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十数日間の歩み

少し予約日を変えました。

次からも毎週月曜予約でやってみます。

 あれから、十数日が経った。

 カケルは相変わらず、嘆きのラットのステーキを作っている。

 そもそも、塩と肉だけで作れる料理と言われてもカケルはステーキしか思いつかない。

 ともあれ、あれから毎日ステーキを作っており、ミミやキーリ達は飽きもせずにステーキにむしゃぶりついていた。


 料理以外に変わった事と言えば、嘆きのラットの無限湧きのポイントを見つけた事だ。


 ◇ ◇ ◇


 ある日キーリが、食器を洗っているカケルに尋ねた。


「なあ、カケル。確かカケルは進化するために、魔物を狩っていたよな?」

「そうだけど、どうしたの急に?」

「いやな、魔物狩りに丁度良い狩場があるんだが、カケルにも教えておこうかと思ってさ」

「良い狩場?」

「ああ、それが一段落したら早速行くか?」

「そうだね。お願いしても良いかな?」


 キーリに約束を取り付けた後、カケルは手早く洗い物を済ませると、ミミと一緒にキーリに着いて行く事にした。


 キーリは一度食事部屋から出ると、聖域の反対側のダンジョンの奥に進んでいく。

 そして、キーリが立ち止まったのはある部屋の入り口だった。


「ここだ」


 ここは確か、岩塩を取りに行った部屋の隣だよな。とカケルが思っている中、キーリは構わず入り口から中に入っていく。


「なに……、これ……」


 内部はドーム状になっており、壁はいつも通りの苔むした岩肌である。

 そんな中一番目立つのは、遥か上空から流れ落ちる滝と、その受け皿である滝壺だ。

 それだけなら、カケルでも見た事がある様な光景であり、絶句するほどの物では無い。だが、問題は滝として流れている液体にある。

 その液体は明らかに水ではなく、七色に輝く怪しい液体だったのだ。


「カケルは初めて見るか?」

「この変な色の液体の事?」

「ああ」

「そうだね。こんな色の液体は見た事ないよ」

「主様の世界には魔素が無いですからね。見た事が無くても仕方ないと思います」

「魔素? って事は、この液体が魔素なの!?」

「ああ、そうだな。詳しくは私も知らんから、詳しい説明はミミに任せる」

「分かりました。主様、この液体は魔水と言い、魔素が液体状態の時を指します。そして――」


 更にミミの説明は続く。魔素は通常の物質のように気体、液体、固体の状態が存在し、気体の状態を単に魔素、液体の状態を魔水、固体の状態を魔石と呼ぶのだと言う。

 物質と違い、温度によって状態が変化する訳ではなく、主に周りの環境によって状態が変化するらしい。

 今回の魔水は液体状態の魔素と言う事で、通常の魔素よりも濃度が相当に高いらしい。


「って事は、これに浸かればすぐに進化出来たりするって事!?」

「身体が崩壊しても良いのであれば、可能かも知れませんね」

「身体が崩壊!?」


 ミミが言うには、大気中の魔素と比べて魔水は超高濃度であり、身体への浸透率も高いらしい。

 前回の建材の話で例えると、浸透率が高いため建材の最大容量を無視して倉庫に侵入する性質があり、更に倉庫自体にも浸透して行くとの事。


 そして倉庫自体に浸透した魔水は、内側から倉庫に使用されている魔素同士の結合を弱め吸収してしまうらしいのだ。

 言うなれば骨粗鬆症(こつそしょうしょう)状態のような物だろうか? 身体を構成する魔素の密度が高ければ問題ないらしいのだが、スケルトン程度の魔素密度では即身体が崩壊するのだと言う。


「マジですか……」

「まあ、ミミの言う通りだな。私やミミであれば、単に気持ちの良い水のような物だが、カケルにとっては猛毒な水と言えるだろうよ」

「そっか……。簡単に進化出来れば嬉しかったんだけど、そう上手くは行かないか……」

「そうですね。直接は駄目でも、アレからマナドレインをする分には問題ないと思いますよ」

「アレ?」


 カケルがミミの指す方向を見ると、先程は七色の魔水に気を取られて気付かなかったが嘆きのラットが其処に居た。


「嘆きのラット……。居たのか……」

「アレはあの滝壺から生まれた魔物だな。何回倒しても復活するぞ?」

「え? もしかして無限湧きってヤツ?」

「そうだな。大体一刻の間に、百匹くらいは生まれたかな。尤もこの部屋の場合、一度に存在出来る上限は一匹のようだがな」


 えーとつまり、朝から晩までここで倒し続けると、八刻の百匹だから八百匹!?

