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カケルの考察と、魔術練習

3/3 誤字と共に採掘条件を変更しました。

 キーリに貸して貰った広場には現在、カケルとミミだけが残っている。

 キーリが見回りに出掛けた為だ。どうも彼女は、ここのダンジョンの管理者に近い立場らしく、増えすぎた魔物を間引いたり、異常事態に対処する人員なのだとか。


 因みにミミから聞いた話だと、この世界にはダンジョンマスターと言う言葉は無いが、代わりにダンジョンテイマーと言う言葉があるそうだ。

 ダンジョンテイマーとはその名の通り、ダンジョンをモンスターのようにテイムする人を指す言葉である。

 ダンジョンは魔物の一種であるので、大きな力を持っていたり魔物側がテイムする人を気に入ってくれた場合は、同じようにテイムが出来るのである。

 ダンジョンテイマーを飼い主として見ると、管理者に当たるキーリは飼育員とでも言うべき存在になるそうだ。


 キーリが見回りに出掛けた一方、カケルはと言うとこれまでの考えを纏めていた。


 僕の目的は世界一の花火師になる事だ。それにはまず、花火の作成と人々への認知が必須になる。

 ミミに一応聞いてみたけど、やっぱりこの世界に火薬は無いらしい。

 尤も在ったとしても、人間でない僕が買いに行ける訳が無いんだけどね……。


 気を取り直して、目的の達成には火薬の作成が必須となる訳だ。

 花火の火薬には、黒色火薬を使用する。黒色火薬は硝酸カリウムを初めとする酸素供給剤と、硫黄、木炭の混合物である。

 なので恐らく、このダンジョン内であれば、材料が揃っているのではと期待している。


 酸素供給剤には硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムなどが用いられる。これが強力な物程、火薬の威力が上がる事になる訳だ。

 効果としては、硝酸カリウム < 過塩素酸カリウム < 過塩素酸アンモニウムとなる。

 燃焼速度は、打ち上げ火薬 < 割薬 < 星の順番にする必要があるので、硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムの配合をそれぞれ変える事になる。


 ただ、過塩素酸アンモニウムに関しては有毒性があるため、正直僕としては酸素供給剤としては使いたくは無い。その分強力なため、酸素供給剤の量を減らすことが出来るのだが……。

 過塩素酸アンモニウムは、硝酸カリウムと過塩素酸カリウムだけで作ってみて上手く行かなかったら使うってところかなぁ……。


 火薬以外にも、星の焔色剤(えんしょくざい)である金属片、火薬を包み込む為に必要な玉殻、間挟紙に使う和紙。

 他にも必要な物はあるが、最低限コレだけあれば、残りは魔術などでどうにかなるのでは無いだろうか?


「先ずは火薬と焔色剤の確保からかなぁ……。ねえミミ、硝酸カリウムや過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムと硫黄ってこのダンジョンで採れるのかな?」


 採れないとなると、花火作成の難易度が更に上がるのだが……。


「少々お待ちください。――このダンジョンでは、硝酸カリウムである硝石や硫黄だけでなく焔色剤となる金属も採れそうです。ただ、過塩素酸カリウムや過塩素酸アンモニウムは自然界に存在しませんよ?」

「そうなのか……。でも硝酸カリウムと硫黄、焔色剤が取れるのは朗報だよね!」


 よし! これで、低威力の火薬と焔色剤は作れる。

 硝酸カリウムは自然界に硝石として存在するのは知ってたけど、過塩素酸カリウムと過塩素酸アンモニウムに関しては、自然界にどう存在しているんだろうって思ってたんだよね。

