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カケルの異世界クッキング

料理回です。

ちょっとグロイです。

料理回ですが、食事中は避ける事をお勧めします。

「おお、此処に居たか」

「キーリ? どうしたの?」

「ああ、そろそろ食事にしようかと思ってな」

「もう、そんな時間?」

「主様、既に五の刻を過ぎたくらいですよ」

「そうだ。それで、ミミを食事に誘いに来たのだ」

「私をですか? 分かりました、ご相伴に預からせて頂きます」

「うむ、それでカケルはどうする? スケルトンだから食事は出来ないだろうが、一緒に来るか?」

「うん、キーリが普段食べてる物も気になるし、一緒に行くよ」

「分かった。そしたら二人共、私に付いてきてくれるか?」


 訓練場を出た一行は一度聖域に戻ると、ライトフェアリー達に声を掛ける事にした。


「おーい、お前達も飯にするぞ」

「ごはん?」「ごはん!!」「お食事!?」


 キーリの言葉にライトフェアリー達はわらわらと集まって来た。


「じゃあ、行くか」


 ライトフェアリーを加えて部屋を出た一行は、ダンジョンの通路を歩いていた。

 辺りの風景は、相変わらず何処も似たような岩が剥き出しの洞窟である。そんな洞窟をキーリはよく迷わずに進めるものだと、カケルは後ろで感心していた。


 それから更に三十分くらい進み続ける。

 周りを見ながら進んでいたカケルは、ふと不思議な事に気付いた。


「ねえ、今まで気付かなかったけど、この洞窟って虫や普通の動物居なくない?」

「カケル、ダンジョンには普通虫や動物は住み着かないぞ?」

「そうなの?」

「ああ、余りにも弱いと生きたままダンジョンに吸収されてしまうから本能で回避するし、そうでなくてもダンジョンに満ちている魔素により魔物化してしまうから、普段見ることはまず無いな」


 生きたまま吸収って……。ダンジョンってそんなに怖いとこなの!?


「僕、弱いスケルトンなんだけど、吸収されたりしないよね……?」

「あのなあ、生きて強制的に吸収するのは虫や小動物程度が限界だ。人間レベルの大きさのスケルトンが、吸収出来るはず無いだろ?」

「そっか、良かった……」

「それに、カケルを弱いスケルトンと称するのは疑問だがな」

「えっ?」


 キーリが言うには、スケルトンは魔法や魔術を使えず知能も殆ど無いため、拳で殴るか噛み付き程度の攻撃しかしてこないらしい。


「因みに、嘆きラットは元々この洞窟に居たネズミが魔物になったのものらしいぞ?」

「へえ、そうなんだ」


 キーリの雑学を聞きながら、一行は更に三十分くらい進んだ所にあった部屋に入った。

 部屋の中は聖域よりは暗いが、十分な光に満ちていて部屋を見渡す分には支障が無かった。

 部屋はアーチ状の縦長で、奥行きは三百メートル、幅は五十メートル程だろうか。中央にはとても長いテーブルと、多数の椅子が並んで居る。椅子の数は多すぎて数える気にはならないが、百人は余裕で座れそうだ。