 それなら直ぐに進化出来るんじゃないか? とも思ったが、戦闘時間と食事の時間や、魔力量とかを無視してるな。

 実際にどれくらい狩れるか分からないけど、進化しやすくなるのは確かそうだ。


 しかし、何で無限湧きするんだろう? しかも一匹のみの上限付きで……。

 うーん、気になるけど、そこまで重要な事でも無いか。


「そっか。キーリ、狩場を紹介してくれてありがとう」

「ああ、どういたしましてだ」

「よし! 頑張って狩りまくるぞ!!」


 それから、カケルは紹介された無限湧きの滝壺で、ラット狩りに励むこととなるのであった。


 ◇ ◇ ◇


 あの滝壺はカケルにとって便利だった。滝壺に落ちたら死ぬと言う恐怖はあるものの、魔素が効率良く手に入り更に食料も手に入るのだから嬉しい限りである。


 因みにカケルは、あの滝壺で嘆きのラットの鑑定もしていた。本来なら最初に会った時にするべきなのだが、カケルは忘れていたようである。


 ◇ ◇ ◇


名前:なし

種族:嘆きのラット

状態:正常

カルマ:-100

スキル:

魔法:

称号:食料

説明:嘆きの洞窟内に生息するネズミ、素早く動きで爪や牙を使って攻撃する。

 実は綺麗好きで、通常のネズミの様に病原体を保持してはいない。食材としてはかなり優秀で、肉が柔らかく旨みが凝縮されている。

 味は牛と豚の中間辺りで、特に癖も無いため多くの種族から愛されている。


 その結果は何と言うか悲惨だった。能力値は表示されないため強さの度合いは不明なのだが、称号が何よりも目を引いたのだ。


食料:あらゆる種族の、食料になり続けた種族が会得する称号。皆から好かれる(あかし)


 その称号を見た時、カケルは哀れみが込み上げて来た。

 皆から好かれている証とは言うが、要は食料として大活躍しているだけの事である。


 そんな哀れみを振り払い嘆きのラットのついでに、キーリとミミの鑑定も行っていた。


名前:キーリ・サーヴァイン

種族:ホーリードラゴン

状態:正常

カルマ:+12,358

称号:救いを齎す者、断罪者、神の友、ネズミの天敵

説明:光を司る龍であり、人間からは聖獣として崇められている種族。

 厳かな場所を好んでおり、彼等が住んでいる場所は聖域と化し、魂が穢れた者は近づけなくなると言われている。

 得意技はホーリーブレスで、その威力も然ることながら、その清浄化能力の高さが特徴である。その攻撃は毒や瘴気に溢れた空間すら清浄化する事が可能である。

 特にアンデッドに効果的で、一度ブレスを吐けば周りのアンデッドは一斉に浄化されると言われている。


 キーリは流石の一言だった。

 何と言うか高潔なイメージそのままで、ホーリードラゴンの説明もそれに沿った様な物だった。


救いを齎す者:命の危機に瀕した数多くの者に救いを(もたら)した証。生命体に対しての治療や救命にプラス補正が掛かる。


断罪者:私利私欲に囚われず、数多く罪を裁いた者に与えられる称号。相手の悪意や邪悪な気配に対して敏感になる。


神の友:神の友として認定された者に与えられる称号。


ネズミの天敵:ネズミ種族を大量に殺した者に与えられる称号。ネズミ種族に対する攻撃力が飛躍的に上昇する。


 ネズミの天敵だけは別かな……。恐らく、ずっと嘆きのラットばっかり食べてた影響なんだろうと思う。

 嘆きのラットを鑑定した時もそうだったけど、あのネズミ本当に哀れだよなぁ……。


 それはそうと、”救いを齎す者”と”断罪者”って気になるよなぁ。キーリに頼めば何があったか教えてくれないかな?

