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『絶望?今、それどころじゃないのよ。』  作者: くろめがね


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第九話 ちゃんと食べる?……量って大事なのよ。

第九話です。今日は、「ちゃんと食べる量」を決める話をします。

朝だ。

たぶん。


腹は、正直だ。

昨日より、さらに正直だ。


「おはようございます、限界一歩手前です」


火は残っている。

これはもう、仲間だ。


木の実は――

まだ、ある。


「……君さ」


木の実に話しかける。


「ずいぶん偉そうだよね。

 食べられるかどうかで、

 人間を三日も悩ませてさ」


エルフが呆れた顔で言う。


「話しかけるな」


「話しかけたくもなるのよ」


私は深呼吸する。


「さて」


指で、木の実を割る。


「今日は、ちゃんと食べる」


布多めの人が、ほっとした顔をする。


「やっとね」


「ただし」


私は指を立てる。


「量が大事」


姿勢のいい人が頷く。


「初回摂取量は、

 最小限が望ましいです」


「そう」


私はうなずく。


「昨日までが“確認”。

 今日は“試運転”」


木の実を、さらに細かく割る。

昨日よりは大きい。

でも、まだ“一口”にはならない。


「これ」


エルフが覗き込む。


「少なすぎないか」


「少なくていい」


私は即答する。


「腹が減ってる時ほど、

 体はびっくりする」


火で、軽く温める。

焼かない。

温めるだけ。


匂いは、変わらない。

変わらないのも、また怖い。


「じゃあ……」


私は座り込む。


全員が、

こっちを見る。


「そんな見られると、

 急に緊張するんだけど」


エルフが笑う。


「そりゃ、

 ここまで引っ張ったからな」


「分かってる」


私は口を開ける。


……飲み込む。


一瞬、

世界が静かになる。


「……」


噛んだ。

飲んだ。


味は、普通。

本当に、普通。


「……普通だな」


普通って、

こんなに落ち着かないものだったっけ。


「どうだ?」


エルフが聞く。


「今のところ」


私は手を広げる。


「何も起きてない」


布多めの人が、

ほっと息を吐く。


「よかった……」


「まだだよ」


私は首を振る。


「今からが本番」


姿勢のいい人が言う。


「観察時間を設けるべきです」


「そう」


私は地面に座る。


「今日は、

 “腹が減ったまま観察”」


三十分。

一時間。


体は、変わらない。


「……いけそう?」


エルフが聞く。


「いけそう、は禁句」


私は即答する。


「いけてから言う言葉」


それでも、

腹は、少しだけ楽になった。


「……これ」


布多めの人が言う。


「希望ってやつ?」


「たぶんね」


私は火を見る。


「でも、

 希望を一気に食べると、

 腹壊すから」


エルフが吹き出す。


「相変わらずだな」


夕方。


体調は、安定している。

腹も、完全じゃないけど、

さっきよりマシ。


「今日は」


私は息を吐く。


「成功」


大成功じゃない。

快挙でもない。


でも、

ちゃんと一歩。


「よし」


木の実を包み直す。


「明日は、

 もう少し食べる」


誰も反論しない。


それが、

このチームのペースだ。


次は、おっさんが「腹八分」を覚えて、人生を少し語ります。

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