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ゲテモノ料理?

巨大バッタ君を料理する回です。

気持ち悪いジャガイモも出てくるので注意です。

 そして、次の日の昼になった。


「さあ、カケル! 私に料理を食わせろ!!」

「うん。じゃあ、料理開始するから手伝い宜しく!」

「ああ! 任せろ!」

「じゃあ、先ずはバッタの解体からかな」


 ミミに頼んで出して貰ったバッタは、その大きさをまざまざと見せ付けられるようだった。

 バッタを出すついでに、必要な野菜も出しておく。ジャガイモが悲鳴を上げているが無視だ。

 とりあえず、何時ものようにキーリから剣を借りて斬ろうとするのだが……。


「あれ? ――ミミ、バッタが全然斬れないんだけど……」

「ソードローカストの外殻は、硬い事で有名です。幾らキーリ様の剣でも、ある程度の技が無ければ斬れないと思いますよ?」

「ソードローカスト? それに、技って剣技? それだと、料理出来ないんだけど……」

「ソードローカストはそのバッタの種族名ですね。解体についてはキーリ様に斬って貰えば宜しいかと」


 そうかバッタ君は、ソードローカストって名前だったのか。

 それはともかく確かにキーリの剣だし、キーリに斬って貰うべきかな?


「キーリ、外殻を剥いで血抜きをする事は出来そう?」

「外殻を剥ぐ事は可能だ。だが、血抜きとはどうやるのだ?」

「血抜きってのは――」


 カケルはにわか知識から、血抜きの方法を伝授する。

 と言っても、頭を切り落として逆さにする程度の話だ。


「それくらいなら出来そうだ。任せてくれ!」

「味に直結するから、血は出来るだけ丁寧に抜いてね」


 キーリにバッタを捌いて貰っている間に、僕の方は鍋を作らないと。

 何時ものようにミミに魔術を教わりながら、鍋を作る為の呪文を唱える。


 作りたいのは、煮炊きが可能な深さの鍋だ。

 金属製が扱いやすいのだが、実力的には無理なので諦めて土鍋を思い浮かべる。

 水が漏れ出なくて、蓋付きの土鍋なら形が悪くても良い。


「”鍋創造(クリエイトポット)”!!」


 一回目で成功する訳もなく、敢えなく水漏れ。二回目は蓋がくっついて出て来た。

 そして、三回目で凸凹してはいるが、地面に置いても倒れず水漏れもしない蓋付きの鍋が完成した。


「よし! キーリ、そっちは……終わったみたいだね」

「ああ、次は何をする?」

「そうだね。ミミと一緒に野菜を切って貰えるかな? 僕はジャガイモに挑戦するから」

「野菜は何を使うんだ?」

「そうだね。――玉ねぎ、人参、ブロッコリーかな。切り方はミミに聞いてね」

「ああ、分かった」

「分かりました」


 キーリがソードローカストを捌きに移動した後、カケルは重大な事に気付いた。


「あっ! ミミ、包丁って作れないよね? 今はキーリの剣一本だけだけど、ジャガイモ切る際に使えるのがあればと思ったんだけど?」

「はぁ……、分かりました。キーリ様に少し教えましたら、剣を作りますので少々お待ちください」


 そう言ってミミは、キーリに野菜の捌き方を教えると、外に駆け出して行った。


 キーリを除けば今いるのは、カケルとジャガイモだけである。

 カケルは改めてジャガイモを見ながら、何処に包丁を入れれば良いかを考える。


「しかし、見ているだけでSAN値が減っていきそうな見た目だよなぁ……。しかも、何か色んな声上げてるし……」


 目は口ほどに物を言うといった(ことわざ)がある。では、その口自体はは何れ程に物を言うのか?

