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自分探しの旅  作者: KURO
11/15

初仕事

この度の大地震でお亡くなりになった方々へご冥福をお祈り致します。



また、被災者の方々も頑張って生き抜いて下さい。



当分、連載を中止しようと思いましたが、これを読んで少しでも元気になれたり、少しでも気を紛らわすことが出来るかもしれないと思い、連載を続けることにしました。




ただの自己満ではございますが、お付き合い願えればと思います。



2011年3月14日

受付にまた戻り、リーンさんは裏側から“迷い猫”の写真を持ってきた。



「この子を探して、ここに戻って来たら、仕事完了よ。


えーっとね……話は変わるのだけど…あの…あのね…その猫ちゃん………触らしてっ!」



「良いよ。最初からチラチラ見てたもんね。あっ、だからガルムはリーンの演技に気付いたのかもっ!ってまぁ、それは今はいっか。くぅって名前だよ。

くぅ、このおねーちゃんはリーンさんって言うんだよ。」



「にゃっ!」



くぅはやっと話し掛けられ、嬉しそうに返事した。



「うわぁ〜っ!人の言葉分かるの?!今ちゃんと返事したよっ!可愛いぃ〜…」



何やらリーンさんの表情が恍惚としている。

しかもくぅは今俺の胸元にいる訳で、リーンさんはどんどん迫ってきて、リーンさんの髪の匂いが俺の鼻の奥を刺激して…



ドカっ!



くぅがじゃれて、リーンさんに向かって、右手を挙げたのにびっくりして、リーンさんが勢い良く頭を挙げたものだから、リーンさんの頭頂部が俺の幸福を噛み締めていた鼻にクリーンヒットした…



刺激的過ぎるよ…



「ご、ごめんなさいっ!」



「大丈夫大丈夫。骨は折れてないから…」



「ねぇ、今日の夜空いてる?」



「今日?さぁどうだろ?予定はガルムに全部任せてるからなぁ。」


「さっきのお詫びと…その…またくぅちゃんと……………会いたいのっ!」



「おぉ。ナンパするなって言ったが、まさかナンパされてるとはなっ!」



ガルムがニヤニヤしながら、戻ってきた。



「そんな訳無いだろ。もしそうだったら、どれ程嬉しいか…」



「会いたいのっ!って言われてたじゃねぇーか。」



「残念ながら、相手は俺じゃなくて、こいつ。」



未だに恍惚としながら、俺の胸元にいるくぅをじっと見ている。


周りの声は届いていない様だ。



「そりゃ残念だったな…ドンマイ。」



そう言って、ガルムは俺の肩を叩いた。



「ガルム…なんでだろう…ガルムにそう言われると、無性に腹が立つ。」



「そんなもん簡単だ。俺はただ健をからかっているだけだからだ。」



「………」



ギロっ!



おもいっきり睨んでやったが、ガルムは悪びれた様子もなく、ニヤニヤしていた。



「はぁー、もぅ良いよ…。で?用事は終わったの?」


「あぁ、今日の所はな。今日はここに泊まっていくから。明日の朝まで自由行動だ。」



ニヤっとしながら、言っていたが、無視無視っ!



「ここに泊まるって、ここ?」



そう言いながら、天井を指した。



「あぁ、3階から上は登録者、メンバーの宿泊施設になってるんだ。」



「了解…。リーン、今日の夜空いてるみたいだから。ここに7時に集合で良いかな?それまでに初仕事を終わらせてくるから。」



「…ハッ!集合時間?」



「はぁー。本当に何も聞こえなかったのね…」



「ご、ごめん…」



「くぅと遊びたいんだろ?だから、7時にここに集合。それまでに俺は初仕事を終わらせる。OK?」



「いやいや…7時までにこの仕事を終わらせるなんて、絶対に無理だからっ!何でフリーランクで報酬が銀貨5枚なのか分かる?時間が掛かるからよ。大抵Gランクの報酬は、銅貨5枚〜10枚なのよっ!それなのにフリーランクで銀貨5枚って、難易度が高いに決まっているわっ!」



