首輪
誤字訂正しました。
女将さんとロイズがロビンを医者に連れて行ったのを見て、俺とくぅは、街をゆっくり観光することにした。
とは言っても、未だに一文無しなので、本当に見て回るだけだが…
八百屋、魚屋、肉屋、日用品などもおいている雑貨屋などなど…
そんな中、骨董品が置いてある店があった。お店自体も、アンティークっぽく、とても趣のある店だった。
中に入り、色々見ていた。古本やベッドまで、本当に様々だった。
そんな中、一つの首輪が目に入った。
何の変哲もないピンクの首輪。真ん中に金色の鈴が付いている。
くぅに付けたら似合いそうだなぁ〜っと、手にとって見ていた。
「おやおや、それが気になるのかい?」
店の奥から、ご老人がゆっくりと出て来た。
お店だけじゃなく、店主もアンティークだ。
「えぇ、こいつに付けたら似合いそうだなって思いまして…」
そう言いながら、首輪を置き、くぅを抱き上げた。
「これはまた可愛い娘さんだのう。」
「にゃ〜っ!」
褒められて、くぅはご機嫌だ。
「ほっほっほっほっ。この娘さんは言葉が分かるのかのう。」
「俺もくぅの言いたいことは、何故か理解出来ちゃいますよ。」
「それはすごいのう。」
「ところで、これはいくらなんですか?」
「そいつは売り物じゃないのじゃよ。もし、ワシの出す課題に応えることが出来れば、ただで譲るが、課題に応えられなければ、いくら金貨を積もうと、譲らないと決めておるのじゃ。」
これは丁度良い。こちとら一文無しだ。
「どうしてですか?」
「これはの、大切な思いが詰まったものなのじゃよ。前の持ち主だった者の願いでな。」
肝心な部分は隠しているのが分かる。しかし悪意はないようだ。
ただ、本当に大切なのだ。
「その課題とはなんですか?」
「ほっほっほっほっ。わしからお前さん達に出す課題はないよ。」
やる気満々だったのに、拍子抜けだ。
「それって、課題を受ける資格がないということですか?」
「いやいや、もう課題をクリアしているのじゃよ。前の持ち主の願いは、“飼い主とペットという壁を越え、お互いがお互いを信じ合い、意志疎通が出来る者に渡して欲しい。”というものだったのじゃよ。お前さん達は、課題を課すまでもなく、自然体でそれを証明してみせた。だから、良ければこれはお前さん達にもらってもらいたいのだがのう。」
お爺さんは穏やかな微笑みを浮かべながら言う。
「くぅにぴったりだと思うし、是非下さい。」
お爺さんに申し出た。
「あぁ、良いとも。ただ、2つだけ願いを聞いてはくれないじゃろうか?」
「出来ることならなんでもっ!」
ただで貰うのだし、お爺さんの願いは、出来るだけ叶えたい。
「そぅかそぅか。ありがとう。1つ目は、最初に首輪をはめる時は、誰もいない所で行なっておくれ。2つ目は、またここに遊びに来ておくれ。」
「えっ?そんなことで良いんですか?」
「あぁ、それで良いのじゃよ。」
「何か起こるんですか?」
少し不安になり、聞いてみた。
“タダより高いものはない”って言うし…
「ほっほっほっほっ。心配せんでええ。悪いことは起きないじゃろうて。」
やはりお爺さんから悪意は感じられない。どちらかと言えば、“希望”?が感じられる。
「やっぱり、何か起こる可能性があるんですね?」
「そぅかもしれぬし、そぅではないかもしれぬ。」
「分かりました。必ず約束は守ります。」
「そぅかそぅか。その娘さんが大切なら、1つ目は必ず守るんじょよ。」
お爺さんは、悪戯好きな少年の様な瞳で片目を閉じた。
少々不安は残るが、人の良さそうなお爺さんと別れて、またしばらくくぅと散歩を楽しんだ。
辺りが夕暮れに包まれる中、Work Agencyに戻ってきた。
するとリーンが丁度いたので、話し掛けようとすると、リーンもこちらに気付き、先に話し掛けられた。
「健、お疲れ様。これは報酬よ。」
「え?何の?」
一体何のことか分からず、聞き返してしまった。
「事情はマージさんから聞いたわ。報酬からロビンちゃんの治療で掛かった分は引いてあるけど、これはあなたの成功報酬よ。」
「あの女将さんって、マージさんって言うんだ…って、そんなの良いのに…。」
「ちゃんと受け取りなさい。これはビジネスよ。成功したんだから、成功報酬はきちんと受け取るものよ。」
「じゃ、じゃー遠慮なく。」
袋には、銀貨2枚が入っていた。
「あの、それでロビン君は助かったのですか?」
「えぇ、薬をちゃんと与えて、しばらく安静にさえすれば、また元気になるんですって。」
「良かったぁ。」
「にゃ~。」
どうやらくぅも気にしていたようだ。
「健も大概お人よしね。でもすごいじゃない。こんな短時間でロビンちゃんを見付け出し、さらに病気であることを見抜き、治療を勧めるなんて。もう少し遅ければ、手遅れになる所だったのよ。」
「そうなんですか?!間に合って良かった。」
「報酬はどうする?銀行に預ける?」
「それじゃー、銀貨1枚を銀行に預けて、残りの銀貨1枚は持っておくよ。」
「じゃー銀貨1枚とカードをここに出して。」
銀貨1枚とカードを机の上のトレーに置く。
リーンはそれらを裏側に持って行った。
しばらくして、カードを持って戻ってきた。
「手続きは完了よ。」
カードを受け取り、
「ここに泊まるには、どうすれば良いんですか?いくらぐらいするの?」
「ここで手続きは出来るけど、ガルムさんがしていったわ。ここの宿泊施設はメンバーであれば、無料よ。」
「なるほど…じゃー一度部屋に行くよ。あと、時間って分かりますか?」
「今は6時よ。カードに時計の機能もついているわよ?」
よく観ると、カードの右上に時計が着いていた。
「じゃーまた今夜に。」
部屋の鍵をもらい、7時まで部屋で過ごすことにした。