黒猫
目の前に大自然が広がっている。日本では見たことがないような絶景。
「何か悩んでいたことがバカらしい。そう思えただけでも、ここに来て良かったかも…ん?」
岩影に生き物の気配が…
ゆっくり近寄って、覗いてみる。
シュッ!!
「おわぁっ!!!」
いきなり岩影から黒い小さな塊が俺の鳩尾目掛けて飛び出してきた。
びっくりして、バランスを崩し、草に足を取られて、尻餅をついてしまった。
「にゃー!」
俺のお腹の上には可愛い黒猫が座っていた。
「びびったぁー。異世界に来て早々、獣に襲われ、即死亡ってオチかと思った。」
確かに不用心だったよな…
どんな所かわかんないのに、生き物の気配がしたからって、近付いたら…
今回は可愛いネコで良かった…
ん?
そういや何で俺、岩影に生き物がいるって分かったんだ?
気配を読むとか、一般人には出来ない芸当だよな…
まぁ深く考えても、分からないし、てか、ここがどこかすら分からないし、取り敢えず、どこか人のいるとこに行かないとな!
「おい猫。お前も俺と一緒に行くか?」
可愛らしくこちらをじっと見つめる黒猫に話掛ける。
「にゃー!」
と鳴いて、右足を挙げる。
んーーー可愛い!!!
言葉なんか分かる訳無いと思って、独り言を呟いたのに、返事が返ってくるし、右足を挙げる仕草がメチャメチャ可愛い!
旅は道連れって言うしな!
「んじゃ、人間いるとこ向かって、行ってみよー!」
森の中を黒のスーツと茶色の革靴を身につけて、黒いビジネスバックを肩から掛けた男と、一匹の言葉を理解出来る黒猫の妙な1人と1匹が仲良く歩き出したのだった…