静かに息を止める世界にて。
吐く息が白い。
分厚い手袋でさえ遮ることが出来ない白銀色の冷たさは、僕の体に侵入し、凍結し、眠りを誘い、終わりを数えようと必死になっていた。
これで人類最後の日、という訳ではないのに、何をそんなに急いでいるのだろう。
実際は世界へのカウントダウンが始まっているのかもしれない、僕が知らない間に。
でもそれで世界が終わってしまうのだったら、そのまま終わってしまえばいい。どうせ僕らには止めることはできない。
河川敷で二人隣り合って座っている。
ここについてから会話をせず、ただただ流れる静かな隅田川を眺めていた。音は全てせせらぎと息と心臓だけだ。
言葉は必要ない。手を繋いで、地面の感触を覚えて、何も考えず、ただただそこに自分がいることを確かめる。
あれ? 何しに来たんだっけ。まあどうでもいいやそんなことは。すべてがどうでも良くなる感覚。
だんだん無くなってゆく感覚、透過処理されたような背景、目眩目眩。
……もう眠くなってきた。まだ彼女は手をつないでいる。
それならば手を繋いだまま、眠ってしまおう。
全てが終わってしまう前に。
掌握&習作。