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小さな生物と、大きな生物

転生して初のミミ以外との会話回です!

 最初にラットを倒した後から進むこと十五分、カケル達は大きな広間に出たいた。

 目測だが学校の運動場くらいはあるのではないだろうか。


 先程まで歩いてきた通路とは違い、広間には草木が生い茂り、上からは光が差し込んでいた。

 ふと、横に目を向けると湧水が湧いているのか、綺麗な小川が小さな音を立てながら流れていた。


 再び中央に目を向けて歩いて行くと、羽の生えた小さな生物に出会った。


「これは妖精……?」

「嘆きの洞窟で発見された記録は有りませんが、ライトフェアリーですね。綺麗な森などの環境に住む妖精で、夜になると淡く光ると言われています」


 ライトフェアリーと言われた妖精は、体長十五センチくらいの人型で、背中には透き通った青白い羽が四枚生えていた。

 肌は色白で、全体的に薄緑色の衣を纏っている。性別はあるようで、子供の様な顔をした男の子っぽい妖精と女の子っぽい妖精がフワフワと浮いている。

 ただ、顔の作りが綺麗過ぎて性別が同じ個体だと、どちらがどちらか全然分からなかった。


 ライトフェアリー達は僕達の姿に少し驚いたものの、すぐに笑みを浮かべながら周りにまとわり始めた。

 合計で、十人ほどだろうか。羽に光が当てられ煌めく様子に見とれながら進むと、不意に鋭い声が聞こえてきた。


「お前ら、どうやって聖域に入って来た!!」


 声に驚いたのか、ライトフェアリー達は散って行ってしまう。

 そして声のした方向に目を向けると、真っ白い白亜の神殿のような物を背景に、これまた真っ白いドラゴンが居た。

 体長は十五メートル程で、全身は真っ白な鱗――もしかした白銀色かも知れない――で覆われ、瞳は知性を称える深い蒼色をしている。頭からは金色の角を生やし、翼の骨格部分も金色に淡く輝いている。

 そんなドラゴンが、カケル達を警戒しながら見下ろしていた。


「ド、ドラゴン!?」

「私も見たのは初めてですが、とても綺麗ですね。種族はホーリードラゴン、聖獣(せいじゅう)や神の御遣(みつか)いとも呼ばれる存在で、何かしらの場所を守っている事が多いらしいです」

「暢気に説明してる場合じゃないよ!? すいません、魔術の練習をするスペースを探していて迷い込んだんです!」

「スケルトンが喋ったのか!? ――それに、魔術の練習だと?」

「は、はい、喋りますよ。じゃないと、相手と意思疎通が出来ないじゃないですか」

「主様、普通のスケルトンは喋りませんし、魔術を使うことも出来ません」

「えっ、そうなの?」


 カケルがミミと話していると、ホーリードラゴンの視線がミミに向く。


「なっ? お前は、もしかして常闇ウサギか!?」

「はい、仰る通り私は常闇ウサギです」

「なぜ常闇ウサギ程の者が、スケルトンなんかを引き連れて、こんな所をうろついている? まさか、結界を破ってまであの御方に危害を加えに来たとでも言うのか!?」


 ミミの種族に気づくと、ホーリードラゴンは警戒を引き上げ、ミミに意識を集中した。


 僕はどうやら蚊帳の外のようだ。

 ところで、ホーリードラゴンの言っているあの御方とは誰の事だろう?


「いいえ、ホーリードラゴン様。私と主様は、ただこちらに向かって歩いて来ただけです。あの御方と言うのは分かりませんが、結界の破壊などは行っておりません」

「だったら、何故スケルトンのような邪悪な存在がこの聖域内に入り込んで居る!?」


 ガーン、邪悪な存在って言われた。

 でもそうだよね、アンデッドだもん。邪悪な存在の代表格じゃないか……。


「それは偏見です。主様と私をしっかり観察してみてください」

「何? ――確かに、邪気が全くと言って良いほど無いな……。常闇ウサギは元来優しい者だと聞いたから分かるのだが、スケルトンはどういう事だ? こんなに澄んだ気配を持つスケルトンは、見たことも聞いたことも無いのだが?」