 床と壁は岩を磨いたような材質で、テーブルと椅子の木の材質と微妙なマッチをしている。


「ここで食べるの?」

「ああ、取り敢えずそこに座ってくれ」


 そう言って、テーブルの奥を指し示す。

 僕とミミは取り敢えず、入り口から見てテーブルの右奥に隣り合わせで座った。

 ライトフェアリー達は体が小さいので、逆側の椅子を数人で一つずつ取っていった。


「ああそうだ! ミミは草食じゃないよな? まあ草食だと言われても、ストックが肉しか無いんだが……」

「大丈夫ですよ。私は雑食なので、何でも食べられます」

「そうか、それは良かった。では料理を持ってくるので少し待っていてくれ」


 キーリはそう言い残し、部屋の右奥にある扉に入っていった。

 あそこが調理場だろうか? そう考え込んでいたのが、いけなかったのだろうか。


「さあ、出来たぞ! 遠慮無く食べてくれ!」

「キーリ様、ありがとうございます」

「わーい、お肉だ~」「食べよう~」


 僕はキーリが持ってきた物を見てフリーズしてしまい、言葉を掛けるタイミングを逃してしまった。


 ガリッ、バリッ! ブシュー! ムシャムシャ……。


 おおよその料理では有り得ない音が鳴り響く。そして、彼女達がソレを食べる度に、液体がテーブルと口周りに撒き散らされる。


「……ねえキーリ、それは何……?」

「何を言っているんだ? カケル、これはさっき作った料理だぞ」

「そうですよ、主様。料理以外の何に見えるんですか?」

「うん、僕が悪かった……」


 そうだ、相手はどれだけ人間臭くてもドラゴンとウサギ、妖精なんだ。まともな料理が出てくる筈も無かったのだ。

 それを人間に当てはめて、料理が出てくると思った自分が悪いのだ。

 それは分かった、分かったのだが……。


「これは酷すぎる!!」

「酷いって何がだ?」

「ビジュアルがだよ!」


 毛を(むし)っただけの嘆きのラットの死骸を、口から血や臓物を垂れ流しながら食べる、絶世の美女と可愛らしいウサギや小さな妖精達……。

 うん、駄目だろこれは……。


「ビジュアル?」

「そう! 幾らなんでも見た目が酷すぎる。断固料理の改善を要求する!!」

「なあミミ、何でカケルはあんなに憤って居るんだ?」

「少々お待ち下さい。――どうも人間は料理に対して見た目を求めるようです。少なくとも、嘆きのラットを生のまま切り分けないで料理として扱う事は無いようです」

「見た目ねえ……。食事なんて、身体の維持のための行為だろ? 何で、そんなに拘るんだ?」

「食事は身体の維持の為のだけじゃない!! 味や見た目を楽しむ事で、心にも栄養を届ける物なんだよ!!」

「そ、そうか……」


 あれを料理と断固認める訳にはいかない!


「って訳で、料理のやり直しを要求する!!」

「と言われてもなぁ……。私は人間風の料理の仕方は知らないぞ?」

「私も知識としては分かりますが、実際にやった事はありませんよ?」

「なら僕がやる!!」

「カケルは食事が出来ないのに、料理をするのか?」

「ああ、あれは認められない! キーリ、食材は嘆きラットでも良いとして、包丁と塩と胡椒はここにある?」

「ホウチョウとはなんだ?」

「キーリ様、包丁とは人間が使用する料理専用の剣みたいな物らしいです」

「料理専用の剣があるのか、それは凄いな……。えーっとカケル、残念ながらここに包丁は無いぞ? 塩と胡椒は名前だけ聞いた事があるだけだ」


 マジかよ! 包丁、塩、胡椒も無いんじゃステーキすら出来ないよ……。

 悩んでいる僕にミミが妙案を出してくれた。


「――主様、包丁に関しては剣を代替に使えばよろしいかと。胡椒を厳しいですが、塩であれば岩塩がダンジョン内で取れそうです」

「それだ!!」


 剣はキーリが普段使っている物を使用し、残りの塩を探すために旅に出た。

 と言っても、ミミの探索魔法のお陰ですぐ隣の部屋から立派な岩塩が見付かったのだが……。


「ヤバい……。この身体だと味見が出来ない……」

「主様、それなら私が何とか致します。付与魔法”幻の味覚(ファントムテイスト)”!」


 そう言ってミミは、丁度良い大きさの小石に対して付与魔法を使った。この魔法は対象の媒体を手に持ち、食材に触れると触れた部分の味を解析し、媒体を掴んでいる者に対して直接味を伝える物だと言う。

 例えば、ナイフに付与すれば肉を切る度に肉の味が、本来の味覚を感じる器官で感じられるらしい。

 スケルトンの味覚って何処だよ!? とも思ったが、人形は基本的に口の中に対して味覚を伝えるらしい。

 試しに石を掴んで土に対して当ててみると、昔運動会の際に転んで経験した運動場に近い味が口一杯に拡がった。だが、あのジャリジャリした食感とも言うべき感覚が無いので不思議な感覚だ。

 そこまで考えてからカケルは、何故僕は土で試して更に考察までしているのかと思い至り少し沈んだ。


「主様、何をやっているのですか……?」


 ミミの声も若干呆れ気味だった。


 気を取り直し、嘆きのラットの調理に入る事にした。今回の調理には包丁代わりに、キーリから借りた凄まじい切れ味の長剣を使う。

 まず、調理に必要な最低限の食器などを作り出すことにする。必要な魔術名は、ミミに聞いておいた。


「まずは、”平鍋創造(クリエイトパン)”!」


 カケルの魔術行使に従い、目の前に歪なフライパンらしき物が現れた。

 水魔法で精製した水を入れてみると、底から水が漏れ出した。


「失敗か……」


 その後何回か生成しなおし、水が漏れ出さないフライパンの生成に成功した。


「よし! じゃあ次は、”皿創造(クリエイトディッシュ)”!」


 こちらは一発で成功し、水漏れはしなかった。

 同じように魔術を行使し、お皿を座席数プラス一枚生成する。


 本当は、ナイフやフォークも欲しいんだけど、魔力が足りなくなりそうなので止めておく事にする。


「じゃあ、料理開始だ!」


 まず、毛を毟った嘆きのラットの首を切り落とし、血抜きを行った後、軽く火魔術で炙り毛を綺麗に燃やし尽くす。更にそれを肉とモツに切り分ける。

 ラットの解体なんてした事が無いので、うまく肉とモツに分かれず肉の部位が少なくなってしまった。

 次に、先ほど作った歪なフライパンモドキに、先程のラットの厚切り肉を座席数分入れる。そして、岩塩から削った塩を軽く振った後、水魔術で産み出した水を少し入れて、フライパンモドキにお皿で蓋をする。

