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「残念ながら、そう簡単にはいかないかもね」

 と、王女。

 

「そんなこと無いよ。マジで、あと少しで倒すことができたと思うんだ。……今度こそ逃しはしないよ。必ず倒してみせる」

 実際に体調はだいぶ戻ってきているんだ。今度はガス欠にはならないという自信がある。体の動かし方はまだ完全じゃないけど、あの時よりは遙かにうまくやれる。あの時は必死だったからね。今度は燃料の残量を計算しながら戦えばあんなことにはならない。

 あの時の俺はアクセル全開でやりすぎたんだ。


「そうね……確かにお前の戦闘能力は異常に高い。それは認めるわ。

 なんでわたしと契約しただけの死に損ないのブサイクが、あれほどの能力を持っているのかはわからない。ほんと、そんなことは今まで無かった。わたしの血と異世界の住人であるお前の血が何らかの反応でもしたとしか思えない。……でもそんな都合良く行くとは思えないんだけどもね」

 王女は不思議そうに話す。


 死に損ないは事実だけど、ブサイクとはあまりにも酷いし、余計な事じゃんと思いながらも口には出さない。

 

「如月流星という少年が生きていたら、……これでは言い方は変ね。まだ寄生されたままなら、わたしたちにとってはこれ以上無いラッキーなこと。あの姿のままでしょうから発見は容易だし、戦闘能力もあの時以上には上がることは無い。……でも他の宿主を見つけていたとしたらとても面倒なことになるわ」


「確かに……」

 如月は変化してもはや人間とは呼べない姿になっている。危険であることは間違いないけど、あんなバケモノ形状をしていたなら、誰にでも容易に発見できるだろう。あんな姿は明らかに目立つからな。


 全裸ででお尻と口から触手がはみ出て、ウネウネじゃあね。そんなの見たら、みんな大騒ぎだ。


 しかし、仮に他の宿主を見つけていたとしたら、そしてそいつの体が如月みたいに変化をしていない状態ならば発見は困難だろう。


 人間との相違点は発見なんてできやしない。


 仮に俺の生活圏とはまるで関係ないところで生活している人間を餌食にしていたとしたならば、そいつが本性を現して暴れ回り、誰かに目撃されない限りはニュース、いや噂にすらならない。


 俺は存在に気づくことができないし、気づかないだろう。


 そして、気付かない内に力を得たサイクラーノシュの寄生根に奇襲を受けるかもしれないんだ。


 そうなったら、俺は王女を護ることなんてできない。それどころか、自分の命だって守れる保障はないんだな。


 戦った如月よりも強くなっているヤツからの不意打ちに、俺の能力が対応できるなんて自惚れてなんかいない。

 

「まあ、心配ばかりしても仕方がないわ。如月という少年にいまだ寄生していることを祈るしかないわ」


「確かにその通りなんだけど……」

 しかし、はたして、そううまく行くんだろうかという不安の方が大きかった。ネガティブな考えは良くないって教わったんだけど。

「あいつがどの程度ダメージを受けていたか、実際のところはわかんないけど。でも、ヤツはあの場所から逃走しようとしてたよね。ターゲットである君を置いて。……体勢を立て直すために一時退避をしたのかもしれないけど、やはりダメージは深刻だったんだと思う。実際に戦った俺がいうのも何だけど、かなりのダメージを与えてたはずだと思うからね」


「ふむ。だとするならば、すでに次の宿主を求めて移動しているわね」

 王女の言葉には不安な気持ちが伴っている。


「そうならしばらくは安心だ。学区エリアには深夜は殆ど人がいない。……寄生する対象がいないってことになるよね。だったら……」

 俺は僅かばかりの期待を持った。

 宿主が存在しなければ、ヤツは寄生することは出来ないってことだから。


「寄生する対象を求めようともいないというわけね。もしも宿主を求めるとすれば人が訪れる朝以降というこになるわ。……ヤツが宿主から離脱していたなら、それまではどこかで息を潜め宿主たりえる存在が来るのを待たざるをえなくなる。そしてわたし達は、ヤツが宿主を取り込む前に見つけ出し破壊する作戦を選択する」

 

「……」

 俺は何も言えなかった。王女の作戦は成功するとは思えなかったから。

 ごくごく小さな根っこが宙を舞い、人に寄生する瞬間を押さえるなんてできるとは思えなかった。対象を特定できないかぎりは不可能なことなんだ。学校にはいったいどれほどの生徒がいると思っている? 教職員まで含めたら相当な数になる。

 その個人個人がどんな考えを持ち、どんな欲望を抱えているかなんて誰にも解らない。


 サイクラーノシュの寄生根のターゲットが誰かを予想するなんてできっこない。

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