少女の心を縛る鎖 ~狂った復讐~
非常にグロい表現や汚い表現を含みます。
お食事中の方は特に注意して下さい。
その後、館の中に入ってもセレナ姉様の独壇場だった。
掛かって来た相手が奴隷の場合は、動けなくした後にミミ様が奴隷紋を取り去って、相手が雇われの場合は容赦なく殺して行った。
そして――。
「何ですか貴方達は!! 此処がこの方、グライ・オートン子爵の館と知っての狼藉ですか!!」
そこに居たのはいつもの執事と、その後ろで震える醜い豚だった。
「貴方が執事ね……? そして、お前が糞豚野郎か!!」
「ひっ……! な、何の目的があってこんな事をする……!?」
「なんの目的か、ねぇ……? 勿論お前を殺す為に決まってるわ!」
怖い……。この時のセレナ姉様は本当に怖かった……。
「ミミちゃん?」
「はい、何でしようか?」
「どれくらいなら治療出来るかしら……?」
「そうですね、頭さえ残して頂ければ幾らでも」
「そう……。それを聞いて安心したわ……。あぁ……、キーリちゃんは、あっちを任せて良いかしら……?」
「はぁ……、仕方無いな今回はお前に譲るさ」
そう言ったキーリ様は、一直線に執事へと向かい剣を鞘から抜き出すと同時に振りかざした。
「ぐっ……!」
その攻撃を受けた執事は部屋の壁を壊して吹っ飛んで行く。
そして、それを追うようにキーリ様はそちらへと向かって行った。
「これで邪魔は入らないわねぇ?」
「な、なぜ……。何故こんな事をするんだ……!?」
「何故、何故ねぇ……。レナちゃん、こっちに来て」
「は、はい!」
私がセレナ様の左横に立つと、オートン子爵は驚いていた様な視線を寄越した。
「お、お前はγ3!? 生きていたのか!?」
「え、えと……」
「レナちゃん……? 貴女を苦しめた奴の末路をそこで見ていると良いわ」
そうセレナ姉様が言うと、先程の地面から伸びる木々とは違いセレナ姉様の体から蔓のような物が出て来る。
「じゃあミミちゃん、私が攻撃するから回復はお願いね?」
「畏まりました」
そこから見た光景は、相手があの憎い豚だとしても止めてあげてと言いたくなる物だった……。
「ぎゃぁぁぁあああ!!!」
まず蔓の一部が、豚の頭をこちらに向いた状態で固定する。
そして残りの蔓が豚の手首の方へと飛んで行くと、その手首をスパンと切り飛ばしその勢いのままに両足を切断した。
更に続けて逆側の手足も切り飛ばすと、胴体も切り裂いていく……。
一度では無く、まるで輪切りにする様に何度も、何度でも……。
そして、残っているのが頭だけになると――。
「”ヘルヒール”……」
「あぐぁぁ!!!」
強制的に身体が再生される。
怖い……。ただただ、その光景が怖かった……。
「大丈夫かい? レナちゃん……」
左後ろから、私の肩に手を掛けて領主様が声を掛けて下さった。
「は、はい……」
「参ったなぁ……。殺さなければ良いとは言ったけど、ここまでするとはね……」
目の前では、何回目か分からなくなる程の回数の惨殺が行われている。
いや、殺してはいないのだから惨殺じゃないのかもだけど……。
◇ ◇ ◇
――ぎゃぁぁぁあああ!!!
「くっ……! 坊ちゃま!!」
「余所見してる場合か?」
「通して下さい!!」
一方のキーリと執事は、部屋の壁をぶち破って隣の部屋で戦っていた。
キーリの得物はいつもの剣。
執事は大振りのナイフ二本だ。
「なぁお前、どうしてあんな奴に仕えている?」
キーリの言葉に執事――フルガ――は、昔に仕えていた主を思い出す。
それは現在のオートン子爵では無く、その父親である亡くなったオートン子爵だ。
フルガは元々農民の産まれの子だった。
だが生活に余裕の無かった親は、フルガを奴隷として売る事を決意する。
フルガはその相談をしていた所を偶然聞く事が出来、家と家族を捨てて働く為に街へと出て来たのだ。
だが、何の後ろ盾も無い子供を雇ってくれる所など殆ど居らず、フルガはすぐにスラム街の住人と化していた。
ある日いつもの様にスリをして糊口を凌いでいた所を、オートン子爵に見つかり呼び止められたのだ。
勿論フルガも貴族に手を出す程の馬鹿では無く、彼とは接点は今まで無かった筈だ。
それなのにオートン子爵はフルガに衣食住を与えたのだ。
勿論善意などでは無く使い捨ての駒としての物だったのだが、心身共に限界だったフルガにとってそれは救いの手に見えた。
オートン子爵に拾われてからフルガは彼の汚れ仕事を引き受けるようになり、彼の才能も相俟って表向きは執事として纏め役の立場になって行く。
フルガは人を殺すのが日常になった。
だが、彼は恩を忘れずに仕え続けた。
それは、恩人が死去してその息子に家督が譲られてもブレる事は無かった。
そして、それは今も変わらない……。
「私が誰に仕えようと貴女に関係無いでしょう? 坊ちゃまを助ける必要がありますので、通らせて頂きます!!」
フルガはキーリに飛び掛かりながら、二本のナイフで斬りつける。
「通す訳にはいかないな。取り敢えず、もう少し遊んで貰おうか」
その言葉を最後に、再び二人の刃が交差し始めた……。
◇ ◇ ◇
目の前の惨たらしい光景は何回目だろうか?
