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新たな部屋と、乙女の年齢?

 カケル以外の皆で嘆きのラットステーキを食した後、カケル、ミミ、キーリの三人は胡椒を取りに行く為に通路を歩いていた。


「ねぇ、キーリ」

「なんだ?」

「僕の記憶だと胡椒って、植物の一種だったと思うんだけど?」

「ああ、私の記憶でも同じだな」

「こんな洞窟に生えてる場所があるの?」

「多分な」

「多分?」

「ああ、――」


 キーリの曖昧な返答には理由があった。彼女は植物が大量に生えてる場所は知っているらしいのだが、胡椒の植物の正確な形を知らない為本当に採取出来るかは分からないのだと言う。


「なるほどね。でも、植物が沢山生えてるなら可能性はあるかもね」


 実際にはカケルはそこまで期待して居なかった。と言うのは、大量の植物があったとしても、野性の胡椒が生えている可能性なぞ皆無に等しいからだ。

 大量の植物と言っても恐らくは雑草が殆どで、後は食べれるかも分からないキノコ類や木苺みたいな物だけだろうなと考えていた。


 だが、それはあくまでも前世の記憶を元にした物であり、此処が異世界であると言う事を考慮して居なかったのだが……。


「さあ、付いたぞ!」

「何、あれ……」

「これは、凄いですね」


 キーリが指し示す先には、一つの通り口があった。

 それは別に普通の事だ。

 聖域も食事部屋も嘆きのラットの無限湧きの滝壺がある部屋も、全てが部屋の括りになっているため入り口が存在し、カケル達が居る通路は廊下の様に扱われて居るのだから。


 問題はその通り口から飛び出ている物にある。


「あれは木だよね?」

「ああ、そうだな」


 目の前の通り口からは、やや大きめの木が飛び出して居たのだ。

 他にも、何かの植物が飛び出しており植物園への入り口のようにも見える。

 いや、この洞窟からの出口であろうか?


「じゃあ入るぞ」

「分かりました」

「――あっ、待ってよ!」


 その光景に呆けているカケルを無視して、キーリ達は通り口から中に入っていく。


「凄い……」

「圧巻ですね……」


 中の光景は、入り口よりも圧巻であった。

 先程入り口から出ていた大きめ木は、単なる枝葉である事を知らしめる様に、カケル達の目の前には余りにも巨大な木々が生い茂っていた。

 巨大な木の直径は、四メートル、いや五メートルはあるだろうか? しかし、カケルが見ていたその巨大な木は他と比べて小さい始末。

 大きな物になると、直径数十メートルはありそうな大木さえ目に入る。


 そんな木々に合わせた様に、周りに生えている草も巨大だった。形はただの雑草なのに、高さがカケルの身長を超えている事などザラにある。

 特に目立ったのは、ラフレシアの様な巨大な花弁を持つ花だった。ただラフレシアと違い、かなり良い香りを発している。

 大きさもかなり大きく、カケルが両手を広げても花弁の大きさには届かないであろう。


 こんな草木に囲まれていると、まるで巨人の世界に迷い込んだ様に思えてくる。


「――キーリ、此処は? ダンジョンの外にある森なの?」

「いや、此処はダンジョンの中だな。私は樹海の部屋と呼んでいる。此処なら、胡椒も手に入るかと思ってな」

「樹海の部屋……」


 草木も大きければ生物も大きいらしい。恐らくリスだろう生き物を見掛けたのだが、背丈が悠にカケルの五倍は超えていた。

 カケルはそれを見て、あんぐりと口を開けフリーズしてしまっていた。

 勿論、それだけで収まらないのが異世界クオリティ。どうやら先程のリスは小さい部類に入るらしく、次に見た狼はリスの三倍はあっただろうか。カケル達の前を我が物顔で歩き去っていった。


「まるで僕達が小さくなったみたいだ」

「ああ、成る程な。確かにそう考えるとしっくり来るかもな」

「凄いですね。知識では知っていましたが、あんなに大きな狼が居るんですね」

「取り敢えずこっちだ。さっきみたいに大人しい魔物も多いが、私達の実力も分からずに殺しに来る魔物も多い。だから、私からはぐれるなよ?」

「う、うん……」


 森の奥を目指して進むカケル達。途中、大きな鳥や鹿、熊などが出てきたが、基本的には無視をする。但し余りにも巨大なので、踏まれないように注意しないと殺意の無い踏みつけで殺されてしまう。

