第十四話 無理した?……だいたい昔の自分がやってるのよ。
第十四話です。今日は、「動きすぎて失敗した話」を少しだけします。
朝だ。
たぶん。
目が覚めて、
体を起こす。
「……うん」
重くない。
痛くもない。
昨日、ちゃんと止めたおかげだ。
火は生きてる。
水も、問題ない。
「今日は……」
私は空を見上げる。
「軽く動く日」
エルフが伸びをしながら言う。
「昨日より元気だな」
「元気」
私はうなずく。
「だからこそ、
やりすぎない」
布多めの人が笑う。
「最近、そればっかりね」
「最近じゃないのよ」
私は肩をすくめる。
「昔ね」
一歩歩きながら、言葉を選ぶ。
「無理して、
だいたい失敗してる」
姿勢のいい人が静かに聞く。
「具体例はありますか」
「あるある」
私は苦笑する。
「山、登ったことあってさ」
エルフが目を細める。
「へぇ」
「若い頃ね。
調子いいなーって思ったら、
止まらなくなって」
私は小石を蹴る。
「で、下りで膝やって、
帰れなくなった」
布多めの人が目を丸くする。
「大丈夫だったの?」
「助けてもらった」
私は小さく笑う。
「その時ね」
一拍置く。
「元気な時に止まれる人が、
本当に強いんだなって思った」
姿勢のいい人が頷く。
「合理的です」
「だからね」
私は振り返る。
「今日も、
元気なうちに止める」
歩きながら、
地面を見る。
風の向き。
影の動き。
昨日より、
視界が広い気がする。
「……あ」
足を止める。
小さな石の並び。
水の流れが少し変わってる。
「水、増えてない?」
布多めの人が覗き込む。
「ほんとだ」
エルフが笑う。
「昨日は気づかなかったな」
「気づけなかった」
私は訂正する。
「疲れてると、
見えてても分からない」
姿勢のいい人が言う。
「認識精度の低下ですね」
「言い方!」
でも、納得はする。
少しだけ場所を変えて、
休めそうな場所を確認する。
「ここ」
私は指差す。
「次の休みは、ここにしよう」
布多めの人が頷く。
「風が弱いわね」
「でしょ」
私は満足そうに息を吐く。
昼前。
まだ動ける。
でも、止まる。
「はい、終了」
エルフが驚く。
「早くないか?」
「早い」
私は即答する。
「早く終わる日は、
だいたいいい日」
火の場所に戻る。
体は、まだ余裕がある。
でも、それでいい。
「……昔ね」
私は火を見ながら言う。
「止まれなかったんだよね」
布多めの人が静かに聞く。
「怖かった?」
「怖かった」
私はうなずく。
「止まると、
置いてかれる気がして」
一拍。
「でもさ」
火が揺れる。
「止まらない方が、
置いてかれることもある」
エルフが小さく笑う。
「深いな」
「深くないのよ」
私は肩をすくめる。
「ただの失敗談」
夕方。
今日も、
誰も倒れてない。
誰も焦ってない。
「……よし」
私は小さく言う。
「今日も勝ち」
夜。
火を見ながら、
少しだけ昔を思い出す。
無理して、
止まれなくて、
遠回りした日。
でも、
今は違う。
「ここではね」
私は静かに言う。
「ちゃんと止まれる」
それが、
少し誇らしかった。
次は、おっさんが「昔の失敗」をもう一つ思い出して、仲間にちょっとだけ笑われます。




