暗雲と嵐の前の静けさ
ほんの少しだけ胸糞&汚い表現があります。
後、今回の章のメインストーリー部分でもあります。
絢爛豪華だが、どこか廃れた様子の部屋に彼等は居た。
中央には豪華な円卓があり、五人の男女が座って居る。
「レイン、首尾はどうだ?」
「ヒッヒッヒ。もう少しで完了じゃよ」
レインと呼ばれた老女は愉快そうに笑いながら、尋ねてきた男にそう答えた。
ヨレヨレの茶色のローブに身を包んだ彼女は、捩れた木の杖を持ちながらフードの中から嗄れた声を響かせている。
「ねぇ、何でこんなババァが此処に居る訳!? しかも、名前がレイン? はんっ! 似合わねぇつうの!!」
「おや、小娘。お前の名前は確か……、何じゃったかのぅ?」
レインが居る事が気に食わないのか、まだ歳の若い女性がレインに食って掛かった。
その見目は麗しく、その若さには似合わない妖艶さをしていた。
着ている服も露出が激しく、娼館に出入りしていても違和感は無いだろう。
だが如何せん言葉遣いが酷かった。それだけレインが気に食わない証拠かも知れないが。
「私の名前はヤーテっだっつうの!!」
「そうじゃった、そうじゃった! それで、若さだけが取り柄の小娘が私に何の用じゃ?」
「――おい、クソババァ……。殺してやろうか?」
レインはそれをスルリと躱すと、歳の若い女性――ヤーテ――を挑発する。
「止めないか! 陛下の前だぞ!?」
「はっ……。すいません陛下、少し我を忘れていました」
「ヒッヒッヒ。済まないねぇ、スターク坊や」
「そうだな、もう少し抑えてくれ」
そんな言い合いに業を煮やしたのか、レインとヤーテに挟まれていた男性が待ったを掛けた。
彼はまるで聳えつ壁の様な大男で、この円卓でも一番幅を取っていた。
その体は服の上からも分かるような筋肉で覆われており、頭には見事に一本の髪の毛も見当たらなかった。
単に禿げていると言うよりは、スキンヘッドのようである。
彼に注意されたレインとヤーテは、円卓の上座に座って居る男に向かって頭を下げた。
レインにスタークと呼ばれた男は、構わないと言いながら静かに頷く。
彼こそ、この国の王であるスターク・ゼン・ヴィルトヘルトである。
髪は見事な金色で、首に掛からない程度まで伸びている。
歳の頃は、三十後半だろうか? やや長髪で見事な金色の髪を靡かせている、王の風格が漂う人物であった。
先程レインに声を掛けたのも、このスタークである。
「さてヤーテ、そちらはどうだ?」
「駄目ですね。悔しいですが、アタシを見ても何の感情も抱いていませんでした……」
「そうか……。ヤーテが取り入る事が出来れば楽だったんだが……」
「ヒッヒッヒ。お前の様な小便臭い小娘に、奴を籠絡出来るものかね?」
「何だと!? もういっぺん言ってみなさいよ!!」
「だから、よせと言っている……」
「けど、グレナン……」
レインとヤーテの相性は最悪だ。
そんな彼女達に挟まれた大男――グレナン――は、面倒臭そうにしながらも二人を止める。
「おや、グレナン坊や。お前さんはこの小娘の味方かえ?」
「レイン。味方も敵も無いだろう? 俺達は陛下の忠実な下僕なんだから」
「ねぇ、話が進まないよ? 僕、もう帰って良いかな?」
先程から全く発言して無かった男が、レインとヤーテ達の言い争いに口を挟む。
いや、男と言うよりも少年と言った方が良いだろうか?