 カケルが進化した影響は早速出ていた。”生者への渇望”のスキルの影響で、気配とも呼べる物を感知出来るようになっていたのだ。

 ただ、まだ使いこなせてはいないらしく、殆ど全ての生物に対して体毎向き直っていたのである。


 そうして進んでいると、キーリの言う実力差が分からない魔物が出てきたみたいだ。

 見た目は巨大なバッタだろうか。全身は黒い外殻に覆われており、触角は柳葉刀(りゅうようとう)――青龍刀の様な形の刀――の様に鋭い刃を付けている。背丈は二十メートルくらいで、全長は百メートルを超えているだろう。


 ソイツは目の前の木々を触角で斬り倒す。それを見せ付けてニヤッと笑ったような気がした。

 次の瞬間、強靭な脚を使い一気に距離を詰めてきた。


「うわっ……!」


 カケルがヤバいと思ったときには既に触角を降り下ろす寸前で、思わず腕で目を覆ってしまった。

 だが、何時まで経っても衝撃が来ない。恐る恐る目を開くと、其処には有り得ない光景が拡がっていた。


「やれやれですね。その程度の実力で私達に喧嘩を売るとは……」


 そこには宙に浮きながら、黒光りする触角を僕よりも小さな手で掴んでいるミミが居た。


「流石はミミ、常闇ウサギは伊達じゃないな」

「キーリ様、この程度の敵相手に言われても何も感じませんよ? この程度の敵なら宵闇(よいやみ)ウサギは勿論、夕闇ウサギでも倒せるでしょうから」

「だろうな。ミミの力を測るには弱すぎる敵だ。常闇ウサギの話は聞いたことがあるが、実際に見た事は無いから話の真偽が分からなくてな」


 会話をしている最中にヤバいと思ったバッタが、ミミの手から逃げようとする。ミミはそれに対して何かをしたようだ。

 先ほどまで触角以外は動けていたバッタが、いきなり動けなくなったようで焦っているのが見てとれる。


「そう言う事ですか。ですが、この森全ての魔物が襲ってきてもあまり意味は無いかと思いますよ?」

「そのようだな。あの話は真実だったと言うことだな。ああ、怖い怖い……」


 全く怖がってない様子のキーリがそう言い放つ。


「ところで、ソイツは何で動けていないんだ?」

「ああ、これですか? 闇魔法の影縫いですよ」


 よく見ると、バッタの影が何か黒い(もや)のような物で固定されているのが見て取れた。

 あれが、影縫いだろうか?


