少女の心を縛る鎖 ~蹂躙~
グロと流血表現に注意です。
「ここが、あの糞野郎が居る街ね?」
「セレ姉、もう少し抑えて! ね?」
何故、こうなったんだろう?
私の話を聞いたセレナ姉様達は、私に聖域内で待ってる様に言ってカケル様も置いて飛び出した。
その時カケル様は嫌な予感がしたのか、ミミ様にセレナ姉様達を抑える様に言って一緒に送り出していた。
それが成功したのか失敗したのかは分らないけど、戻って来るなりオートン子爵に復讐しに行くわよと言って来たのだ。
セレナ姉様のその言葉に、一瞬頭が真っ白になった。
貴族に復讐?
それは、考えた事も無かった事でした。
ですが、セレナ姉様達にはその力があるのです。
事実私達はシャンティナの隣街である、オートン子爵が治めるレヤヌと言う街へとやって来ています。
「はぁ……、気が重い……。早く帰ってミリーちゃんに癒されたい……」
今回はセレナ姉様やカケル様達だけでは無く、領主様まで着いて来ていた。
今居るメンバーは、私、カケル様、セレナ姉様、キーリ様、ミミ様、ツィード様、領主様である。
ルガルド様はリリアン様のお世話をすると言って、コテツちゃん達もフェアリーちゃん達と一緒にお留守番してる筈。
正直私もお留守番組が良かった……。
復讐したい気持ちが無いと答えれば嘘になるけど、今から貴族に復讐しに行くと聞くと気が重い……。
それに、何でこんな私的な事に領主様がついて来るんだろう……?
「あ、あの領主様……」
「ん? 何かなレナちゃん」
「え、えーと、何で領主様も一緒なのでしようか?」
「あぁ、それはね――」
領主様が言ったのは監視だった。
オートン子爵を実際に殺されると流石にマズい為、セレナ姉様達が間違いを侵さないようにする為のストッパーも兼ねているとの事だった。
「す、すいません……。大事になっちゃって……」
「大丈夫、君のせいじゃないから。まぁ、本当に殺そうとしたら言葉で止めるくらいはして欲しいかもね」
「――善処します」
領主様にそう言われたら何が何でも対応すべきなんだろうけど、正直今のセレナ姉様達から感じる圧が強過ぎて止める事が出来る気がしないんだよね……。
そうしてレヤヌに着いた私達は、堂々と正門へと並ぶ。
当たり前だけど、セレナ姉様達は非常に目立つ。
ツィード様は人化しており、カケル様も今回顔を完全に隠す事が出来るフードを被っている為、人種に見えないのはミミ様だけである。
まぁ、キーリ様の羽と角が目立つけど、それはまだ誤魔化しが効くレベルだ。
ミミ様だけなら、従魔として扱えば問題無いだろうとの考えから来た結果だ。
尤もそれを除いたとしても、殆どの方が凄まじい美形で単純に目が引き寄せられるし、領主様も明らかに貴族風の装いなのに馬車も無いのだ。
正直、怪しんでくれと言っているような物だと思う……。
「止まれ! そこのウサギは従魔か?」
「そうよ。お姉ちゃんの従魔よ」
「なら、そっちの奴の羽根と角は?」
「そっちはキーリちゃんのファッションよ! まるで天使みたいでしょ!」
「んな訳無いだろ! 今、羽根が動いていたぞ!?」
「何言ってるのよ! これは、今シャンティナで密かにブームになってる最新ファッションよ!!」
まるで頓珍漢な言い訳だ。
普通に考えたら、通らない言い訳だろう。
だが、混沌都市の名は伊達では無いのである。
それを出した途端、門番は納得のいった顔になりやや穏やかに話し始めた。
「なるほど、シャンティナの住人だったか。なら、納得だな。それで、お前達はなんの目的でこの街へ来た?」
その質問に対し、領主様が前へと進み出る。
「済まんが、それは言えないのだ。私が許可するから、通っても構わないかな?」
「貴方は?」
「私はシャンティナを治めているティザーク・シェランドだよ」
「シェランド伯爵閣下!?」
「あぁ、そうだよ。少し機密性の高い仕事の途中でね。それとも、身命を賭して私達から事情を聞くかい?」
「い、いえ! 失礼しました! お通り下さい!!」
折角真面目に働いているのに、態々機密性の高い情報に触れて消されたりされたくは無かった門番さんはすぐに私達を中へと通してくれた。
少し可哀想……。
街の中に入ると、領主様の案内でオートン子爵の館へと向かった。
段々と見覚えのある景色が見えて来ると、自分の呼吸が激しくなるのが分かる。
そんな私の手を優しく握りつつ、カケル様は大丈夫だと励ましてくれました。
「何者だ!」
館へと辿り着いた私達を、館の警備の人が誰何する。
「別に名乗る必要は無いわね。ただ一つだけ警告よ。私達の邪魔をするなら死んでもらうわ」
そう言ったセレナ姉様の言葉と共に、皆様から先程よりも重い圧力を感じ始めた。
これはもしかして、威圧と呼ばれる物でしょうか……?
