第七話 待つ?いや、待てるかどうかを見る。
第七話です。今日は、木の実を前にして「待つ」話をします。
朝だ。
たぶん。
木の実は、そこにある。
昨日と同じ場所。
昨日と同じ顔。
「……まだいるな」
いなくなってたら、
それはそれで諦めがついたのに。
腹が鳴る。
ぐぅ。
「知ってる。
知ってるけどさ」
誰に言うでもなく、言い訳をする。
エルフが、木の実を見つめたまま言う。
「今日こそ、食べるのか?」
「食べる“準備”はする」
私は座り込む。
「準備と実行は、
別の日にした方がいい」
布多めの人が首をかしげる。
「昨日から、ずっと待ってるわよ?」
「そう」
私はうなずく。
「待てるかどうかを見る日」
姿勢のいい人が、淡々と聞く。
「何のために?」
「自分のため」
即答だ。
「腹が減った時、
自分がどれくらい雑になるか」
木の実を半分に割る。
中は、白い。
匂いは……普通。
「……普通だな」
普通って、一番怖い。
「じゃあ、毒じゃない?」
エルフが言う。
「分からない」
私は即答する。
「毒って、
だいたい“普通”の顔してる」
布多めの人が苦笑する。
「嫌な知識ね」
「役に立つのよ」
私は木の実を火のそばに置く。
「今日は、火を使う」
姿勢のいい人が頷く。
「加熱による毒性低下ですね」
「言い方」
私は吹き出す。
「でも、そう」
火で、軽く炙る。
焦がさない。
焼かない。
温めるだけ。
「これで安心?」
エルフが聞く。
「全然」
即答だ。
「でも、
一段階は進んだ」
小さく削って、
さらに炙る。
それを――
地面に置く。
「……食わないのか」
「食わない」
私は首を振る。
「今日は“体に入れない”テスト」
布多めの人が目を丸くする。
「テスト?」
「触って、
匂い嗅いで、
焼いて、
それで終わり」
姿勢のいい人が補足する。
「皮膚反応の確認も有効です」
「ありがとう」
私は木の実を、
腕の内側に軽く当てる。
しばらく待つ。
何も起きない。
「……静かだな」
エルフが言う。
「静かだね」
私は頷く。
「静かなのは、
良い兆候だけど、
安全じゃない」
昼。
腹は限界に近い。
「なぁ」
エルフが言う。
「もういいだろ」
「まだ」
私は首を振る。
「今日、食べたくなるかどうかが大事」
布多めの人が、少し考えて言う。
「食べないって、
案外、難しいわね」
「難しい」
私は笑う。
「だから、
できたら自信になる」
夕方。
木の実は、
まだそこにある。
私は深く息を吐く。
「今日は、勝ち」
誰も倒れていない。
誰も無茶をしていない。
「食べなかった、
それだけ」
エルフが肩をすくめる。
「変な勝ち方だな」
「いいのよ」
私は火を見る。
「生き残る勝ち方」
夜。
木の実を包み直す。
「……明日だな」
自分に言い聞かせる。
今日も、
ちゃんと待てた。
次は、おっさんがついに「ほんの少しだけ」口に入れて、全神経を集中させます。




