表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自分探しの旅  作者: KURO
14/15

くぅ?!

遅くなりましたっ!



こんなくぅはどぅでしょう…

チチチチチっ…


日の光がカーテンの隙間から、優しくもれてくる。



「もぅ朝か…。何か寝た気がしないや…。」


そう呟きながら、隣で丸くなっている黒猫を見る。



昨晩は人の姿でベッドに潜り込んできた。

流石に、俺の精神上よろしくないので、“狭いから”という理由で、何とか猫の姿に戻ってもらった。



俺の理性がもう少ししっかりしていれば…もう少し女性に慣れていれば、そんなに問題には成らなかったのかな…




まぁそんなことを今更考えても仕方がないので、さっさと支度をして、まだ眠ってるくぅを抱き抱えて、1階に降りて行った。






「よう、健っ!よく寝れたか?」



朝から元気な師匠が右手を挙げて、ニカっと笑う。



「まぁね…相変わらずガルムは朝から元気だね…」



欠伸を噛み殺しながら答える。



「なんか眠そうだな…なんかあったのか?」


「なんでもないよ。」


そう言いながら、欠伸をしてしまった。



ガルムを見ると苦笑いしていた。



「おはようございます。ガルム様、健っ!」


リーンが近付いて来て朝の挨拶をする。



「おぅ。昨日の嬢ちゃんか。おはよう。」



「おはよう。リーン。」



「にゃ〜っ!」



くぅも起きたみたいだ。



「嬢ちゃん。健がかなり眠そうなんだが、なんか知ってるかい?」


ガルムがリーンに尋ねる。



「その件に関係があるか分かりませんが、少々別室でお話させて頂いてもよろしいですか?」



くぅの話をするのだろう。


遅かれ早かれ、ガルムにはバレるのだから、構わないか…



俺は頷いた。



「少しなら構わないぜ。」



ガルムもそう返事を返し、リーンに別室に案内してもらう。





2階にある一室にて、リーンからくぅについて、ガルムに説明があった。



「成る程な。くぅ、人の姿になってくれないか?」



ガルムは案外すんなりと受け入れた。



「にゃ〜っ!」



くぅは一鳴きして、人の姿になった。


一瞬だが、人の姿になったくぅを見て、ガルムは鋭い目をした。

気配読みをする間もなく、いつも通りのガルムに戻っていたが…



「ガルムっ!人の姿では初めましてっ!」



「おぅ。くぅ。中々可愛いじゃねぇか。健が寝不足になる訳だ。」


ニヤニヤしながら、ガルムが言う。


くぅもリーンも訳が分からない顔をしているが、俺は苦笑してしまう。



「いきなりだが、くぅ。お前はこれからどうしたい?人の姿なら、やりたいことをして、普通に暮らすことが出来る。まぁ一般人には一般人なりの苦労はあるが。」



ガルムは本当にいきなりの質問をした。

当の本人であるくぅは、考える素振りも見せず、即答する。



「ずっと健と一緒にいるっ!」



なんか聞いてるこっちが照れそうな応えだ。



ガルムは真剣な顔でくぅに言う。


「そうか。じゃー、3つ程約束してくれ。1つ目は、健の前以外で、猫の姿にならないこと。くぅが猫にも人にもなれるということは、絶対に秘密にしなければならない。詳しい理由は今は話せないが、その事実が広まれば、大変なことになる。もし、既に俺達以外に知ってる人がいるなら、上手く誤魔化すか、口止めをしておけ。


