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採掘と花火玉の製作

ついに、花火の材料の採掘と作成に入ります!

 皆にケーキを振る舞った日の深夜、カケルはいつもの訓練場で感慨に(ふけ)っていた。


「長かったなぁ……。あれから、二ヶ月か……」


 二ヶ月と言うと短く感じるが、カケルにとっては怒涛の日々だった。

 花火大会で死んでから、この世界に転生し、花火の材料集めと魔術を磨く日々。

 しかもこの間、一回も玉込をしていないのだ。カケルにとっては、我慢の日々とも言えよう。


「でも、やっと採取に行ける!」


 そう、ついに二回目の進化を終え、ワイトとなったカケルは採取場所に行ける条件を得たのだ。

 カケルとしては、本当なら今からでも行きたいところなのだが、今は深夜でありミミもキーリも眠っている為、採掘に行くのは明日の予定なのだ。


「硝石と硫黄は必須として、アルミニウムとかチタン辺りは欲しいよなぁ……」


 花火な色分けが無ければ、味気ない花火になってしまう。

 だから、焔色剤(えんしょくざい)の元となる金属の入手は悲願である。


「精製に関してはミミに丸投げかなぁ……。僕にそんな技術無いし、魔術にあるかも疑問だしねぇ。問題は、無料で請け負って貰えなかった場合の対価かな?」


 ミミが求める対価が何かは分からないが、カケルは無理な対価以外であれば大抵は払うと決めていた。

 何故なら、すぐそこに求めてやまない花火があるのだから……。


 そんな事を考えながら、カケルの夜は更けていく。

 そして翌日の早朝――。


「ミミ、キーリ、起きてる!?」

「――うーん、カケルか? まだ早いぞ?」

「主様、おはよう御座います」


 ミミは普段通りだが、キーリはまだ寝惚けているようだ。


「ミミ、おはよう! キーリ、もう日は昇ったから早くないよ!!」


 カケルはそう言うが、日が昇ったと言っても日の出レベルの話で、一刻半を少し回ったくらいだ。

 日本時間であれば、四時半くらいだろうか? 現代人は殆ど寝ている時間帯であろう。


「はぁ……、仕方ないな。それで、こんなに早くどうした?」

「鉱山に行こう!」

「は?」

「主様、それは硝石が取れる部屋の事ですか?」

「うん!」

「成る程。キーリ様、主様は鉱石が取れる部屋。奥にある変な色の洞窟に行きたいみたいです」

「変な色の洞窟……。ああっ! あの洞窟か!」


 ミミの説明で思い出したのか、キーリが声を上げる。


「それで、そこに行くのは可能ですか?」

「ああ、今のお前なら問題ないぞ?」

「本当!? じゃあ、直ぐに出発しよう!!」


 カケル達一行は樹海の部屋よりも更に奥にある、鉱石が採掘可能な部屋にやって来た。

 ここに居ないツィードはミノちゃんとピヨちゃんの為に、手料理を作っているらしいので別行動だ。


「何これ……?」

「何って、お前が行きたいって言っていた部屋だぞ?」

「実物を見ると、お腹が減ってきますね」


 カケルの目の前には、ミミが言っていた通りに変な色の……、いや気持ち悪い色の洞窟が広がっていた。

 部屋に入った後の道は一本で、所々に光る壁があるようだ。

 その道の先は見通せないような、曲がりくねった道が続いており、今までの部屋とは違い天井が低く圧迫感がある。


 何より一番目を引くのは、その色合いだ。

 部屋の入り口付近は、今までの洞窟とあまり変わらない。

 だが、途中から色が混ざり始めるのだ。

 その色を例えるなら、臓物色とでも言うのだろうか?