仇討ちと言う名の拷問は絶えず行われていた。
気絶すれば無理矢理覚醒させられ、精神が狂えば治療されられる。
それは懇願されようとも延々と続けられていた。
「あ、あのセレナ姉様……」
「なぁにレナちゃん?」
「もう、止めてあげても良いんじゃないですか?」
「お願いだ……、助けてくれ……」
「喋るな糞野郎!!」
「ぎゃぁぁぁあああ!!!」
私の言葉に乗ってきた豚が、瞬く間に切り刻まれる。
カケル様は目を手で覆って途中から見ていないし、領主様は目が少し死んでいた。
「えと、本当にもうそれくらいで……」
「あら、もう良いの? あ、もしかしてレナちゃんの手でやってみたいとか?」
「い、いえ!! 本当に! 本当にもう大丈夫ですので!!」
「あら、そう?」
「あぁ……、セレナ殿。レナちゃんもそう言ってる事だし、もうそろそろ止めてあげても良いのでは無いかな?」
レナは単純に可哀想になって来ていたが、ティザークの言葉にはそろそろこの光景と臭いに耐え切れなくなって来たと言う気持ちが滲み出ていた。
身体の部位が欠損した状態で治療した際に、欠損した肉体の一部はどうなるか。
治療の魔術の種類にもよるが、何か変化がある訳でもなくその場に留まり続ける種類が存在する。今回の魔法もそれにあたる。
つまり、切れば切るほどに辺りは血の海と化し、更に破損した肉体は積まれていき臭いも充満して行く。
そして、現在この部屋は臓物だらけの屠殺場と化していた。
辺りには血と臓物と排泄物が混ざった饐えた匂いが立ち込め、見た目的にも臭い的にも非常に怖気と吐き気を催す状況になっていたのである。
「仕方無いわね。もし次同じ事したら……」
「しません! しません!! すいません!! ごめんなさい!! 許して下さい!!」
それはプライドも何もかも捨てた謝罪だった。
だけど、それは仕方無いと思う。
だって、今のセレナ姉様には気を使って貰ってる筈の私でさえ怖くて逆らえないもの……。
「じゃあ、後はティザークちゃんに任せても良い?」
「あぁ……。お前達そう言う事だ。オートン子爵を回収しろ」
「「はっ……!」」
領主様はそう言うと、いつの間にか連れて来ていた兵士の方達に命令を出してました。
兵士の方達の表情に抑えようの無い恐が恐怖浮かんでいたのは、言うまでもない事だと思う……。
そして、複数の兵士に連れられてオートン子爵は外へと運び出されて行った。身体には怪我一つ無い状態で……。
尤も服は切り刻まれて原型が無く代わりにシーツの布を被せられていた為、何が運び出されたかは周囲からも分からなかったかも知れない。
私が最後に見たオートン子爵の顔は、表情が抜け落ち、死人の様に顔が真っ白になっていた……。
「うーん、少しはスッキリしたわね!」
あれだけやって少しですか……。
「お前はスッキリしただろうが、私は少し消化不良だぞ?」
「あら、キーリちゃん。あっちの執事でストレス発散しなかったの?」
「私はミミの様に、簡単に部分欠損を再生出来る訳ではないからな。腕の一本は飛ばしたが、それだけだ」
「それは悪い事をしたわね。今度埋め合わせするわ」
「ふん、期待せずに待っておくさ」
執事の方がどうなったか知らなかったけど、キーリ様に腕を飛ばされたらしい。
既に運ばれているか、止血処理でもされているのだろう。
「さてと、レナちゃん帰りましょうか?」
「は、はい……」
「ティザークちゃんはどうするの?」
「面倒だが仕事だな……。この騒ぎをどうにかする必要がある……」
「そっか……」
そう言うと、セレナ姉様は少し考え込む様子を見せた。
「そうね。今回は少しだけ我儘だったから、ちょっとだけティザークちゃんには悪い事をしたわね」
少しだけ? ちょっと?
セレナ姉様、これは少しとかちょっととは言わないと思うんですが……。
「と言う事でミミちゃん、ちょっとティザークちゃんに付いて手伝ってくれない?」
「何故私が?」
「情報のやり取りにしても、他の仕事にしてもミミちゃんが居れば何でも出来るかなぁと」
「それは、そうですが……」
「気が進まない?」
「はい」
「じゃあ、カケルちゃんのツケでどう?」
「ちょっとセレ姉!?」
「そう言う事なら、畏まりました」
「ミミ!?」
私の隣で酷い会話がされています。
例えるなら、セレナ姉様がカケル様のお金で何かを買っている感じでしょうか。
セレナ姉様だからと言えばそれまでですが、カケル様ももう少し強く抵抗しても良いのにと思います。
前にセレナ姉様とカケル様の大まかな年齢を聞いた時に、仕方無いのかもと思ってしまいましたが……。
だって、一万五千以上歳が離れてるんですよ?
その時は他の方々の年齢も聞いたのですが、カケル様との年齢差の開き具合に驚いた記憶があります……。
具体的な年齢までは教えられませんでしたが、カケル様は他の方々からすれば私と同レベルの若さらしいです。
そんな風に過去を振り返って現実逃避をしていると、結局カケル様のツケでミミ様が領主様に付く事になった様です。
「あぁ、ただ少しだけ待って頂けますか?」
ミミ様はそう言って、街中へと出て行きました。
どうしたんだろうと思っていると、そこまで時間を掛けずに戻って来たみたいです。
そして――。
「レナ様、これを」
ミミ様は私に、小さな黒い箱を渡してきました。
「これは……?」
「それは――」
酷い復習が完了しました。
この後は、復讐のエピローグ的な物を書きつつ、三章のエピローグに進む予定です。