 最初に見た際は意味が分からない擬音ばっかりだったが、今は軽く意味合いが分かる擬音になっている。

 ジャガイモから漏れ出る声は、悲鳴、呻き声、泣き声、喚き声、笑い声など統一感が無い。


 ただ、どの声についても言える事は、負の感情を含んでいる事だ。

 恐怖、諦観、怒り、悲しみ……。

 言葉に成らない数々の感情を込めた声は、此方の心を揺さぶって来るようにも感じる。


 因みにカケルが後で聞いた話しによると、この声は聴いているだけで状態異常になるらしく、カケルなどの状態異常を無効化する種族や、心の強い者で無ければ発狂するらしい。


「うぅ……、やっぱり気持ち悪い……。これ悪魔の実とか、呪いの実って言われるのは当たり前だよ……」


 大きなネズミを捌けたカケルでも、これは気持ち悪かったらしい。

 それから少しすると、ミミが帰ってきた。


「ミミお帰り。包丁は出来たの?」

「はい。これで如何でしょうか?」


 ミミがアイテムボックスから取り出したのは、カケルの身長の倍は優に超える細長い片刃の大剣だった。

 細長いと言っても、それは長さに対してであり、横幅は広い部分でカケルの頭くらいはあるのだ。


「ミミ、これは?」

「ソードローカストの触角を使って作りました。少々長いですが、強度と切れ味は中々の物だと思いますよ」


 カケルはミミから触角剣を受け取った。

 見た目だけなら出刃包丁に近いだろうか? ただ、鋼性の包丁と違い刀身自体が動かす度に(しな)っている。

 釣竿の撓り方に近いと思う。


「名前はローカストソードですかね」

「ローカストソード……」


 触角剣改め、バッタ剣を素振りしてみる。

 軽い……。それがカケルの最初の感想だった。


 筋力……とは言わないだろうが、カケルの腕力は進化をした今でも、そこまで強く無い。

 一方で、持久力は生物で無い為かなり高い。高いと言うか、基本的には無限大である。

 その強くない腕力だが片手で十キロ持てれば、良い方なのでは無いだろうか?

 つまり、このバッタ剣は十キロ以内であると言うことだ。


 カケルの身長は現在百六十センチ程だ。その身長の二倍以上の長さを誇る大剣が十キロ以下と考えれば、少なくとも鋼であれば無理な重量である。

 実際に感じる重さは、恐らく一キロ無いと思われる。


 そんなバッタ剣は、素振りの度に(しな)る事、撓る事。


「これ、扱い凄く難しそうだね」

「そうかも知れませんね。ただ、包丁として使うのであれば十分かと」


 確かにそれもそうだ。ソードなんて言われたから武器として考えていたけど、単なる包丁として考えれば武器として扱うよりは簡単かな?

