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髪結い係アリスの日記より ( 仮 )  作者: 玉篠
現代偏 その1
3/6

ムーリア暦2△△8年 桃月 300年前のナセラ国事情

ハルス教授に、古文書の現代語訳を頼まれた翌日

スキャンしてパソ内に保存した古文書もとい古い冊子のコピーの一部を、プリントアウトしたものをカバンに入れて

私は朝から大学に行った。


今日の授業は午前中の1コマ目 ( 1時間目 ) と、2コマ目

それと、午後の3コマ目にあるハルス教授のゼミなんだけど、大学に行く前、届いたメールで2コマ目の授業が休講になったことがわかった。

ラッキー!!

で、空いた2コマ目の時間は、大学内のラウンジでとりあえず持ってきた・・・

昨日、ハルス教授から研究テーマに渡された冊子に関する資料を読むことにした。

もっとも資料って言っても、私が高校生の頃に使っていた教科書と資料集なんだけどさ。

大雑把な時代の流れと、その時代の大まかな文化を知るには、教科書と資料集見るのが一番わかりやすくて手っ取り早いからね。


ついでに、食堂が混み始める前にランチを食べるのだ。


うちの大学の食堂の日替わりランチ、メニューが充実していて値段の割りに相当美味しいんだ、これが。

その分、食券の争奪バトルも激しくて

2コマ目の授業終了時間の30分前である11時30分から販売されるランチの食券が、あるメニューの分だけ販売開始後わずか5分で完売してた・・・なんてことも珍しくなかったりする。



それはともかく、昨夜、冊子をスキャン・コピーするとき、中に書いてある年号らしき数字を見てわかったんだけど、この日記はどうやら300年ほど前のナセラ王国・王宮に仕えたアリスと、言う名前の

『 髪結い係り 』

が書いたものらしい。

ちょっと見ただけでも

1△23年梅月

だの、

1△39年萩月

だのと言う数字と文字が出てきたからね。


で、事前の下調べとして、当時のナセラ王国の国内事情と周辺諸国との関係を調べる事にした。


学校に来る前

仕事に出かける仕度をしていたオトンに半分あきれられながら、家の物置の中を引っ掻き回して、私が高校の時に使っていた ナセラ国史の教科書と資料集、ムーリア大陸史の教科書と資料集を、段ボール箱の中から引っ張り出した。

高校生の弟の教科書を借りてもよかったんだけど・・・

アイツの教科書借りたら、後で何かと五月蝿いこと言われるのがわかっているからね。



同じく2コマ目の時間が空いたヘレンと一緒に、ラウンジの片隅の、二人用テーブルに陣取り、そうやって引っ張り出した高校の時の教科書と資料集を読み漁る。

資料集の後ろの方に載っている年表と、冊子の中に出てくる年号 ( 勿論、一部だけ ) とをすりあわせてみると、この冊子が書かれた時代の国王は

セドリック2世 と コリン7世

だとわかった。


この二人の国王の時代のナセラ王国とその周辺諸国は、決して平和な時代ではなかったようだ。

キルシェ共和国の更に西にある、モート王国で発生した革命の嵐

ナセラ王国には、その革命の余波はあまりなかったようだが、北のセッス王国との境に領地を持つ何人かの貴族が、革命の影響を受けた一部の富裕市民と小競り合いになったらしい。

キルシェ共和国でも、革命の波及によって、二つの政党が激しい権力闘争を繰り広げ、それがやがて、ナセラ王国との国境の川の中州に出来た小さな自治領の争奪戦へと広がっていく

( もっとも、この自治領争奪戦は、オルダ王国やカミワ公国が仲介に動いた事により、キルシェが自治領の独立を認める形で収束したらしいのだけど )


そんな時代の中で、科学技術と医学は飛躍的な進歩を遂げている。

さすがに蛍光灯までは発明されなかったけれど・・・

ナセラ王国の南部地域で多く算出する 『 火の宝玉 』 を使った、蒸気機関車の発明や、紡績機械や織機の改良

東北部・・・オルダ王国との境の山岳地域では地熱を利用した地熱発電が行われるようになり、それを利用しての電信技術と、電球の発明

写真の発明と、印刷技術の飛躍的な進歩

などなど、現在、私たちが何の疑問も抱かずに使っている機械類の大元(おおもと)が、次から次へと発明されている。


同時に、国が率先しての庶民への教育も行われるようになり、文盲の人が飛躍的に減ったのも、セドリック2世とコリン7世の時代の事だ。


そういえば、誰の言葉だっけ?

戦いと災害の時代は技術を進歩させ、平和な時代は文化を(はぐく)

って。


教科書、見てると、その言葉が嘘じゃないって、つくづく感じるね。

ホントに。



「 ねぇ、レイチェル 」

「 ん? 何?? 」

「 この時代って、まだパソコンはなかったんだよね 」


はぁ????


ヘレンがつぶやいた言葉に、私の頭の中が一瞬フリーズした。


「 それと、ケータイやフアックスも 」

「 あるわけないでしょ!! 」

思わず突っ込む私。


「 ヘレン!! あんた、電話が誰によって発明されたか覚えてる? 」

「 えっと・・・ あ・・・う・・・ウィリアム・・・ そう。ウィリアム・クラウディ・・・だったっけ??? 」

「 それは電球の発明者。 電話は、フィリップ・サンライト2世!! 」

「 あ、そうだった。 サンライト2世。 思い出した。 たしか、耳が悪かったことから・・・ 」

「 耳が聞こえにくかったのは、自動車の発明者の フィリップ・ローバー!! 」


話しているうちに、呆れるのを通り越してボーゼンとなってきた私。


そりゃ、私も得意じゃない時代はありますよ。

特に、試験に出るから覚えなきゃならない年号や人物が急に増える300年前から現在にかけての歴史は。

でも・・・でも・・・

ヘレンがここまで歴史に疎いと、どうやって大学受かったのか、疑いたくなってしまう。


『 ここまで歴史に疎いヘレンが・・・あの家計簿、現代語訳したら・・・どんな文面になるのか・・・ 』


心の中で私がため息をついているのも知らず、ヘレンは暢気(のんき)にケータイなんかいじっていたが・・・


「 レイチェル、時間!! 」

と、言う声に、私は思考を中断させた。


そろそろ2コマ目の授業終了30分前だ。

急いで食堂に行かないと、お目当てのランチメニューの食券、買いそびれてしまう。


「 早く!! ヘレン!! 」

「 あ、本!! 」

「 誰がアホやねん 」

「 ボケ突っ込みいれてる場合??? 」

私とヘレンは慌てて机の上の物をバッグにしまうと、食堂へと足を向けた。

次回から 日記の本文になります。

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