二度目の魔術練習
魔術練習二度目になります。
カケルはライトフェアリー達と別かれた後、神殿内で骨休めして居た。
「主様、次はどうされますか?」
「うーん、少し休憩してから魔術の練習の続きかな? まだ、ラット以外を相手にするのは怖いし」
「畏まりました」
休憩を終えたカケルは、ミミを引き連れ昨日の鍛練場に来ていた。
少ないながらも一応三属性の練習は終えていたので、他のレベル表記が無かった属性にトライする事にする。
「となると、先ずは水属性かな?」
魔法や魔術の属性は全部で六つある。火、水、風、土、光、闇の六つだ。無属性に属する物もある為、無属性を含めば七つとなる。
無属性は特殊なので置いておくと、カケルが習得していない属性は水、光、闇が残っている訳なのだが、光や闇のような特殊属性よりも、基本属性の方が扱いやすいだろうとの理由から水属性を選んだのであった。
「ミミ、水属性ってどんな魔術があるのかな?」
「そうですね……。ウォーターボールや、ウォーターカッター、ウォーターウォール等がありますね。ただ、主様は現在属性レベルが無い状態なので、単なるウォーターから始めた方が良いかと思います」
ウォーターは水の生成、及び水を操る魔術である。操ると言っても威力はとても低い為、戦闘では無く水遊びに使うのがピッタリな魔術である。
必要は属性レベルも低い為、練習には打ってつけらしい。
「分かった。ウォーターで練習してみるよ」
カケルは空気中の水分を絞り出すイメージをしながら、トリガーワードを唱える。
「”ウォーター”」
魔術は発動しなかった。
「そう簡単には行かないか……」
前の三属性は既にレベル三だったが、今回はレベル表記なし。言うなればレベル零の状態だ。
本来、レベル零の属性魔術は発動しないのが普通で、発動にはレベル一に上げる必要があるのだ。
その為、発動しない魔術を使い続けて、発動するまで足掻く必要がある訳だ。なお魔術の場合、発動しなかった場合の魔力消費は無い。
「”ウォーター”……、”ウォーター”……、”ウォーター”……」
まだ何も発動しない。
ウォーター、ウォーター、ウォーター……。
カケルが同じ魔術を発動し続けるが、一度も成功しない。
更に同じ魔術を使い続けて、カケルが唱えるワードが三百回に届く頃変化が見られた。
「お?」
「主様、おめでとうございます」
カケルの魔術に反応して、スポイト数滴ほどの水が空中から表れ地面を濡らしたのだ。
「やっと変化が出てきたよ……」
「次は、飲み水に出来るくらいの生成ですね」
「うん。続けて行くよ。”ウォーター”!」
カケルは何回も魔術を使っていく。
スポイト数滴から数十滴、スポイトからお猪口と、段々に水量が増えていく。
そして――。
「”ウォーター”!」
バシャッ。
遂にコップ一杯程の、水の生成に成功したのだった。
そして――。
――水属性への適正上昇を確認。
――水属性がレベル一に上昇しました。
と言う女性の声の様な言葉が、訓練場の中に響いたのだった。
「え?」
「主様、おめでとうございます」
「えとうん、ありがとう。それで、水属性のレベルが上昇した趣旨を告げる言葉が鳴り響いたんだけど、これって何?」
「それは――」
ミミが言うには、世界システムの音声だと言った。
レベルが上昇やスキルの取得、種族の進化の際にも鳴り響く音声だと言う。
世界システムの詳しい事はミミにも分からないらしいのだが、恐らく神々がこの世界を作った際に組み込んだ物ではないかと推論した。
「ミミにも分からない事があるんだね」
カケルはアカシックレコードを使っても、分からない事があるのか言外に含ませながらもそう言った。
「スキルでアクセス出来るのは、アカシックレコードの一部だけですからね。権限が足りていないのでしょう」
アカシックレコードへの全アクセス権は、ミミが知る神々でさえ持ってないとの事だった。そんな権限を、一介の使徒が持っている訳が無いのだ。
「そっか、万能な訳ではないんだね」
「はい。ですからそう言う物だと、認識しておけば宜しいかと」
「うん、そうしておく。えと、水属性が終わったから、次は闇属性かな?」
「はい、私は光属性は教えられないので、そちらはキーリ様にお願い致します」
「うん、分かった」
「闇属性ですが――」
闇属性。良くゲームや小説とかでは状態異常を引き起こしたり、相手を意のままに操るなどの敵役が使うことが多い属性だ。
