神獣十三使徒
ガルムと二人きりになり、気になっていたことを聞いてみた。
「ガルムは何をどこまで知ってんの?」
「俺も概要ぐらいしかしらねぇよ。詳しくは、くぅ本人から聞け。ただ、まぁ少しだけなら、話しておいた方が良いかな。
くぅは獣人と言われる種族だ。一概に獣人と言っても、様々な種族がいるから、一括りには考えてはいけないが、共通することは、人並み離れた能力を持っている種族ということだ。
その中でも、最も優れた13の種族を神獣十三使徒と呼ばれている。
その神獣十三使徒はあまりにも強大な力を持つ為、世界管理委員会によって監視されている。というか、ほとんどが、世界管理委員会に所属している。所属を拒否したもの、脱退したものは、力と記憶を封印されて、人の姿になれない様にされている。」
「つまり、くぅは、世界管理委員会とかいう組織から抜け出したってこと?」
「まぁそういうこった。」
「じゃーネコミミとかシッポとか、見えたらまずくない?」
「ネコミミとかシッポとかは、誰かに見られても、問題無い。
この世界には、獣人とは別に亜人という種族がいるからな。
ただ、獣と人の2つの姿を持っているのは、獣人だけだ。
だから、変身する所だけは、絶対に見せるな。」
「了解。んで、その神獣十三使徒ってのは、どうやって見分ける訳?」
「神獣十三使徒ってのは、鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪の中でも体の色が真っ白な獣人である神聖十二使徒と、黒猫の獣人である邪悪一使徒の十三種族いる。
神聖十二使徒は一つの能力に特化しており、神の使いとも言われている。
邪悪一使徒である黒猫の獣人は、暴力という破壊と殲滅に特化しており、神獣十三使徒の中でも異質で恐れられている。
こんな所かな。最後に一つだけ。恐らく、遅かれ早かれ、世界管理委員会は、くぅを見つけ出す。というか、既に見付かってると考えた方が良いだろう。今は何もないが、気をつけた方が良い。
くぅの力は強大だ。何かあった場合、世界管理委員会はくぅを利用又は再度力の封印をしたがるだろう。
だから健。
お前がくぅを、くぅの自由を守ってやれ。」
何かすごいことに巻き込まれそうだな…
まぁ異世界に来ただけで、すごいことだから、今更って感じかな…
「俺はくぅの相棒だからな。二人で自由にこの世界を回るつもりだ。俺達に立ちはだかる壁は、回り込むか、登り切るか、叩き潰すだけだし。」
「お前らしいな。特に叩き潰すを最後に持ってくる所とか。
男なら叩き潰すだけで良いんじゃねぇ?」
ガルムのニヤケ顔がちょっとムカつく。
「そういやさ、既にくぅの存在を知ってる人が、俺達以外にも2人いるんだけど…。」
「骨董屋の爺さんと洋服屋のシャルだろ?その二人なら、大丈夫だ。まぁ詳しくは本人達に聞いてくれ。
ただ世の中複雑に出来てるってことを痛感させられるかもな。」
何やら事情がありそうだ。しかもきな臭い…
「まぁとにかく、今は力を付けないとな。健の腕前なら、この島を出発する前に死ねるからな。」
「ガルム…身も蓋も無いこと言うなよ。」
「ってな訳で修業再開だ。今日から7日間、ある依頼をこなしてもらう。」
そう言って、一枚の依頼書を取り出した。
「依頼事態は簡単で、巨獣を追い払えば良いだけだ。ただし、3つ条件を課す。
1.一人で行うこと。
2.ムチ以外の武器は使わないこと。
3.付属品も置いていくこと。
まぁ死なずに7日間山に篭るだけだ。」
7日間も一人で山に篭るだと…
「マジっすか?!」
「おおマジ。帰って来れれば、第一段階突破だ。」
スパルタはスパルタでも、ハンパない…
「その間、俺はくぅを鍛えとく。」
くぅ…お前に同情するよ…
絶対に死ぬな…
あとはガルムと世間話をしていたら、くぅとリーンが戻ってきた。
「お待たせしました。くぅちゃんの登録は終わりましたよ。くぅちゃん、魔法が使えるみたいですよ。」
リーンは興奮が押さえきれないみたいだ。
「どんな魔法が使えるんだ?」
俺も前傾姿勢になって聞いた。
「くぅは電気属性の魔法を使えるみたいなのっ!くぅの得物は、魔法銃みたいで、銃弾が電気属性の魔弾らしいのっ!」
「“みたい”とか“らしい”ってことは、くぅは覚えてないの?」
「う〜ん…覚えている様で、覚えていない様で、よくわかんないのっ!」
「まぁその辺は、俺が嫌でも思い出させてやるから安心しな。」
「ガルムっ!よろしくっ!死んでも怨むなよっ!」
前半はデレくぅで、後半はツンくぅになっていた。
おぉ、これがツンデレなのか?!
健は場違いなことに関心を寄せていた。