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髪結い係アリスの日記より ( 仮 )  作者: 玉篠
現代偏 その1
2/6

ムーリア暦2△△8年 桃月 災難は、突然に・・・2

『 何で引き受けちゃったかなぁ・・・』


私は、別の講義を受けるために大学の廊下を歩いていた。

これから受ける講義もとい授業は、卒業するまでに 必ず 単位をもらわなければならない必修の授業だ。

しかし、その授業が行われる講義室に向かう私は、さっき引き受けた冊子の現代語訳の事で頭が一杯になっていた。


現代語訳を引き受けた私が、さっきの授業時間中に先ず行ったことは、とりあえず冊子を1冊ごとにチャック付きのビニール袋に入れて、1から順番に数字を書いたインデックスを貼り付けることだった。

え?

何でそんな物、持っていたかって?

実はオカンに頼まれて、大学に投稿する前に駅前の1コインショップに寄って

風呂掃除用のタワシとスポンジを買ったんだけどね、その時、何でか桜の花の模様がエンボス加工されているチャック付きビニール袋に目がいってしまって。

つぃ・・・衝動買いしてしまったんだ。

それが今、役立っているんだけど、

何時の時代に書かれた冊子か、現代語訳していない今はまだわからないけれど、汚したり破損したりするわけにはいかないからね。

特に、私はオッチョコチョイだから、パスタソースや紅茶、お菓子なんかをこぼして染みをつけないとも限らないから。


それから、ハルス教授に許可をもらって

万が一の事も考えて、冊子を一応全てコピーすることにした。



夕方

大学の授業を終えた私が、冊子のコピーをするために向かったのは、大学の西門出てすぐのところにあるコンビニ。

ここ、薬局と大手コンビニがコラボしているところで、当たり前だが24時間年中無休だ

深夜だろうが、祝日だろうが、日にちと時間に関わりなく薬が買えるし、自由に利用できるコンセント完備のイートインスペースもあるから、私は勿論、同じ大学に通う学生や教授陣も結構重宝しているんだ。


早速コピー機を使おうと行ってみたら、先客がいてコピーの真っ最中の様子

仕方なく、アイスティー と 女性向け地域情報誌を買って

イートインスペースで、待つことにした。



空席に座り、ストローでアイスティーを飲みつつ、女性向け地域情報誌のページをめくる。

『 へぇ・・・、新しいパンケーキショップかぁ・・・。あ、こっちはシノンで有名なファッションブランドの店!! カルガにも来るんだ、この店。 ん??? 藤月8日オープン!!! 藤月って言ったら2ヶ月後じゃん。 開店セールが一段落したら服買いに行こうかなぁ・・・』


そんなことを考えながら情報誌を読んでいたら・・・

パシッ!!

と、何かで頭を軽く叩かれた。


「 何すんのよ!! 」

座ったまま怒りながら振り返ると、そこには

「 何だ・・・ヘレンか 」

友人のヘレンがいた。


ヘレンは、空いている私の席の横に座りながら話しかけてきた。

「 レイチェル、なーに湿気た顔して、情報誌なんかめくってんのよ 」

笑いながら言うヘレンに、私はアイスティーをストローで少し飲むと

「 ん??? 単にコピー機が空くの、待っているだけ 」

「 コピー機??? 」

「 ハルス教授から、研究テーマだって渡された古文書のコピーしなくちゃならないから 」

「 許可は? 」

「 勿論、教授にOKはもらってある 」

「 そっか。それならいいんだけどね・・・ああいう物って、勝手にコピーしたら文化財保護庁が五月蝿いからさ 」

ヘレンは、手に持ったカップを口に運んだ。

カップの形と香りからすると、ホットコーヒーのようだ。


「 で、ヘレンは? 」

情報誌を閉じて、カバンに入れながら尋ねる

「 私も同じようなもの。 教授から研究テーマだって渡された古文書のコピーなんだけどさ、これが・・・ 」

「 どうしたの? 」

「 ただの古文書だと思って、引き受けて、ページをめくってみたら、なんと!! 家計簿みたいだった 」

「 家計簿???!!! 」

行儀も構わず、椅子の背もたれに背中を預け、腕を頭の後ろで組むヘレンを見ながら、私は素っ頓狂な声をあげた。

「 そ。貴族のお抱え会計係か出納係あたりが書いた家計簿。 まだちょっとしか見てないけどさ、小麦をいくらで売った・・・だの、仕立て屋にいくら支払った・・・だの、そんなのばっかり 」