 尤も包丁として考えると、マグロ包丁レベルの長ささえ遥かに超えているんだけどね……。


「考えても仕方ないかな。ミミ、ジャガイモの芽って地球と同じようなくり貫き方で良いのかな?」

「基本的には変わりませんが、奥深くまでしっかりと取り除くのがコツですね。取り除き忘れがあると呪いが発症するので、鑑定をしっかりと行って下さい」

「分かった。やってみるよ」


 そう言ってバッタ剣を使ってみる。驚いた事に、柄と刃の間にあご部分が付いていたのだ。

 確かあのバッタの触角には無かったから、ミミが付けてくれた部位だと思う。

 流石ミミ、あの短時間で作り込むなんて……。

 ミミはこれを作り終えた後、苦戦してるキーリの方を手伝いに行った。


 カケルは角部分でジャガイモの芽は抉り取る。その度に悲鳴が上がるが無視である。

 芽と言う名の口を抉ると、下からジャガイモ本来の実が現れた。


 色合いは日本のジャガイモと殆ど変わらなかった。赤黒いのは皮だけの事らしい。

 と思ったら、抉り取った口の隣の口から赤黒い液体が溢れてきた。

 まるで流血みたいな光景である。


 つくづく趣味の悪い野菜だなぁと思いながらも、カケルは黙々と手を動かす。

 血が出たくらいで騒いでいては、魚を捌く事すら出来ないのだから当たり前である。


「よし! 終わった!」


 皮を全て剥き気色悪い口を全て抉ると、見た目はデカイだけのジャガイモになった。


「あっと、忘れてた。”鑑定”っと!」


種類:ジャガイモ

品質:最高品質

状態:正常

説明:赤黒い見た目の野菜で、全体が数多くの口に覆われており、そこから時々悲鳴やくぐもった声が聴こえてくるらしい。

 口は一つ一つが新芽であり、放って置くとその場所に根付いてジャガイモだらけになるので注意が必要。

 また、口の部分には呪いが掛かっており、そのまま食べると死ぬ可能性がある。


「――問題無さそうだね。ミミ、キーリ、そっちはどうかな?」

「ああ、こっちも終わったぞ」

「はい、終わりました」

「じゃあ、胡椒を乾かして粉上にして貰えるかな? 後、出来ればミミに、容器を作って貰えると嬉しいんだけど……」


 カケルはそう言って、ミミを駄目元とばかりに見詰めた。


「――主様、一つ質問です」

「何かな?」


「胡椒を使えば、料理の味が格段に良くなるんですよね?」

「格段かどうかは分からないけど、味が良くなるのは確かだよ」


 少しの間、沈黙が流れる。


「――分かりました。今回は作りましょう」

「本当!?」

「はい、どうせですから刃が付いてるタイプの容器にしましょう」

「おぉ! それは良いね! お願い出来る?」

「はい、分かりました」


 ミミとキーリに胡椒をお願いしている間に、先程作った鍋に嘆きのラットの油を引いて火を着ける。

 今回はブイヨンの代わりに、嘆きのラットの肉を軽く焼いて肉汁を確保する。

 そこに加えて先程切って貰った野菜を、火が通りにくい順に炒める。

 ジャガイモ、人参、玉ねぎと合わせていき、軽く塩を振ったら一旦火を止めた。


 そこへ、水を加える。

 火は強火にして、水が沸騰するまで加熱する。

 沸騰したら、火を弱火にして灰汁を取る。

 更に、最後の食材のバッタの胴体を加えた。

 後はじっくり、コトコト煮込むだけ。


「ミミ、胡椒って処理出来た?」

「まだ全部を処理してないので、今あるのはこれだけです」


 ミミが持ってきたのは、胡椒の身を削りながらその場で掛ける金属製の瓶だった。

 瓶ば上下に別れており、下部を回転させると中にある胡椒が削れて出てくる仕組みだ。


 肝心の胡椒だが、あのウニみたいなのは皮だったらしく、剥いた後にはバチンコ玉大の胡椒が大量に入っていたらしい。

 そしてその胡椒は、先程の瓶に入れられていた。


「十分だよ。胡椒が終わったら、鍋敷きと食器類の準備をお願い出来るかな?」

「分かりました」


 煮込んでいる鍋の中に、塩と胡椒を適量振り掛ける。

 軽く混ぜたら、小皿に取って味見かな。


 小皿に乗った料理に対して、何時もの小石を入れる。


「うん。濃厚だし、塩と胡椒が効いていて美味しい。嘆きのラットも良い味を出してるね」


 味を確認した後、ミミとキーリに声を掛けた。


「ミミ、キーリ! 今大丈夫?」

「はい、大丈夫ですよ」

「カケル、どうしたんだ?」

「うん、味見をお願いしようかなと思ってさ」

「味見! 料理が完成したのか!?」

「まあね。味のバランスが問題なければこれで完成だよ」

「そうか!! ああ、勿論味見させて貰うよ!」


 キーリの嬉しそうな返事に少し苦笑してしまう。


「肉食のキーリには物足りないかもだけど、味はステーキより上だと思うよ?」

「それは期待出来るな!」

「ミミもお願いね?」

「はい、分かりました」


 カケルは小皿に移した料理を、キーリに渡す。


「これは、嘆きのラットのステーキとは随分違うんだな?」

「まあそうだろうね。ステーキとは正反対の野菜がメインに来る料理だからね。名前は、ソードローカストのシチューってとこかな?」


 そう言いながらカケルは、ミミにも小皿を渡した。


「ソードローカストのシチュー……」

「そう。嘆きのラットも使ってるけど、今回は脇役だね。ソードローカストの味とかを聞いた時に、ホワイトソースに似ていそうって思って作ったんだ。――まあ、何はともあれ味見してみてよ」

