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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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「私と話しているときくらいの感じでいいんじゃない」

「なるほど、確かに香奈さんといる時は自然体でいられている気がする」


 香奈さんがさばさばしているからか、はたまた話しやすい雰囲気だからか、彼女の前で何かを繕っていた覚えがない。素の自分を見せていたはずだ。じゃあ、星野さんと接するときも、香奈さんと会話するように努力すればいいってことか。


「香奈さん、いろいろありがとう。本当に、感謝してる」

「私は別に大したことしていないって。そんなことより、勝負勝負」


 眠気を誘う午後の授業に、彼女は勝負を仕掛けてくる。目が合ったらポケモンバトルといわんばかりに、対戦を申し込まれた。学校生活の中でこの時間が素直に一番楽しい。

 放課後、香奈さんから例の件についての話があった。


「五月二日の日曜日、午後一時から平和堂のケータリングコーナーで待ち合わせね」

「りょ、了解です」


 改めて日程を聞かされると、変に緊張してしまう。出来れば、香奈さんにも来てほしいのだが、彼女はどうしても来られないらしい。もう、当たって砕け散るしかない。


「えっと、その日、私、凄く忙しいからさ。昼間から夜にかけて電話してこないでね」

「電話を掛けてくるのはいつも香奈さんの方だけど……、気を付けるよ。他に、何か気を付けた方がいいことってある?」

「んー、まあ、出来ればラインも控えて」


 僕は小さく頷き、彼女の注意事項を覚え込んだ。でも電話やラインも出来ない状況とは、何だろう。家族と旅行にでも行くのかな……。

 家族の話は香奈さんとした覚えがない。その話題が出ると、そこはかとなく話題が変わるため、きっと話したくないんだろうなと思う。


 放課後、勉強しているのに星野さんと会うと思うと、勉強に手がつかなくなる。数日の猶予はあるけれど、そんなの関係ないくらい胸が高鳴って仕方がない。これは、恋によるものなのか、はたまた緊張がそうさせるのか。自分でも判断がつかなかった。

 このままでいたら、心臓が持たないのではないかと思うほど。


 ――僕は踏ん切りをつけようとしているのか。それとも、まだ一縷の望みをかけているのか。どっちなんだろう。星野さんとどうなりたいって思っているんだ。


 自分に問いかけてみても、答えは見つからない。はたして、僕が星野さんに抱いていた気持ちは本当に恋だったんだろうか。そこすら、どこか朧気で、確証が持てなかった。

 彼女が好きだから告白するときに緊張したのか、告白すること自体に緊張していたのか、はっきりとわかる手段は持ち合わせていない。

 今一度、彼女と会って気持ちをはっきりさせないと、僕は前に進めない。


 今の僕はきっと立ち止まっている状態だ。過去を振り返り、先に踏み出すのが怖くて動き出せない。勉強して気を紛らわせているだけで、何の解決にもなっていないのだ。


「ねえ、神村くん。ゴールデンウィーク後も、仲良くしてね」

「え、もちろん。急にどうしたの?」

「ほ、ほら、四月が終わったら席替えがあるでしょ。隣の席じゃなくなるかもしれないじゃん」


 香奈さんは身振り手振りを大きくしながらしゃべり出す。席替えで隣の席じゃなくなったら、授業中に勝負するのも難しくなりそうだ。会話も減ってしまうかもしれない。


「教室は同じなんだから、話す機会は沢山ある。それに僕は香奈さんと話すのが好きだから、僕の方から話しかけに行くよ」

「……っ」


 香奈さんは何かを言いかけたけど、結局何も言わなかった。ただ、顔を真っ赤にして自分の短い茶髪をいじりながらうつむいた。

 席が変わっただけで僕たちの関係が変わるとも思えない。この一ヶ月勝負ばかりしてきたけれど、まだ負け越している。

 今、僕が高校に来ている理由の半分は香奈さんと勝負するためだ。残り半分は成績のため。部活に入っていようが入っていまいが、学業の成績に加担されることはない。ただ、多くの者が、大学受験で面接がある際「高校で何を頑張ったのか」と聞かれるらしい。

 一般入試以外で行く者の多くが、おそらく部活と答えるだろう。高校受験以上に、大学受験は大掛かりになる。その時、何も言えない状態は非常にまずい。だから、多くの者が、嫌でも部活に入って少しでも高校生活という足跡を残そうとする。

 机の収納スペースに体験入部の申込用紙が未だに置かれていた。提出期限はとっくに過ぎ、ただの紙切れになっているのに、捨てられなかった。


 部活はいつからでも入れる。二年生、三年生になってからでも入ろうと思えば入れる。だが、一致団結している状態の中、新参者が入っても稀有な視線を向けられるのが落ちだ。

 一学期の前半でどうにかしなければ、その後、三年間部活と縁のない高校生活になるだろう。

 部活がないと、土日は好きに使える。放課後もずっと自由。

 中学の頃、ずっと部活していたから平日の長さに驚かされ、土日の暇具合に父親の仕事の手伝いでお小遣いを稼ぐ、又は勉強したり筋トレしたり、お金のかからない趣味で時間を潰すほかない。

 インターネットを覗けば暇も潰せてしまうだろう。でも、香奈さんが言っていた言葉が携帯電話を触ろうとするたびに聞こえてくる。


『高校生活は三年しかないんだよー。どうでもいいことで、大切な三年間を無駄にしたくないんだよね』


 見なくてもいいニュース、刺激の強い動画や画像、その他諸々が人間の本能を刺激してくる。

 負けず嫌いの僕は、携帯電話が発する刺激と勝負していた。連絡や、本当に調べたいときだけ利用し、それ以外のために使ったら負け。携帯電話を持っている以上、永遠に続く勝負だけど、その意識があるおかげか、一日の使用時間が一時間未満で済んでいる。

 半分近くが、香奈さんからの電話によって埋まっていた。

 楽間さんは携帯電話の使用時間が一時間未満などあり得ないと、変人を見るような目を向けて来たのを思い出す。どうやら女子のほとんどが、大量の時間を携帯電話に吸われているらしい。


 本来、携帯電話は電話するための道具だったのに、今や多くの者が電話する以外の目的で携帯電話を使っている。携帯電話で出来ないことはするなと、アンデシュ・ハンセンの著書『スマホ脳』で書かれていた。

 目覚ましは目覚まし時計で掛けろと、ゲームするならゲーム機で。星野さんが本を読んでいた影響で、僕もちょっとした知識が生活に役立っている。


 携帯電話は連絡し合うための道具。まあ、あまり過剰にしすぎてもそれはそれで、頭が悪い。

 僕はもう高校生なのだから、嗜み方を自分で決めなければ。

 使い方を間違えれば携帯電話はコカイン(薬物、ドーパミンの急上昇)、ギャンブル依存(中毒性)、ニコチン(タバコ、一服目的)、全てを網羅したデジタル版ハイブリッド依存症になる。それこそ、暇を持て余した者が依存になりやすい。

 部活もなければ、長時間勉強するわけでもない、超暇な今の僕が一番危険だ。携帯電話がここまで危険だとは思っておらず、敵対心が湧いている。多くの者が負けている状況の世の中で、僕は負けじと抗うつもりだ。

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