 弱火から中火くらいで炙りながら、待つ事に八分程、蓋を開けて引っくり返して更に八分。

 最後に土魔術で作った歪な皿モドキに乗せて、嘆きのラットの厚切りステーキの完成だ!


 一枚のステーキの端を切り取り、先程の小石で潰してみる。すると、相変わらず食感は無いものの、たっぷりの肉汁と控え目の塩っ気が効いたラット旨味が口の中に拡がった。味の方向は鳥と牛の間くらいだろうか?


「美味しい!」


 これなら、キーリやミミも料理の大切さを分かってくれるだろう。


「さあ、完成したよ! これが本当の料理、嘆きのラットステーキだ! 皆食べてみてよ」


 そう良いながら歪な皿をキーリ、ミミ、ライトフェアリー達の前に置いていく。

 魔力が足りなかったので、今回は仕方なく手掴みで食べてもらう。


「これが、料理か……。嘆きのラットの原型が無いな」

「原型の残る料理の方が珍しいよ。まあ、食べてみてよ」

「分かった。頂こう」


 ミミやライトフェアリー達が料理に手をつけずに見守る中、キーリがステーキを手にとってワイルドにかぶり付いた。


「これはっ……!」

「どうしたの?」「嘆きのラットじゃ無かったの?」「キーリ姉ちゃん?」

「キーリ様、どうされました?」

「旨い!!!! これが本当の料理か? これに比べると先程の物は、生臭くて如何に酷かったかが分かるな……」

「そんなに違うの?」

「ああ。少し、多分塩か? それがキツい気もするが、旨いとはこう言う事だと分かるな」

「へえ! 私も食べてみる!」


 キーリの旨いの説明に対して、興味を持ったライトフェアリーの子が肉にかぶり付く。

 見た目が特に幼い可愛らしい妖精が、肉にかぶり付く様子は人の子であれば叱られそうな光景だ。


 カケルはそれも気になったが、塩がキツいとの解答に驚いた。塩を殆ど知らないくらいだったし、塩辛さに慣れてないだろうからとかなり少な目で調理したのだが、これでも駄目だったのだろうか……。


 先に動き出した子に勇気付けられてか、他のライトフェアリー達やミミも食べ始めた。


「美味しい~!!」「本当だ、凄い美味しい!」

「これが料理ですか。美味しいですね。塩辛さはありますが、これは慣れの問題でしょう」


 フェアリー達は称賛してくれたけど、流石にミミは冷静だった。

 しかし、正直カケルは不満だった。血抜きも時間が経ってからだったし、調味料も塩だけだった。嘆きのラットの肉の旨味に大いに助けられた格好だ。後、手掴みも良くない。早急にスプーン、フォーク、ナイフ辺りは作るべきだろう。


 そんな考え事をしていたカケルに対して、ステーキを食べ終わったらしいキーリが神妙な顔をしながら話し掛けてきた。


「カケル、嘆きのラットステーキだったか? とても旨い料理だった。出来れば次からも作ってくれると嬉しいんだが」


 そんな言葉を頂いてしまった。それ自体は嬉しいんだが、時間があれば魔術や花火の練習をして花火師の腕を磨きたいところである。

 カケルが返事をしない事に対して勝手に解釈したのか、キーリが言葉を重ねる。


「すまん、やはり迷惑か? カケルにはカケルのやりたい事があるだろうしな」

「いや、それは……」

「いや良いんだ。無理なら無理で仕方ない……」

「主様、料理は花火の練習になりますよ?」

「えっ?」

「料理を作るのには、火、水、土、風と満遍ない属性の魔法を使用しますから、花火に必要な魔法のレベルが上がりますよ」

「確かにそれは魅力的だけど……」

「では特別に私が、進化と魔法習得のお手伝いを致します」

「ならば私も同じく手伝おう。光属性の魔法なら任せろ! しっかり教えれるぞ?」


 それは寧ろ願ったり叶ったりの提案だった。と言うのも、ミミは一般知識の提供は約束してくれたが、他の事に関してはミミの気持ち次第だったのだ。この世界はかなり危険らしいので、防衛手段や逃げる手段を持ってないと、花火師として成功する前に死ぬ可能性が高い。

