プロローグ
目の前に古びた木製の扉がある。
何の変哲もない扉。
ただ、扉がある所がおかしい。
俺の名前は黒木 健。歳は28才。安月給のサラリーマン。
最近仕事がうまくいかない。
上司からは
『営業のセンスがない』
とか、
『言われたことも出来ないのか』
とか、言われたい放題…
まぁ自分にも落ち度があるから、何にも言い返せない。
自分でも全然成長してないと思うし、そもそも営業が向いてないとか、考える。
今日も上司から厳しい指導というなの言葉の剣で心をぶち抜かれた。
何が悔しくて、何に腹立つか…
自分自身の不甲斐なさ、自分自身の甘さ、自分自身の頭の悪さ…
そんなマイナス思考満載の状態で、家に向かって歩いてた。
突然、道の真ん中にある扉が目に入った。
朝はこんな所に扉はなかった。
そもそも留め金がないただの扉が独りで立っているのがおかしい。
横から扉の向こうを見ても、そこにはちゃんといつもの道が続いてる。
俺はとうとう頭が逝っちゃったのか?
よくよく扉を見てみると、そこにはこう書かれていた―
『汝が欲する時、
行動すべし。
汝が望む時、
心を強くもつべし。
汝が変われば、
すべては汝の手の中に』
これは新手の宗教の勧誘の看板か?とも思ったが、自分自身の在り方に嫌気がさしていた俺は、勢いで扉を開き、足を踏み入れた―
真っ青な空。
深緑の森。
川のせせらぎ。
を感じる間もなく、酷い頭痛に襲われる。
5分ぐらい経っただろうか。漸く頭痛が治まり、ゆっくりと目を開き、周りを見渡してみる。
そこには大自然が広がっていた。
思わず深呼吸してしまい、空気が澄んでいることを確認する。
へんちくりんな扉を見た時から、ある程度は覚悟していたので、そこまでの驚きはなかったが、それでも実感は湧かなかった。
異世界かぁ~…