 後は、”神の友”か……。キーリの話し方からして、友達の神様はヴァルトロ様では無いと思うんだけど……。


 説明と称号に目を取られていたカケルだが、スキルと魔法の項目が無い事に気付いた。


「ねぇ、ミミ? キーリのスキルと魔法の項目が、見当たらないんだけど何でかな?」

「単純に主様の力不足かと思います。キーリ様との力量が余りにも大きい為、鑑定しきれなかったのかと」

「うーん、そう言う事か……」


 そう言えば、RPGでもストーリー上勝てない敵が現れたりすると、ステータスがハテナ表記される事があったな。と、カケルは記憶を掘り起こしていた。


「気を取り直して、ミミの鑑定良いかな?」

「はい、どうぞ」

「じゃあ、”鑑定”っと!」


名前:ミミ

種族:常闇ウサギ

状態:正常

カルマ:+1,329

称号:神の使徒、神罰を乗り越えし者、**を齎す者、**の化身、人間の**、無慈悲なる***、闇の支配者、種族の長、ウサギのアイドル、モフモフ、フワフワ

説明:闇ウサギ種の最上位に位置するとされている種族。

 体の大きさは進化前とされる種族よりもかなり小さくなっているが、身体能力や魔力は桁違いに上昇している。

 基本的に大人しい種族で、脅威的な能力とは裏腹に此方から攻撃しない限り、攻撃される事は無い穏やかな性格の種族である。

 また、極上の毛皮を持っており、触った者を虜にする。


 一方のミミのステータスは、首を傾げる事が多かった。

 まず、説明だ。説明には闇ウサギの一種で、脅威的な能力とは裏腹に此方から手を出さなければ、攻撃する事はない穏やかな性格の種族とある。

 脅威的な能力は分かるが、穏やかな性格? いやいや、あれだけ毒舌なミミの種族が穏やかな性格って!?


 次に何よりも称号だ。

 此方はキーリと表記に違いがあった。なぜか多くの称号に、伏せ字が混じっていたのだ。

 伏せ字になっていない箇所も、不穏な単語が見受けられキーリとは正反対に見える。

 とは言っても、カルマはプラス表記だし今までの行動からしても、そこまで危険な人物でな無いと思うのだが……。

 とりあえずと思い、伏字が無い称号を見てみる事にした。


神の使徒:神から直々に使徒として取り上げられた者に与えられる称号。理から外れた神の権限の一部付与、不老や強靭な肉体を手に入れる代わりに、神の仕事の一部を代行する義務が発生する。


神罰を乗り越えし者:与えられた神罰を乗り越えて、生き残った者に与えられる称号。神罰を受ける原因になった罪が(ゆる)され、カルマ値がプラス方向に増大する。


闇の支配者:闇を誰よりも理解し、闇に潜み闇を利用し、闇の中に生きる者に与えられる称号。全ての闇を操り、闇に属する全てのスキルを操ることが可能になる。


種族の長:種族の(おさ)の立場に居るもの。カリスマが増大し、他者を導きやすくなる。


ウサギのアイドル:ウサギの中のアイドル的存在。ウサギに対してカリスマ増大。


モフモフ:モフモフしている者に与えられる称号。モフモフ良いよね~。魅力アップ。


フワフワ:フワフワしている者に与えられる称号。フワフワも良いよね~。魅力アップ。


 ヤバいよこの人!? ”神の使徒”は別に問題無い。でも、”神罰を乗り越えし者”が怖すぎる! だって、ミミは神罰を受けるような事をした事があるって事でしょ?

 これと合わせて伏字の称号を見ると、恐怖感が増大するよ……。特に”無慈悲なる***”が怖すぎる。無慈悲なるなんて付いてる称号が、良い称号な訳が無いよね!?