「まぁどちみち7時集合ってことで。」



「まぁ良いけど…。初仕事頑張ってねっ!」


「ああ、サンキュー。」



そう言って、Work Agencyを後にした。








くぅと“2人”でWork Agencyを出て、まずは誰もいない裏路地まで歩いて行った。



何故初仕事に“猫”の捜索を選んだかというと、2つ理由がある。


1つは、報酬が高そうだったから。こちらの通貨基準はまだよく分からないのだが、可愛いおばちゃんの食堂の平均価格が銅貨5枚〜8枚だったから、銀貨っていう時点で高そうだったからだ。


ちなみに、銅貨何枚が銀貨1枚に相当するのか、まだ分からない。

今夜リーンさんに聞いておこう。




2つ目の理由は、探す方法があるからだ。



まず、俺の気配読みで猫がいる所を見付ける。


そして、くぅに交渉してもらって、楽にクリア。


基本、他力本願の俺にしては、なかなかの作戦だと思う。



“利用出来るものは、上司でも利用しろ。”


日本で営業していた頃、よく言われたものだ。




よし、まずは猫の気配とこの街、ウッドストックの地理を全て把握する。



自分を中心に小さな円をイメージして、それを広げていく…



よし、完璧っ!



街にいる猫全ての気配を把握。



次に飼い猫の気配を探す。



“ごはん、まだかな?”


“まだ家に帰りたくない”


“もっと遊ぼ”



様々な感情の気配が伝わる。



“ご主人様に迷惑は掛けまい”



ん?明らかに周りの猫とは異質な気配を放ってる猫がいる。



「よしっ!くぅ、向こうにいる猫に会いに行くよ。」



「にゃっ!」






裏路地から更に奥深く入っていく。



周りに生き物の気配がほとんどない所に、今にも倒れ込みそうな猫がフラフラ歩いていた。写真の猫だ。



「くぅ、彼に飼い主がとても心配していることと、こちらには敵意がないことを伝えて、話をするために、こちらに連れて来てくれないかな?出来る?」



「にゃ〜…にゃっ!」


難しそうだが、頑張ってみることが気配読みで伝わった。






しばらくすると、くぅと彼が建物の陰から出て来た。



「にゃーにゃっ!にゃにゃにゃにゃにゃー」


連れては来たけど、帰りたくはないそうだ。


「どうして帰りたくないないねか、教えてくれないか?」



くぅを通して聞いてみる。



彼曰く、“俺の命はもう短い。ご主人様、悲しむ。迷惑。帰らない。”



確かに生気があまり感じられない。



くぅ曰く、“彼は病気にかかっているみたい。”



「治らないの?」



“まだ治る可能性はあるけど、治療費が高いみたい。”



んー。治療費はいくらぐらいなんだろ?


このまま放っておけば、必ず近い内に死んでしまう。銀貨5枚は魅力的だったのだが、諦めるしかないか…



「とにかく、ご主人様の所に案内してくれないか?治療費については、なんとかする。このまま君が死んだら、その方がご主人様に迷惑が掛かるよ。」



初めは断固拒否していたが、俺が無理矢理抱き上げると、観念した様だ。


飼い主の所までは、くぅが先頭になり、彼の指示通り歩いていった。







一般的な家の前に着いた。どうやら、銀貨5枚というのも、かなり思いきってだしたようだ。



コンコンっ…



「すいませ〜ん。猫が家の前で倒れていたんですけど〜。」


ノックをして、呼び掛けた。



ドタドタっ…バンっ!