「主様は特別ですから。――それよりも、これで何か不穏な事を考えている訳ではないと、判って頂けましたか?」

「まあ、害悪にはならないようだな。だが、もう少し話を聞かせてもらうぞ?」


 そう言って、ドラゴンはカケル達に歩を進める。

 それと同時に、淡い光を放ちながらドラゴンの輪郭が薄れていき、最終的に僕達の傍まで来たときには、ドラゴンが一人の女性に変化していた。


 白銀の長い髪と、黄金に輝く角、真っ白な一対の折り畳んだ翼に透き通るような白い肌。折り畳んだ翼は骨格部分が淡い金色に輝き、瞳は深い蒼色を僕らに対して向けていた。

 彼女の身長はかなり高く百八十程はありそうだ。服装は青っぽいビキニアーマーみたいな物の上から白い羽衣を纏わせた感じだろうか、昔ゲームで見たヴァルキリーと言うキャラを思い出す。

 彼女の左腰には、持ち手付近から先に行く程細くなっているような両刃剣らしきものを帯剣しており、長さは彼女の身長の三分の二程はありそうだ。


「ええっと、ホーリードラゴンさんだよね?」

「そうだスケルトン。我が名はキーリ・サーヴァイン、キーリと呼ぶが良い」

「これはご丁寧にどうも。僕の名前は空野――、いやカケル・ソラノと言います。カケルと呼んでください、キーリさん」

「キーリ様、私は主様を補佐しているミミと申します。どうぞ、よろしくお願い致します」


 互いに自己紹介を行うカケル達。


「ああ……。それよりも早速聞きたいことがある。ミミは常闇ウサギなのに、何故こんな軟弱なスケルトンなどに仕えている?」

「キーリ様? いくらキーリ様でも、主様を馬鹿にするのは許しませんよ?」

「ミミ……!」

「ああ、それはすまな――」

「主様を馬鹿にして良いのは私の特権です!!」

「「…………」」


 上げて下ろすは、からかう基本だ。とでも言いたいような口調で、ミミはカケル扱き下ろす。


「主様? アホ面を晒してどうしましたか?」

「どうしましたかじゃない!! 何でミミはちょくちょく毒を吐いてくるんだよ!」

「ミミ、幾ら何でもそれはカケルが可哀相なんだが……」

「ですがこの私が、愚鈍で脆弱で愚かなスケルトンである主様に、仕えて差し上げているのですから、少しは私の楽しみに貢献してくださっても、宜しいのではありませんか?」

「ミミは僕に何か恨みでもあるの!?」

「――いえ、主様に恨みはございませんよ?」


 少し間を空けて、返答をするミミ。


「恨みを買ってないのにこの仕打ち……。心が痛い……」

「さて、アホ面を晒している主様は放っておきましょう。キーリ様、私が何故主様に仕えているかとの事ですが、私が仕える神様――ヴァルトロ・ディロス様に頼まれたからですね」

「何!? ヴァルトロ様だと!?」

「――キーリさん、知っているんですか?」

「当たり前だ! 我らが崇める女神様であられるリリアン様の、お父上にあたる方だぞ!?」


 あのグラサン神様――ヴァルトロ・ディロス――は、この地の信仰を一途に集めるリリアン・ディロスの父親らしい。リリアンは光と慈愛を司る神様で、人間からも多く信仰されている。

 また、キーリの後ろにある神殿が崇める主神でもあり、その父親ともなればリリアン程ではないにしろ、かなりの知名度があるとの事。


「何故、ヴァルトロ様が単なるスケルトンに常闇ウサギ程の者を付ける? ヴァルトロ様とカケルの関係には何がある!?」

「えと、それは僕から説明します。僕はこの世界とは違う世界で人間として死んだ後、ヴァルトロ様にこの世界へと転生してもらった者です。前の世界で死んでしまった時に、僕の父のファンだと言われるヴァルトロ様が、こちらに来て花火師の道を再び歩んでみないかと手を取って下さったのです」

「違う世界? それに、ヴァルトロ様がお前の父親のファンだと? 」

「はい、僕の父は前の世界でかなり有名な人物で、僕も憧れていた花火師でした」

「――さっきから、はなびしと言う単語が出てきて分からないのだが、はなびしとは一体何だ?」


 やはりと言うか、この世界に花火は無いようだ。もしかすると、火薬自体が無いのかも知れない。

 尤も、キーリがドラゴンだから知らない可能性も十分にあるが。


「うーん、どう説明すれば良いですかね。――この世界に則して言えば、火属性魔法で空中に花を咲かせるのが花火。その花火を操る術を持つのが、花火師ってとこだと思います」

