少女の心を縛る鎖 ~人助けと裏切り~
この話から胸糞を含む展開があります。
今回は胸糞のみ注意です。
後、キリが良かったので、文字数は少なめです。
カケル達は帰郷したダンジョンで前とあまり変わらない生活をしていた。
ペットが増えた為に、風呂を増設したり、リリアンからライトフェアリー達が空腹だからとヤバい料理を作ったと言う話を聞いて慌ててカケルが料理を作ったりなんかもあったが、それ以外は特に変化も無く心穏やかに過ごしていたと言えよう。
心穏やかなのはカケルだけでは無く、レナも同様だった。
ライトフェアリーやペット達との時間を忘れた触れ合いは、アニマルセラピーの様な効果を齎したらしい。
その成果が今出ていた……。
「あ、あの、カケル様!」
「ん? どうしたのレナ?」
「皆様を集めて頂けませんか? 私の過去についてお話致します」
「――分かった」
その後聖域の神殿の一部屋にはカケルを始めとして、ミミ、キーリ、セレナ、ツィード、ルガルド、そしてリリアンの計八人が揃っていた。
「レナちゃん、話があるんやって?」
「はい、ツィード様。心の整理が付きましたので、私の過去の事を話そうと思います」
「レナちゃん、大丈夫? 無理しなくても良いのよ?」
「大丈夫ですセレナ様。もう、覚悟は決めましたから……」
「そう……」
セレナがそう言ったすぐ後に、カケルはレナに最終確認をする。
正気を失って泣き叫ぶような過去だ。無理をして欲しくは無いと言うのが正直な所である。
だが……。
「レナ、本当に良いんだね?」
「はい、カケル様。面白くも無いですけど、私の話を聞いて下さい……」
「そうか、分かった……」
カケルに返事をしたレナは、深呼吸を一つする。
そして、気持ちを落ち着けた後にゆっくりと話し始めた。
その口から語られるのは、彼女の生まれた村から使い捨て奴隷になるまでの過去の物語だ。
それは胸糞悪く、悪意に満ちた物語だった――。
◇ ◇ ◇
私と妹のミナは、深い森の中にある村に住んでいました。
場所が何処かですか? すいません、殆ど自給自足の村だったので、こことの位置関係が分からないんです。
あの日は、よく晴れた日の事でした……。
「レナ、ミナ。ちょっと来て!」
「おかあさん、どうしたの?」
「お母さん、何かお手伝い?」
「ええ。そうよミナ。お姉ちゃんと一緒にザオイの実を拾って来てくれるかしら?」
「わかったー!」
「いい返事ね。レナもミナの事頼むわね!」
「うん、分かった!」
あの当時、妹は三歳で私は五歳になったところでした。
普通なら村の外へと行かせる年齢ではないのだと思いますが、村の周りには魔物が居らず、肉食の動物を見掛けた事も無かった為、私達の様な子供達も村の外へ木の実拾い等のお手伝いをしておりました。
あ、ザオイの実と言うのは、私の村の近くでよく取れる木の実の一種です。
甘みと酸味に加えて少しだけえぐ味があるのが特徴で、一年を通して取れる事もあって私の村ではよく食べられる木の実でした。
「おてつだい~! おてつだい~!!」
「ミナ、しっかり前を見ないと怪我するよ?」
「平気だよ! きゃっ!」
私が注意をした直後にミナは、何かに足を取られて転んでしまいました。
「ミナ! もう、だから言ったのに……」
「いたいよう……」
私は、半泣きのミナに笑いながら話し掛けて、ミナが足を取られた物に目を向けました。
最初遠くから見た時、それは木の根だと思ってました。
しかし、ミナの近くまで来た時に違う事が分ったのです。
「人!? あ、あの! 大丈夫ですか!?」
「うーん? ――おじさん、だいじょうぶ?」
ミナが足を取られたのは、大人の男性の足だったんです。
その男性は草木の影に隠れていてわからなかったのですが、腕に見て分かる程の大怪我を負っていました。
話を聞いてみると、この村よりも遠くから来た冒険者で、森の中で魔物に腕をやられてしまったとの事でした。そして、数日食事を取ってないので食料を分けてくれないかと頼まれました。
本当は、あの時警戒すべきだったんです。
今思うとあの男の目を見て、助けようなんて考えた自分が馬鹿に思えます。
でも、警戒心が低かった私達は男を疑う事無く、持っていた食料を与えてしまいました。
その男は私達に感謝を述べると、森の奥の恐らくは街の方へと帰って行きました。
ですが、数ヶ月経ったある日、私達は再びその男と出逢う事になったのです。それも最悪の形で……。
「ミナ、早く終わらせようね!」
「うん! きょうはミナのほうがたくさんあつめるんだから!!」
その日はいつもの様に、ザオイの実を集める事になっていました。
私は他愛も無い事をミナと話しながら、森の中を歩いていると、いつか会った事のあるあの男の姿が目に入って来たのです。
その時は前の男だけでなく、二人の男と一人の女と一緒でしたね。
「あ、おじさん!」
「あの、怪我は大丈夫でしたか?」
「ああ、平気平気! 君達のお陰で助かったよ! そのお礼をしないといけないと思ってね」
私は、その時嬉しかったです。
人助けが出来たと、信じてましたから……。
「いえ、そんなお礼なんて……」
「そうだよ、おじさん! こまったときはおたがいさまだよ!!」
「そうか、そうか。困った時はお互い様か……」
「うん!」
今思い出すと怖気が走ります。
あの男達の冷たい目には……。
男達は四人で私達を取り囲むと、私達に向かってこう言いました。
「前のお礼に君達を、貴族の所に届けてあげるよ。俺達も謝礼金が貰えて、君達も生活が楽になって両得だよね!」
その男の言っている意味が、私には分かりませんでした。
貴族に私達を届ける? どう言う意味でしょうか?
それに、私達を貴族に届けてどうして両得になるのでしょうか?
そう呑気に考えていた私は、すぐ隣で発生した呻き声に正気を取り戻しました。
呻き声の方へと目を向けると、ミナが地面に倒れ込むところだったのです。
そして、ミナの腹部にはもう一人の男の拳が突き刺さっていました。
「ミナ! おじさん達何……を……!?」
その時には、全てが遅過ぎました。
ミナの意識を奪って直ぐに、私は私達が助けた男の拳を腹に受けて、意識が朦朧としてしまいました。
「どう……して……?」
「いやぁ、本当にありがとう! 俺達の為に金になってくれて! 君達みたいな金の成る木を捕まえれるとはね! 神様には感謝しないとな!!」
そんなケタケタと嗤うその声を最後に、私の意識は闇に沈んで行きました――。