勢いよく、ドアが開いた。



「ロビン?!」



腫れた目の下ににクマが出来ている、10歳ぐらいの少年が出て来た。


おそらく、彼がいなくなって、悲しくて泣いていたのだろう。

心配で寝れなかったのだろう。



「彼はロビンっていうんだね。」



俺はしゃがんで、少年に話し掛けながら、ロビンを少年に渡した。


「おじさんが見付けてくれたの?ありがとう。」



なかなか、礼儀正しい子だが…


おじさんって…


確かに少年から見たら、おじさんだろうけど、お兄さんの方がよかった…



「見付けたというより、ロビン君が近くで倒れていてね。俺の相棒、くぅって言うんだけど、こいつが、ロビン君の家がここだって、教えてくれたんだ。」


「ロビンが戻って来てくれたんだね。」



少年は涙ぐみながら、呟いた。



「“お兄さん”の名前は健って言うんだけど、君は何て言う名前なんだい?」



「僕はロイズって言います。健さん、くぅちゃん、ありがとう。」


本当に嬉しそうに、安心したように、心からの感謝の念が伝わった。



「安心してる所悪いけど、まだ安心出来ないよ。ロビン君は病気みたいなんだ。このまま放っておくと、死んでしまうんだよ…。」



10歳の少年に残酷な余命宣告をする。



「ロビンは助からないの?」



先程とは違い、絶望的な表情で聞いてくる。


「まだ助かる可能性はあるよ。お父さんかお母さんはいる?」



「お父さんは死んじゃっていないけど、お母さんはもう少ししたら、一旦仕事から戻ってきます。」



「そっか…。じゃーお母さんにロビン君が助かる様にお願いしないとね。」



「うん…あっ、お母さんっ!」



すごいタイミングでお母さんが帰って来たようだ。



「ロイズっ!その子はロビンじゃないのっ!見付かったのねっ!」


ん?何か聞いたことあるような声が…


後ろを振り返ると…



「お、女将さんっ!」


食堂の恰幅の良い、てか、豊満な可愛いおばちゃんがいた。



「あら、健じゃないっ!健が見付けてくれたの…?でも、Work Agencyの職員と一緒じゃないわよね?」



「そのことで、少しお話が…」



ロイズ少年から少し離れ、Work Agencyで依頼を受けたこと、ロビンの病気のことを話した。


「報酬を治療費に当てても良いの?!どれぐらい掛かるか分からないけど、治療費に使ったら、健への報酬がなくなっちゃうわよっ!と言っても、それに頼らないと、ロビンを治療してやれないしね…」



女将さんはロイズとロビンを悲しそうな目で見ながら、言った。



「ロイズ君も助かる可能性がある訳だし、俺にはガルムがいる訳だし、気にしなくても良いですよ。それより、早くロビン君を医者に診せないとっ!」



「ありがとう。この恩は必ず返すわっ!…そうだわね…食堂の無料利用か…私の体で…」


女将さんは、顔を赤らめながら、上目遣いで言った。



「き、気にしなくて、良いですよっ!」



慌てて答える。



すると女将さんは、俺の手を両手で握り…



「あなたの望みなら何でも聞くわっ!」



ダメだ…理性が崩壊する音が聞こえる…



「じゃ、じゃー、お、女将さんの…」



体を…っと言いかけた時、



「って、私なんかより、もっといい子が健はいるよねっ!でも何もしないのも、私の気が済まないから、健が食堂に来てくれたら、無料にしてあげるっ!」


「へっ?!あっ!はいっ!あ、ありがとうございます。」



「何か言いかけてたわよね?私の…」



「あっ、いや、お、女将さんの手料理はぜ、絶品だから、食堂の無料利用は有り難いなってっ!」



あ、危ない…


俺は何を言いかけてんだっ!


「そ、それより、早くロビンをい、医者にっ!」



「そうね、恩に着るわ。ロイズっ!ロビンをお医者さんに診てもらいにいくわよっ!」




そうして、女将さんとロイズ少年とロビン君はお医者さんの所に行くのであった。





本当に危なかった。


何でこの世界はやけに女性のスペックが高いのだろう。


子持ちでおばさんで豊満で…悪く言えば、ただの太った年増の女性なのに、何であんなに色気があるんだっ!



何か勿体ないことをした様な…




でもここで本能に任せたら、確実にガルムにからかわれるし、下手したら、いきなり、1児の父親に成り兼ねないし…





マジ、色んな意味で危なかったぁ〜…






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