 白や赤とピンクの間の色合いで、心臓や腸等の色合いに近い。

 それだけならまだ、気持ち悪い色で済むだろう。しかしそれに合わせて、実際に壁が脈打って居るのだから堪らない。

 その空間を言い表すのであれば、巨大な生物の体内であるかのようだ。


 前にカケルはミミに、ダンジョンとは魔物の一種だと説明された事があった。続いてスライムやゴーレムに近い種だとも。

 だが、これを見る限り無機物系統では無いのではないかと思えてくる。

 そしてカケルがそれよりも気になっていたのは、ミミの零した呟きについてであった。


「ミミ、この色合いを見て美味しそうって……」

「何ですか? 主様がいけないのですよ? あんなに美味しいモツを食べさせるから」


 前に皆にカケルが作った、モツ煮込みの事だ。

 最初から手伝っていたミミはモツの本来の色合いを見ており、それと合わさってモツ煮込みの味がフラッシュバックしたのだとか……。


「まあ、確かにそう見れば美味しそうとも思えるのかもだけど……」


 尤もこれを見て美味しそうと思えるのが、極一部なのは確かだろうが……。


「っと、それよりもこの壁は安全なの?」

「ああ、不用意に傷付け無ければ大丈夫だ」

「傷付け無ければって事は、傷付けると何か起こるの?」

「ああ、不用意に傷付ければ強力な酸が滲み出してくるぞ」


 強力な酸、それはキーリが溶けるレベルの酸らしい。

 カケルは今まで、キーリが傷を作った所を見たことが無い。

 それは彼女の技術が卓越しており、敵の攻撃が当たらない事が一番の要因だ。


 だが、防御力が高いのも確かな事で、前にカケルは熊の形をした大きな魔物と出会った時に攻撃から庇われた経験があった。

 その時の攻撃は、人間なら明らかに致命傷レベルだったのだが、彼女は傷一つ付いていなかったのだ。


 そんなキーリが溶けるとなれば生半可な酸な訳もなく、カケルであれば完全に溶けてしまうかも知れない。


「それは……、気を付けるよ……。それはそうと、こんな場所に鉱石なんか埋まってるの?」


 カケルには、どう見ても有機体の洞窟に鉱石が埋まってるとは思えなかった。

 しかも攻撃したら、酸が出るような場所でだ。


「いや、埋まっては居ないぞ?」

「え? じゃあ、どうして此処に来たの?」

「主様、それですが――」


 ミミとキーリの説明によれば、カケルが欲している鉱石はそもそも地中や壁の中にある訳では無いらしい。

 この道を進んだ先に、積み上がっているのだとか……。

 ダンジョンが消化仕切れずに残った物が、鉱石として残すのだとか何とか。


 それって、排――。いや、考えないでおこう……。


「何かそう聞くと汚い気がするけど、衛生上の問題とかは無いの?」

「――主様、あの壁を見てダンジョンが有機物だと思うのは仕方ありませんが、あの壁は無機物ですよ?」

「――嘘でしょ?」


 あの壁が無機物? 無い無い。どう見てもホルモンにしか見えないのに。


「触ってみれば分かりますよ?」

「触ればねぇ……」


 そうミミに言われたカケルは、壁を軽く触ってみた。


「何これ! 硬い!?」


 カケルが触れた壁は、その見た目に反して岩のような硬い触感を返した。