「 だとしても、ヘレンのは半分数字だから、まだいいじゃない。 私が頼まれた古文書は、日記だよ。 日記 」

「 日記の方がおもしろそうじゃない? もしかしたら・・・思いもよらない、大事件の真相が書いてあったりして・・・ 」


しばらく私とヘレンは、にらめっこ よろしく、顔を見詰め合っていたが・・・

つい、どちらからともわからず、吹き出して

笑い転げていた。



ちょっとばかり笑いあって、ふと、見ると、どうやらコピー機が空いた様子。

「 ヘレン、先にコピーする? 」

「 私は後でいいよ。レイチェル、先にどうぞ 」

「 じゃ、遠慮なく・・・ 」


と、コピー機に向かったんだけど・・・

勧進のコピー機に貼られていた紙を見て、私は絶句した


『 故障中 』


「 な・・・なんでよー!! 」


思わず泣き出しそうになったけど、そこはそれ

潔く諦めて、他の方法を探すことに。

と、言っても、自分の部屋に置いてあるパソコンプリンターのスキャナ使って、古文書をスキャンして

パソの中に取り込むことにしたんだけどさ。

まぁ、その方が楽だし、用紙代とインク代を除けば安上がりなのは目に見えているから、コンビニでコピーなんかしようと考えずに、さっさと家に帰って。

古文書をプリンタでスキャンすればよかったと、今更ながら思ったんだけど。


それをヘレンに話すと

「 レイチェル、私にもプリンタ使わせて 」

と、きたものだ。


「 ええよ。 その代わり・・・ 」

私はヘレンに、そっと片手を出す

「 助かるー。 恩に着るって・・・レイチェル。 何? その手??? 」

「 プリンタのインク代と用紙代。 50マーレでいいよ 」

「 私が払うの??? 」

「 まさか、タダでコピー出来るからプリンタ使わせてと言った・・・なんて事はないよね? 」

黙り込んだヘレン。

どうやら図星だったみたいだ。


が・・・


「 ちゃっかりしてるなぁ・・・ 」


と、苦笑いするヘレンと一緒に、私はコンビニを後にするのだった。


ナセラ国・・・というか、ムーリア大陸の共通通貨単位は マーレとミーレ。

1マーレ は 10円くらいで、

1マーレ、5マーレ、10マーレ、50マーレ、100マーレのコインと、

500マーレ、1000マーレ、5000マーレの紙幣があります。


また、マーレ の下に、ミーレ と言う通貨単位もあるのですが、これは50ミーレ硬貨と10ミーレ硬貨 ( 約1円 ) 以下の硬貨はほとんど出回っておらず、 商品取引や先物取引などの時のみに使われる、いわば帳簿上のみの通貨単位になっています。


また、コイン と書きましたが、ナセラ国を含むムーリア大陸のコイン( 硬貨 ) は、現在、日本を含む地球上のほとんどの国で使われている円盤状の硬貨ではなく、ビーズやトンボ玉のような形をしています。

そのため、暗い場所で硬貨を取り出すときのためや、目の不自由な方のために、触っただけでいくらの硬貨なのかがわかるように、大きさや形 ( 球形のものからクリスタルビーズのような形まで ) が少しずつ違っています。


ちなみに、文中で出てきた 『1コインショップ』 の 1コインとは、10マーレ の事です。

( つまり、日本で言う 100均 の事ね ( 笑 ) )

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