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『絶望?今、それどころじゃないのよ。』  作者: くろめがね


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第十二話 休む?……休み方が分からない。

第十二話です。今日は、「何もしない練習」をします。

朝だ。

たぶん。


体は、動ける。

昨日ほどじゃないけど、

「行けと言われたら行ける」くらい。


それが、問題だった。


「……今日は休む日」


声に出して確認する。

確認しないと、勝手に動き出しそうだから。


火は生きてる。

水も、最低限はある。

腹も、騒いでない。


条件は、完璧。


なのに――

落ち着かない。


「何か忘れてる気がする……」


エルフが首をかしげる。


「何もする日じゃないんだろ?」


「そう」


私はうなずく。


「だから、落ち着かない」


布多めの人が、少し笑う。


「分かる気がするわ。

 休んでいいって言われると、

 逆に不安になるやつ」


「それそれ」


私は指を鳴らす。


「人間ね、

 何もしてない時間に、

 自分を疑い始める」


姿勢のいい人が淡々と言う。


「心理的負荷の一種ですね」


「言い方」


私は吹き出す。


「でも、そう」


立ち上がりかけて、

また座る。


「……今、立つ理由ないよね?」


自分に聞く。


理由は、ない。


「じゃあ、座る」


エルフが腕を組む。


「妙な戦いだな」


「一番難しい戦いよ」


私は真顔で言う。


「何もしないって、

 才能がいる」


火の前で、ただ座る。


炎を見る。

揺れる。

消えそうで、消えない。


「……あ」


ふと気づく。


「火、

 昨日より安定してない?」


布多めの人が覗き込む。


「確かに。

 触ってないのに」


「でしょ」


私は頷く。


「何もしないと、

 勝手に良くなることもある」


姿勢のいい人が記録するように言う。


「介入過多の回避ですね」


「言い方!」


でも、悪くない。


午前中は、

何もしない。


水を濾して、

火を守って、

それ以上はやらない。


「……暇だな」


エルフが言う。


「暇だね」


私は即答する。


「でも、

 暇=安全ってこともある」


布多めの人が微笑む。


「そう考えると、

 少し楽になるわね」


昼。


腹は、まだ静か。


「今日は、

 食べる量も増やさない」


エルフが驚く。


「そこも?」


「そこも」


私は首を振る。


「休む日は、

 体に仕事させない」


姿勢のいい人が頷く。


「消化活動も、

 エネルギーを要します」


「でしょ」


午後。


風の音を聞く。

雲の動きを見る。


「……あ」


また気づく。


「何もしないと、

 周りが見える」


昨日まで、

ずっと“やること”しか見てなかった。


今日は、

“あるもの”が見える。


地形。

影。

距離。


「これは……」


私は地面を指す。


「休む日に見る景色」


エルフが感心したように言う。


「動く日じゃ、気づかないな」


「でしょ」


私はちょっと得意になる。


夕方。


一日、

本当に何もしなかった。


誰も倒れていない。

誰も失敗していない。


「……勝ちだな」


布多めの人が笑う。


「変な勝利条件」


「でも、

 ちゃんと勝ち」


夜。


火を見ながら、

小さく言う。


「休めたってことは、

 明日、動ける」


何もしない一日。

でも、

確実に前に進んだ気がした。


次は、おっさんが「休んだ翌日の体」を確認して、思った以上に元気で驚きます。

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