無理を承知で道理が通る
伊古元が12月2日のなろう更新を落とした以外はフィクションです。
「これはどういうことかな、伊古元さん?」
「やあ伊更木さん、久しいね」
見知った顔が近づいてくるのに気づいて、伊古元は作業の手を止めた。
「それで、どういうこと、とは、一体何のことを指しているのかな?」
「そんなわかりきったことを聞いてくれるな! しらばっくれるのも大概にしろ」
「だからね、もう一度聞くよ。君が憤慨している理由をさ。一体何をどうしたというのさ?」
「質問を質問で返すのは感心しないな。相方とはいえ、互いの小説作品を吟味しあう間柄だとして、礼節は持ち合わせてしかるべきだろう」
「そうだね。親しき中にもそれはあるべきだとも。しかしだね、伊更木さん。自分が問おうとしているのはこういうわけだよ。つまり、君が今にも角を生やして、まさに鬼のような形相をしている。だからその理由を知りたい、こう思っているわけだ」
「お前がそうさせるんだ。胸の内にでも聞いてみたらどうだ?」
「あいにく、そいつは不在のようでね。ないものを埋め合わせるように、そして自分自身の疑問という名の空白に、そっとパズルのピースを当てはめるように、問いを発し続けているのさ」
「お前と話していると疲れるよ…。じゃあ単刀直入に聞くとしよう。回りくどい言い回しはなしにしてね」
そういうと伊更木さんは、屋上からブラックバスを釣り上げようとするくらいの神妙な面持ちでこういった。
「今月のなろうの更新、されていないじゃないか!」
「ほう、鋭いね」
「鋭いも鈍いもあるか! 純然たる事実だ!」
「合点がいった。つまり君はこう言いたいわけだ。毎月2日に更新を行う柊秋人の小説家になろうページが、12月7日になっても更新されていない。これはどういうわけだ、と」
「その通りだよ。なにか言い訳はあるか?」
「ないとも。自身が招いた結果に言い訳を施すなんて、男らしくないからね」
「おっと、君は男だったのか。初耳だな」
「そうだよ、知らなかったのかい? ちゃんと柊秋人のHP『ふかはこ.com』のプロフィール欄にも書いてあるだろう? 」
「そうなのかい?」
「そうとも。まあ公式サイトの方には『性別:男の方じゃない方』って書かれているけどね」
「おい、というか公式サイトが見れないんだが…」
「当たり前だよ、年内はサイトメンテナンス中なのだから」
「宣伝かと思いきやメンテナンス中とは、やる気あるのか?」
「それはそうと、今が12月ということは、来月には2017年ということだね?」
「うん、年が明けるということさ」
「それは幸運だったな。ということは、年が明けるその前に、自分は原稿を落としてしまったわけだ。その不幸を来年に持ち越さずに済んだわけだ」
「今年を締めくくる最後の更新を、落としたともいえるわけだが」
「それは考えよう次第さ。ポジティブな方向に考えよう」
伊古元は目を閉じて思索にふけると、銀河系の彼方から電波を受信した。
「そうだ、インフルエンザにかかって原稿書けなかったことにしよう!」
「おい、いきなり話を戻すな! というか言い訳は男らしくないっていうさっきの発言はどうした?」
「いや、男じゃないから問題ないよ」
「え〜そこぶっちゃけちゃうの?」
「ぶっちゃけると言えば、柊秋人のTwitterのフォロワー数が増えてないよね?」
「今回はこういうノリの話なのか…。まあ確かに増えてないね」
「Twitterでの140字小説、ツイノベも年内で終了だとさ。一年しか続かなかった。なにか反省は?」
「いや…単純に面白くなかったからでは?」
「違う! リンクの無差別ツイートをやるからだ! ツイートをさかのぼってみろ! ツイノベ見つけるだけでも一苦労だよ!」
「それは、ツイノベやめることを決定した後に設定したんだよ」
「そうだよ! おかげさまで作品のPV数が軒並み上昇したよ! どうもありがとうっ!」
「文句言うのかお礼言うのか、どっちかにしろよ!」
「まあ、なにが言いたいかというさ、いつも色々と助けてくれてありがとうってことだよ…」
「えっ…、まあこっちもお世話になってはいるけど、このタイミングで言うのか…?」
「そうとも。なんせ今年もこれで終わりだからね」
「まああっという間の一年だったな。柊秋人もなろう2周年を迎えたわけだし、これからも頑張っていきたいな」
「なにか来年の抱負はあるかい、伊更木さんは?」
「そうだな〜、仕事も忙しくなりそうだし、体調管理はしっかりしたいかな」
「ありきたりだねえ…実につまらないよ!」
「だったら、お前の抱負を聞かせてみろよ」
「あいにく、伊古元は今を生きる存在だからね。来年のことなんて考えないよ。考えるとしたらせいぜい今年中くらいが範疇さ」
「なんじゃそりゃ…。じゃあ今年中の目標ならあったりするのか?」
「それくらいならもちろんあるよ」
「じゃあ今年の目標は?」
「年内のなろう更新」
「あ〜それで」
読了ありがとうございます。柊秋人の次回作にご期待ください。