 今も壁が脈打ってるのに、何故硬いのかがカケルにはさっぱり分からなかった。


「見た目は美味しそうですが、実際は食べられた物じゃないですからね」

「まあ、食いたいとは思わんなぁ」


 無機物を食べる魔物も居るが、キーリ達は少なくとも有機物派である。

 そんな会話をするキーリ達を傍目に、カケルはこの壁の素材を考えていたのだが――。


「うん。考えても仕方なさそうだね!」


 カケルは、どちらにしても壁自体を採取出来る訳でも無いので、考えた所で対して意味がないと思考放棄した。


「それで、さっき言ってた鉱石ってどのくらい先なの?」

「そうだな……。一刻程で着くと思うぞ?」

「結構掛かるね……。じゃあ、早速進もうか!」


 カケル達一行は、気持ち悪い壁の通路を進んでいく。

 なお、床も硬いのに波打っていて、気持ち悪かった事を明記しておく。



「やっと着いた……」

「ああ、着いたな」

「結構量がありますね」


 ミミが言う通り、鉱石はかなりの量があった。

 だが問題は……。


「どの鉱石が何を含んでいるか全然分からない……」

「主様、そういう時の鑑定ですよ」

「ああ、そっか!」


 カケルは未だに、鑑定の癖が付いていなかった。


「”鑑定”!」


種類:鉱石

品質:最高品質

状態:鉄90%、銅5%、亜鉛1%、マンガン1%、ニッケル1%、銀1%、その他1%

説明:鉱石の中でも鉄鉱石と呼ばれる物。

 鉱石の中でも尤も一般的な物で、採取可能な場所はかなり多い。


 鉄鉱石……。外れかな。


「”鑑定”!」


種類:鉱石

品質:高品質

状態:銅70%、鉄25%、マンガン1%、ニッケル1%、金1%、銀1%、その他1%

説明:鉱石の中でも銅鉱石と呼ばれる物。

 鉱石の中では割りと良く見られる物で、採取可能な場所は多い。


 銅鉱石、次!


「”鑑定”!」


種類:鉱石

品質:高品質

状態:銀73%、鉄20%、銅2%、プラチナ1%、金1%、その他1%

説明:鉱石の中でも銀鉱石と呼ばれる物。

 鉱石の中では珍しい部類で、採取可能な場所は少ない。


 銀鉱石、次!


「”鑑定”!」


種類:金属

品質:最高品質

状態:金100%

説明:金属の中で金と呼ばれる物。

 比重が重く、経年変化をしにくいのが特徴。


 金か……。


「って純金!? 大きすぎじゃない!?」


 そこにあったのは、形は岩のようだが、キラキラと輝く金その物だった。

 しかも鑑定によると、不純物が全く無いのだから驚きである。


「ミミ、ダンジョンってこんなのも取れるの?」

「金ですか? はい、取れますよ。他にも希少価値の高い宝石や、オリハルコンやアダマンタイトと言った金属なんかも取れますね」

「ダンジョンって儲かりそうだね……」


 こんな大きさの純金などが手に入るのであれば、ダンジョン攻略でかなりのお金が手に入るのでは無いだろうか?


「これらは、ダンジョンが行う撒き餌ですね。特に人間に向けた撒き餌になります。誘い出した人間を、罠に嵌めたり魔物で殺して栄養するらしいですよ? 尤も、このダンジョンでは撒き餌の役割は果たしていませんが……」


 前言撤回。物騒すぎる……。

 やはり街には、一攫千金が合い言葉の冒険者とかが居るのだろうか?