「へぇ、これが影縫いか。コイツを動けなくするなんて、結構強力な魔法だな?」

「いえ、元々は弱い魔法ですよ? 第一レベルに属する程度の魔法です。これは、無理やり魔力を注いで強化している状態ですね。また、――」


 ミミが言うには、魔法は魔術と違いパラメーターの固定をしてないため、幾らでも強化が出来るらしい。

 例えば一度の煮炊きに使うようなレベルのファイアで、一国を火の海に沈めることも理論上は可能との事。尤も効率が悪すぎるので普通は上位の術式に切り替えるらしいが。


「ねえミミ、そのバッタはどうするの?」

「勿論今から殺しますよ」


 それを聞いたバッタが、言葉を理解したのかガタガタと震えだした。

 喧嘩を仕掛けたバッタが悪いのだから自業自得とは言え、見ていて可哀想になってくる。


「ねえミミ、力量差は理解出来ただろうし、そのまま放しても良いんじゃないかな?」

「カケル、お前はアンデットとは思えない程甘いな……」

「主様は、元異世界の人間ですしねぇ……」

「ああ、確かにそうだったな……」


 ミミとキーリは、カケルを見ながらうんうん頷いていた。


「それで、主様はこの魔物を放せと?」

「うん、なんか目をうるうるさせてるし、可哀想になってきて……」


 今も図体に似合わない目をさせながら、此方を見つめて来ている。


「はぁ、分かりました」

「おい、ミミ!?」


『これも良い機会です。主様には此処で魔物の怖さについて学んで頂きます』

『考えがあるのだな? ならば私は傍観者でいよう』


「ミミの考えは分かった。今回は素直に従おう」


 キーリとミミは小声で話し合った後、キーリはカケルに対して聞こえるようにそう告げた。


「では離しますね」


 そう言って影縫いを解除し、カケルの横まで下がるミミ。

 一方バッタの方は、自分が動ける事を少しずつ確かめているようだった。


「バッタ君、君は自由だよ。もう僕達を襲わないようにね?」


 そう言いながらカケルが一歩前に踏み出すと、バッタは嬉しそうな声を上げながら触角を降り下ろしてきた。その鋭い切れ味の触角を……。


「えっ?」


 突然の事で固まってしまうカケル。そして頭の隅では、もしかしてまた死ぬのだろうかと言う考えが(よぎ)っていた。


 ガキィーン。

 硬いもの同士が擦れ合う音がする。


「全く、主様は本当に甘いですね。この世界でその甘さは命取りですよ?」

「ミミ……?」


 カケルの横に居た筈のミミがカケルの前に出て、バッタの触角を再び止めていた。


「主様、これで分かりましたか? 魔物と言うのは、私やキーリ様のように義理や人情が通じる者達ばかりでは無いのですよ? この魔物のように見逃そうとしても、恩も感じずに襲ってくる魔物は多いのです」


 そう言い切ったミミは、目にも留まらぬ速さで触角を二本とも切りとばし、暴れるバッタに対して再び影縫いをしていた。


「……ごめんなさい」

「謝らなくても構いません。それよりも、主様の手でこの魔物を殺して下さい」


 ミミはそう言った後、カケルに道を空ける。


「えっ? でも……」

「でもではありません。とっとと殺して下さい」


 淡々と言葉が重ねられる。


「えっとミミさん? 怒っていらっしゃいますか?」

「いいえ、怒っていませんよ。それよりも、早く始末して下さい」


 だが、淡々と告げられる言葉の端々には、プレッシャーが滲み出ていた。


「はい、分かりました……」


 プレッシャーにビビりながら、カケルは前に出る。

 そして、バッタの魔物と再び目が合った。先程よりも潤んだ瞳は、今にも涙が溢れそうである。


「ううっ、ゴメンね。でも君が悪いんだからね? ファ、”ファイアボール”!」


 飛び出した火の玉はバッタの胴体に着弾し表皮を焦がす。

 それに呼応するように、バッタが悲鳴を上げる。


「主様、続けて下さい」

「”ファイアボール”! ”ファイアボール”!! ”ファイアボール”……!!!」


 焦げた臭いが更に拡がり、バッタは熱さに涙を流す。


「”フレア”!!」


 そして、(とど)めとばかりに最近覚えたフレアを使う。

 巨大な炎に包まれたバッタは、それでも生きていた。

 外殻が想像以上に強固なためか、痛みを伴うレベルの熱は与えられても致命的なダメージとは行かないらしい……。


「それなら! ”ウォーターボール”!!」


 凍えるような冬の海の水をイメージしながら、大きな水玉を作り出す。

 作り出した水玉は、ファイアボールとフレアで熱せられたバッタの上半身に直撃した。


 ジュワッ! と言う、音と共に熱せられた外殻に亀裂が入った。


「よし、もう一度! ”フレア”! ――”ウォーターボール”!」


 二度目の攻撃は耐えられなかったらしく、バッタの上半身部分の外殻が剥がれ落ちた。


「”ファイアボール”!!」


 剥がれ落ちた頭部の脳と思われる箇所に対して、小さく圧縮したファイアボールを放つ。

 外殻に守られていない頭部は耐えることが出来ずに、カケルの放ったファイアボールを貫通させてしまう。


 そして、頭部に損傷を受けた巨大なバッタ大きな音と共に倒れ込んだのだった。


「はぁ、はぁ……」

「主様、お見事でした」

「……うん」

「私の与えられた知識の上でですが、主様の国は平和で争いがなく、殺しを経験する必要が無かったと思います」

「うん、そうだね。前の人生では人はおろか動物も殺した事はなかったかな」

「その考えは捨てて下さい。この世界は命の価値が低く、身を守るための殺しが認められている世界です。それは魔物だけでなく、人間達の世界でも同様です。人間達の世界では――」