一方この世界においては、ある意味光属性よりも重視されている属性である。
と言うのは、無属性や専用属性になっても良いような、重力や空間を操るような強力なものがここに含まれるからである。
例えば、イベントリやアイテムボックスの名前で有名な時間停止空間や、反重力による空中浮遊などはミミも良く使う魔法なのだそうだ。
そんな闇属性だが、低い属性レベルではダークボールや影縛りなどが有名である。
但しこれも水属性と同じく、生活魔術のダークから使うのが良いとの事。
ダークは周りの光を奪い取り、暗闇を作り出す魔術だ。こう説明すると妨害魔術にも聞こえるが、元々は白夜のせいで寝不足になった魔法使いが快眠するために産み出した物らしい。
「よし、じゃあ使ってみるね。”ダーク”!」
「何も起こりませんね」
「うん、ここら辺はウォーターと同じだね。と言うことで、”ダーク”……、”ダーク”……、”ダーク”――」
ウォーターの時と同じく、ダークを使い続けるカケル。
ただウォーターと違い、三百回を過ぎても変化が見られなかった。
「”ダーク”……、”ダーク”……、”ダーク”……。はぁ、もう五百回は唱えてる気がするんだけど、全然変化がないね……」
「闇属性と光属性は適性が現れにくく使える者が少ないですし、適性があったとしてもレベルが上がりにくいものですから仕方ありませんよ」
「そうなのか……」
仕方ないと諦めたカケルは淡々とダークを唱え続けた。八百回……、千回……、千二百回……。まだ変化は表れない。千五百回……、千八百回……、二千回……。
「おっ?」
「変化が表れ始めましたね」
二千回を越えた頃、ようやく変化が表れ始め、魔術を放った場所が僅かに暗くなったような気がした。
それから更に作業を続け、ついに……。
――闇属性への適正上昇を確認。
――闇属性がレベル一に上昇しました。
闇属性レベルが一に上昇し、辺りが少しの間暗闇に包まれた。
「よしっ!」
「おめでとうございます」
「うん、後は光属性だけだね」
これでカケルが保持していない属性は光属性のみとなる。光属性はキーリに教えてもらう為、そちらは後回しになる。
「光属性は置いておいて、他の属性で覚えておいた方が良い魔術ってあるかな?」
「そうですね。レベルは足りませんが、闇属性の空間魔術系列は大変便利ですよ」
「空間魔術か……」
ミミが主に言っている空間魔術とは、アイテムを大量に入れる事が可能で、実力によっては時間停止も可能な魔術、ストレージ。術者が知っている二点間を繋げ、時間をロスせずに移動が可能なテレポーテーション。この二つである。
この二つはとても有用ではあるのだが、代わりにストレージはレベル四以上、テレポーテーションはレベル六以上を必要とする高等魔術でもあるのだ。
「覚えたいけど、条件が厳しいな……」
「でしたら後は、複合魔術ですかね」
「複合魔術?」
「はい――」
複合魔術。それは本来一つの属性で完結する魔術だが、複数の属性が必要な魔術の事である。
例えば、水属性、風属性、土属性を合わせた大嵐や、火属性と風属性を合わせたファイアストームなどがある。
これ等は同等威力レベルの単一属性よりも、必要な属性レベルが低くなる傾向があり、複数の属性レベルを保持する者には有用な物も多いのである。
「うーん、複合魔術か……」
「光属性以外を覚えている主様には、有用かと思いますよ? 尤もレベル一のままだと、あまり良い魔術は無いかも知れませんが……」
「例えば何があるかな?」
「そうですね――」
複合魔術は登録者が少ない為、その数も少ない。そんな中でカケルの今の属性レベルで使える魔術は、片手で足りる数しかない。
例えば砂嵐。地属性がレベル二と風属性がレベル三必要な魔術である。これは、一定の範囲に対して砂を含んだ強風を巻き起こす魔術で、相手を撹乱したり相手の目を奪う時に使用する物である。
例えばフレア。火属性レベル三と風属性レベル二が必要な魔術で、ファイアやファイアボールなどと攻撃範囲は同じくらいだが、熱量が相当上がった魔術であり、ファイアボール等では熱量が足りない時に有効であろう。
「サンドストームとフレアか……」
「覚えておくと役に立つと思いますよ?」
「分かった。覚えてみるよ!」
その後カケルは、複合魔術の練習をし続けサンドストームとフレアを何とか習得するに至ったのだった。
これで、光属性以外の属性を習得しました。
火、風、土がレベル三で、水、闇がレベル一ですね。




