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「シュウ、これからどうするの」


「とりあえず俺のアパートに行こうと思うんだ。どこか安全な隠れ場所があれば良いんだろうけど、学生の俺にはそんな場所ないし。……友達の所という手もあるけど、こんな格好で行ったら、退いちゃうからなあ」


「わたしは……お前に任せるわ」

 

「そうだなあ。俺んちはここからモノレールで5駅あるんだよ。それにこんな時間だからとっくに終電は出ちゃってる。……歩いていくしかないんだろうけど、この町はあちこちに監視カメラがあるんだ。こんな深夜に学区、……学校ばかりがあるエリアなんだけど、こんな時間に許可無くいるやつなんてまずいない。パトロール中の警官に見つかったらすぐ職質されるんだ。おまけにこんな格好じゃあ、余計に人目を惹くよね。監視カメラでチェックされてるから、即警官がやってくる」

 そう言いながら、俺は考えを巡らせた。


 タクシーを拾うか……。財布の中には1,000円くらいしか無かったはず。……却下。


 やはり歩いて行くか? モノレール駅までは2キロ。最寄り駅まで5駅。営業距離で15キロくらいあったか。今の俺なら楽勝だろうな。……しかし、その距離を監視カメラを避けながら行けるものなのか? そして警ら中の警官に見つかる可能性もある。こんな格好で小学生の女の子(しかも金髪の美少女)を連れて歩いていたら絶対に人の目を惹くな。……やはり却下。


 バイクを盗んで移動するか?……バイクといっても電動バイクしかないんだけど。

 でも、こんな時間にそんなにうまいことバイクが置いてあるとも思えない。……やはり却下。


 移動するなら車が必要だけど、バイクと同じく、盗むのは絶対に無理。盗難装置が働くだろうし、たとえ無効化して動かせることができたとしても、あらゆる道路に張り巡らされたシステムがナンバーから所有者を割り出し、運転者との合致をチェックする。当然登録者と違えば異常を検知し、即、検問が行われるとともにパトカーが出動する。

 それほどこの街(関西科学技術・学術文化研究都市)のセキュリティは強力なんだ。さすが第2学園都市として造られただけのことはあるんだよな。様々な最新テクノロジーがこれでもかってくらい投入されている。その全貌を知っている住人は殆どいないんだろうな。知ろうとしても教えて貰えないだろうけど。


 街は教育施設地区、技術研究地区、住宅地区、都心地区が3,000haの土地に4つの地区が配置されている。そして、各種学校がある教育施設エリアは技術研究エリアに次ぐレベルのセキュリティ度に設定されているそうだ。

 安全安心がモットーのこの関西科学技術・学術文化研究都市にとっては、ごくごく当たり前の事なんだろう。

 さらに俺が通っている国立関西文化大学付属高校(中等部含む)→新設校である、はその学校方針として独自に地区最高レベルのセキュリティシステムをに導入しているんだ。補助金もいっぱいでたのかもしれない。

 普通なら、普通の人間ならセキュリティシステムを通過せずに出入りはできないんだ。これ情報の外国への流出を防ぐ為にも一役買ってるらしいけどね。よくは知らない。


 そもそも、この街区に自動車を乗り入れられる人間は殆どいない。すべて地区を巡回しているモノレールか市バスで通勤通学は事足りる設計だからだ。せいぜい、電動バイクで通う大学生・院生くらいだ。中高生は終電がなくなるまでには帰らされるからね。

 許可車両だけしか入ることができないから、街の空気はとっても綺麗。緑もいっぱいだから国際的エコロジー都市という面も売りの一つだ。

 このエリアに自家用車で入ってこられる人間なんて、学校関係者かコネのある大金持ちが子供の送迎に使ってるだけなんだ。


「やっぱ仕方ないか」

 俺は残された最後の選択肢を選ぶしかないことを認めざるを得なかった。


「決まったかしら? 」

 腕組みをしてこちらを見ていた少女がため息をつく。


「うん、家に電話して迎えに来てもらうよ」


「そんな結論に達するためだけに、このわたしを、この真夜中の寒空の下で待たせていたというの? 」


「ごめんごめん。こんな俺でもいろいろあるんだよ。はっきりいうと実家にはあまり頼りたくないんだよね。こっちの高校に入るために擦った揉んだあったからなあ」

 俺は言葉を濁す。

 自分ちの込み入った事情なんて人に聞かせるようなもんじゃあないからね。

 家から飛び出したままこっちの高校に進学し、一人暮らしをしているからね。バイトをして生活費だけはなんとか稼いでいるんだけど、結局学費は出してもらっているから、独立しているって胸を張って言えるわけでもないんだな。