 ミミが淡々と語るのは、前世の日本では有り得ない価値観だった。


 例えば、人を襲う盗賊は法で裁かれる事もあるが、殆どが命を失った首だけの状態で届けられ報償金に変わる。

 また、貴族の存在も恐ろしい。昔の日本の武士のように、切り捨て御免に近いことが発生する。平民が貴族を侮辱すれば、それだけで死刑になるのは良くある事だと言う。


 それ以外にも奴隷や差別は、昔のアメリカ以上のレベルで強く根付いている。

 獣人やエルフ、ドワーフと言った亜人は元より、平民と言うだけでも搾取され奴隷に落とされる者も居るらしい。


 この奴隷と言うのも、かなり酷い扱いを受ける対象である。

 人権がしっかりしている物もあるが、中には使い捨て専用の奴隷などもあり、そんな奴隷の場合の扱いは物であり、持ち主がどうしようと自由であるといった具合だ。


 結局のところ、この世界は日本のように甘くはない。そう言う事をミミは言いたいのだと思う。

 殺られる前に殺れの精神までいかなくても、甘さを捨てろと言われているのだろう。


「――です。主様、すぐに変わるのは難しいかも知れませんが、変わらなければいつか大切な人を喪いかねませんよ!!」

「っ……!」


 ミミの言葉が重く圧し掛かる。その言葉はまるで――。


「ミミは、その……」

「何ですか?」


 聞くにしても言葉にならない。結局聞くことは出来ずに、言葉を濁した。


「……いや。分かったよ。肝に銘じておく。命を奪うことに慣れる事は無いだろうけど、大切な事を間違わないようにする」

「はい、それで良いかと思います」

「勉強会は終わったか?」


 静かに推移を見ていたキーリが口を開いた。


「勉強会って……。まあ、確かに大切な事を叩き込まれていたけど……」

「はい、キーリ様。お待たせしました。後は危険を通して主様が、直接学ぶ必要があると思います」

「まあ、実際に経験しないと、危機感は身に付かないかもな。――なあ、カケルは前世で何年生きたんだ?」

「突然だね。えーと、前世では十四才の誕生日の後に死んだから十四年かな?」

「十四年!? 子供も子供じゃないか!?」

「いや、そんなに言われる程子供じゃないんだけど……」

「……キーリ様、人間の寿命は短いのですよ? それは主様の世界でも殆んど変わりません」

「ああ、そう言われればそうだったな……。確か千年も生きないんだったか?」

「千年どころか、百年生きれば大往生ですよ」


 カケルの目の前で、桁の違う寿命の話が交わされる。


「えーと、そう言うキーリって幾つなの?」

「私か? 確か一万八千四百二十三才だったかな」

「一万超えって……」


 え? 本当に!? 一万八千年前と言うと、日本なら縄文時代の頃だったような……。


「主様、キーリは割りと若い方かと思いますよが?」

「マジですか……。因みに、そう言うミミは幾つになりますか?」

「私ですか? 確か三万七千八百十七才だったかと思いますよ」

「三万超え……?」


 あれ? 三万七千年前だと、日本大陸に人間が上陸してすら居なかった気が……?