 この二つの酸素供給剤は多分、人口生成したものなんだろうね。これに関しては魔術とかで、頑張るしか無いんだろうなぁ……。


 そう言えばミミって、何時もどうやって情報を調べてるんだろう? 思い出してるって感じじゃないし……。


「ねえミミ、何時もどうやって僕の質問の答えを調べてるの?」

「それは特殊スキルに因るものですね」


 特殊スキル――アカシックレコード――の力だとミミは言った。

 アカシックレコードは、全ての世界の過去から現在までの全ての情報が載っていると言われている、神々専用のデータベースの様なものらしい。

 本来は神々しかアクセス出来ないのだが、神の使徒であるミミはそのアクセス権の一部をスキルとして付与されているのだと言う。

 因にだが、カケルの鑑定もアカシックレコードの情報の一部を使用しているらしい。


「成る程。もしかしてそのスキルを使えば、和紙を作ったりも出来るかな?」

「作り方の詳細は提供出来ますが、材料の採取や作成は主様がやってください」

「だよねぇ……」


 これまでの対応を見ていれば、ミミのこう言う返答は予想が付いた。精度が高い情報を得られるだけでも上々であろう。


「えっと、そしたらなんだけど、硝石と硫黄を採取する場所に行くには、僕の強さがどれくらい居るかな?」

「少々お待ちください。――」


 必要な僕の強さ。レベルと言う概念が無いため、曖昧にはなるものの最低でも二回進化しないと、基礎能力が全く足りないとの事だった。

 属性レベルに関しては特に指定は無かったが、土属性を上げておくと楽になるかも知れないとの事だった。


「はあ……、二回進化は遠いなぁ……」

「主様は魔術も碌に使えないのですから、進化の事を考えても仕方ないですよ?」

「まあ、そうなんだけどね。しょうがない、気を取り直して魔術の練習かな。魔物を倒してマナドレインしないと、進化どころか死んじゃうしね」


 カケルはかぶりをふって頭を切り替えた。


「えと、魔法や魔術のイメージによる威力向上ってあるかな? あるとすれば何れくらい?」

「それはですね――」


 魔術とは属性レベルと魔力量を除けば、ただの暗記物だとミミは言うのだが、ミミの話を聞く限り恐らくは最低限のイメージの部分が重要なのではとカケルは思う。


 ミミは誤差レベルだと言うが、実際にイメージで威力の変化はするらしい。

 例えば目の前の敵を焼き尽くせと思いながら撃つファイアと、目の前の肉を香ばしく焼いて調理しろと思いながら撃つファイアでは大分結果が違ってくる。

 確かに、魔法においての威力の増減や、ミミ達のような強者からすると誤差レベルではあるのだが、弱いカケルにとっては十分に使える情報である。


「成る程ねぇ。とりあえずそれは、頭の片隅に置きながら練習かな? ミミ、今から魔術使ってみるから、評価の方宜しくね?」

「仕方ないですね。分かりました。さっさと撃って下さい」


 先ずは嘆きのラットにも使ったファイアボールだ。

 ファイアボールよりも弱い火属性として、ファイアが存在するのだが、こちらは生活魔術に属する物で、攻撃には全くと言って使えないので省略だ。


 ファイアボール、火の玉を相手に投げ付けるだけの魔術だが、燃焼材が無いのに燃えている段階で物理法則を無視している。

 それは兎も角、ファイアボールの性能とは火の玉の熱量と、相手への命中率に尽きる。


 今回は最初に熱量の変化をさせてみる。

 先ずは先程聞いた、イメージでの変化だ。

 一回目のファイアボールは、マッチの火のイメージで撃ってみる。


「”ファイアボール”……」


 自然と声も小さくなったが、ファイアボールは正常に発現し地面に着弾した。

 威力は滅茶苦茶弱い。マッチの火をイメージした為だろう、拳の半分にも満たない大きさの炎が発現したのだ。


「主様、相当弱そうなファイアボールですね?」

「うん、イメージを最低限にしてみたからね」


 次はラットに撃ったレベルのイメージだ。

 このイメージは、つい最近航に借りたラノベのファイアボールのイメージのままだ。


「”ファイアボール”」


 イメージ通りに、カケルの顔よりも大きいサイズの火の玉が出現し、着弾地点の地面を軽く焦がした。


「此方は、先程と同等ですね」

「うん、此処まではイメージ通りの結果だね」


 最後は、溶鉱炉の温度のイメージに、某アニメでツンツンヘアーの主人公が作り出す、馬鹿でかい元気な玉の大きさをイメージする。


「”ファイアボール”!!」


 先程とは違い、両手で掲げるようにしながらトリガーワードを唱えて、地面に投げ込む。


 すると直径がカケルの二倍程度の火の玉が地面に着弾し、地面を黒焦げにしてしまった。


「これは!?」

「成功かな? 予想より小さいし、威力もかなり低いだろうけど、魔術としての上限とかが存在するのかなぁ……」

「あ、主様? 今のは何をしたんですか?」

「何って高位力のファイアボールだよ。ただ、大きさも威力もイメージより弱かったから、多分なんかの制限に引っ掛かったんだと思うんだけど……」

(確かにそこまでの威力も無く、範囲も狭いですが、低位の魔術としては破格の性能ですね……)


