美女と野獣
あれから、危険な気配を避けながら、歩くこと5時間…
「あ~疲れた…もう歩けない…てか、眠い…」
何とか煙を出してる小屋まで辿り着いたけど、村があるかと思ったら、森の中に古びた小屋がぽつんとあるだけだった。
あまりに疲れていたので、近くにある切り株に座り込む。
「くぅは良いよな…いつの間にか、俺の鞄の上に座ってんだもん…」
「にゃにゃにゃ~」
照れ臭そうに返事をする。
歩き初めて、すぐに鞄の上に器用にバランスをとりながら、座っていたのだ。
てか、俺は何でくぅの感情が分かるんだろ?
これも気配読みの一種かな?
そんなことをポケーっと考えてたら、背後からいきなり声を掛けられた。
「おい!お前は誰だ?!どうやってここに来た?」
「おわぁ~!!」
ドスン…
「いってぇっ~!」
気が緩んでいたため、危険そうな気配以外には、全く無防備になっていた。
急に怒鳴り声を浴びて、びっくりして切り株から落っこちた。
今日はやけに尻餅つくなぁ~…
「え~っと…!!!」
事情を説明しようと振り向いたら、厳つい恐持てのおっさんが鬼の形相で立っていた。
筋肉ムキムキな上、巨大な斧を肩に担いでいる。
「あの、えっと、その…」
「だからお前は誰でどうやってここに来たか聞いてんだよっ!見た所丸腰だしよ。何か武術をやってる様には見えねぇし、魔術師でもなさそぅだしよっ!てめぇは何者だっ!」
こえぇ~…恐すぎて声も出ない。
「……っ」
「さっさと言えやっ!」
どごぉぉぉんっ!!
厳ついおっさんの巨大な斧が俺のすぐ側に打ち下ろされた。
土煙で周りが見えなくなり、恐怖心で腰が抜けてしまって、座り込んでいる時に…
「あらまぁ、あなた何をしてるの?」
おっとりとした、優しそうな女性の声が周りに響いた。
「いゃ~、怪しげな奴が中々説明しないから、つい…な。」
「もぅ。理由はどぅであれ、人様にその斧を振りかざしてはダメです。」
「面目ねぇ~。
おい、こっち来いよ。家の中で話をしよう。」
何だか分かんないけど、おっさんの顔が急に穏やかになったような…。
小屋の中に通される。
「いゃ~。驚かして悪かったな。そこに座ってくれ。」
「はぁ~。失礼します。」
「俺の名前はガルム。ガルム・ド・ルーンベルド。今は見ての通り、きこりをやっている。そんでこっちが…」
「サラよ。サラ・ド・ルーンベルド。ガルムの妻です。」
「ども。俺の名前は、黒木 健。一族の名前が黒木で、個人の名前が健です。」
「珍しいな。家名が前にくるなんて。何処から来たんだ?」
素直に答えても、信じてもらえないだろうし…
「それが…何処からどうやって来たのか、何でこんな所にいるのか…自分の名前以外は思い出せないんです。」
「記憶喪失かよ!また厄介だなそれは…」
「すいません。この世界のことを教えてくれませんか?」
美女と野獣夫婦に聞いてみた…