「つまり、君のお父上は高名な魔法使いと言う事か?」

「ある意味そうだと思います。尤も実際には魔法は介さずに、花火は作られるんですが」

「魔法でもない火を、どうやって操るんだ?」

「ええっと、それは……」

「主様、それでは話が進みません。キーリ様、失礼します」


 そう言ったミミは、キーリの肩に飛び乗ると、キーリの頭に肉球をかざした。

 それと同時に、キーリの目のピントが合わなくなっていく。


「おい何を! ――これは……?」

「キーリ様、今見えてるのが、主様のお父上の花火でございます」

「――これが花火か……。なんて綺麗なんだ……」


 暫くすると、ミミは地面に降りた。時間にして、五分程だろうか。キーリの目に再び光が戻ってくる。


「――カケル、お前の父親の花火だったか? とても綺麗だった。これは、あの方が気に入ってもおかしくないな」

「納得してもらって何よりです」

「カケルはあの花火を、使えるようになりたいんだよな?」

「はい、父のような花火師になるために、この世界に来たんですから!」

「そうか、お前はその為に魔法を習得したいのだな?」

「身を守るためや、進化するためでもありますけど、最終的には花火師になるためにです」

「そうか、なら着いてこい」


 そう言ってキーリは、カケル達に背を向けて歩き出す。

 カケルは慌てて、キーリの後を着いていく。


「あの何処へ?」

「この聖域内では練習しづらい。魔法の練習に最適な場所に行くぞ」


 その言葉を最後に口を閉じ、キーリは黙々と進んでいく。

 十分くらい歩んだだろうか、先程の広間――聖域――を抜け、洞窟のような通路を進むと、聖域よりは小さいが開けた空間に出た。

 聖域とは違い、生い茂る草木も無ければ生物の気配も無い。唯一あるのは、既に枯れて死んでいると思われる幾つかの木だけだ。

 荒れた荒野を、洞窟の壁が囲っているような空間だ。


「ここは?」

「ここは、私の修練場だ」

「キーリ様、何故ここを紹介してくれたのですか? 主様は、貴女様方ホーリードラゴンが、特に嫌うアンデッドですよね?」

「まあな、確かにアンデッドは嫌いだ。ただ、カケルが先程の様な、花火を作り出す花火師を目指すのであれば、協力しても良いと思ったまでだ。それに、カケルからは邪気が感じられないし、何よりヴァルトロ様が送り込んだらしいからな」


 やはり、アンデッドは嫌われる存在なのか。邪悪な存在だもんね、予想はしていたけど、これで益々花火師の道が険しくなったなぁ……。

 これはどうやって、お客さんを集めれば良いんだろう――。


「カケル、我は――いや、私はこの場所を貸して魔法や進化の手伝いをする。その代わり、花火が完成したら、私にも見せてくれないか?」

「キーリさん、僕は父よりも未熟者ですよ?」

「ああ、構わない。いつまでも未熟なままで、居る気は無いのだろう?」

「勿論です! 世界一の花火師になるのが夢なんですから!!」

「なら、あの映像以上のものを、見せて貰うのを楽しみに待つさ」

「ありがとうございます! キーリさん!」

「キーリで良いさ。言葉遣いも無理に丁寧にしなくても良い」

「うん、分かったよキーリ。これから宜しく!」

「ありがとうございます、キーリ様。主共々お世話になります」


 こうして、カケルは異世界で初めての仲間を得て、花火師への第一歩を静かに踏み出したのだった。

ホーリードラゴンと小さな妖精が出てきました。

キーリですが、こちらも最重要人物の一人になります。

正体はホーリードラゴンですが、人化した見た目はヴァルキリーのような天使に見間違える程の美貌を備えています。


後、ミミがだんだんと毒を吐くような場面が出てきましたね。

基本的にミミは毒吐きキャラになります。

カケルがミミは酷いと言っていたのは、文章には書かれていない所でもちょくちょく毒を吐いていたからになります。

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