「とりあえず、金は確保しておこうか。人間の街に行った際にお金は必要だろうし」

「分かりました。私が確保しておきますね」


 その後、鉱石や金属等で予定していた物以外の価値が高そうな物も確保して行った。

 鉱石では鉄、銅、アダマンタイト、ミスリル、オリハルコン等の有名どころの金属と、硝石や重晶石(じゅうしょうせき)を始めとする花火の材料を確保した。

 金属や宝石で確保したのは金、銀、プラチナ、ルビー、サファイア、エメラルドにダイヤモンド等の貴金属である。


 こうして、本来必要な材料の鉱石以外にもかなりの物の確保に成功したのだった。


「これで、お金には困らなそうだね」

「主様は当たり前の様に人間の街に行くつもりみたいですが、その姿で街に入る方法はあるのですか?」

「うっ……」


 カケルは元々、街に行くつもりではあった。

 花火は見られてナンボであり、誰にも見られない花火は只の爆薬でしか無いのだから。

 しかも、最終的にはヴァルトロとの約束で後世に残す必要もある。


 従って街に行くのは必須である。

 必須ではあるのだが、カケル自身の種族と姿がそれを阻んでいた。

 アンデッドで、骨だけの姿――。

 どう見ても人間の敵であり、真っ先に討伐される姿だ。

 カケルも夜など時間がある際に考えてはいるのだが、未だにその対処方法は思い付けていなかった。


「アンデッドが街に入るか……。前代未聞だな。少なくとも、私が知っている限りでは聞いた事が無いぞ?」

「やっぱり、難しいかな……?」

「そうだな。まあ、恩をたんまりと売れれば行ける可能性はあるが……」

「恩を売る?」

「ああ――」


 キーリが言ったのは、まず人間が対処出来ない強さになる事だった。

 そうすれば、殺されなくなるとの事。


 まあ、文字通りアンデッドになるって訳だよね。

 そうすれば最悪戦闘になっても、逃げるなり反撃するなり選択肢が増えるだろうね。此方は死なないのだから……。


 キーリは人間の攻撃をどうにか出来たら、次は交渉に入るのだと言った。

 もし何か、アンデッドであると言う事を越える様な恩を売れたのであれば、もしかすると街に入れるかも知れないとの事だった。


「まあ、余程の恩を売れないと中には入れないと思うがな」


 キーリはそう締め括った。


「そうだよね……。先は長そうだよ……」


 でもキーリってドラゴンだよね?

 良くこんな事思い付いたね。


 カケルが疑問を感じているところにミミが割って入った。


「どちらにしても主様様はまだ弱いのですから、考えるのは先の事ですよ」

「まあね……」


 幾ら二回進化したと言ってもカケルは、ミミやキーリからすればかなり弱いのである。

 但しそれは、()くまでもミミやキーリ基準でなのだが……。


「街の事は考えても仕方ないし、とりあえず帰ろうか」

「はい、分かりました」

「ああ、帰るか」


 ◇ ◇ ◇


 洞窟から帰ってきたカケルは、先程の洞窟に関して一つの疑問が浮かんでいた。


 そう言えば魔物は出なかったけど、なんで二回進化するまで駄目だったのだろう?

 そう疑問に思ってミミに質問すると、あの壁は刺激を与えなくても薄い酸を出しているらしく、僕が進化せずに入っていたら今頃溶けていたと言われた。

 何それ怖い……。足とか溶けてないよね?


