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『絶望?今、それどころじゃないのよ。』  作者: くろめがね


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18/18

第十八話 誰?……いや、まずあなた誰なのよ。

第十八話です。今日は、「初対面の会話」をします。

火の光は、夜になると妙に強い。


昼間はただの炎なのに、

夜だと世界の中心みたいに見える。


だから、人影が現れた瞬間、

その存在ははっきりと浮かび上がった。


背は、普通。

体つきも普通。


武器らしいものは、見えない。


でも――


警戒している。


歩き方で分かる。


一歩ずつ、

様子を見るように近づいてくる。


火の光の外側で止まった。


距離、十歩。


近くもない。

遠くもない。


いい距離だ。


私は火の前に座ったまま、

その影を見た。


「……こんばんは」


先に言ったのは私だ。


人影は少し驚いたように、

肩を動かした。


沈黙。


夜の風が、火を揺らす。


エルフは動かない。

布多めの彼女も静かだ。


姿勢のいい彼女は、

ただ観察している。


人影は、やがて口を開いた。


「……人?」


私は思わず笑った。


「そうよ」


肩をすくめる。


「人じゃなかったら何なのよ」


その言葉で、

緊張がほんの少しだけ緩んだ。


相手は火の光に、

一歩だけ近づいた。


顔が見える。


若い。


十代後半くらい。


髪は短く、

顔には煤がついている。


そして――


痩せている。


相当。


布多めの彼女が、小さく息を呑んだ。


私はそれを見逃さない。


腹が減ってる。


間違いない。


「……座る?」


私は火の横を指差す。


相手は、すぐには動かなかった。


目が、火と、私たちと、

逃げ道を順番に見ている。


いい判断だ。


「安心して」


私は軽く笑う。


「襲うほど元気ないのよ」


エルフが横で吹き出しかける。


相手は、少し迷ってから、

ゆっくり座った。


距離、まだ五歩。


でも、十分だ。


火の光が、

顔を照らす。


若い顔。

でも、目はずいぶん疲れている。


「名前は?」


私は聞いた。


相手は少し考えてから答えた。


「……カイ」


短い。


いい。


私は頷く。


「私は――」


一拍置く。


「まだ秘密にしとくわ」


エルフが思わず笑う。


カイは少し驚いた顔をした。


「なんで?」


私は肩をすくめる。


「会ったばっかりで全部言うほど、

 人間お人好しじゃないのよ」


それでいい。


少しの距離。

少しの警戒。


それが安全。


布多めの彼女が、

水の器を差し出した。


カイは一瞬迷った。


でも――


受け取った。


飲む。


ゆっくり。


かなり喉が渇いていたらしい。


私はその様子を見ながら、

静かに聞いた。


「ねぇ」


カイが顔を上げる。


「ここ、どこだか知ってる?」


カイは、しばらく黙った。


火が揺れる。


夜が深くなる。


そして、小さく言った。


「……知らない」


私は思わず笑った。


「でしょね」


エルフが肩をすくめる。


布多めの彼女も苦笑する。


姿勢のいい彼女だけが静かに言った。


「共通認識を確認。

 この世界の地理情報は不明」


私は火に枝をくべた。


火が少し大きくなる。


そして、カイを見る。


「じゃあさ」


軽く笑う。


「ここから一緒に調べる?」


カイは、火を見つめた。


その目は、

少しだけ希望を思い出したようだった。


次は、おっさんが「カイの話」を聞きます。


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