スピア
ガルムさんとサラさんに、記憶喪失を装って、この世界について聞いてみた。
「この世界にはな、数百もの島々が存在すんだ。その島によって、色々な特徴があんだよ。例えば、ここはフォレスト島って言われてるんだが、島のほとんどは木で埋め尽くされてるんだ。その他には、砂だけの島とか、海の中の島とか、空を飛んでる島、雨ばかりの島、雪ばかりの島、機械というものであふれている島もあるって聞く。まぁ俺も若い頃は色んな所を旅して回ったが、そういうものは、自分自身で感じた方が良いだろうよ。
この世界はまだまだ発見されていない島がいっぱいあるらしい。
ただ一応この世界のことをセピアとみんな言ってんよ。」
「色んな島かぁ~。面白そうだな。でもガルムさんは何で旅をしてたんですか?」
「この世界のどこかにスピアという場所があってな。そこでは何でも願いが叶うという伝説があるんだよ。それで旅をしてたんだ。まぁ結局見付けることは出来なかったがな。」
「ガルムさんはどんな願いを?」
「まぁなんだ…そんなことは置いといて、健はこれからどうするんだ?」
何やら、ガルムは妙に照れ臭そうにしながら、話題を変えてきた。
そう隠されると余計気になるが、初対面の人にそうそう話せる内容じゃないのかな?と思い、俺もスルーした。
「これからですか…。特にこれといって、目的はないんですけど…。そうですね、旅をしようと思います。中々おもしろそうな島もあるみたいですし。」
さすがにずっとお世話になる訳もいかないので、適当に答えた。
「健は何も戦う手段を持ってないんだよな?」
「それはまぁ…そうですけど…」
くぅを撫でながら答える。
「旅をすんなら、最低限自分の身は自分で守れる実力がなければ、この島すら出れねぇよ。」
「健さんはどうやって、ここまで来たの~?途中で巨獣に会わなかったのですか~?」
サラさんがのほほんとした声色で聞いてくる。
「危険そうな所を避ける様に来たもんで、巨獣?には会いませんでしたよ。」
「お前、勘で巨獣を避けてたのかよ?!ここら一帯は5分も歩いていたら、必ず巨獣に出くわすぞ。」
2人とも目をまんまるにして、驚いていたから、簡単に気配読みについて、説明してみた。この力が何であるか、分かるかもしれないし…。
「そんな力は聞いたことがねぇな。武術を極めた奴なら、生き物やモノの位置ぐらいは把握出来るかもしれないし、そういう魔術はあるかもしれないが、食えるか食えないかとかは別次元の話だし…。でも何で五体満足で、ここまで来れたかは分かった。」
結局、俺の力は謎のままだった。
「その力が有る限り、出来るだけ危険は回避出来るだろうが、回避出来ないことに対処出来る様にしないと旅をするのは危険過ぎる。どれひとつ、退屈しのぎに健に色々教えてやるよ。」
「良いんですか?!俺、お礼出来る様なもの、何も持ってないですよ?!」
「退屈しのぎに教えるだけだし、スパルタで良けりゃな。」
この笑みについて、もっと考えれば良かったと後で後悔するのであった。