 カルマ値がプラスだったのも、”神罰を乗り越えし者”の効果って事でしょ? でも赦されたんだから問題無いのかな?


 それに対して後半の称号は意味が分からない。”ウサギのアイドル”はまだ良い。多分、ミミはウサギ種族にとっての美人さんに当たるのだろう。

 だけど、”モフモフ”と”フワフワ”は単なる感想じゃん!? 神様、なんて称号付けてるのさ!?


 そんな事をカケルが思っていると、ミミが話し掛けてきた。


「主様、まだ全部の称号は見せられません。ただ、主様を取って食おうとかは思って無いので安心して下さい」

「えっ? いや、僕は別に……」

「私を鑑定した直後に、窺う様な視線をチラチラと此方に飛ばして居たのにですか?」

「え、えと、それは……」

「今はまだ話せませんが、既に過去の事で清算済みですから大丈夫ですよ?」


 何が清算済みかは、聞きたい様な聞きたく無い様な……。

 どちらにしても、このままの状態は宜しくないよな。

 そう考えていたカケルは、ミミに向き合い深呼吸をしてから告げた。


「すーはー……。うん、ごめんなさいミミ。そうだよね、生きていれば色んな事があるよね。正直ミミの過去は気になるけど、女性の過去は詮索しない方が良いとも言うしね」


 カケルはそう言ったが、果たしてそれは異世界の、しかもウサギに通じる話なのだろうか?


「は、はい……。そうですよね。女性の過去を詮索するのは良くないですよね……」

「でも、気になるのも本当だから、話しても良いと思ったら話してくれると嬉しいかな?」

「……分かりました」

「キーリもね!」

「わ、私もか!?」


 突然話を振られて驚くキーリ。


「うん。だって、キーリの称号もかなり気になるからね。どんな英雄譚(えいゆうたん)が語られるのかなって!」


 ミミの時とは違う感情のベクトルで、キーリに話すカケル。

 もしその顔は肉が付いていれば、ワクワクした様な少年の顔を拝見出来ただろう。

 そんなカケルの雰囲気を感じ取ったのか、キーリが苦笑しながら返答をする。


「ああ、その内な」

「うん! 楽しみにしてるね!」


 ◇ ◇ ◇


 あの鑑定結果は衝撃だったなぁ……。

 ミミとキーリの過去を、教えて貰えるのはいつになるのかな。

 特にミミが教えてくれるのは、かなり後になりそうだよね……。


 あれも衝撃的だったけどそれよりも、ここ何日かで一番大きな出来事はあの日の事だろう。


 ◇ ◇ ◇


 いつもの様にカケルは、嘆きのラットを狩り続けていた。


「よし、倒せた! これで何匹目なんだろう?」


 例の滝壺を教えて貰ってからは、暇を見付ければネズミ狩りを行っていた。

 そんな狩り方を続けていたせいだろうか。いつもの様に、マナドレインするカケルの手が止まった。


「……あれ? 何か、暑い気がするような……。室温が上がったのかな?」


 今にして思えば、暑いと感じた事が無かった事と、骨が暑さを感じる事に疑問を持つべきだったと理解出来る。


「あがっ……。何かいきなり……」


 先程までは少し暑いだけだったのだが、暑さが一気に増し始め更に体の力が入らなくなってしまい、カケルはその場に倒れ込んでしまった。


「っ! 主様!?」


 ミミが呼んでいる。返事をしないと……。

 何でこんなに身体が熱いんだ? それに力も入らないどころか、身体の自由が利かない気がする……。


 ミミが僕の体を揺すりながら呼んでいる。

 熱さは先程から更に増しており、アンデットなのに息をするのも辛い程だ。

 熱い、熱い、熱い!!!


「がっ……」


 ――進化に必要な情報が揃いました。

 ――スケルトンから、グレータースケルトンへの進化を開始致します。


 えっ?


 ――……身体最適化が完了。最終工程に入ります……。

 ――全工程が完了し、進化が完了しました。


「――様! ――るじ様! 主様!!」

「……うーん、……ミミ?」

「主様、良かった。気付かれましたね」

「あれ? 僕はどうして?」

「先ずはおめでとう御座います!」

「へ? ありがとうございます?」

「まだ気付いて無いようですね。主様はグレータースケルトンに進化しました。これで、前よりも出来ることが、増えたと思いますよ?」


 え、え? 進化? グレータースケルトン?

