは地面へと降ろされた。
ってかさっきから観察してると、どう考えてもこっちの言葉を理解してるよなこのウサギ……。
紅ウサギって、こんなに頭が良い種族だったっけ?
その後は少し歪みながらも、三人と一匹でニアの看病を続けた。
そして、明くる日の朝。僕等は全員疲れ切って、ニアの部屋で雑魚寝していた。
そんな中……。
グギュルルル……。
「何だ!? 何の音だ!?」
「獣の鳴き声か……?」
辺りに響き渡った音に驚いて目が覚めた。
すわ、敵襲か!? と言った感じだったが、母さんがそれを否定した。
「もう、違うわよ二人共。ねぇニアちゃん、もう起きてるんでしょ?」
そう、ベッドの上のニアに訪ねた。
「お、おはよう……。お腹空いた……」
すると、ニアが少し恥ずかしがりながらそう言った。
「ニア、もう大丈夫なのか!?」
「痛い所は? 痛い所は無いか!?」
「へ? うん、特に何とも無いけど……」
「「はぁ……、良かった……」」
男二人はニアの元気な姿を見ると、その場に崩れ落ちた。
「それで? ニアちゃんはどうして寝た振りなんかしてたのかな?」
「え? えーと、何か皆ボクの部屋に居るし、状況が把握出来なくて……。取り敢えず、皆が起きるまで待ってみようかなって……」
皆が一斉に溜息を吐く。事の重大さを全く理解していないのだから、溜息を吐きたくもなってくる。
その後、ニアに事の次第を説明すると、段々と彼女の顔が青くなってくる。
そして、全ての説明が終わると皆に対してごめんなさいと言った。
そんな話が一段落が付いたところで、紅ウサギがニアの顔へと飛び付く。
「きゅい! きゅい!!」
「うわぁ!? うーちゃん!?」
紅ウサギ……、いやうーちゃんの目からは涙が溢れており、うーちゃんの声からもとても嬉しがっているのが伝わって来る。
ニアが良くなった事が嬉しくて堪らないようだ。
そんなニアとうーちゃんのやり取りは、ニアのお腹が再び鳴き声を上げるまで続いたのだった。
◇ ◇ ◇
あの日うーちゃんは、僕達の家族になったんだ。
彼女はウサギの魔物とは思えない程に賢かった。
一度説明すれば寝所やトイレなどは直ぐに把握し、足が汚れたままにソファーやベッドに乗る事は無かった。
そして更に言葉を覚え始めたのだ。
言葉と言っても彼女は喋れないのだが、木の棒と土があれば器用に文字を書き始めたのである。
筆談での会話が可能になると、彼女は商人としの知識や技能を教えてくれと言って来た。
そして彼女は瞬く間に知識を吸収していき、商品の基礎知識から売買の代金計算、果てはお得意様の家の事情から税率の計算までと、商人に必要とされる知識や技能を全てマスターしてしまった。
両親もうーちゃんが本当の娘であれば、彼女に店を継がせたかったと言う程の優秀さである。
そんな頭が良いうーちゃんが、今は裏庭で魔術の練習をしている。
彼女は文武両道でも目指す気だろうか?
もし彼女が人種であったなら、今頃結婚の申し込みが殺到していただろう。
既にそんなレベルなのだが、何処まで優秀になるつもりなのだろうか?
正直その才能に嫉妬する。もし彼女が人種だったら、僕は今の様に接する事は出来なかったと思う。多分、敵愾心剝き出しで彼女と競ってる事になったと思う。
でも彼女は、僕がそんな事を考えているとは夢にも思ってないだろうね。
彼女は一途だ。その想いは、あの日からずっとニアに向けられている。
でもその分周りの気持ちには鈍感な気がする。多分、ニアしか見えてないからだと思う。
そもそも最初に彼女が商人の知識を学んだのは、ニアを隣でサポートする為だったらしいのだ。彼女はニアが何処かの商人と結婚し、何処かの商店を切り盛りする物だと思っていたそうだ。
いや、今でもそう思っているかも知れないが、その前に今のニアに必要な技能を身に着ける事にしたようだ。
それが今練習している魔術と言う訳だ。
まあニアの場合、今は冒険者に憧れてる訳だしな。そんなニアに付いていくには商人としての実力よりも、冒険者としての実力が欲しいと考えたのだろう。
「はぁ、だからってあれ以上優秀になられるとなぁ……」
「あら、うーちゃんが優秀になるのは嬉しくは無いの?」
「嬉しく無い訳じゃないんだけど、兄としては妹が優秀過ぎると威厳が保てないと言うかなんと言うか……」
「まぁ! うふふふ」
情けない話だが、僕はうーちゃんみたいな才能は無い。
と言うか、あの子は本当に火焔ウサギなのか?
ニアの名付けで進化した事は、あの事件の後に判明したけれど、進化先とされてる火焔ウサギの話を聞けば聞くほどうーちゃんと違いが明瞭になってくるのだ。本当は他の種族に進化してるんじゃないだろうか?
そんな僕の疑問を尻目に、うーちゃんは一心不乱に魔術の練習をしていた。
やれやれ……。そんな事はどうでもいいか。
あの子は僕の妹だ。なら、兄の僕は少しでも彼女の力にならないとな。
そう思ったヴォルデルクは、なけなしの魔術の知識を彼女に教える為に、裏庭へと足を向けたのだった――。
と言うわけで、ウサギの獣人一家の末妹である火焔ウサギのうーちゃんでした。
うーちゃんはIQがかなり高いです。ヴォルデルクは既に負け気味で、兄の威厳を保つのに四苦八苦しています。