 少女は呆れたような瞳で俺を見ている。


 そういえば、俺が考えていることは彼女には筒抜けだからあんまり意味が無かったかな。

 ため息をつくと、俺は携帯を手にした。素早くプッシュする。


 ……頼む、あいつがでないように。

 俺は、必死で念じた。かなり必死に。


 2コール目に受話器が取られた。


「もしもし、月人でございます……」

 若い男の声だ。懐かしい声だ。


 俺は大きくため息をついた。


もぎきさん、俺です」


「おお、柊様。お久しぶりです。元気にされていますか? もう1年以上経つんですよね。……たまにはこちらに帰ってきてください。旦那様も奥様もお会いになりたがってます」

 久々に聞く彼の声はあの時からちっとも変わっていない。

 十 兜 (もぎき かぶと)。凄い名前。俺が小さい頃から親父の弟子として家に出入りしていて、よく遊んでもらったりもした。歳は離れているけど、兄貴のような存在でもあった。そして、ある時期からは親父の会社で秘書兼ボディーガードとして雇われたみたいだった。


 俺が家を飛び出してからは、妹の家庭教師兼送迎の仕事もしているらしい。


「いや、まあね。気が向いたら帰るよ」


「そんなことをおっしゃらずに。……まあいろいろあったでしょうし、柊様もいろいろと考えがあるとは思いますけど、そろそろ意地を張るのもやめていい頃合いじゃないでしょうか。そう私は思います。……亜須葉あすは様も寂しがられておりますよ」


 げ……。


 その名前を聞いただけで、俺はどういうわけか戸惑ってしまうんだ。


 月人 亜須葉……。


 俺のたった一人の、2歳年下の妹。

 甘えん坊でワガママで優しくて怒りん坊で素っ気なくて、でも寂しがり屋で泣き虫の女の子だ。

 生来の相性の悪さからか、俺はアイツがとっても苦手で、でもアイツは俺にやたらとじゃれついてくるんだ。そのせいでどれほど酷い目に遭ってきたか……。そんなこんなで、妹は俺にとって小さいときからのトラウマ的存在となっている。ハッキリ言って大の苦手だし、俺にとっては天敵みたいなもんなんだ。だから出来る限り関わりたくないっていうのが本音なんだ。

 こればっかりは十何年もの積み重ねの結果だから、今更どうにもなんないんだよね。もはや遺伝子レベルの苦手意識なのかもしれない。


「ややや、やめてください。亜須葉のことは言わないでくださいよ。アイツは元気にやってるでしょ? うんうん、良かった良かった。それが一番です」

 意味不明なことを言って俺は誤魔化す。

 十さんはそれ以上は余計なことを言わなかったので助かった。


「わかりました。……ところで柊様。わざわざこんな時間に電話をかけてこられたからには、何かお困りのようですね」

 さすが、何年もの付き合いだけのことはある。おそらく俺からの電話だというだけで、どうにもこうにも困った末に電話してきたってわかったみたい。


「う、うん。ちょっとトラブルに巻き込まれてね。今、学校の外にいるんだけど」


「こんな時間にですか。一体、何をされていたんですか? 」


「うんー。まあそれは置いておいてね、今からアパートに帰ろうと思ってもこんな時間だから終電もとっくに出た後だし……。それにお金もないし」


「わかりました。すぐお迎えに参ります。……こちらからの距離もありますので、30分ほどお時間をいただけますか。準備ができ次第、お迎えに参ります」

 さすが行動が素早い。


 俺は現在地を知らせた。

「あ、それと……」


「なんでしょうか? 」


 俺は少し口ごもった後、

「あいつに、……亜須葉だけには絶対気づかれないように来てくださいね。これだけはお願いしますよ」


「無論ですよ。ご安心ください」

 と答えてくれたので、俺はほっとした。


 亜須葉が今の俺をみたら卒倒してしまうのは間違いない。その後なんでこうなったかを延々喋らされるんだ。


 当たり前だよね。

 服はボロボロで血まみれになっていて、おまけに金髪・蒼眼の小学生を連れてたら……。

 お前何やったんだって誰でも思うよね。

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