武器屋
あれから何十頭という巨獣相手にひたすら、スキを付いて、脇を通り抜けるという訓練を行なった。
初は通り抜けるまで、30分程掛かっていたが、街が見える頃には、5分以内で通り抜けれる様になった。
これはすごいことだと思う。なぜなら、1頭抜いても、後ろから追って来る。
前門の龍、後門の虎という感じで前後の巨獣を相手にしなければならないからだ。
流石に4頭相手の時は死ぬかと思った。
しかし、ガルムさんの言う通り、気配読みを使って、安全地帯を先読みし、何とか生きながらえた。
5キロもの距離を走り抜けたのは初めてだ。
止まれば、死ぬというペナルティがなければ、不可能だっただろう。
息も絶え絶えで街に着いたのだが、ガルムさんは平気な顔をしている。
あの巨大斧を背負って走っていたのに、息ひとつ切らしていない。
この人に鍛えて貰って、良かったのか悪かったのか…
ただひとつだけ言えることは、生き延びれば、この島で多少のことがあっても、死なないということだ。
スパルタの意味が良く分かった。
でもそれぐらいしないと、俺の根性は鍛え直せないだろうし、ここで踏ん張れば、自信も少しは付くかもしれない。
しかし、疲れたぁ〜…
「まずは、服を買いに行くぞ!」
「あ゛ぁ〜い」
声が掠れて、上手く出ないが、ガルムさんに付いて行く。
「かなり疲れているみたいだな。まぁお前にしては、よくやったんじゃねぇか?!」
そう言われて、顔を上げてみると、結構しっかりした門が目の前にあった。
ガルムさんが門番に声を掛けると、
「ガルム様、どうぞお通り下さい。して、後にいる者は?」
「あぁ〜こいつはなんだ…弟子みたいなもんだ。悪い奴じゃねぇ。悪いことしたら、取っ捕まえて、縛り首にすりゃー良い。」
「御弟子様でしたか。これはとんだ失礼を。どうぞお通り下さい。」
何やらガルムの言葉に不穏な言葉があったが、聞かなかったことにした。悪いことなんてしないし、そんな勇気もない。
しかし、門番の人はえらく丁寧だったな。気配読みでは、ガルムさんを崇拝している様だ。
ガルムさんって、やっぱりただのきこりじゃないよな…
「服も3着あれば良いだろ。靴は2足必要かっと。次は武器屋だ。」
武器かぁ〜何が良いんだろ。
この街はウッドストックと言い、街全体が木製の建物で溢れていた。道も木で舗装されており、とても綺麗な街だ。奥の方にはこれまた木製の大きな城があり、そこに王族が暮らしているそうだ。
武器屋は、街の裏通りにあり、日の光が届かない、薄暗い所にあった。
「邪魔するぞぉ〜」
「邪魔するんなら、帰ってぇ〜」
「また来るわぁ〜…っておいっ!客を帰す店主が何処にいるっ!」
おぉ〜ガルムさんて、ノリツッコミするんだ!てか、完全に吉○新喜劇の完コピじゃんっ!
「久しぶりじゃないか、ガルム。今日は何の様だ?」
「今日はこいつの武器を探しにな。」
と言いながら、右手の親指をこちらに指して答える。
「へぇ〜、ガルムがつるむなんて珍しい。私はリーズ。ここの店主をやってる。」
長い髪をかきあげながら、自己紹介されたので、慌てて答える。
「え、えっと、黒木 健と言います。健と呼んでください。」
「そぅ。で、あなたは何者?」
「おっ、リーズが興味を示すなんて、珍しいな。こいつは、自分の名前以外覚えてねぇよ。今は俺の弟子ってことになってる。」
「へぇ〜。あなたが弟子をとるなんて、天変地異の前触れかしら。」
「まっ色々事情があるのさ。」
「深くは聞かないであげる。で、どんな武器がお好みで?」
「自分にあった武器を選びたいので、少し見回っても良いですか?」
「好きなだけ見ると良いわ。ガルム、少し良いかしら。」
「また厄介事か。健、しっかり選べよ。お前の自分自身の特徴を良く考えろ。」
そう言って、ガルムさんとリーズさんは、奥の部屋に消えていった。