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副団長

(どうしてこうなった?)

ドレイルは内心焦りながらもなんとか無表情を装い立っている。

その周囲には村人が少し距離を置いて集まりドレイルを凝視している。

四方を村人で囲まれた状態だ。ざわざわとした話し声がドレイルのもとにも届いている。

『あいつ何者だ?、ドラゴンを倒したって?、冗談だろ。、でもハンナちゃんがそう言ってるし、危険な人じゃないのかしら、ハンナちゃんを助けてくれたらしいぞ、でも……』

村人の間ではいろいろな憶測や疑問が飛び交っている。

遠慮ない周囲からの視線に少し辟易しながらも彼は気分を変えるため今の状況を思い返す。

ハンナがドラゴンに襲われそれをドレイルに救われた経緯を話した後の反応は様々だった。

ほとんどの村人と騎士たちは冗談だと言うよな笑いや呆れ、一部の騎士たちは困惑、そして驚愕だった。

ちなみにレイノールは前者、ロバートは後者の反応だった。

最初は冗談だと思っていた人たちも、ハンナの説明や姿を眺め冗談を言っているようではないことに気が付く。

周囲がドレイルに目を向けたまま無言になる。

居心地悪そうにドレイルは視線をそらす。顔は何とか無表情だ。

ロバートはドレイルのもとに近づく。

「あなたが、ドラゴンを倒したというのは本当ですか?」

「…………ああ、本当だ」

彼が認めたことで周囲が大きくどよめく。

「その死体はどこにありますか?」

「森の真ん中の広場だ。何なら案内しようか?」

「ええ、ぜひともお願いしたい」

「…わかった。それじゃあ…」

「待ってください!」

ハンナが割り込んだ。

「案内なら私がします」

「ハンナさん?」

ドレイルが不思議そうにするとハンナはニコリと笑って、

「ドレイルさんは私のために戦ってくれてそのあとすぐこの村に来たんです。ですから疲れているでしょう?」

「いや、そんなこと言ったら、ハンナさんだって…」

「私は大丈夫です。だから休んでいてください」

ハンナにそうお願いされドレイルは困った表情になる。

今まで命令は何度もあった。しかしお願いされたのはこれが初めてだった。

自分が行かなくてはハンナに負担を与えるとわかっているのに、彼は断ることができず

「…わかりました」

と答えた。ハンナはニコリと笑った。

「隊長さんもそれでよろしいですか?」

「ええ、ハンナ様がかまわないのであれば」

そう言いロバートは後ろを振り返り、自らの副官を読んだ。

「レイマール」

「は!」

呼ばれたレイマールがロバートと並ぶ。

「私は隊を率いて森へ確認に向かう。お前はここに残り、村の警護に当たれ」

「了解しました!」

敬礼をしたレイマールにロバートは小さな声でドレイルを見ながら呟いた。

「わかっているな?」

レイマールはロバートを見、そしてその視線の先にある物を見た。

「はい」

小さな返答。

2人に見られていることを理解しながらも、あえてそちらを見ないようにして近くの木箱に座った。

そして腰のポーチから煙草を取り出し火をつけた。


しばらくしてハンナたちは村を後にした。

タバコの煙を吐き出しながらドレイルは自らを鋭い目線で監視するものにチラッと視線を向ける。

そこには村人に混ざりながらもその視線に含まれた警戒心、そして殺意は段違いだ。

おそらく、変な行動をしたら迷わず貴様を殺す、という彼に対する心境が現れているのだろう。

それを理解しドレイルはその視線を無視した。

(そんな殺気なんか怖くねーよ)