先程のヤーテが歳若いなら、この少年は幼いとも言える様な見た目をしている。
窓から入ってくる日に照らされて、色素の薄い金色の短髪がキラキラと光っており、まるで何処かの貴族の子供のようだった。
そんな彼は、レインとヤーテの言い争いを冷めた目で見ながら、つまらなそうにしている。
「レヴィン、もう少し我慢しろ」
「でも陛下! 僕、もう飽きちゃったよ……」
「レヴィン! 貴方、陛下に対して何て口の効き方を……」
「良いヤーテ。レヴィン、そう言うお前の首尾は問題無いのか?」
「勿論! 既に部下を五人街に忍び込ませてあるし、いつでも始めれるよ!」
「それは重畳」
レヴィンの言葉にスタークは機嫌良さそうに頷いた。
そして、各位に指示を出し始めた。
「ヤーテ、お前は期限いっぱい籠絡を進めろ!」
「はい!」
「グレナン、お前は時期が来るまで待機だ。来るべき時まで鍛錬しておけ」
「分かりました」
「レヴィン、お前の所の人数は増員可能か?」
「うーん、他の所だったら楽なんだけど、あそこだと厳しいかも……」
「そうか。ならば、決行までくれぐれも見つからないようにしろ」
「了解ー」
「レイン、お前は早く例の準備を完了させろ」
「あいよ。全く、年寄りの扱いが酷いねぇ。ヒッヒッヒ……」
矢継ぎ早に指示を出したスタークは、最後の締め括りを言う。
「よし、レインの準備が整い次第決行する。各自決行に備えておけ!!」
「「「は!」」」
スタークの言葉を最後に、彼等は各々散って行った。
誰も居なくなり静かになった部屋は、まるでこれから起きる事を示すような嵐の前の静けさのであった――。
◇ ◇ ◇
少し廃れた街の酒屋で、朝から酒を飲んでる男が居た。
その男の頬は既に赤くなっており、十分に酩酊状態だと言えるような様相である。
「おい、姉ちゃん! エールもう一杯!!」
「おっちゃん! もう、それくらいにしておけって! ほら、もうフラフラじゃねえか!」
「なにをぅっ! 俺はまだ酔ってねえよ!! ――おっとと……」
そう言って立ち上がる男だったが、案の定立ち上がった瞬間にフラつき、椅子へと逆戻りしてしまった。
見ているだけでも危なっかしく、完全なる酔っ払いである。
「ほら、言わんこっちゃない。待ってな。今、水持って来てやるから」
そう言うと、酒場の娘は水を取りにカウンターの中へと入って行った。
その時、男の耳が周りの客の話を拾った。
「おい聞いたか!? 近い内に、また戦争を仕掛けるらしいぞ!!」
「あん? またかよ……。どうせ負けるんだから、止めりゃあ良いのによぅ……」
「そう思うだろ? ところがどっこい、今回は秘策があるらしいぜ?」
「秘策だぁ? 嘘臭えなぁ。その秘策ってのは、どんな内容なんだよ?」
「それは……。秘策だから、内容は知らねえけどよ……」
「ほら見ろ! どうせ、どっかから適当な情報拾って来たんだろ?」
「いやいや、本当だって!!」
その後は適当な言い分の繰り返しだったが、戦争・秘策などの重要なワードだけは男の耳に残った。
戦争ねぇ……。
今のこの国に、そんな余力があるとは思えねえんだが……。
しかも秘策と来たもんだ。嘘臭過ぎて反吐が出る。
とは言え、少し調べてみる必要はありそうだなよなぁ……。
あぁ、面倒くせぇなぁ……。
男がそんな事を考えていると、水を持ちに行った店員の娘が戻って来たらしい。
パタパタと音をさせながら寄って来た店員が、水のコップを男の目の前へと乱暴に置く。
「お待たせ、おっちゃん! ほら、水だよ!」
「だから、俺は酔ってねぇんだが……」
「酔っぱらいは誰でもそう言うんだよ! 取り敢えず飲んでおけ!」
店員の強い勧めによって、渋々水を口に含む男。
酔い云々は置いておいても喉は乾いていたらしく、一度飲み始めると最後まで男の喉は止まる事は無かった。
「毎度ありー!!」
元気な店員の声で送り出された男は、先程の行動を後悔していた。
はぁ……。マジかよ……。
水がエールの二倍とか、ボッタクリ過ぎだろ!?
あの水が無ければ、後二杯はエールが飲めたのに……。
男はそんな情けない事を後悔しつつも、頭を先程の情報へと切り替える。
戦争は毎度の事だとしても、今まで秘策の噂が出た事は無かったんだよな。
本物から出た噂か、はたまた誰かが故意に流してる可能性も否定出来ないか……。
こりゃ、確認するしかねえな……。
仕方無えなと呟きながら、男は喧騒の中へと溶け込んで行った――。
◇ ◇ ◇
「此処から、出して……」
暗い空間に、やや幼さを残す少年の声が響き渡る。
それと同時に、ジャラジャラと金属の擦れる音も聞こえてくる。
「家に返して……」
その声は弱々しく、悲痛に溢れた声だった。
その声は枯れてかけており、いつから声を発していたかは分からないが長い時間叫んでいたのが分かる声だった。
「僕は人間だよ……。人間なんだよ……。化物なんかじゃない……。化物なんかじゃ――」
だが声に応える者は此処には居ない。
「誰か助けて……。誰か……」
助けを求める声が虚しく響く。
「誰か僕を助けてよ……」
声の主は声を出す事に疲れたのか、悲痛な声は段々と小さくなってしまい、最後には静寂だけが辺りに残った――。
名前が一気に出てきて管理出来てるか不安です。
以下適当な人物纏めです。
なんかボロクソになってますけど、性格のとか要点は纏めれていると思います。
レイン:口が悪い老女
ヤーテ:頭が悪い痴女
グレナン:融通の利かないスキンヘッド
レヴィン:冷めた少年
スターク:この国の陛下




