私の告白
高田わたるの異世界への転生はすでに秒読み段階にはいってしまった。
そろそろ白状せねばなるまい。全て私のせいだ。
私は……ほんの一時の気紛れで、高田わたるの人生を大きく変えてしまう。人生? いや、存在そのものを変えてしまうのだ。高田わたるが高田わたるでなくなるのだ。この世界で、この地域で、この家庭で、この名で、必死に生きてきたのが高田わたるではなかったか。苦しみながら、理不尽に悶えながら、自分を責めて、責めぬいて、疲れて、疲れ果てながらも、誇りをもって生きてきたのが高田わたるではなかったか。
いいわけをさせてほしい。私はよかれと思ったのである。高田わたるという冴えない男に、これからもずっと、死ぬまでずっと冴えない男に、せめて逆転のチャンスを与えようと思ったのである。
もしかすると、高田わたるは異世界で強者になるかもしれない。もしかすると、高田わたるは異世界で女性に困らなくなるかもしれない。もしかすると、高田わたるは異世界で為政者としての才能を開花させるかもしれない。もしかすると、高田わたるは異世界で天職を見つけて充実した生を送るかもしれない。——もしかすると、私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない——
高田わたるは今日、この世界から消える。この私のせいで。