 まだ混乱している僕に、ミミは説明を重ねてくれた。

 僕はマナドレインの最中に、進化条件をクリアし強制進化が発生したらしい。

 先程感じた異常な熱さは、進化の時に体が作り替えられる際の副作用だったみたいだ。


 そして進化先は、グレータースケルトン。スケルトンの上位存在で、寿命は十年程に伸びており、能力はスケルトンとは比べ物にならないのだとか。

 自分で見た目をチェックすると、骨が前よりも太くなって若干艶が出てきた気がする。身長も若干伸びたような?

 目でのチェックはこれくらいかな。と言う訳で――。


「”鑑定”!」


名前:カケル・ソラノ

種族:グレータースケルトン

状態:正常

カルマ:+500

スキル:自動音声言語翻訳、鑑定、マナドレインLv2、生者への渇望、怨念の武具

魔法:火属性Lv3、風属性Lv3、土属性Lv3、水属性Lv2、闇属性Lv3、光属性Lv1

称号:花火師の血を受け継ぎし者、神の寵愛を受けし者、ラットハンター

説明:スケルトンの上位種であり、スケルトンが大量の魔素を得て進化した存在。

 身体能力が著しく向上しており、スケルトンと同様に扱うと痛い目を見る。

 グレータースケルトンに進化出来るのは全体の数パーセント程度であり、もし何体も姿が見られる場合は、そこには更なる上位種が存在すると考えられる。

 また、相変わらず暗くジメジメした環境を好んでおり、墓地などに多く見られる存在である。


「相変わらず能力値が出ないから分からないけど、スキルと魔法が幾つか上がってるね。カルマが上がってるのは何でだろう?」

「確かに不思議ですね。アンデッド種は普通進化する毎に、カルマは下がる筈なんですが……」


 まあ分からない事を考えていても仕方ないか。


 今回の進化でレベルが上がったのは、魔法の属性レベル全てとマナドレインだ。

 魔法属性では水と闇が上がったみたいだ。闇属性だけ二も上がっているのは、僕がアンデッドだからだろうか?

 因みに、光属性も追加されてたが、これはキーリに教わって覚えた物だ。今はただ辺りを照らすだけのライトが使えるだけだが……。


 属性レベルよりも気になるのが、新しく追加された生者への渇望(かつぼう)と言うスキルだ。

 説明によると、生者への渇望が過ぎるあまり、生物全般の探知能力が追加されるパッシブスキルらしい。

 つまりアレか? 僕が生者に対して、強い嫉妬を向けてるって事か?