 今回のように魔術の範囲や威力が上がった場合、消費魔力は当然多くなる。

 従って連発は出来なくなるだろうが、切り札としては十分に使えるであろう。

 なお、ラットに使ったファイアボールの魔力消費を一とすると、今回のファイアボールは十~二十は消費している。


 ミミがやや動揺している事に気付かなかったカケルは、更に実験を続ける。


 さっきはかなりの大きさだったけど、圧縮って出来るのかな?


 先程と同じ熱量と大きさをイメージしながら、それをピンポン玉くらいまで圧縮するイメージで放ってみる。


「”ファイアボール”!」


 ピンポン玉大の火の玉は着弾した地面を、すり抜けるように地面下に消えていった。


「あれ?」


 着弾地点を見ると、ピンポン玉大の穴が火の玉を投げた軌道に沿って空いていた。


「成る程こうなるのか……。ミミ、この穴って何れくらいの深さに到達してる?」

「はっ? しょ、少々お待ちください……。これは恐らく二十センチくらいかと思われます」

「うーん、イマイチな威力だけど、使い方によっては役に立ちそうだね?」

「そうですね……」


 とりあえず火属性はこれで良いかな?

 次は風属性をトライしてみよう。


「ミミ、風属性で僕が使えるのは何があるかな?」

「ウィンドウ、ウィンドウカッター、ウィンドウウォールあたりでしょうか」


 ウィンドウ、これは単に風を引き起こす生活魔術だ。これを使えば、扇風機のように涼む事が出来る。

 ウィンドウカッターは鎌鼬(かまいたち)の様なものだ。離れた敵を切り裂く事が可能なのだが、そこまで威力は無い。

 ウィンドウウォール、これは風の壁の事で、飛来物の勢いを削ぐ事が可能である。但し完全に威力を削ぐ事は難しい。


 僕が練習するべきは、ウィンドウカッターとウィンドウウォールだろう。

 先ずはウィンドウカッターかな?


「ミミ、竹くらいの固さの的って作れないかな?」

「竹の的ですか。でしたら――」


 ミミが手を掲げると、地面から細長い棒が数十本生えてきた。

 棒の見た目は正しく竹であり、何十本も生えているのを見ると、竹林にしか見えないレベルだった。


「これで、どうでしょうか?」

「……ミ、ミミ? 竹を作ったの?」


 有機物って、魔法か何かで作れる物なの!?

 でも、これは竹にしか見えないしなぁ……。


「いえ竹は竹でも、竹に似せた土塊(つちくれ)ですね」

「これが土塊!?」


 凄いな。職人の技とも言うべきレベルの偽竹だよ。


「主様も、練習すれば出来るようになりますよ」

「う、うん……」


 いや、無理だろ!? と言う言葉を飲み込んで、魔術の練習に集中する。


 ウィンドウカッターや鎌鼬と言えば、RPGに良く出てくるので想像しやすい。

 今回は三日月型の刃を飛ばすイメージでやってみる。


「”ウィンドウカッター”」


 自分の手から何かが弧を描きながら飛んでいき、竹林の竹の一本に傷を付けただけに終わった。


「うーん、失敗か。威力が足らなかったみたいだね」

「恐らく刃が厚すぎた事と、力の掛け具合が足りなかったのが原因でしょう」

「成る程、厚みと力の掛け具合か……」


 それから更に調節し、イメージを固めていくと、ついに竹を切り落とす事に成功した。


「やった! ウィンドウカッターが完成したよ!」

「最低限の威力に届いた、と言うところですね」


 ミミの言う通り最低限の威力だ。一本目の竹を何とか切り落としたが、後ろの竹に届く頃には風が霧散し、ただ竹を揺らしたに過ぎなかったのだ。

 つまり、今の威力だと竹よりも固い敵には歯が立たない訳だ。


「うーん、今回は最低限使えたことに満足して、次の土属性をトライしてみるよ」

「確かにまだ一日目ですからね」

「うん、威力を上げるのとウィンドウウォールはまた今度にするよ」


 さて、お次は土属性の魔術だ。土属性は攻撃よりも先に、物を作り出す魔術を覚えたい。


「ミミ、土属性で物を作り出す魔術って何があるの?」

「物を作り出す魔術は、多岐にわたりますので、魔法を覚えた方が良いかも知れません」

「いきなり魔法を?」

「試しに作りたい物ってありますか?」

「やっぱり、湯呑みかな」


 轆轤(ろくろ)で作るなら湯呑みに限るでしょ!