「我々高位の魔物は、殆んど寿命がありませんからね。実力が高い上に個体数が少ないので、縄張り争い等の戦いになる事自体が稀です。なので、年齢はかなり高くなるのが普通です。とは言っても、私達よりも更に昔の激動の時代に、高い年齢層は一掃されたらしいのですが……」


 って事は、激動の時代とやらを生き抜いた魔物は、更に高齢者なのか……。

 歴史そのもののレベルの年齢だよね。

 確かにそんな彼女達からすれば、僕なんて子供も良いとこかも……。


「少し話が横道に逸れたな。まあ、赤子の年齢であれば危機感など身に付かなくて当たり前かも知れないな」

「あの? キーリさん、僕赤子じゃないですけど……」

「と言われても十四だろ? カケルの常識では大人なのか?」

「いや、まだ子供だと思うけどさ……」

「ああキーリ様、主様の年齢ですがこの世界では成人間近ですよ。十五で成人だったかと思います」

「そうなのか!?」

「えっ? そうなの?」


 キーリも驚いているようだが、カケルも驚いた。日本では二十才で成人だ。十五才で成人とか、現代ではまず有り得ないだろう。昔の日本なら確かに元服とか言って、成人扱いだった気もするが……。


「話が進まないな。まあ、兎に角カケルは危機感を学べって事だ」

「うん、迷惑掛けてゴメンね。ミミも守ってくれてありがとう!」

「なに、子供の内は迷惑を掛けるものさ」

「いえ、礼には及びませんよ」


 そうして、脱線していた話が終了した後にキーリが別の話題を出した。


「よし、じゃあこの話はこれで終わりだな。それよりも、良い獲物が手に入ったな」

「確かに大きさもありますし、味も悪くなさそうです」


 カケルは、キーリとミミの視線の先を追った。そこには予想通り先程倒した巨大バッタが横たわっていた……。


「えーっと、一つ確認したいんだけど……」

「ん? なんだ?」

「そのバッタ食べれるの?」

「ああ、美味いぞ。クリーミーな味がして、割りとご馳走の部類だ」

「さいですか……」

「ああ。クリーミーなのも確かなんだが、かなり瑞々しくて口の中で蕩けるような感じだな!」


 瑞々しくて蕩ける味わいね……。このバッタの見た目からは、想像出来ないよ。まあヒントは貰えたし、料理してみてから確認かな?

 しかし最初はネズミ、お次はバッタの料理……。ゲテモノ過ぎるとは言わないけど、割りとゲテモノ続きだよね……。

 

「でもこんな大きな獲物を持ち運べないよね。ミミ、この獲物を簡単に持ち運べるやり方ってあるのかな?」

「仕方ありませんね。これは私が持って行きますよ」


 そう言ったミミは、巨大バッタに触れた。すると、巨大バッタがいきなり姿を消したのである。


「流石だな。便利な魔法を持っている」


 ゲームではお馴染みのアイテムボックスである。ミミのレベルならほぼ無制限に収納する事が出来、重さは感じず時間経過もミミの匙加減で行えるとんでも魔法だ。

 但し、容量、重量、時間経過に関しては術者の力量に依るため、此処までとんでもないのはミミだからであるのだが。


「よし、改めて胡椒を取りに行こうか? ミミ、流石に胡椒の場所は分からないよね?」


 カケルはキーリが胡椒の場所は知らないと言っていたため、ミミに聞いてみる事にした。

 ミミは近くの岩塩を見つけたりと、良く分からない探知を使っている為である。

 尤も、胡椒自体がここにあるとは限らないのだが……。


「少々お待ち下さい。――見つけました。胡椒でしたら、ここから一刻程歩いた所にありそうですね」

「本当か!? 胡椒があるのか!?」

「キーリ、落ち着いて! 急がなくても胡椒は逃げないよ?」

「ああ、すまん。胡椒があれば、ステーキが美味くなると言われていたからついな……」


 どんだけステーキ気に入ってるんだよ!?

 そんな事をカケルは考えたが、口には出さずに代わりにミミから胡椒の方角を聞き出した。


「じゃあ、キーリ。ミミから方角も聞いたし、胡椒を取りに向かおうか」

「ああ! ステーキの為に!!」


 そうして、力強く宣言したキーリの後ろを、苦笑しながらカケル達は追いかけていった。

 バッタ君哀れ……。

 それは兎も角、このバッタ君は本来カケルよりも強い魔物です。

 ですが、行動を全て封じられては、ただの硬い的でしか無かったようです。


 ミミ達は一万八千とか三万七千と軽く言っていますが、このレベルの年齢の魔物の数はかなり限られます。

 絶滅危惧種のようなものですね。

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