 それを回避する為にも、花火の為にも魔法は必須能力だ。


 カケルがどうやって教えて貰うかと思案していた、キーリの教えの確約が取れたのは大きい。

 そして何より、進化の手伝いをしてくれると言う事。つまりミミやキーリの傍らで、カケルがパワーレベリングを行えると言う事だ。これは、進化の手助けとしてはかなり期待できる。

 そもそも、カケルのマナドレインはチートレベルのスキルなのだ。本来、魔物を倒すと溢れ出す魔素を吸収する事で、進化に必要な魔素を得る事が出来る。但しこれは、倒した魔物が持っていた魔素の数パーセントにも満たない。

 それがカケルのマナドレインは、全体の十パーセントは奪い取れる訳だ。


 RPGを例に出そう。レベル三十の主人公が、レベル三十の敵を倒した時に得られる経験値が千だと仮定する。その場合主人公が次のレベルに上がる為に必要な経験値は、数万を超えるだろう。では、レベル三十の敵は千の経験値しかもって居なかったかと問われると、それは間違いなくノーであろう。

 恐らくは数十万単位の経験値を持っていた筈である。では、この本来持っていた経験値を丸ごと奪えたらどうなるだろうか? 間違いなくゲームバランスの崩壊を招く事になる。

 カケルのマナドレインは言うなれば、相手の経験値を丸ごと奪い取る事に他ならないのだ。現在は丸ごとでなく十パーセント程度だが、先の例で十パーセントだとすれば恐らく、一、二匹の敵を狩るだけで主人公のレベルは上がると思われる。


 さて、そんなマナドレインを持つカケルが、パワーレベリングをしたらどうなるか? そう、バランス崩壊レベルの速度で、レベルが上がって行く事だろう。尤も、ゲームと違い、現実世界でどれだけのスピードで進化出来るかは不明ではあるが……。


「はぁ、分かったよ。僕が料理作るから、代わりに魔法と進化の手伝いをお願い」

「ああ、取引成立だな!」

「主様、ご承諾頂きありがとうございます」

「そうそう、ここの食事って一日何食かな?」

「はぁ? 一日何食って、一食に決まっているだろう?」

「キーリ様、主様は違う世界に住まう人間だったのですから、此方の常識を振りかざしても意味がないかと」

「ああそう言えば、そう言っていたな。カケル、此方のと言っても魔物達の常識だが、一日に何度も食事する事は無い。最大で一日一食が限度で、数日から数ヵ月に一食の奴等も居るらしいぞ?」


 数ヵ月に一食ってどんだけだよ!? かと思ったが、キーリが人間の姿をしているから、そう思うだけだと思い至った。

 人間じゃなくて動物で考えれば、肉食獣とか割りと数日間食べないヤツが居たよなと。数ヵ月ってのは魔物だって事に起因しそうだが、地球上でも探せば居そうなレベルだ。


「えーっと、僕の常識からすると一日三食が基本なんだけど、一日一食で良いの?」

「三食もか!? それは贅沢で良いが、食材の収集が間に合わないだろ?」


 ああそうか、肉も買えば手に入る訳じゃないから、全部自分達で取ってくる必要があるのか。


「確かに、それなら一先ず一日一食と言うことで。ただ色々準備はしておきたいから、やれる事はやっておくよ」

「ああ、それで十分だ。肉に関しては任せてくれ!」

「私も何かあれば任せて下さい。大体の獲物なら狩って見せます」


 こうして、カケルの料理は大好評に終わり、今後も料理を作る事となった。


また長い……。

さて、カケルはキーリ達が食べている姿を見て怒っていましたが、皆さんでしたらどうでしょうか?

カケルが見た光景は、スプラッタとしか言いようの無い光景になるかと思いますが、私でしたら目を背けるかも知れません。


また、カケルが作った嘆きのラットステーキですが、ただの塩味でもかなり美味しい部類に入ると思います。

ペルーで食されていると言われるクイは鶏肉の味に近いらしいですが、今回の嘆きのラットは牛肉と鶏肉の間くらいの感じになります。

今後も魔物を食材として扱いますが、牛や豚などに近い魔物は多分殆ど出てこないかと思います。


後今回の話で、ミミに肉球が付いている理由として、私が欲しいから付けた以外の物が出て来ましたね。

ミミは雑食性の魔物でありハンティングも行うので、隠密性を高める肉球により狩りの成功率を上げる事が出来ます。

尤も、ミミの実力で動くと殆ど意味が無い飾りに成り下がるのですが……。

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