「怪しい奴め! おいお前達、コイツ等を捕まえるぞ!!」
「「「おう!」」」
此方が八人に対して、あちらは十人だ。
ただでさえ人数的に不利なのに、セレナ姉様はこう言った。
「今回は私に任せてくれない? この坊や達にはキツいお仕置きをしようと思うの」
それが了承されると、セレナ姉様は一歩前に出て他の皆様は一歩下がった。
「さてと、命が要らないのなら掛かってらっしゃい?」
「クソ! 甜めやがって! ぶっ殺してやる!!」
「それは無理じゃないかしらねぇ?」
私は、セレナ姉様が戦ってる所を見た事が無い。
自分は非戦闘員で皆様の中で最弱だと、いつも仰っしゃられていたので非常に不安だ。
そんな不安の中、男達が一斉にセレナ姉様へと襲い掛かる。
それなにのセレナ姉様は、武器は持ってないし呪文も唱えたりもしないのだ。
「セレナ姉様危ない!!」
「大丈夫よ」
「え……?」
ガキンッ!
セレナ姉様の周りからいきなり木が何本も生え始め、男達の攻撃を全て受け止めたのだ。
これが、セレナ姉様の力?
「何だコレ!? お前魔術師だったのか!?」
「さぁ、どうでしょうね?」
「糞が!!」
再び攻撃を開始する男達。
だが、グネグネと動く木がその全ての攻撃を防いでいた。
「クソがっ!!」
「時間も勿体無いし、もう終わりにしましょうか。”寄生の花粉”……」
静かにその言葉を口にすると、セレナ姉様の周りの木から綿埃の様な物が辺りに撒き散らされた。
そして、その綿埃の様な物が男達を覆うと、先程まであれだけ動いていた男達一人残らずその場で停止したのだ。
「な、何しやがった……」
「あら、まだ分からない? 貴方達の身体を操っているだけよ」
「そ、そんな事……」
「出来るはずが無いって? 今の貴方達の状態が答えよ」
セレナ姉様がそう言うと、男達は構えていた剣を降ろし直立不動になったのである。
それは確かに操られている証拠だと思えた。
そして、続いてセレナ姉様は周りの木の形状を変える。
「さぁ、収穫の時間よ。あんな糞野郎に仕えた自分の選択を恨む事ね」
「ま、待て……」
その木々は槍の穂先の様に尖りながら、ゆっくりと男達に向かって行く。
「待ってくれ! 俺達は雇われていただけだ!!」
「あら、さっきの言葉が聞こえなかったのかしら? 仕えていた自分を恨みなさいって」
「そ、そんな……」
「バイバイ……」
セレナ姉様は最後にそう呟くと、槍の様な木々が全ての男達の心臓へと到達した。
「あぁ……。久しぶりね、この感覚……」
そして男達の肌が段々と萎れてくると同時に、刺さった木々が少し脈動してるのが見て取れた……。
最後に木々を引き抜いた時は、まるでミイラの様な死体が倒れ込んだのだった。
「セ、セレ姉……?」
「なぁにカケルちゃん……?」
「「ひっ……!」」
カケル様が悲鳴を上げるが、それは私も一緒だった。
あれだけ優しげだったセレナ姉様はそこには無く、目が紅く爛々と輝き冷笑を浮かべた誰かがそこに居た……。
「セレナ、血に酔ってないで次に行くぞ!」
「そうね、まだあの糞野郎が居るものね!!」
キーリ様の言葉で再びセレナ姉様は、前を向いて歩み出した。
「なぁ、レナちゃん……」
「な、何でしようか領主様……?」
「セレナ殿は果たして、言葉で止まってくれるのだろうか……?」
「それは……、分かりません…………」
あんなセレナ姉様は初めてだ……。
キーリ様はあの状態を知ってるみたいだけど、ちょっと私の言葉なんかで止められる自信は無いかなぁ……。




