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 30分以内に到着するともことだったので、俺たちは近くの公園へと移動した。

 公園にもカメラが設置されてはいるが、それはトイレ付近にしか置かれていない。パトロール中の警官に見つからない限りは安心だ。


 俺は近くにあった自販機で缶コーヒーを購入。

「何かいる? 」

 と少女に声をかける。


 少し考えた後、

「これがいい」

 と、ホットレモネードのボタンを押した。


 公園の中に移動すると、二人してベンチに腰掛ける。俺は、なんかとても疲れていたので、腰掛けるとベンチに背を持たれかけ大きくのびをした。

 俺は缶コーヒーのプルタブを引き、一口含む。

 缶コーヒーとはいっても、暖かいものを飲むと、なんか落ち着くなあ。


 少女もそばで、ホットレモネードをコクコク飲んでいる。

 こうやって二人で座っている所を見たら、仲の良い兄妹に見えるのかなって思う。

 なんかぼんやりした時間だ。


「ところで、さ」


「何だ? 」


「迎えが来るまで少し時間があるから教えて欲しいことがあるんだけど。今まではそんなこと聞く暇がなかったけど、今なら大丈夫だろ? 」


「……お前もわたしの下僕になったからには、知っておかねばならないこもあるでしょう。いいわ、わたしが知っていることなら答えてあげるわよ」


「じゃあ、まず。君の名前はなんて言うの? 」

 いつまでもお前とか君とかこいつとかいうのも何だしね。姫って呼べと言われたけどそれはそれでもいいんだけど、本当の名前を知らないとなんだか落ち着かない。


「……マリオン・アドミラルだ。継承順位第3位の王女だ」


「えー、まじで王女様だったんだ……」

 

 まあ、それっぽい格好をしているからそうなんだろうとは思っていたけど。


「こんなことで嘘をついてどうする。お前のような下民がわたしと口を利くことなど本来なら叶わぬ事なのよ。わたしの世界ならお前は即串刺しにされているわ」


 いや、もうさっきそれ以上の目に遭ってるんだけど。

 それは口にはしなかった。


「王女というからにはどこかの国のお姫様なんだよね。その国はどこにあるの? 」


「お前が考えているような、どこかの国の王女という存在ではない。

 種族からしてお前達とは異なるのよ。わたしたちのことは、世界を統べる王の一族という存在だと考えればいい。わたしの住む世界では国という概念は被支配者層しか使わない。……お前達にわかりやすく言えば人民にとっての【神】みたいなものといえば解りやすいかしら」


 【神】という存在に少し違和感を感じてしまうが、実際に彼女の見せた能力は人というくくりに収まるような存在ではないから、そうなのかなとも思う。なんたって瀕死の俺を復活させたからね。


「じゃあ、神様である君を襲ってきたアレはなんなんだい? どうして君を殺そうとしたんだ」


「その前に、何故わたしがこっちの世界に来たかを話したほうがいいわね。……わたしの住む世界では、わたしを含む王族と呼ばれる存在が世界を支配している。いいえ……していたと【過去形】にしたほうがいいわね。あらゆる生き物がわたしたちを頂点としたヒエラルキーを構成していた。

 そんな世界に突然あれがやってきた。

 はるか宇宙の彼方から彼らは飛来したといわれている。見た目はこれまでの世界には無い、異形であらゆる点でわたしたちの世界の生き物とは思えない形状、能力、目的を持っていた。 

 異形のモノ達はわたしたちの世界を汚染し破壊し支配しようとしたのだ。


 当然のように、わたしたち王族は生き物たちを引き連れて彼らと戦った。そして一時は勝利した。


 だが、それは彼らの計略だったのだ。


 一度勝利の味をわたしたちに味あわせることで油断させ、そして王族の一部に取り入ったのだ。

 わたしたち王族が一枚岩の存在でないことを彼らは知っていた。

 王族の中には常に権力闘争があり、主流派から疎外された不平をもつ存在が逆転のチャンスを常に求めていた。彼らはどういう経緯かそれを知り、いや最初から知っていたのかもしれない……そしてそこに取り入った。あらゆる策略が巡らされ、王族は分裂し争うことになってしまった」


 人類と何ら変わることのない権力闘争が彼女たちの世界でも展開されているのだなと思った。

 今の状況に不満をもつ勢力はどこにも存在し、機会をみてこの虐げられた現状を打破し、日の当たる場所にでたがるんだ。そしてそんな存在を利用しようとする勢力もいて魑魅魍魎の争いがどこででも行われる。


「戦いはいまだ決着がついていない。……王族だけでなく、あらゆる生き物がその戦乱の中にある。

 しかし、遠からず決着がつく。異形のモノ達とその勢力側についた王族達が勝利することになるでしょう。

 裏切りが裏切りを呼び、共闘すべき王族の主流派は疑心暗鬼に陥り、誰を信じて良いかわからず、それぞれが孤立している。おまけに数も少ない状況だ。彼らは自分たちの臣下だけしか信じられず、それでは圧倒的多数の敵に対応などできるはずもない。

 わたしも戦いに敗れこちらの世界に逃げてくるしかなかったのだから……」



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