村2
(まあ、こんなものか)
ドレイルはこの2、3日のことをそうまとめた。
そして、思い出している間にテーブルに並べたものを見た。
それは、ドレイルの所持していた武器と装備一式だ。
ハンナの家で世話になるに当たって、装備品や武器などをすべて借りた皮袋に入れ、保管しておいたのだ。
まだ完全に信用できないとはいえ、わざわざこちらが武装して相手に嫌悪感や恐怖、猜疑心などを抱かせる必要はないという判断からだ。
装備自体は危険なものはなかったが、彼らからすれば見たことも無いような装備は武器に思えるかもしれない、そう思いこれもしまっておいた。
とは思いつつも、ドレイルは、ばれない様にしてハンドガンだけはいつも携帯していたのだが。
机の上に並べられた装備を眺めてドレイルはため息を吐いた。
「やっぱり、銃が足りないな」
装備自体は充実しており、バッテリー駆動のものもソーラーや手動の充電器があるので問題なかった。
やはりないのは武器、銃だった。
P90は回収できたのだがかなりの高温だったため金属の一部が溶け使用不能になっている。弾薬は1マガジン。
ハンナのショットガンはまだ使えるが残弾が残り2発。
ハンドガンのPPQ(11発装填の9mm銃)が一丁と2マガジン。
手榴弾が2個、フラシュバンが2つ、そしてカーボン製のナイフ2本。
これだけ見ると十分に思えるが、それは帰還の目途が立っていればの話だ。
別の世界におりなおかつ元の世界への連絡や帰還方法がわからないということは、今後一切補給を受けることができないということでもある。
今は敵対しているものはいないが、ドレイルは最強種の一つと言えるドラゴンをたった一人で倒してしまっている。
そしてそれはこの世界の人間では不可能なことなのは、これまでの話を聞いてドレイルは理解していた。
つまりは本人は認めたくはないだろうが、彼はある意味この世界の人類最強の戦士ということとなる。
そんな人間をほおっておくほどこの世界の人間はバカではない。
特にある程度の実力者ならよく理解している。
そんな人間にどれほどの価値があるか。
そしてどれだけ危険であるかを。
ドレイルの噂は遅からず、すぐにほかの国にも伝わるだろう。
そうなれば他の国はドレイルを自国に引き込もうとするか、もしくは消しにかかるだろう。
どちらにせよ、最後は荒事になるだろう。
万が一、そういったごたごたになった場合、一度くらいならば対処はできるだろう。
だがもし何度もとなると、ただでさえ少ない物資である。対処しきれないだろう。
そうならないためにはまず目立たないことが重要だったのだが、とびっきり一番目立つ形になってしまった.
だが何もマイナスだけではない。
ドレイルがそう考えると、二階から小さな物音が響いた。
時計を見ると、時刻は5時30分を指している。
この世界の時間は自分がいた世界の時間とほとんど変わらないことは確認してあるので外はだいたい日が昇ろうとしているころだろう。
ドレイルは机の上の装備を片づけるとそれを部屋に持っていき隠し場所に仕舞う。
そうして何事もなかったように椅子に腰をおろし、お茶の準備をした。
そしてお茶を入れ終わる頃に階段を静かに降りてくる音がした。
椅子に座りお茶を飲んでいると、扉が開いた。
「ん、ドレイルさん?」
若干寝起きで頭が働いてない様子のハンナが入ってきた。
「おはようございます」
「おはようございます。相変わらずお早いですね」
そう言いながら彼女は正面の椅子に座った。
ドレイルは、ここ数日やっているように用意しておいたカップにお茶を注いで彼女に渡した。
「ありがとうございます」
カップを受け取ると、カップの熱を感じるように両手で包んだ。
そしてしばらくそうしてからお茶を一口飲み、吐息を吐いた。
「はぁー。相変わらずおいしいですね。ドレイルさんの入れたお茶」
「そう言ってもらえると光栄です」
ドレイルはそう笑い返し、自らもお茶を飲む。
そしてカップに口をつけると、彼女に視線を向けた。
ハンナはまたカップを手で包んでそのほんのりとした熱を楽しんでいる。
そして彼女がこちらに対して警戒している様子が全くないことに、隠れた口を満足そうに歪めた。
(まずは、第一段階はクリアだな。だが、)
そうい思い、口を引き締めた。
(まだ油断できない。まだ、始めたばかりなのだから)
そう思い笑顔を張り付かせ、カップを机に置いた。
長く間が空いてしまいすみません。明日、投稿します。