「では、湯呑み創造(クリエイトコップ)ですね」


 うえ? マジですか……。湯呑み創造(クリエイトコップ)って分類って事は、皿創造(クリエイトディッシュ)とか箸創造クリエイトチョップスティックとかも在るって事だよね?

 流石に覚えきれそうに無いね……。でも、とりあえず練習として使うのはありかな。


「分かった。じゃあクリエイトコップをやってみるよ」


 僕が作りたいのは、寿司屋で出てきそうな、底が深い緑茶を入れるような湯呑みだ。

 焼き物の一種で、中学一年の課外実習で轆轤(ろくろ)を回して作った記憶がある。


 今回は、色は赤茶色一色で少し側面がデコボコした感じのを作るつもりだ。

 それを明確にイメージしながら――。


「”クリエイトコップ”……」


 カケルの魔術に反応して出来上がった湯呑みは、側面だけでなく接地部分までデコボコしていた。


 湯呑みを平らな岩の上に置いてみる。

 コトッ。ガタッ、ガタン。

 一瞬でバランスを崩して倒れてしまった。


「コップの最低限の体すら成してないですね」

「言われなくても分かってるよ……」


 何回か作り直すと、やっと平らな地面の上に立つコップが完成した。


「立った、立った! 湯呑みが立ったよ!!」

「はい、今回は倒れませんでしたね」


 ミミは表情を変えずに、湯呑みに対して魔法を使って水を注いだ。

 すると、湯呑みの底だけでなく側面からも水が噴き出してきた。


「あっ……」

「これはコップではありませんね」

「うん……。作り直すね……」


 カケルは更にコップを作ったが、完成すること無く魔力が枯渇してしまった。


「ミミ、魔術が発動しないよ……。それに何だか、体がダルい気がするんだ……」

「魔力切れですね。と言いますか低位の魔術とは言え、良くこれだけ持ちましたね?」

「魔力切れ……。MPが零って事か……」


 ファイアボール、ウィンドウカッター、クリエイトコップの三者類しか使ってないが、使用回数は三十を越えているはずだ。

 威力を上げたときもあるから、それ以上の消費があったはず。そう考えれば上々なのかな?


 ただこの魔力量だと、戦闘中に尽きる事も有り得るから注意しないと。


「では、今日はこれくらいにしておきましょう。聖域に戻りますか?」

「そうだね。まだ他にやる事もないし、聖域に戻ろうか」


 ミミは穴が空いたり焦げた地面を軽く均して、竹擬き(たけもどき)を元の土に戻した。

 軽くと言ってもミミにとってであり、周りを見回しても魔術の練習をした痕跡は、綺麗さっぱり消えていた。


「ミミは凄いね。僕もミミみたいに、上手に使えるようになれれば良いんだけど……」

「練習あるのみですかね。大丈夫です、主様は魔術を使う才能があると思いますよ?」

「そうだと嬉しいんだけど……」

「主様とりあえず、さっさと帰りましょう?」

「うん」


 カケルはダルい体を引き摺りながら、聖域へと戻っていった。

花火に必要な材料の確認と魔術の練習回でした。


酸素供給剤である硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムは、加熱すると一定の温度で酸素を発生しながら分解する危険な物質です。

特に過塩素酸アンモニウムは加熱時に有毒性のガスを発生させるため、手持ち花火には使用されておりません。ただ効率的であるので、打ち上げ花火には良く使われる物質のようです。


後半は魔術に関してでした。

この世界の魔術は、複雑なパラメータを与えるような設定が出来ません。

従って、クリエイト系は沢山の種類が作られています。

因みに、カケルが作中で言っていたクリエイトチョップスティックは存在しません。代わりに、クリエイトフォークやクリエイトスプーンであればありますが……。

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