ノー・チート、ノー・ライフ
「……と、いうわけでね。君には異なる世界に特典付きで転生を――」
「いらない」
「えっ?」
「要らないと言った。そんな特権などと。命を汚すな」
「えっと……いや、でもほら、見知らぬ世界の見知らぬ環境だよ? 単に生き抜くだけでもけっこうな特別的能力が必要だし、せっかく新たに命を形作るのに何する間もなく亡くなられちゃっても困るんだけど」
「ふむ……。なるほど、それも道理だな」
「ね? だからさ、このポイント表の中から――」
「いらない」
「えっ? ――って、この上で何が不要と?」
「そうだというなら、転生それ自体からして要らないだろ」
「いや、ええ? そこいっちゃうの? あの、冗談で言ってるわけじゃないよね?」
「冗談だと? どっちがだ。命は一度きりだから尊いのだろうが。二度目の生涯だなどと踏みにじっているはどちらか」
「そこを真面目に突かれちゃうと苦しいものがあるのは確かだけれども……」
「三度は言わない。命を汚すな」
「ええと……。でしたら昇天コースはあちらの小道を歩んでいただければよいのですけれど。あのー、それって言っちゃうと寂滅するだけですよ?」
「むろん。魂などと不滅の幻想があるわけもない」
こうして彼は歩み去った。
物語は始まらずに終わった。
【結論】
やはり異世界ファンタジーには特権的転生が必須だったんだよっ!!!
ΩΩΩ<