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「ただ、唯一の救いは、寄生根の宿主たりえる存在は誰でもいいというわけではないと言うことよ」


「どんな人間なら取り憑かれるんだい? 」


「人間である必要はないけど。……何かに対して強烈な欲望を抱いているもの。何かに対して激しい憎悪を抱いているものが相応しいみたい。その者の負の感情が寄生根を呼び、根を育てる力となる。欲望の形態により宿主の形態が変化する。

 如月流星が触手と性器のバケモノになっていたのは、おそらく、彼が激しい性欲と狂おしいまでの力への渇望を持っていたからあんな姿になったんだと思うわ。セックスと破壊の化身となってしまったわけよ」


「如月がそんな感情を抱いていたとは知らなかった」

 普段凄くおとなしくて、いつも虐められていた姿しか見ていない俺にはその変貌ぶりと内に秘めた本性のおぞましさと狂気に寒気がした。

 彼にどんなことがあったかはわからない。想像するしかできない。

 でも、如月以外の人がそうならないとは言い切れない。

 そして人は誰でも心に深い闇を抱えているということだけは間違いないんだ。


「原因はシュウ、お前にもあるのだと思うわ」


「え、なんで」

 唐突に原因者とされたことに驚愕する。


「あいつはわたしを捕らえ殺すことより先に、あの女の子を犯すことそしてお前を解体することを優先していた。それは何故か解るか? お前達に構うことなくどこかに隠れていればわたしはアレの存在に気づくのが遅れたはずだ。そうなら、あっさり奴に捕らえられていたはず。……なのにあれは何を思ったか、能力全開放出で邪悪な気をまき散らしてお前達を蹂躙していた」


 確かに目標が少女であるならまずは異世界からこちらに来るであろう王女を待ち伏せした方が良いに決まっている。

 ……なのに何故。


「奴の根底にあるもの。それは日向寧々への愛情と、彼女が想いを寄せているお前に対するコールタールのようなねっとりとした深い深い嫉妬だったみたいよ。そんなこともお前はわからないのか? 

 まあ、そこが寄生根の運用の問題点であるんだけれど。……宿主の意志のほうが優先されるため、どうしても目標の為に回り道をしすぎ、効率が悪すぎるというな」


「でも如月が寧々のことを好きだなんて知らなかったよ。……それ以上に、寧々が俺のことを好きだったなんて、言われるまで全くわからなかった。気づきもしなかった。もし、わかってたら……」


 彼女の気持ちがわかっていたら、漆田との仲を取り持ったりしない……よ。


「お前が人の心に鈍感なのは、人それぞれだからまあ仕方ないわ。でも如月流星は嫉妬というどうしようもない感情のため、サイクラーノシュの寄生根を呼び寄せて寄生されたという事実は変わらない。あれは加害者であるけれど、被害者でもある。もちろん、同情はできないけれど」


 しかし、その程度の感情であんなふうになるんだろうか? 俺を切り刻んだりするほど、俺のことを憎んでいたのか? ほとんど話したこともないのに……。

 俺に対する如月の執拗なまでの破壊衝動については全く理解できていなかったんだ。普通あそこまでやろうなんて思わない、と思う。そんな衝動を抱かせるほどの恨みなんて買ってないはず。……知らない間に人の恨みを買うことは無いなんて言えないけど、あそこまでやられるなんてね。

 今度会ったら、まずそれを問いただしたい気持ちは、ある。

 それについての解答は得られることはないんだろうけど。


「俺はどうすればいいんだろう? 」


「寄生根を叩き潰す。ただそれだけよ。放っておいたら、アレはわたしを探しだすことに必死になるでしょうし、結界を解除するために行動をする。

 そして、アレはそんなことをしながらも、自らの欲望を満たす為に行動するでしょうね。……それにより、多くの人が死ぬことになるわ」


「そんなことはさせない。俺が止めてみせる。奴を、如月を、そうでないなら次に寄生した人間を倒すよ。これ以上誰かが犠牲になるのは見ていられないから」

 人であって人でない存在になってはいる。外見はバケモノでしかない。心は元は人間のものだとすると、そいつを倒すと言うことは人を殺すということなんだろうか?


【殺してしまえよ。どうせ生きていても仕方がないヤツらなんだからな。ヤツらと言ったら人間っぽいからやめておこう。アレだな。ちゃっちゃっちゃっとぶっ殺そうぜ】


 再び頭の中に普段の俺じゃない思考が現れる。戦いの中でノイズのように聞こえた声だ。

 幻聴か? そんなこと思うが、とりあえず無視することにする。


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