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「お前も、うすうすは気づいていたんじゃねーの? 日向寧々が好きだったのは、そこの月人だったってことだろう? なのにあいつは彼女の想いに答えてやらなかった。それどころかお前とくっつけようとしていたんだな。……付き合いだしたお前は、彼女にキスを求め、体を求めたんだろう? まあお前の事もそれほど嫌いではなかったから拒否はしなかっただろうけど。たた、お前とそうなる前にどうにかして月人との関係を、月人の気持ちをハッキリさせておきたかっただけだろう。だから、あえてあいつを廃校舎に誘ったんだろう。生徒ならすぐにわかる。そこに呼んだらもうやることは一つだからな。そして月人は来た。当然、彼女は自分を選んでくれたって思っただろう。それにキスまでしたしな。でもそこから先にはこいつが行かなかった。最後の最後で拒否されたんだ。それがショックだったんだね。だからどうでもよくなってたまたま来ていた、どうせ、覗きにでも来てたんだろうな。やけくそに如月と関係を持ったんだ。いや、もしかしたら襲われたのかもしれないな。どっちにしたって……やっぱり、月人が悪いんだよ」


「そんなはずない」

 必死で否定しようとする。

「漆多、お前なら分かるだろう? 日向はお前の事を好きだから付き合っていたんだろ? それは間違いないだろう? 」


「そんなこと、お前に言われなくても分かっている。寧々が好きでも無い奴と、如月となんかするはずがない」


「日向は何も悪くないんだ。悪いのは俺なんだ。……俺があの時、断っていたら何も起こらなかったんだ。なのに俺は何もせずに行ってしまったんだ。すまん。彼女が死んでしまったのは俺の責任だ。……でも、彼女は蛭町が言うような子じゃないことだけは分かってくれ」

 恋人だった寧々が誰とでも寝るような女だと思って欲しくなかった。そんな尻軽な訳がない。それを知っているのは俺と王女だけだ。


「月人、そんなに言うなら証拠を見せろよ、俺みたいに。日向が如月とやっちゃったという証拠は出そろってるぜ。なのにどうして、お前はそこまで言い切れるんだ? 」


「それは、如月が彼女を襲ったからだよ……」

 一斉に笑い声が起こる。

 蛭町とその仲間達が大笑いをしたんだ。

「ぎゃははは、そんなことあり得るのかな? みんな知ってるだろう、如月はチビでやせっぽちで運動音痴な格好のいじめられっ子だぜぇ。女だって喧嘩したら負けるわけないぜ。おまけに俺の仲間がどつきまくったりして肋骨にヒビが入ってたはずだから、ちょっと叩いたら転がり回って泣きわめくはずだぜ。ははは。そんなのがどうやってレイプなんかできるんだ。漆多、お前だってそう思うだろう? 」

 と言って蛭町は見る。


「……ああ、如月なんかが例え不意打ちをしたって寧々を襲える訳がない」

 あきれた様な瞳で俺を見てきた。


「違う違う」

 と、俺。


「何が違うってーの。ついに月人君も塗り固めた嘘にボロがでたからやけくそになったのか」

 そうやって俺を責め立てる蛭町。


「もういいじゃん、蛭町。そろそろ俺たちも退屈になってきたからさ、ゲームやらせてくれよ」

 後ろで突っ立っていた男が舌なめずりしながら催促してきた。


「もうちっと待ってくれよ。いまいいところなんだから。あとでたっぷりお礼をするからさ、……ね」

 そうやって連中を宥める。蛭町はこの不良グループを何かの代償を差し出すことで協力を得ていることが如実に分かる。偉そうに言っていても連中を恐怖しているんだ。


「しかたねえな。まあ月人君が可愛い外人ちゃんを連れてきたから楽しみは増えたからいいけどさ。でも、もう我慢できねーかも! 」

 そういってそいつはジーンズの上から股間をごしごしとしごいた。


 何のゲームをするつもりかしらないし、何をトチ狂ったか知らないけど王女を襲うとしているようだ。


馬鹿だな本気で。こいつらはもはや明日を迎えることはできないことを知らないのだ。俺の中ではこいつらには既に死刑宣告が告げられている。

 それはともかく、とにかく漆多の誤解を解かないといけない。


「分かった。本当の事を言うよ。こんな事言ったって信じてくれないだろうから今までは言わなかった。でも日向が死んでなお名誉を傷つけられるのには耐えられない。……よく聞けよ」

 そういって俺はあのときの事を話した。

 如月が如月でない、得体の知れないモノに変形し、俺を半殺しにした後、寧々をレイプしたことを。


 話を聞いてしばらく漆多は黙っていた。そしてあきれたような顔をした。

「いい加減にしてくれ。そんな子供でも信じないような嘘を言われて、それを信じろっていうのか。お前、俺をどこまで馬鹿にしたら気が済むんだ。くそ。俺は本当に馬鹿だ。……お前みたいな奴をずっと親友だと思っていたのか。くそくそ。寧々と付き合えるよういろいろやってくれたって感謝してたのに、お前は俺をからかっていたんだな。そして寧々の心を弄んでいたんだ。……俺を馬鹿にするのは良いよ。でも寧々の気持ちを踏みにじったお前を俺は許す事なんてしないからな。寧々はもうこの世にはいないんだ。慰めることも、励ますことも、抱きしめてやることもできない。……お前に謝らせることさえできねえんだ。可愛そうだよ、寧々は。くそくそくそ」

 大粒の涙をぼろぼろと流しながら、親友は地面に跪いた。呻き喚き歯ぎしりをする。


「嘘じゃないんだ……」

 俺はほとんど声にならない声で呟き続けた。涙が出そうだ。



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