今までの戦場で感じた殺気と比べれば、ノミにかまれたようなぐらいだった。

こちらからの視線を無視し始めたことに気が付いたレイノールは、もう一つの行動に移る。


先に説明しておこう。ロバートとレイノールが別れる前のあの会話。

ほんの少しだけだが、彼らの会話は食い違っていた。

ロバートは『彼をしっかりと見張っていろ。だが、むこうが何もしないうちは一切手を出すな』という意味で言っていた。

しかしレイノールにはこういっているように思えていた。

『彼をしっかりと見張っていろ。そして本当に実力があるかどうか試してみろ』と。

そのためにこの場に自分だけ残したのだと。

些細な違いではあったが、致命的な違いだった。


レイノールは彼の実力を測ろうと彼に近づく。

そして彼を怒らせるため偉そうな口調で話す。

「おい、貴様」

「…………」

「聞こえていないのか?それとも耳が悪いほど年を取っているのか?」

バカにしたように笑ながらそう言う。ドレイルは顔を上げる。

周囲の村人は剣呑な空気を感じ2人から距離をさらにとる。

「なんだ、文句でもあるのか?」

「…………」

訝しげに眺めるドレイルを無視し勝手に話を続ける。

「貴様はドラゴンを倒したというが実際はどうなんだかな」

「そうか」

「私には、ただほらを吹いているようにしか思えん」

「そうか」

「だいたい貴様は、最初から胡散臭いんだ!」

「そうか」

「見たこともない恰好をして、貴様どこかの国のスパイじゃないのか!?」

「そうか」

「貴様!!真面目に答えろ!!」

同じことばかり繰り返すドレイルにレイナールの方が先にキレた。

「なんなんだよ、お前?」

「貴様こそなんなんだ!?」

方やめんどくさそうに、方や完全に怒った状態で二人はたがいに尋ねた。

「あー、もう!らちがあかない!」

彼女は腰の剣を引き抜く。よく研がれた刀身が煌めくロングソード。そしてそれをドレイルに向ける。

「私と戦え!」

「いやだ」

「即答するな!」

苛立ちながら剣を振り回す。傍から見たら子供が駄々こねているようにしか見えない。

周りの住人達があわててさらに離れる。

巻き込まれたくないのだろう。誰も声をかけない。

(誰かこいつ、止めてくんないかな?)

周囲を見渡すが、助けてくれそうな人間はいない。

「ハァ」

とため息をつきタバコを手に持って彼女の方を向いた。

「戦えば満足するんだな?」

「ああ、そうだ!」

「3つ条件がある」

「条件?」

「ああ」

指を立て示す。

「1つ目は、勝負するに当たって互いに参ったといったか、戦う意思のない状態で襲ったら負け。そして相手にダメージを少しでも与えた方が勝ち。それでいいか?」

「ああ、問題ない」

「2つ目、勝敗にかかわらずハンナさんたちが戻ってくるまでもう互いにもめごとは起こさない。いいか?」

「ああ」

「最後に3つ目だが…」

「あー!もういい!どんな条件だろうが飲んでやる!」

「いいのか?」

「騎士に二言はない!」

「よし、なら勝負しよう」

そう言いドレイルはタバコを投げ捨て立ち上がる。

レイナールも武器を構える。

ドレイルは骸骨のマスクをつけるとジャケットのホルスターに入った黒いバトルナイフを2本取り出した。

左を順手、右を逆手に握り左手をレイナールに向けて構える。

レイナールはその構えから何かを感じ取ったのか表情を冷静なものに変える。

互いに構えお互いを睨む。

そして、


「ハ!」

先に動いたのはレイナールだった。上から下と剣を振り下ろす。

ドレイルは右に持ったナイフでガードする。

(フ。馬鹿な。そんなものでは防ぎきれないよ!)

彼のナイフが折れると予想しレイナールは笑う、が


ガキン!


「な!」

その次の瞬間には驚愕に変わった。

ドレイルの持ったナイフは折れなかったそれだけでは止まらず、ドレイルはロングソードの刀身を滑らせるように、ナイフを伝わらせ、剣の軌道をそらした。

そして隙だらけになった彼女に左のナイフを突き刺す。

「ッ!」

彼女は飛び退るが、ドレイルの追撃は続く。

右と左のナイフを交互に使い、レイナールに反撃する隙を与えない。

(ッ!ここはいったん離れないと!)

そうは思っているがそうやすやすと離れさせてくれない。

何とかよけながら隙を待つ。

大振りになったところを狙い剣を下から上に切り上げる。ドレイルは後ろに下がり避けようとする、

(今!)

瞬間レイナールは切り上げる途中で剣を止め、体を丸め前に突っ込む。

「これならよけれまい!」

ドレイルの胸に向かい剣を突き立てる。

「なめるな」

低い声が響きレイナールは肌が泡立つのを感じた。

しかし動作は止められない。そのまま剣を構えドレイルに突っ込み、

「…………う、そ」

そう言いながら彼女は瞳を見開く。

視界の先には、防弾チョッキに阻まれた彼女の剣。いくら力を入れようとそこから先に進むことはなかった。

「この勝負、俺の勝ちだな」

彼はナイフを捨てると防刃手袋でその剣をつかむと剣を思いっきり引っ張った。

驚きで固まっていた彼女は剣と共に引っ張られる。

「うわ!」

よろめきながら彼女はドレイルの横を通り過ぎ。

「へぶ!」

顔から転んだ。

痛みで転がる彼女を無視しナイフを回収したドレイルは木箱に座りタバコを取り出すとまた吸い始めた。

周囲からの視線はますます冷たくなっていた。

(もう勘弁してくれ…)

ドレイルは表情を崩さないように必死に耐えながらハンナたちの帰りを待った。

副団長は結構書いている中でも好きなキャラです。

これから先、もっと活躍できるシーンがあればいいのですが…。

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