 もう一つ追加されたのは、怨念の武具と言うアクティブスキルで、禍々しい雰囲気を持つ武具を生成可能らしい。

 尤もミミが言うには性能は低いし、呪われた武具の為一度装着すると破壊されるまで外せなくなる様なので、使用する事は無いと思うが……。


 そして、最後に追加された称号なのだが……。


ラットハンター:ラット型の魔物を狩りに狩った者に与えられる称号。ラット型の魔物への攻撃力が上昇し、ラットの解体にプラス補正が掛かる。


 うん、嘆きのラット達ゴメンよ。僕は君達を狩りすぎたらしい。

 まあ、恐らく狩るのは止めないだろうけどね。


 さて、確認はこれくらいで良いかな。


「ミミ、進化直後に気にする事ってあるかな?」

「そうですね。体に蓄えられていた魔素が空になるので、魔法や魔術を使えないくらいですかね」

「それって、戦闘中に進化するとマズいんじゃない!?」

「いえ、戦闘中の進化は基本的には無いらしいですよ?」


 ミミ曰く、戦闘中は常に緊張状態にあり、その状態での通常の進化は有り得ないらしい。

 そして戦闘が終わり気を抜いた段階で、進化が開始されるとか……。

 通常の進化はと言う所が気になるが、戦闘中の強制進化が無いのは助かるかな。


「なら今日の残りは、あの子達と遊ぼうか!」

「分かりました。あの方達も喜ぶと思いますよ?」


 その後カケルとミミは数刻の間、ライトフェアリー達と鬼ごっこで遊ぶ事になるのだった。


 ◇ ◇ ◇


 そんな風に過ごしていたカケルは現在、進化した体のスペックをフル活用して料理を作っていた。


「皆が良いなら良いんだけどねぇ……」


 カケルが作って居たのは、お馴染みの嘆きのラットステーキである。

 食器類のクオリティーは少し上がったものの、相変わらずの塩だけの味付けだ。


 この数日間に何回もステーキを焼いた為、カケルのステーキに対する火加減と水加減の技術が上がっていた。


「僕だったら単なる塩味のステーキなんて、二回連続で食べれば飽きちゃいそうだけど……」

「私は気にしないですよ? 生きてる年月が長いのですから、飽きが来るスピードも遅いんじゃないでしょうか? それにキーリ様に関しては、野菜等も食べれるとは言え殆ど肉食ですからね。そんな直ぐに飽きていたら、生活が成り立たないのではありませんか?」


 ミミが言うことは一理あるだろう。キーリ達ドラゴンは恐らく基本的に肉食である。

 本来なら生肉を毎日味付け無しで食べ続ける訳だ。

 肉の種類によって味が違うと言っても、高が知れている事だろう。

 それを肉が飽きたから食べないとなれば死んでしまう為、人間よりも余程飽きは来にくいのではと推測される。

 尤も、キーリの肉体維持に必要な食料は少ないため、数ヶ月に一度食べれば良い訳なのだが……。


「まあだとしても、いい加減他の調味料と食材が欲しいよね。せめて香辛料と野菜がくらいは欲しいかな?」

「香辛料と野菜ですか?」

「うん。この嘆きのラットステーキだって、胡椒と添え物にブロッコリーやジャガイモとかがあれば良くなるしね」

「何!? これよりも美味くなるのか!?」


 先程まで食器を並べてた筈のキーリが、調理場に顔を出して居た。


「そうだね。胡椒に関しては僅かの違いかもだけど、野菜に関しては合間合間で食べれば飽きが来にくくなる利点があると思うよ?」

「ふむ。あんなに美味い物を飽きる感覚は分からんが、美味くなるのであれば胡椒は欲しいな」


 そう言って、キーリは考え込んでしまった。


「キーリ、無理なら大丈夫だよ? 僕だったら飽きるんだけど、皆が飽きないならそれで良い問題だからさ。まぁただ、栄養の偏りは気になるんだけどね……」

「いや、カケルも進化した事だし胡椒を取りに行こう!」

「へ?」

「正直カケルが、スケルトンの時だったら行かなかった場所だからな。とりあえず飯食ったら行ってみよう!」

「う、うん……」

「それでしたら、私もお供致します」

「ああ、ミミも一緒に行こうか」


 あれよあれよと言う間に、胡椒を取りに行く事が決まってしまったなぁ。

 でも、これで香辛料が手に入るだろうし頑張らないとね!!

今回は小さめに纏めた話を幾つか出しました。

その為、もしかすると今までで最長かも知れませんが……。


ミミやキーリ、嘆きのラットのステータスがやっと出せました。

嘆きのラットはスキルも魔法も使えないです。しかも、色んな種族に美味しく頂かれていると言う不憫な魔物です。

現代で言うところの、牛や豚、鶏みたいな感じでしょうか?


キーリとミミの過去を示していそうな称号が出てきましたが、この二人の過去編は別途どこかで書くつもりです。


最後に進化ですね。進化はまだ先にしても良かったのですが、カケルが弱すぎて行動範囲が狭すぎるので、無限湧きの滝壺で進化させる事にしました。


新しいスキルの生者への渇望は兎も角、怨念の武具のスキルは恐らく使う事は無いと思います。

普通のグレータースケルトンが持っている武具は、このスキルを使用して作られています。

ただ、カケルにとっては死にスキルとなります。

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