 カケルが足を確認していたが、どうやら問題無かったようだ。

 それは兎も角、ここからがカケルの本職となる。

 尤も、本来は火薬を作る人間は花火師と別の人間なのだが……。


「先ずは火薬かな?」


 火薬。それは中国で初めて作られたと言われている。

 圧倒的な速度で燃焼を引き起こし、爆発と言う現象を引き起こす非常に危険な代物だ。


 花火に使われる火薬は黒色火薬。日本が日清戦争の頃まで、大量に使用した種類の火薬でもある。

 原料は可燃材、酸素供給剤、燃焼促進剤を一定の割合で混ぜた物で、具体的には木炭と硫黄と硝石を混ぜて作り出す。

 因みによく硝煙の匂いがする等と言われる硝煙とは、この硝石が燃えた際に出る煙の匂いを指すと思いきや、実際には硫黄が化合して発生する硫化水素などの匂いである。


 黒色火薬を用いて作るのは、割薬、星、打ち上げ火薬の三つである。

 星は焔色材を混ぜるが、それ以外の割薬と打ち上げ火薬の材料は変わらない。ただ、混ぜる割合を変えるだけだ。

 燃焼速度が速い程、爆発力は増す事になる。代わりに燃焼時間が短くなるのだが……。

 そして燃焼速度が速い順に、打ち上げ火薬、星、割薬となる。


 どれも重要な物だが、カケルは一番シンプルな割薬を作る事にした。


「先ずは割薬かな? 確か、割合は――」


 記憶の扉を叩きながら、木炭、硫黄、硝石を丁寧に混ぜていく。


「よし、完成!」

「意外に早く完成しましたね?」

「まあ、試作品だからね。使って駄目ならやり直しかな」

「そう言う事ですか」

「と言う訳でテストをしよう!」


 作った割薬を押し固めて、三センチ程の球を作る。

 後は実際に火を着けてみて爆発の様子をチェックするだけだ。

 威力に関してはカケルも分からない為、ミミに測定をお願いしている。


「着火するから、少し離れて!」

「はい」


 石の上に割薬を置くと、数十メートル離れてファイアの魔法を最小限にして唱える。

 一回目――。


「あれ? 爆発しない?」

「みたいですね」


 二回目――。


「うわぁ! こっちまで来た!?」

「爆発の威力が高過ぎますね」


 三回目――。


「何か爆発が遅いような……」

「不発ですか?」

「うーん……。――うわっ、びっくりしたぁ……」

「時間差でしたか」


 十二回目――。


「爆発の拡散に偏りが過ぎるかな……」

「右に曲がってますね」


 二十七回目――。


「おっ? これ良いんじゃない?」

「はい、割と均一に拡散しましたし、爆発の威力も日本の物に近いようです」

「良かった~~」


 割薬の分量と均一に混ぜる手法は、あれで良さそうである。

 となれば――。


「次は星かな」


 星。花火において一番大切とも言える要素だ。

 夜空をキャンバスと見立てるのであれば、星はキャンバスに色を与える絵の具だろうか。

 そんな星は色鮮やかに、適度な長さを光続けなければならない。

 そんな星の光は赤、緑、黄、青、銀、金の色合いが存在する。


 まずカケルが作るのは、リハビリも兼ねて基本の赤色だ。

 赤を出すために必要な焔色剤は、炭酸ストロンチウムと言う金属だ。

 金属が炎の色を変えるのは、炎色反応と言われる火によって解離し原子化し、更に熱エネルギーにより電子が励起(れいき)し、基底状態に戻ろうとする際に光エネルギー発する為である。

 ようは、過剰にエネルギーを与えられて満杯になった金属が、ある時決壊しエネルギーを光にして放出するような感じだろうか?


 それで生成だが、先ずは炭酸ストロンチウムの原石であるストロンチアン石を細かく砕く。その後、先程の黒色火と爆発しない様に慎重に混ぜる。

 そして、本来はコルクを芯にする所を今回は枯れ木の木片を使う。

 そこに糊を塗りながら大きく固めていくのだが、生憎と糊は確保出来ていなかったのだ。

 だがカケルは、糊の代わりになりそうな物を知っていた。嘆きのラットの血糊である。

 この血糊、最初はサラサラなのだが空気に触れ続けると段々と粘着性を発揮してくるのだ。

 これを前に料理の時失敗して覚えていたカケルは、試してみる事にしたのだ。


「うん、悪く無いね」

「はい、上々だと思います」


 結果から言えば、血糊を使った星は上手く行った。

 星を顔に近づけ過ぎると、少し生臭さを感じるのだが、打ち上げる分には全く問題なさそうな感じであった。


 カケルは続けて、他の色の星も作成しておく。

 因みに他の色で今回使う焔色剤は、緑色が硝酸バリウム、黄色が炭酸カルシウム、青色が酸化銅、銀色がアルミニウム、金色がチタン合金である。

 どれもカケルだけで精製する事など不可能な物質ばかりなので、単体で使用出来る物以外はミミに丸投げである。

 ミミへの借りが着々と増えていくが、カケルは果たして全部の借り返しきれるのだろうか?


