いざ人里へ
深々と降り注ぐ日の光。
澄んだ空気に青い空。
そして包み込む様な鮮やかな深緑。
それに混ざった有象無象の獣の気配…
折角いい気分で歩いているのに、そこかしこに獣の気配を感じる。
しかも黒猫の気配と違って、威圧感というか何というか。危ない気配がプンプンする…
触らぬ神に祟りなしってことで、危ない気配を避けて、気の向くままに歩いていく。
それにしても、物の位置や生き物の位置、終いには、それが有害か無害か、手にとる様に分かる。
やっぱり、あの頭痛がきっかけかな~?
初めは何となく気配が読めるだけだったのが、気配を読んでいくうちに、だんだん強力になっていく。
サバイバルには重宝しそうだ。
木の実も食べられるもの、たべられないものが分かるし、どこに涌き水があるかも分かる。
でも流石に野宿はしたくない。
日本にいた時も、学校行事のキャンプでしか、なんちゃって野宿を体験していない。
しかも今はアウトドア用品を何一つ持っていない。
更には得体の知れない獣に囲まれていては、寝るに寝れない…
「そういやお前に名前付けてなかったな…ネコって呼ぶのも変だし、俺が名前つけよっか?」
「にゃー!」
黒猫は頷きながら嬉しそうに返事をする。
「じゃー…って、お前オス?」
「にゃっにゃっ!」
何だか怒った様に首を振る。
「ごめんごめん。お前メスだったのな!」
「にゃっ!」
そうだと言わんばかりに大きく頷く。
「じゃー…クロはそのままだし、くぅは?」
「にゃー!」
おっ…気に入ってくれたみたいだ。
「お前の名前は今からくぅな!」
「おっ!向こうに人の気配が…って、煙が見えてる…気配探った意味ないじゃん…」
遠くの方に煙突からの煙が見えていた。