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『絶望?今、それどころじゃないのよ。』  作者: くろめがね


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第十六話 会う?……会う前にやること山ほどあるのよ。

第十六話です。今日は、「会う前の準備」をします。

朝の空気は、昨日と同じようで、少し違った。


火はいつもの場所で静かに燃えている。

水もある。

体も動く。


でも、世界はもう昨日までの世界じゃない。


――誰かがいる。


それを知ってしまった。


焦げ跡。

火の温度。

あの場所の空気。


間違いない。


「……ねぇ」


私は火の前で膝を抱えながら言った。


「昨日のやつ」


エルフが短く答える。


「覚えてる」


布多めの彼女も頷く。


姿勢のいい彼女は既に周囲を観察している。


「複数存在の可能性、依然高い」


「そう」


私は息を吐く。


「つまりね」


火を棒で少し動かす。


火花が小さく弾ける。


「人に会う可能性があるってこと」


沈黙。


サバイバルは難しい。

でも、それは“自然相手”だった。


人がいるなら、話は別。


助けかもしれない。

敵かもしれない。


最悪、奪われる。


「だからね」


私は立ち上がる。


「今日は」


一拍。


「準備の日」


エルフがニヤッと笑う。


「戦うのか?」


「違う」


私は首を振る。


「死なない準備」


布多めの彼女が苦笑する。


「それ、だいぶ大事ね」


私は周囲を見る。


この場所。

火の位置。

水までの距離。


「まず」


指を一本立てる。


「火は隠す」


エルフが眉を上げる。


「消すのか?」


「消さない」


私は首を振る。


「見えなくする」


煙。

光。

夜の火は、遠くから見える。


それは、信号だ。


「招待状になる」


姿勢のいい彼女が言う。


「敵対勢力への位置情報提供」


「そういうこと」


私は石を集め始める。


火の周りに低い壁を作る。


煙は上がるが、

炎は隠れる。


「火は宝よ」


布多めの彼女が言う。


「取られたくない」


「その通り」


次。


「道を増やす」


エルフが首を傾げる。


「道?」


私は地面を指す。


「逃げ道」


ここは、今、

一本しかない。


それは、危ない。


「人間ね」


私は笑う。


「逃げ道あるだけで、

冷静になるのよ」


午前中は、ずっと動いた。


木を避け、

草を踏み、

細い道を作る。


二本。

三本。


やがて、森の中に小さな網ができる。


「……すごい」


布多めの彼女が呟く。


「村みたい」


「村じゃない」


私は息を整える。


「逃げ道ネットワーク」


エルフが笑う。


「名前が物騒だな」


「安全設計よ」


昼。


水を飲みながら、私は空を見上げる。


「あと一個」


姿勢のいい彼女が聞く。


「何ですか」


私はニヤッと笑う。


「嘘の場所」


三人が首を傾げる。


私は指差す。


「ここじゃない場所に、

生活の痕跡作る」


エルフが理解する。


「囮か」


「そう」


石を並べる。

小さな火の跡を作る。


誰かが来たら――


ここを見る。


「人間ね」


私は肩をすくめる。


「見たいものを見るのよ」


夕方。


火の前に戻る。


体は疲れている。

でも、心は落ち着いていた。


昨日は不安だった。


今日は違う。


準備がある。


「……よし」


私は火を見る。


「会えるなら、会いましょう」


風が吹く。


火が揺れる。


そして私は、小さく笑った。


「でもね」


一拍。


「簡単には捕まらないわよ」


次は、おっさんが「初めての足音」を聞きます。


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