 それはさておき、打ち上げ花火を作る上で必要な星の数は数十から数百程だ。

 そして、一回の大会に使用する花火玉の数は、通常百から千個程である。

 つまりそれは、必要な星の数が数千から数十万単位になると言うことである。

 本来百は必要な花火玉だが、カケルは職人が自分しか居ない為、この作業量からしても、作れたとして花火玉の数は数十が限界だと思っている。


 次に必要なのは、打ち上げ火薬である。

 こちらは一番爆発力が必要で、上空に花火玉を押し上げる為の推進力に当たる。

 割薬よりも燃焼促進剤を増やして、前に虹色の滝壺付近で採取しておいた粘土と合わせてC4の様に加工する。


「よし、テストだ!」


 花火玉と同じ位の重さの疑似玉を魔法で作り出すと、下側に火薬をペタペタと貼り付ける。

 そして着火――。


「おぉ! 良いかも?」

「凡そ、二百メートル上がりました。もう少し威力が欲しいかもです」

「うん。じゃあ、修正しようか」


 その後も微調整を続け、遂に割薬、星、打ち上げ火薬が揃ったのだった。


 間断紙(はさみがみ)と玉皮は紙が無いので、代わりに魔物の皮を使う。

 間断紙にはキーリの脱皮した抜け殻を使用する。ホーリードラゴンも爬虫類の性質を一部受け継いでいるらしく、脱皮により成長と肌のケアが成り立っているようだ。

 キーリの抜け殻は、蛇の抜け殻みたいに薄く、それでいて魔法や衝撃の緩和機能が強いので防具にも使用可能らしい。

 ただ、このままでは火薬により燃えてくれないので、抜け殻を外側の皮と内側の皮に剥がす。使用するのは内側の衝撃緩和機能の付いた方だ。

 これを、間断紙として使用すれば、衝撃を緩和し尚且つ火にも弱い性能になる。


 次の玉皮に使用するのは、嘆きのオーガの皮だ。嘆きのオーガとは、嘆きのラットと同じく嘆きの洞窟に生息するオーガである。

 カケルは殆ど会った事が無かったのだが、ミミが最近襲われて返り討ちにしたようなので、それを条件付きで譲って貰ったのだ。

 オーガの皮も衝撃耐性が強く、そのまま使うと花火が正常に炸裂しない可能性が高い。そこで、皮を軽く火に炙り、衝撃耐性を殆ど零に落とし込む。

 これにより、ある程度の圧力で炸裂するようになり、火にもあまり強くない物が出来上がる。


 玉貼りに使うのは、嘆きのラットの皮だ。前に倒した物を加工して使用する。

 嘆きのラットは元々耐衝撃性、耐火性の双方がかなり低い。

 このままでは、玉貼りに適さないので一端氷付けにする。すると、耐火性が更に壊滅的になる代わりに、耐衝撃性が上昇するのだ。

 これを用いて玉貼りの材料とする。糊に使うのは勿論、嘆きのラットの血糊である。


 更にツィードに燃えやすい蜘蛛の糸を出して貰い、それを編み込み一本の親導を作り出す。

 打ち上げ筒はミミに魔法を教えて貰いながら作成し、竜頭は樹海の部屋で採取した蔓を利用する。

 勿論どれも正常に使えるかはテスト済みだ。


 やっと全部の材料が揃った! これで、玉込作業に入れる!

 先ずは玉皮の片面に割薬を半球状に入れる。そして、星も同じく半球状に。

 これを何回か繰り返して、基本の形である菊の花火玉の半球の完成だ。

 更に同じのをもう一つ作って、二つの断面を合わせれば花火玉の原型が出来上がる。

 玉皮同士の結合には通常粘着テープを使用するが、今回はツィードの出して貰った燃えやすく耐久力も低い粘着性の糸を用いる。


 勿論、親導と竜頭の固定も忘れずにと……。


「よし! 花火の完成だ!」

「主様、おめでとうございます」

「ありがとうミミ!」


 正直材料は適当だし、文句を言えばキリがないと思う。

 でも、この世界に来てから初めて作った花火なのは間違い無いんだ。

 そう思うと、感慨深いなぁ……。


「主様、それを打ち上げてみるのですか?」

「いや、まだかな。種類を変えてニ十発くらい作ってみるつもりだよ


 そこからカケルは、ひたすらに玉込め行った。

 作るのは五号から八号玉までだが、この速度は魔法を併用している為非常に速い。

 とは言え、二十発の玉込めと材料の生成が一日で終わる訳もなく、それらの作業だけで十日程掛かってしまった。

 だが、遂に――。


「出来た……」

「おめでとうございます!」

「うん、ありがとう!」


 大会って言うには少ないけど、打ち上げが出来るだけの数は揃った。

 後は、打ち上げをしてみるだけだ!

次で一章ラストです。

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