2つ目は、強くなれ。健は旅をするみたいだから、健を困らせない為にも強くなれ。

俺が色々教えてやる。


3つ目。これだけは絶対に守れ。

如何なる理由であれ、健の命を奪うな。」



1つ目も2つ目もわかるが、3つ目には少々驚いた。いやかなり驚いた。


わざわざそんなことを言わなくても、くぅが俺を殺そうとするなんて思えないから。


リーンも目を丸くしている。



しかし、ガルムもくぅも真剣な顔で向かい合っている。



するとくぅが今までのニコニコ顔から、目をスッと細め、口には不適切な笑みを浮かべ、鋭い犬歯を見せながら…



「良いぜ。ガルム。その約束は必ず守ってやる。俺は健の相棒だからな。でもよう、あんたに戦い方を教えられるのか?」



あまりの変わり様に俺もリーンも言葉が出ない。



「ふん。何を…まだまだ小娘には負けねえよ。それに平和ボケして、腕が鈍ってるんじゃねえの?」



ガルムもニヤリと獰猛な笑みを浮かべて言葉を返す。




「…くぅ…?!」



思わず口から言葉がもれた。

今の状況に付いていけない。



「健っ!びっくりしちゃったっ?私自身のことは、必ず話すから、少し時間を頂戴っ!まだ私自身、整理がついてないからっ!でも絶対に健を裏切らないから、今はそれを信じて…」



またいつものくぅに戻った。

最後に一瞬、悲しそうな寂しそうな顔をした。くぅの気持ちに悪意は勿論感じないし、くぅの真っ直ぐな気持ちが伝わってくる。


急に雰囲気や表情や言葉遣いが変わるが、くぅの根っこの部分が揺るがない様だ。



くぅはくぅ。



これだけは変わらない。



だから…



「分かったよ。くぅを信じる。いつかくぅが自分の話をする時、俺も俺の話が出来ると良いな。」



俺の話…



今は記憶喪失としてあるが、いつかくぅには話さないとな…



「よし。こっちはOKっと。嬢ちゃん、くぅのことは、ここの奴らは知ってるのか?」



ガルムは未だに唖然としているリーンに聞いた。



「……っいえ。まだ誰も知りません。私はただ、人の姿になれるのなら、ここの登録をしてみてはどうかと思いまして…。」



リーンは気を取り直し、答えた。



「旅をするなら、その方が良いな。じゃーくぅの登録手続き頼むわ。あと、くぅのことは絶対に秘密だ。もし誰かに故意に漏らしたら、嬢ちゃんには悪いが…」



「ぜ、絶対に誰にも言いませんっ!」



慌てて答えるリーン。


そりゃあんなおっかない雰囲気で言われれば、何されるかは、言わなくても分かるよな…


やり過ぎな気はしないでもないけど…

そもそもリーンは、俺達が困る様な事態になるって教えられれば、誰にも言わないだろう。



「じゃー手続きよろしく。俺達はここで待ってるからよ。」



ガルムはそう言って、彼女達を追い出した。



「健。くぅのことは、くぅが話をすると言っていたから、ここで何も言わないが、1つだけ。

くぅはかなり強い。だが、かなり弱いくもある。

ただの戦闘だけなら、確実に今の健の数千倍は強いだろう。

だが、精神的には、本当に脆い。

だから、絶対に守り通せ。

くぅの心を。


くぅは今非常に“危うい”。


約束出来るか?」



ガルムは非情な顔で聞く。気配読みで読みとれるのは、“くぅの死”だ。



「ガルム…くぅを守れるかは分からない。だけどな…例えあんたが相手でも、俺は…俺はくぅを守る。」



ガルムにくぅを殺させはしない。

俺がガルムと戦っても、歯が立たない。

それでもくぅを連れ出して逃げることが、万に一つでも可能性があるかもしれない。

可能性がある限り諦めない。



「健。その言葉忘れるな。いやー良かったよ。健が腹括ってくれて。中途半端な答えだったら、くぅに戦闘の手ほどきで、死んでもらおうと考えていたからな。」



そう言っていつものガルムに戻る。


ガルムは何をどこまで知っているのだろうか。


気配読みでガルムが嘘を付いていないことは分かるが、ガルムのこともくぅのことも、分からないことが多過ぎる。



とは言っても、俺のこともみんな知らないんだから、お互い様か。それに今俺が見ている彼等がリアルなんだし…





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