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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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7/22

 ホームルームを終え、放課後になる。誰も彼も、学校の授業が終わり、気を休める。

 そんな中、僕は香奈さんと男子生徒の関係が気になった。

 プライベートな話かもしれない。気にし過ぎては駄目だと自分に言い聞かせる。

 気を紛らわせるために今日、香奈さんと勉強で勝負し、負けたところを見直す。

 負けた原因を探るのも大切な訓練だ。計算ミスや、暗記不足など、頭の良さよりも、気持ちと準備が足りなかった。

 部活もないので、机の上で復習をこなす。

 明日、香奈さんとまた勝負することになっても簡単に負けない対策を取る。これで負けてしまえば、実力不足なだけ。


 僕が教室で残っていると、三〇分もしないうちに香奈さんが戻ってくる。どこか、不機嫌そうで力任せに椅子を引き、どっかりと座り込んだ。


「はぁー、ほんと男ってバカ。あほなのかな」


 一人でブツブツ言っている。何か言い返してほしいのだろうか。その僕も男なのだけれど。

 何も言い返さないでいると、左肩にがっつーんと背中が当たる。床を蹴り、椅子ごと右側にスライドしてきた彼女が衝突したのだ。かまってちゃんですか?


「ねえ、ねえ、ねえ、神村くん、暇」

「僕は暇じゃないかな」

「そうじゃなくて、私が暇なのー。何か、面白い話してよー」

「いきなり言われても。面白い話なんてできないよ。携帯電話でも見て時間を潰すのが手っ取り早いんじゃないかな」

「携帯電話ねぇー、確かにそっちの方が面白いことで溢れているか。ゴシップ、ニュース、映像作品、一生かけても消費しきれない量がある。でも高校生活は三年しかないんだよー、そんなどうでもいいことで、大切な三年間を無駄にしたくないんだよね」


 教室だと、暇な猫かと思うほどちょっかいを掛けてくるので、勉強に集中できなかった。

 僕が「図書室に行く」と言えば「じゃあ、私もー」と後をついてくる。ゲームの世界じゃないのだから、わざわざついてこなくてもいいのに。


 職員室近くにある図書室に入った。中学生のころ、星野さんを始めて見たのも図書室で、不意に彼女を探してしまう。いるわけがないのに。

 受験シーズンやテスト期間ではないため、すっからかん。ほとんど貸し切り状態だった。

 図書室の独特な本のインクの香りと、本棚の木の香りが充満している。

 教室の椅子よりずっとクッション性が高い椅子に座った。この椅子の方が長時間座っていても体が痛くなりにくい。


 図書室だと香奈さんも静かになってくれた。沢山の席が空いているのに、わざわざ僕の隣に座ってくる。

 そのせいで変に意識してしまう。ただ、眠気が起こらず、勉強に集中できた。

 ふとした瞬間に、隣を見る。そこに本を持ち、ガラス細工のように綺麗な横顔の彼女がいる。


 長髪でもないのに髪を耳に掛けたり、眼鏡をかけているわけでもないのにブリッジを人差し指で押し上げようとする癖のような仕草が不意に現れた。もとは、長髪で眼鏡だったのかな?


 勉強を終えた僕は図書委員や教師のおすすめの本を手に取って時間一杯まで読み深けた。

 星野さんと読み友にでもなれればいいと思い、彼女の読んでいた本をかたっぱしから読んでいたら本を読むのが苦手だった僕もある程度読めるようになっていた。


 星野さんは難しい本ばかり読んでいたけれど、香奈さんはライトノベルを読んでいる。それは、そんなに真剣に読む品ではない気もするけれど。

 一冊を一時間程度で読み終えてしまった彼女は本を閉じ、ため息をつく。

 料理屋で食べた覚えがない品を頼み、口にしたが口に合わなかったときの溜息と同じ。

 僕も彼女が読んでいた本を手に取り、読んでみる。

 男の子が死に、異世界に転生して無双、女の子達からもてはやされる展開だった。

 男子が読めば面白いのだろうが、女子が読めばそんな溜息が出てしまうのも仕方がない。


「イケメンで強くて優しかったら女子が簡単に好きになってくれるとでも思っているのかな」

「逆に不細工で弱くて優しくない男子を好きになる女子がいるの?」

「まぁ、いないわなぁー。王子様みたいな男に憧れるのが女の性だから」

「王子様か。地位が高くてお金持ちで、イケメンで、強い男も、中々いないよ」

「男は自分勝手モンスター、女は商人欲求モンスター、相いれない存在同士。仲良くし合うのは無理なのかな。なのに、なんで結婚なんかして子供を作ってしまいに別れるんだろう……」


 教室にいる香奈さんの口から出てくるとは思えない根暗な言葉の数々。背も少し丸くなり、うつむきがちになっていた。

 図書室の雰囲気が彼女にあっていないのかもしれない。つまらない本を読んで気分が落ち込んでいるのかも。


「きょ、教室に戻ろう。もう下校時間が近いよ」


 何事もなかったようにふるまい、僕は荷物を纏めて図書室を出ようとする。


「一時の感情に流されるから失敗するんだ……。って、こんなことしている私が言うのも変か」


 本を本棚に戻し、うつむきがちになった彼女は図書室のスライドドアの段差に躓く。

 廊下に出ていた僕は咄嗟に前に出て、彼女を抱きしめるように受け止めた。


「危なかった、スリッパだと引っ掛かりやすいから気を付けて」

「あ、ありがとう。まさか、あの程度の段差に躓くほどとは、私も思っていなかった」


 誰もいない静かな廊下。西日が窓ガラスから入り込み、白い壁に反射している。照明がついていなくても十分明るかった。

 背けられた彼女の頬が夕日色に染まり、急いで僕から離れる。首の後ろを摩り、視線が彷徨った。


「じゃ、じゃあ、私はもう帰るから。また、明日」


 海水につけると元気を取り戻す魚のように素早い足つきで去っていく。いったい、何がしたかったのだろうか。彼女の行動理由が一切わからない。

 男をなじっていたのに、僕と一緒にいた。ますます、なにがしたかったんだろうと思ってしまう。


 次の体育がある日、朝から香奈さんの雰囲気は暗かった。


「はぁ、今日、持久走か。嫌だなぁ。雨降らないかなぁ」


 外は気持ちがいいくらいの晴天。雲一つなく、携帯電話で雨雲の様子を確認しても福井県の上空に雲がかかる可能性は一パーセントも満たない。今日は確実に持久走が行われる。


「香奈さんは走るのが嫌いなの?」

「走るのが好きな人間なんて変人だけでしょ……。私は一般人だから走るのは嫌い」

「じゃあ、僕が何分何秒で千五百メートルを走り切れるか予想して、当ててみてよ。僕も香奈さんのタイムを予想する。予想と近かった方がジュースを奢るって言う勝負はどう?」

「……面白いじゃん。良いよ、受けてあげる」

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