「分かった」


 キーリは、シチューを恐る恐る飲み干した。


「どうかな?」

「――凄いなこれは……。確かに、嘆きのラットのステーキよりも食べたと言う感じはしないのだが、味は素晴らしいの一言だな……」

「良かった」


 キーリに続いてミミも、シチューの小皿に口を付けた。


「これがシチューですか……。ステーキよりもサッパリしているのに、深い味わいと濃厚なソードローカストが素晴らしいですね。ピリリとした胡椒に何種類もの野菜、そこに加わった嘆きのラットとソードローカストの肉が、絶妙なハーモニーを奏でています」

「う、うん……。そこまで喜んで貰えて嬉しいよ」


 カケルは、何かグルメレポーターっぽい事を言っているミミに、驚きながらもそう返した。


「――それで二人とも、このシチューの味のバランスは問題ないかな?」

「ああ、問題ない! 寧ろ、早く食べたくて仕方ないぞ!」

「私も問題ありません」

「食器類の準備って大丈夫?」

「ああ、何時でも食事出来るぞ?」

「じゃあ、食事にしようか!」


 鍋を持って、食堂の机に向かう。

 机の周りには、今か今かとライトフェアリー達が待っていた。


「皆、食事だよーー!!」

「来た!」「待ちくたびれたぜ!」「わーい、ご飯だ~」


 皆席に付いてから、”いただきます”をして食べ始める。

 ”いただきます”は、カケルが教えて実施された習慣だ。

 当たり前だが、魔物にこんな習慣は無い。


「おいし~!」「カケル兄ちゃん、やるなぁ……」「凄い凄い!!」

「先程も味見したが、素晴らしいな! かなり軽めかと思ったが、野菜や肉と食べるとしっかり食ってる感じがするな!」

「美味しいです。特に、この人参が癖になります!」

「皆ありがとうね。本当はもっと調味料やハーブを使いたいんだけどね……」


 皆が挙って料理を誉めてくれた。ただ、本当に美味しいシチューを知っている身としては、味については大いに不満が残るレベルの味である。


「カケルは拘るねぇ」

「主様、それは今後の目標としましょう」

「えぇ? カケル兄ちゃんの料理美味しいよ?」「美味しいと思うけどなぁ」


 確かに魔物の食材としての優秀さに助けられてマシな物が出来上がっているが、正直かなり適当作ってもこのレベルになるだろう。

 カケルも流石に料理人を目指すつもりは無いが、それでも影子から教えてもらった料理に比べて不満は残る。


「決めた! 畑を作ろう!」

「「「はぁっ?」」」


 カケルの花火師としての道が、少し遠のいた瞬間であった……。

一応知らない人のために少しメモを。


まずSAN値とは、正気度を示す値でこれが減ってくれば発狂すると言われています。

現在では、ホラー物や気持ち悪いものを見ると減ると言われています。


次にあごですが、これは包丁の柄と食材を切る刃渡り部分の間にある角の部分の事です。

ジャガイモの芽を取ったり、トマトのヘタなどを取るのに良く使いますよね。


バッタ剣の重量についての記述ですが、一般的な刀の重さを比較に記述しておきます。

真剣の場合、70センチほどで1キロほどの重さになるらしいです。

従って、3メートルを超えているバッタ剣を刀として作った場合5キロ程度です。

もっとも、それは刀の場合です。実際には出刃包丁のように根元が太くなっているので、3~4センチ程度の刀の重さとは訳が違います。

カケルの頭の幅を15センチとすれば、重さは5倍は超えそうです。

それが1キロ未満なのですから、バッタ剣の軽さが分かりますね。

このバッタ剣は今後も料理で活躍して行きます。

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